76 / 237
第76話閑話カポン・ルーデル
しおりを挟む
(予想以上に使えますね...あの異邦人。)
リヴォニア市長――カポン・ルーデルは自身の執務室でサナイ・アユムが成しえた仕事ぶりに満足していた...理由は言うまでもなく先日の『出来るだけ安く運河を一年で作れ』と無茶ぶりをした自身の上司――ラルカ公爵の要求を僅か1週間で成功に導いたからだ...
しかも彼は倉庫に眠っていた旧ユガン帝国軍が死蔵していた梱包魔焔爆薬を、ほぼ使い切ってくれたのはカポンとってありがたかった。
自身の上司である――無能公として名を馳せているラルカ公爵は守銭奴なうえ要らない物を後生大事とっておくので部下としては大変に困っていた...これで物騒な爆弾とはおさらばだ!倉庫に新しいモノがしまえるし運河建設も破格の値段で出来た。彼に目をつけた自分は正しかった!彼には感謝しかない!
ただ、少し残念なのは――あの馬鹿が、やっと完成した運河で働いていた市民に対して『完成したのは素晴らしい事だが・・・市民の待遇を――もっと抑えていれば安く済んだハズだ』と発言したせいで、もともとサナイ・アユムを目の敵にしていた小貴族の諸侯までもが『あの異邦人は自身の名誉の為に無駄に予算を浪費した国賊だ!』と言い触れ回っている事だ...
あの異邦人が公共事業で、たくさんの予算を使ってくれたお陰で色々な所に金が落ち値札が動いたのだから我々には儲けしかないというのに、これだから頭のおめでたい連中は扱いに困るのだ...
(あの異邦人は、かなり使える...そっとしておいて欲しいモノだ...彼を勝手に潰して貰っては困る...)
だから、あの異邦人が所有している資産や建物を私の独断の判断で全て返してやったのだ!彼には――もっと多くの利益を我々にもたらして貰いたい...なにせ、あのエヴァ・ラインスが育てた人生最後の愛弟子だ...
昔のユガン帝国時代は領邦だったエレンダ王国出身のエヴァ・ラインスは残念ながら多くのエレンダ人と同様にユガン人よりも栄華を誇った昔のユガン帝国の名声にしがみつくばかりで名誉がどうだの・・・人道がどうだの……と、扱いの難しいメンドウな人物だった。
だが――少なくとも、あの青年はエレンダ人ではない...今やユガンは多民族国家であり商業国家なのだ...
私はシーザー帝国の出身だが……名誉だの人道だので飯が食えない事くらいは少なくとも知っている...実際、私の両親は物心つく前に戦争で亡くなり身寄りのない孤児《こじ》だった私は孤児院で育ったが名誉や人道で飯を食えた事はなかった...少年時代に命からがら――この国に亡命するまで何回売り飛ばされそうになったり死にそうになった事か...
だが幸い私には行政を担えるだけの天賦の才能があった。豪商出身のラルカ公爵には行政の才がなかったお陰で代理でリヴォニア市の統治を任されているからこそ、今でこそユガン市民の地位にあるが...もしラルカ公爵に少しでも行政の才があって私に才能がなかったら間違いなく私は野垂死んでいただろう...
成功というものは才能に加え幸運も持ち合わせていなければ掴めないのだ...
その点――あの異邦人からは私と同じ才能を感じる・・・同じく幸運を自らの手で掴める者としてのシンパシーを感じるのだ!
だからこそ今は彼を応援しよう...
少なくとも彼が私にとって有益であり続ける限りは...
リヴォニア市長――カポン・ルーデルは自身の執務室でサナイ・アユムが成しえた仕事ぶりに満足していた...理由は言うまでもなく先日の『出来るだけ安く運河を一年で作れ』と無茶ぶりをした自身の上司――ラルカ公爵の要求を僅か1週間で成功に導いたからだ...
しかも彼は倉庫に眠っていた旧ユガン帝国軍が死蔵していた梱包魔焔爆薬を、ほぼ使い切ってくれたのはカポンとってありがたかった。
自身の上司である――無能公として名を馳せているラルカ公爵は守銭奴なうえ要らない物を後生大事とっておくので部下としては大変に困っていた...これで物騒な爆弾とはおさらばだ!倉庫に新しいモノがしまえるし運河建設も破格の値段で出来た。彼に目をつけた自分は正しかった!彼には感謝しかない!
ただ、少し残念なのは――あの馬鹿が、やっと完成した運河で働いていた市民に対して『完成したのは素晴らしい事だが・・・市民の待遇を――もっと抑えていれば安く済んだハズだ』と発言したせいで、もともとサナイ・アユムを目の敵にしていた小貴族の諸侯までもが『あの異邦人は自身の名誉の為に無駄に予算を浪費した国賊だ!』と言い触れ回っている事だ...
