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第54話「面倒な作業・・・」
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その後も日が暮れるまでポーションに関する文献を読み漁り、【様々な材料を添加したハイポーションを薬効を高めた状態で維持し、なおかつ患部に直接その薬効成分を送り届けて人体本来の自然治癒能力を補助する事が重要なのではないか?】という決論にいたった俺は次の日からポーションの改良に乗り出した・・・
(もう、既に軟膏タイプの塗り薬のポーションや内服タイプの錠剤や水薬のポーションは、この異世界の偉人たちが試して一定の成果を出している・・・)
他の錬金術士たちの研究論文もレシピや調味料の新規開発のかたわら、バールハイト氏に頼んで取り寄せて貰ったが異世界にも、なかなかに優秀な人達がいるようで、『さまざまな材料を一つ一つ調べた結果、アッシカ木の実を磨り潰して添加すれば水薬ポーション薬効が高まる効果が確認できた・・・』
『現住大陸、マグナス魔法国――キュルゲン地区で魔法による新技術である材料合成術式を使用した新型ポーション素材の開発が一定の成功をおさめた。この新しい塗り薬タイプのポーションは慈善活動と試薬への効果を確認する目的でヴィネス教会に寄付され聖職者たちは苦しんでいる貧民に無償で、この処方した結果――多くの人々が肩こりや腰痛、炎症に対する効果を実感したと回答した。当初、心配された副作用も長い経過観察を経て一つ一つ確認したが現在までに有害な副作用は誰一人として訴えていない』など眼を見張る成果が掲載されていた
はっきり言うと(自分でポーションを改良するのは無謀ではないか・・・?)と思えて来るが、(やる!)と自分で決めた以上、一定の成果は出したいものだとも思ってしまう
「とりあえず、出来る事から始めるか・・・」独り言を呟きながら現住大陸の翻訳本も片手に論文を抄訳していく
今まで覚える財政的余裕や機会がなかったが(この際、文字を覚えてしまおう)と思う。幸いな事に言葉は解るので、日本の文字体系に照らし合わせる事は可能だと思う。
この異世界の文字体系はギリシャ文字やキリル文字に酷似している。
恐らくアルファベット形式か、それに類似するものだろう。
「これなら、なんとか抄訳しながら覚えられるだろうけど、なかなか骨が折れそうだな~」とボヤきながら確実に抄訳していく。
「うん、うん・・・なるほど、これが亜人大陸のLで...」
「こっちは現住大陸で...Aになるのか...」
まだ親父と母親が夫婦仲が良かった頃に親父が、こうやって聖書の原文を抄訳して教えてくれた頃を思い出す...
「まさか異世界で、あの鬼のような親父に教えられた事が役立つとは・・・」
世の中とは、なんとも皮肉である...
そう感じつつも確実に翻訳のスピードは上がっていく...
「よし・・・粗方だけど覚えたな...」
誰もいないにも関わらず謙遜してしまうのは陰キャラの悲しい性《さが》か...
だが既に俺の頭の中には完璧に現住大陸文字と亜人大陸文字が入っている
こうしてポーションの改良に取り組む準備を終えたアユムは、いよいよ新型ポーションの開発に取り組んでいくのであった...
ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー
ポーションに関する文献でアユムには一つ気がついた事があった。
「そう言えば注射器型のポーションとかはないよな...」
まだ、この世界では注射器が実用化されていないのなら試して見る価値はあるだろう・・・羊皮紙を手に取ると手早く設計図を書いていく!
劣悪な環境でも使用に耐えうるように【針なしタイプの圧力式注射器】が適切だろう
これなら針が曲がる心配もないし針とグリップ・圧力を加える機関部分を一体にしてパワーパック化すれば注射器本体の強度もあがる。問題は圧力の機関部品の機構をどうするか?
「うーん・・・」
元の世界の圧力注射器はバネの力を動力としてキツい絞りのペン先に、その圧力を集中させる事で皮膚表面の小孔へ薬液を浸透させるのだが・・・
「そうなると問題は新しい専用の薬液の開発とその薬液を入れるアンプルの作成・・・そして何より一番の難関は圧力をかけるバネの製作か・・・」
たかがバネだが...材料工学の観点からすれば目的通りのバネを製作するのは容易な事ではない。冶金技術が比較的進んでいた第二次世界大戦のときの日本ですらバネを作るのは案外難しかったのだ。旧日本軍が半自動ライフルを作れなかったのも当時の日本がバネに関する見識を欠いていたのが原因だったとされている。
そのバネを国ではなく個人で炭素含有量が0.1から1.7の軟鋼のバネを作る必要があるのだ...
