クラス転移したけどリセマラされる前にバックレる

シューニャ

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第105話ヴァレンド洞窟国:梨島

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梨島が真井歩と共に移動を開始して暫く経つ...真井によれば既にビレネー坑道を抜け安全な地帯に入ったとの事だった。確かに言われてみればビレネー坑道を歩いていた時の不気味さが減った...ビレネー坑道はヒンヤリとしていてジメジメしていたが今、通っている洞窟は黄土色おうどいろで道の両脇の壁には松明のような形をした人工的な照明が光源となっていて明るい...

「ふぅー 着いたぞ...ヴァレンド洞窟国へようこそ。梨島さん。」

アユムがそう言いながら開けた空間に共に出ると信じられない光景が広がっていた...

梨島は「す、凄い...」と息を呑みながら言葉を漏らす...
彼女が目にしたのは異世界小説などの空想世界でよく見る地下都市だった。
地下都市はドーム状の空間に存在しており――どうやら今いる地点は、そのドームの上部に位置しているようだ...

「こっちだ。梨島さん。君は――まず、都市を見学する前に王宮へ行って王へ挨拶しなきゃならない。」

「うん。わかったよ。真井君。」と言い梨島はアユムの後を付いて行く...歩きながらもふたりの会話は続く...

「説明しておくと...まず、ここは亜人種であるドワーフの国だ。」

「え?!ドワーフ?!ドワーフって、あの小説とかに出てくる、あの小人だよね...?」

「うん、そうだよ。だから、ここでは人間はアウトサイダー部外者である事を忘れないでくれ。わかったね?いいね?梨島さん。」

アユムは話を梨島によく言い聞かせた。梨島は「うん、分かった。」と返事をしながら、ぼっさりと「そうか・・・だから地下に町があるんだ...」と目を輝かせていたので(聞いてなさそうだな...)とアユムは少し不安になったがヴァレンド洞窟国にやって来て間もない事もあってか元の世界に、なかった物珍しい光景を見て感動する彼女の気持ちは理解できた...

(もう一回言えばいいか...)と考えながら「確かにワクワクするよね...元の世界になかったモノだらけだから...まぁ~ 俺も数日前に赴任してきたばかりだから――ここの事は、よく知らないんだけど...」と事実を述べると梨島は...

「えっ?うそ・・・真井くんも、来たばっかりなの?」

彼女は驚いた表情で、そうアユムに語りかけてきた。
ついでにと思い彼はヴァレンド洞窟国に来る前は人間の国である自由都市同盟ユガンの都市兼州都のリヴォニアに居た事と、そこで仕事を見つけ――ここへ赴任してきた事を伝えた...

「へぇ~ 凄い。凄いよ!真井くん!ひとりで見ず知らずの異世界で働くなんて、わたしには怖くて想像さえできないもん!」

純粋な梨島は打算抜きで真井を褒めちぎった!良い娘である...

「そ、そうか?・・・そうだろう、そうだろう。」

アユムも珍しく他人に褒められたので悪くない気分だ...

「と、まあー言う訳で本来なら部外者の人間が来るにはドワーフ王の許可が必要なんだ。解るね?」

「えっ...?うん。」

梨島は急に不安そうな顔になったが、「まあ、そんなに不安そうな顔をしなくても大丈夫。ちゃんと梨島さんが滞在できるように大義名分は考えたから。」とアユムは彼女を励ましフォローすると彼女と共にトリグ王のいる宮殿へと向かうのだった...



***



宮殿に到着して、まず二人がおこなった事はヴァレンド洞窟国の王トリグに二人は謁見を求めることだった...謁見は無事に認められたが当然ながらトリグ王も含め宮殿の全員が目を丸くした。実習生を受け入れて間もないのに人が増えたのだ。驚くなと言うのが無理な話しであった...

「トリグ陛下。又しても――お忙しい公務の中、謁見して頂きありがとうございますその――申し訳ないと思ったのですが、しかし人が増えた事をご報告しなければならないと思いまして・・・梨島さん自己紹介を...」

「こんにちは、陛下。真井くんと同郷の梨島日和です。」

アユムは、まだ驚いて釣られた魚のようにパクパクと口を開閉し固まっているトリグ王に深々とこうべを垂れながら説明を始めた...

「本人が自己紹介した通り彼女は梨島という者で私めと同じ同郷の出身のございます。陛下...」

「はっ?!えっ?!いや・・・」

当然――話しが始まりトリグ王は、あたふたしているのだが構わずアユムは捲くし立てるように話しを続けた!

「解ります!解りますとも!聡明な陛下は、どこから彼女が来たのかと尋ねようといらしたのでしょう!彼女とは、ちょうどビレネー坑道の調査中にたまたま出会いまして会話が弾んだ結果――そう言えば彼女の字は丁寧な事で有名だったのを思い出しまして学術研究のユガン向けの執筆本を書かせる為に、この国へ滞在させたいのですが、よろしいでしょうか?!」

恐らくトリグ王は『門から入国していないのに、どこから彼女が入って来たのか?』聞きたかったのだろうがアユムから聞きたかった事は聞けたせいか案の定――「う、うむ・・・そういう事なら...か、構わぬぞ?」と前向きな返答を返してくれた...

「ありがとうございます。陛下...と、言う事は彼女が泊まれる部屋と食べる食事も用意してくれると理解しても宜しいですね!では!厚かましい――ついでのお願いなのですが彼女の着れる服も用意して頂いても宜しいですかな!!お代はコチラで宜しく!」

アユムは金貨のぎっしり入った袋の賄賂・・・⦅咳払い⦆では断じてなく返礼の金銭を近くの近侍に渡すと強引に話を切り上げるのだった‼

なお、声に出さずともアユムに対してドワーフたちどころか梨島さえも―――

(本当に厚かましい?!)(わたしが思うのは筋違いだけど・・・えええ?!!本当に厚かましい!厚かましいよ!真井くん!)と内心——驚いたのは説明するまでもない...
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