あの異邦人が公共事業で、たくさんの予算を使ってくれたお陰で色々な所に金が落ち値札が動いたのだから我々には儲けしかないというのに、これだから頭のおめでたい連中は扱いに困るのだ...
(あの異邦人は、かなり使える...そっとしておいて欲しいモノだ...彼を勝手に潰して貰っては困る...)
だから、あの異邦人が所有している資産や建物を私の独断の判断で全て返してやったのだ!彼には――もっと多くの利益を我々にもたらして貰いたい...なにせ、あのエヴァ・ラインスが育てた人生最後の愛弟子だ...
昔のユガン帝国時代は領邦だったエレンダ王国出身のエヴァ・ラインスは残念ながら多くのエレンダ人と同様にユガン人よりも栄華を誇った昔のユガン帝国の名声にしがみつくばかりで名誉がどうだの・・・人道がどうだの……と、扱いの難しいメンドウな人物だった。
だが――少なくとも、あの青年はエレンダ人ではない...今やユガンは多民族国家であり商業国家なのだ...
私はシーザー帝国の出身だが……名誉だの人道だので飯が食えない事くらいは少なくとも知っている...実際、私の両親は物心つく前に戦争で亡くなり身寄りのない孤児《こじ》だった私は孤児院で育ったが名誉や人道で飯を食えた事はなかった...少年時代に命からがら――この国に亡命するまで何回売り飛ばされそうになったり死にそうになった事か...
だが幸い私には行政を担えるだけの天賦の才能があった。豪商出身のラルカ公爵には行政の才がなかったお陰で代理でリヴォニア市の統治を任されているからこそ、今でこそユガン市民の地位にあるが...もしラルカ公爵に少しでも行政の才があって私に才能がなかったら間違いなく私は野垂死んでいただろう...
成功というものは才能に加え幸運も持ち合わせていなければ掴めないのだ...
その点――あの異邦人からは私と同じ才能を感じる・・・同じく幸運を自らの手で掴める者としてのシンパシーを感じるのだ!
だからこそ今は彼を応援しよう...
少なくとも彼が私にとって有益であり続ける限りは...
0
お気に入りに追加
542
あなたにおすすめの小説
![](https://www.alphapolis.co.jp/v2/img/books/no_image/novel/love.png?id=38b9f51b5677c41b0416)
サンタクロースが寝ている間にやってくる、本当の理由
フルーツパフェ
大衆娯楽
クリスマスイブの聖夜、子供達が寝静まった頃。
トナカイに牽かせたそりと共に、サンタクロースは町中の子供達の家を訪れる。
いかなる家庭の子供も平等に、そしてプレゼントを無償で渡すこの老人はしかしなぜ、子供達が寝静まった頃に現れるのだろうか。
考えてみれば、サンタクロースが何者かを説明できる大人はどれだけいるだろう。
赤い服に白髭、トナカイのそり――知っていることと言えば、せいぜいその程度の外見的特徴だろう。
言い換えればそれに当てはまる存在は全て、サンタクロースということになる。
たとえ、その心の奥底に邪心を孕んでいたとしても。
![](https://www.alphapolis.co.jp/v2/img/books/no_image/novel/love.png?id=38b9f51b5677c41b0416)
![](https://www.alphapolis.co.jp/v2/img/books/no_image/novel/love.png?id=38b9f51b5677c41b0416)
![](https://www.alphapolis.co.jp/v2/img/books/no_image/novel/love.png?id=38b9f51b5677c41b0416)
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
![](https://www.alphapolis.co.jp/v2/img/books/no_image/novel/love.png?id=38b9f51b5677c41b0416)
美人四天王の妹とシテいるけど、僕は学校を卒業するまでモブに徹する、はずだった
ぐうのすけ
恋愛
【カクヨムでラブコメ週間2位】ありがとうございます!
僕【山田集】は高校3年生のモブとして何事もなく高校を卒業するはずだった。でも、義理の妹である【山田芽以】とシテいる現場をお母さんに目撃され、家族会議が開かれた。家族会議の結果隠蔽し、何事も無く高校を卒業する事が決まる。ある時学校の美人四天王の一角である【夏空日葵】に僕と芽以がベッドでシテいる所を目撃されたところからドタバタが始まる。僕の完璧なモブメッキは剥がれ、ヒマリに観察され、他の美人四天王にもメッキを剥され、何かを嗅ぎつけられていく。僕は、平穏無事に学校を卒業できるのだろうか?
『この物語は、法律・法令に反する行為を容認・推奨するものではありません』
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる