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第67話:帝都グーン

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これはアユムが拘束される前の話...

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シーザー帝国——帝都グーン
元の世界のドイツ帝国を思わせる、その町並みはとても美しい・・・
帝都グーンにある雪のように白い空高くそびえる城には、ふたつの頭を持つ黄金の翼竜が描かれていて、その翼竜の姿はまるで、かの帝国軍の精強さを表しているようだ・・・

皇帝の住んでいる白い城だけではなく帝都グーンの城下町や職人街は一つの要塞となっており、どこまでも続く何重もの巨大な壁は幾多の強大な敵の進行を拒み続けてきた...

寒空の中――この国の偉大さ称えるように屈強な兵士の力強い声が響く!!

ハイル!シーザー!!シーザー万歳!!

ジークハイル !!勝利万歳!!ジークハイル !!勝利万歳!!
ジークハイル !!勝利万歳!!

立派な鎧を纏《まと》った指揮官が鋭利な儀式用の剣を手に兵士たちに答える!

ハイル・デム・ファーターラント祖国万歳!!!!」
ハイル・マイン・カイザー我らが皇帝陛下!万歳!

彼らは官軍に属する官兵たちだ...この街を防衛している。
彼らの着用している官給品の制服は、つい最近支給された最新のデザインが取り入れられていたが、その服のデザインに驚き疑問を持つ者たちがいた...

他でもない異世界から来た勇者たちだ...

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「しかし、まあー 驚いたねー シーザー帝国の城塞に所属する兵士全員の制服が僕たち元の世界の・・・学校の男子服のデザインにそっくりなんて・・・すごい偶然だと思わない? 紗弓さゆみちゃん。」

嶺山紗弓の親友である結城雪奈ゆいじょうゆきなは思った事を口にするが、当の嶺山は考え込みながらうめくように呟いた

「本当に偶然なのかしら...」

異世界の武官の制服が元の世界の自分たちの学校制服と同じデザイン・・・
考えてみれば、おかしな話ではないか...

(調べて見る必要があるわね...)

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次の日、嶺山は親友の結城と共にクラスメイトのパーティメンバーたちを待機させてこの国の制服について調べ始めた...

「別について来てくれなくてよかったのに...雪ちゃん」

「彼氏の岩屋くんと一緒に宿に残ってもよかったんだよ?雪ちゃん...」

嶺山としては手伝ってくれるのは、ありがたいが彼氏の岩屋と一緒に過ごすのではなく自分の手伝いをしてくれる結城に気が引けていた・・・

「いいんだよ!まったく!岩屋君ったら僕のおっぱいやお尻ばかり触ってくるんだ!僕は正教徒だから婚前交渉はダメって言ってるのに...」

と結城は口をへの字に曲げながら、ちょっと怒った顔でクイっと少し顔を上向ける。

「そ、そうなんだ...」

男性との交際は、おろか手を握った事すらない嶺山にとって結城の発言は非常に刺激的だった。もちろん性的な事など彼女にとっては論外だ!だが異性と接触などした事のない嶺山は、つい顔を赤らめてしまう...

「そうなんだよ!男の子って――どうして、えっちな事ばかり考えてるんだろう...ぼくは、こう――もっと相手の事を思っているようなプラットニックな愛が理想なのに、本当にえっちなんだから!だから『もう、しばらく岩屋くんなんて知らない!』って宿から出てきちゃった!」

「でも勘違いして欲しくないのは――親友である紗弓さゆみちゃんが一人で出かけることが本当に心配だから君についていくんだ。君に何かあったら僕も悲しいからね。まだ、婦女暴行の犯人も捕まっていないみたいだし・・・」

確かに、あれから――あの事件に対しての音沙汰おとさたを聞かない・・・
解決したと言うことだろうか?
何の情報も入ってこない事に一種の不気味ぶきみさを感じる...

「それで、紗弓さゆみちゃん――どこから調べるの?どこか当てがあるの?」

結城の質問に――疑問から意識を戻される・・・

「あっ、えええ...ごめんなさい。宿屋のご主人から聞いたんだけど・・・商業ギルドに所属している高級仕立て屋が制服を卸しているらしいの。まずは、そこをあたって見ようと思うわ。」

「さすが紗弓さゆみちゃん!見当がついているんだね!じゃ、さっそく行こう!」

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高級仕立て屋へ到着し中へ入ろうとすると高級感溢れる扉が開いた!

「お客様、いらしゃいませ。」

どうやら従業員が気を利かせて開いてくれたらしい...

「こんにちは、お伺いしたい事があるんですが・・・」

嶺山たちは事情を話すと本店の店長の肩書を持つ人が応対してくれた。

「そうですか。噂の勇者さま御一行の方でしたか・・・国を通してギルドの上層部から話は伺っておりますので出来る限りの協力をさせていただきます。さて、わたくしどもが帝国軍に卸している制服のデザインについてですが詳しい事は、わたくしどもも知らされていません。しかしデザインの元となった服があるので、お見せしましょう。」

そう言うと、おもむろに店内の奥にある宝物庫ほうもつこらしき所から立派な箱が取り出されてきた・・・

「拝見させていただきます。」

嶺山が立派な箱の蓋に手をかけ開けると・・・

「なっ!」

驚きの声が出た!

「これ・・・うちの学校の制服だよ!紗弓ちゃん!」

「な、なんで...」

嶺山は刺繍《ししゅう》された名前を見て愕然《がくぜん》とした...
その制服には《真井 アユム》の名が刻まれていた...

「真井・・・君」

(彼は、ここに?死んだ状態で?それとも生きた状態で?)

色んな考えが脳内を駆け巡る!

「すいません!この制服を着ていた人は!」と店長らしき人物に聞いたが「さぁー?わたくし共は何も聞かされていませんので、わかりません」と首を振るばかりだ。

「わたくし共に言える事は、あまりにも見事な縫製技術なので再現に苦労したという事くらいですかね・・・この服を着ていた方がどうなったかは知りません。」

嶺山は「そうですか...」と力なく答え協力してくれた謝礼を渡すと店を後にした
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