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第76話閑話カポン・ルーデル

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(予想以上に使えますね...あの異邦人。)

リヴォニア市長――カポン・ルーデルは自身の執務室でサナイ・アユムがしえた仕事ぶりに満足していた...理由は言うまでもなく先日の『出来るだけ安く運河を一年で作れ』と無茶ぶりをした自身の上司――ラルカ公爵の要求をわずか1週間で成功に導いたからだ...

しかも彼は倉庫に眠っていた旧ユガン帝国軍が死蔵しぞうしていた梱包こんぽう魔焔まえん爆薬ばくやくを、ほぼ使い切ってくれたのはカポンとってありがたかった。

自身の上司である――無能公むのうこうとして名をせているラルカ公爵こうしゃく守銭奴しゅせんどなうえらない物を後生大事ごしょうだいじとっておくので部下としては大変に困っていた...これで物騒な爆弾とはおさらばだ!倉庫に新しいモノがしまえるし運河建設も破格の値段で出来た。彼に目をつけた自分は正しかった!彼には感謝しかない!

ただ、少し残念なのは――あの馬鹿ラルカ卿が、やっと完成した運河で働いていた市民に対して『完成したのは素晴らしい事だが・・・市民の待遇を――もっと抑えていれば安く済んだハズだ』と発言したせいで、もともとサナイ・アユムを目の敵にしていた小貴族の諸侯しょこうまでもが『あの異邦人は自身の名誉の為に無駄に予算を浪費した国賊だ!』と言い触れ回っている事だ...

あの異邦人が公共事業で、たくさんの予算を使ってくれたお陰で色々な所に金が落ち値札が動いたのだから我々には儲けしかないというのに、これだから頭のおめでたい連中は扱いに困るのだ...

(あの異邦人は、かなり使える...そっとしておいて欲しいモノだ...彼を勝手に潰して貰っては困る...)

だから、あの異邦人が所有している資産や建物を私の独断の判断で全て返してやったのだ!彼には――もっと多くの利益を我々にもたらして貰いたい...なにせ、あのエヴァ・ラインスが育てた人生最後の愛弟子まなでしだ...

昔のユガン帝国時代は領邦だったエレンダ王国出身のエヴァ・ラインスは残念ながら多くのエレンダ人と同様にユガン人よりも栄華を誇った昔のユガン帝国の名声にしがみつくばかりで名誉がどうだの・・・人道がどうだの……と、扱いの難しいメンドウな人物だった。

だが――少なくとも、あの青年はエレンダ人ではない...今やユガンは多民族国家であり商業国家なのだ...

私はシーザー帝国の出身だが……名誉めいよだの人道じんどうだので飯が食えない事くらいは少なくとも知っている...実際、私の両親は物心つく前に戦争で亡くなり身寄りのない孤児《こじ》だった私は孤児院で育ったが名誉や人道で飯を食えた事はなかった...少年時代に命からがら――この国に亡命ぼうめいするまで何回売り飛ばされそうになったり死にそうになった事か...

だがさいわい私には行政ぎょうせいになえるだけの天賦てんぷの才能があった。豪商出身のラルカ公爵には行政の才がなかったお陰で代理だいりでリヴォニア市の統治を任されているからこそ、今でこそユガン市民の地位にあるが...もしラルカ公爵に少しでも行政の才があって私に才能がなかったら間違いなく私は野垂のたれ死んでいただろう...

成功というものは才能に加え幸運も持ち合わせていなければ掴めないのだ...

その点――あの異邦人からは私と同じ才能を感じる・・・同じく幸運を自らの手で掴める者としてのシンパシーを感じるのだ!

だからこそ今は彼を応援しよう...
少なくとも彼が私にとって有益であり続ける限りは...
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