クラス転移したけどリセマラされる前にバックレる

シューニャ

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第55話試製圧力式ポーション

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それから300年・・・・
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・・・・・・ごめん・・・ウソついた。

苦節二日――
心配していたバネの製作は思っていた通り適切な形状やバネじたいの太さ、長さにするため何百回と失敗したが、他の部品は存外簡単だったため思いのほか時間がかからなかった。

今日はようやく試作品が完成したので今日はポーションの薬草がりをしている。
いちお、万が一 試作ポーションが聞かなかった時の為に通常のポーションも持ってきているので安心だ

そんなこんなで小さな小川沿いに生えている薬草を適当に摘んでいっている。だが、こういう時に限って魔物は襲いかかってこない...

(・・・いや!襲いかかって来て欲しい訳じゃないけど!)

むしろ平和なのは良い事だ!別に俺は漫画やアニメの主人公のように戦闘に明け暮れたい訳ではないのだから、これでいいのだ!前回のように毎回ケガや痛い思いをするのは嫌である!

はっきり言って俺は正直ただのポーション屋である。誰にもお礼も感謝の言葉をかけられず『あの人はいい人だった』と顧みられるられる訳でもないのだから俺が命を賭ける道理はない。こんな危険な世界で危険をワザワザおかすのも生活のため、もっと汚く言うと金のためだ...

そう、ひとり内省しながら材料を採取していると・・・

「あっ...」

「ギャンサー!」

この世界の魔物には自分の種族名を叫ばなくてはいけない暗黙のルールでもあるのだろうか?!

考え事をしながら作業をしていたせいで、いつの間にか視界の隅に魔物がいる!
しかも、これはヤバい・・・

コイツ!街中で要注意と喚起されているカニ型モンスターの【ギャンサー】ではないか?!

「ギャンサー!」

俺は脇目もふらず全力で逃げ出した!!・・・とは、いえ恐らく逃げ切れないだろう...

記憶が正しければ見た目には元の世界の人間サイズのデカいシオマネキだが、【ギャンサー】は強力なハサミでの攻撃力 全身を硬い甲殻に覆われた防御力 そして何より横歩きとはいえ、6本足での機動力を有する――攻防だけでなく機動力にも優れている、まるで戦車のような魔物だったはずだ...

「くそ!ツイてない...ギャンサーが住んでるのは、もっと大きな川辺のはずなのに...」

想像するに、その川辺でやっていけなかった個体だろう...他の魔物との生存競争に負けて、ここまでやってきたハグれモンスターという奴だ...
しかもコイツは雑食性――苔《こけ》から腐肉まで何でも食う!
もちろん生きた生物もだ!!

(最悪だ!)

間違いなくギャンサーは長い旅路で腹を空かせているだろう。そこへカモネギを背負った生肉が来たのだ。ギャンサーからすれば、さぞかし俺は美味そうに見えるだろう!!

「ギャンサー!!」

逃げる俺の前を塞ぐ形で周り込んだ【ギャンサー】が立ちふさがってきた!

「てめぇ!この野郎!水棲生物の分際《ぶんざい》で人間様を喰おうってのか?!」と震え声で恐怖心を抑えながら剣を抜く!

やばい!やばいです!!絶体絶命のピンチです!!

「ギャンサーーーー!!」と言いながら【ギャンサー】が襲いかかって来た!!

「ちょーーー!!!死ぬぅううううーーー!!!」

寸でのところでハサミ攻撃を交わすと、バック!!とデカいハサミが閉まる風切音が聞こえた!!!

(ひえええええーーー!!!!完璧に殺しにきている!!)

だがコチラもオチオチしてられない!間の大きい攻撃を繰り出したギャンサーの甲殻の隙間を狙って「死ねぇえええ!!!」と言いながら剣先を突き立てる!!

「ぎゃ!ギャンサーーー!!」

剣先を突き立てられた【ギャンサー】は、まるで『な、何をする!!貴様ー』とでも言っているようだ。俺が大人しく肉になるとでも思っているのか?コイツは?!

俺がそんな事を思っているのも束の間――剣先を突き立てられた【ギャンサー】は間髪も入れず反対側の小さなハサミで俺の右腕に掴み反撃してきた!!

「や、やめろー!!うあ"ぁあ"ぁ!!!」

小さなハサミは見た目以上に強力だった!!右腕上腕の骨がギシギシ、ギシギシ――バリバリ、バリバリ!と一瞬でハサミ砕かれていく!!

(し、死ぬ!殺される!!!)

あまりの痛みに息すら詰まる!!だが事前に仕込んだタネが効いてきたようだ!!

「ぎゃ?!ぎゃん?!ギャンサーー!!」

こんな事もあろうかと出かける前に短剣に猛毒を仕込んでおいて正解だった...
当のギャンサー本人は何が起こっているのか分かっていないようだが・・・

「ざぁまーみろ...人間さまを喰おうなんてするからだ...」と力なく薄笑いで笑い、その場に崩れ落ちる...あまりの痛さで動けない...
コチラもヤバい...

「はっは...おれ...死ぬんじゃねー...」

薄れゆく意識の中でダメ元で試作したポーションを打つ...

右の首筋にある頸動脈にペン先を押し付けると内部のストッパーが外れ、一緒に内蔵されたアンプルからバネとピストンの力で押し出された薬液が狭い空間から勢いよく発射される...
結果、急激な圧力に達した薬液は秒速の速度で押し出され——内容液を肌の小孔へと浸透させ傷を治す仕組みなのだが...

「・・・」

試製ポーションは、すこし痛みがあるが針と比べれば大した痛みではない...はずだがギャンサーにやられた痛みの方が強いので、あまりよく分からない...

8秒後...どうやら効果はあったらしい...
痛みが引いてきたような気がする・・・・

「はぁ、はぁ、はぁ~」

呼吸が楽になってきた...起き上がり脂汗を袖で拭う・・・
赤みがかった患部の赤みが引いてきつつある・・・骨も固まりつつあるようだ・・・骨が固まりきらない内に早急にあり合わせの材料で腕を固定していく...

「これは・・・すごい発明をしたかも知れないな・・・」

既に三分後には右腕の上腕は【ギャンサー】との交戦前の状態に戻っていた...
神経や骨の状態にも以上はない・・・問題ないようだ...

(是非とも、この素晴らしい発明は世に送り出さなければ・・・)

俺は急いで街に帰り世の中に圧力注射式ポーションを発表する為の論文と特許を宮廷役場の公示人に提出した・・・
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