クラス転移したけど能力が低いのでリセマラされる前にバックレる

第84話；閑話トリグ

その日、ドワーフの王トリグは臣下の部下からの報告を耳にすると驚きのあまり口を開けながら目を見開いた．．．

「バカな？！酔って何かの見間違いではないか？！」

その部下はユガンから送り込まれた技能修学実習生の執筆本の内容を定期的に確認して〖ヴァレンド洞窟国〗上層部と自由ユガン同盟本国に技能修学実習が順調に進んでいる報告をする役目を負っていたが――なんと初日に、修学生が執筆したと思われる内容に驚きと危険を感じ、こうしてトリグの下に報告しに来たのだった！

「バカを言わないでくだせぇ!!酔いには慣れてますぜ！陛下！とにかく、見間違いではない！王よ！あの修学生はとんでもねぇー奴だ！防御門の構造をチラと見ただけで、おおよその構造を見抜くなんて人間とは思えない！あの修学生にヴァレンドの重要な施設は見せない方がよいのではないか？！」

それが事実であれば――この部下の言うことは、もっともであった．．．

あの――かの有名なユーリ皇の国である昔のユガン帝国から『我が国の技術を向上する為に修学生を受け入れてほしい』とユガンに仕えているスカイランナーが書状を携えてやって来たので、｟恩は掛け捨て｠と思い受け入れたが――

〖ヴァレンド洞窟国〗の重要な防衛設備である防御門のおおよその構造を一介の修学生に見抜かれたとなれば話は別だ！

「早急さっきゅうに皆に通達つうたつを出すのだ！あの修学生にヴァレンドの重要施設を見学させてはならん！こちらの意図を気取られるような素振りも禁止だ！気分を害されてユガン本国に直訴されては困る！まったく・・・それにしても、あの修学生・・・娘の一件と言い・・・厄介なことになったモノだ・・・」

トリグはユガンから来たアユムの起こす問題に頭を抱えながら黄金の玉座に寄り掛かるのだった．．．