「面倒な作業になりそうだ・・・」
アユムは錬金術用の作業台に向かい鉄くずを手に取るとバネの製作に取り掛かった
(もう、既に軟膏タイプの塗り薬のポーションや内服タイプの錠剤や水薬のポーションは、この異世界の偉人たちが試して一定の成果を出している・・・)
他の錬金術士たちの研究論文もレシピや調味料の新規開発のかたわら、バールハイト氏に頼んで取り寄せて貰ったが異世界にも、なかなかに優秀な人達がいるようで、『さまざまな材料を一つ一つ調べた結果、アッシカ木の実を磨り潰して添加すれば水薬ポーション薬効が高まる効果が確認できた・・・』
『現住大陸、マグナス魔法国――キュルゲン地区で魔法による新技術である材料合成術式を使用した新型ポーション素材の開発が一定の成功をおさめた。この新しい塗り薬タイプのポーションは慈善活動と試薬への効果を確認する目的でヴィネス教会に寄付され聖職者たちは苦しんでいる貧民に無償で、この処方した結果――多くの人々が肩こりや腰痛、炎症に対する効果を実感したと回答した。当初、心配された副作用も長い経過観察を経て一つ一つ確認したが現在までに有害な副作用は誰一人として訴えていない』など眼を見張る成果が掲載されていた
はっきり言うと(自分でポーションを改良するのは無謀ではないか・・・?)と思えて来るが、(やる!)と自分で決めた以上、一定の成果は出したいものだとも思ってしまう
「とりあえず、出来る事から始めるか・・・」独り言を呟きながら現住大陸の翻訳本も片手に論文を抄訳していく
今まで覚える財政的余裕や機会がなかったが(この際、文字を覚えてしまおう)と思う。幸いな事に言葉は解るので、日本の文字体系に照らし合わせる事は可能だと思う。
この異世界の文字体系はギリシャ文字やキリル文字に酷似している。
恐らくアルファベット形式か、それに類似するものだろう。
「これなら、なんとか抄訳しながら覚えられるだろうけど、なかなか骨が折れそうだな~」とボヤきながら確実に抄訳していく。
「うん、うん・・・なるほど、これが亜人大陸のLで...」
「こっちは現住大陸で...Aになるのか...」
まだ親父と母親が夫婦仲が良かった頃に親父が、こうやって聖書の原文を抄訳して教えてくれた頃を思い出す...
「まさか異世界で、あの鬼のような親父に教えられた事が役立つとは・・・」
世の中とは、なんとも皮肉である...
そう感じつつも確実に翻訳のスピードは上がっていく...
「よし・・・粗方だけど覚えたな...」
誰もいないにも関わらず謙遜してしまうのは陰キャラの悲しい性《さが》か...
だが既に俺の頭の中には完璧に現住大陸文字と亜人大陸文字が入っている
こうしてポーションの改良に取り組む準備を終えたアユムは、いよいよ新型ポーションの開発に取り組んでいくのであった...
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ポーションに関する文献でアユムには一つ気がついた事があった。
「そう言えば注射器型のポーションとかはないよな...」
まだ、この世界では注射器が実用化されていないのなら試して見る価値はあるだろう・・・羊皮紙を手に取ると手早く設計図を書いていく!
劣悪な環境でも使用に耐えうるように【針なしタイプの圧力式注射器】が適切だろう
これなら針が曲がる心配もないし針とグリップ・圧力を加える機関部分を一体にしてパワーパック化すれば注射器本体の強度もあがる。問題は圧力の機関部品の機構をどうするか?
「うーん・・・」
元の世界の圧力注射器はバネの力を動力としてキツい絞りのペン先に、その圧力を集中させる事で皮膚表面の小孔へ薬液を浸透させるのだが・・・
「そうなると問題は新しい専用の薬液の開発とその薬液を入れるアンプルの作成・・・そして何より一番の難関は圧力をかけるバネの製作か・・・」
たかがバネだが...材料工学の観点からすれば目的通りのバネを製作するのは容易な事ではない。冶金技術が比較的進んでいた第二次世界大戦のときの日本ですらバネを作るのは案外難しかったのだ。旧日本軍が半自動ライフルを作れなかったのも当時の日本がバネに関する見識を欠いていたのが原因だったとされている。
そのバネを国ではなく個人で炭素含有量が0.1から1.7の軟鋼のバネを作る必要があるのだ...
「面倒な作業になりそうだ・・・」
アユムは錬金術用の作業台に向かい鉄くずを手に取るとバネの製作に取り掛かった
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