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第53話ポーションの歴史
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読み終えた本を脇に置き、
次にアユムはポーションに関する歴史書を開いた・・・
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『自由ユガン同盟商会連合著 ポーションの起源とその変化について』
一般的に流通しているポーションには様々な種類・形態が存在する。
皆さんがよく目にするポーションは外傷の回復を速めるポーションだろう。
この書籍を手にとっている者の大多数は既に知っているだろうが、あえて記述するとそれらはユラギ草に含まれる薬効成分を煮詰めて蒸留器で濃縮したものが大半だが、『では、誰もが適当に作って完成するのか?』と問われれば、そう簡単な話しでもないのだ。
冒頭では、まずはポーションの起源について紐解いていこうと思う...
まず、この本を手にとった者はポーションに製造に関する知識と見識が確立されたのは割と近年であるという事を知っておくべきだろう
最初に少しユガンの歴史に触れるが昔から国、内部の権力闘争を出来るだけ避ける目的で近親婚を繰り返していた皇帝一族は長らく重篤な病の頻発に苦しんでおり皇帝一族を救う目的で治癒専門の宮廷術師部門が創設された事が世界的なポーション製造が始まる歴史のきっかけになった
当時、エレンダ出身の宮廷つき治癒術士のエヴァ・ラインスは獣人族が病に罹患しにくい事を長らく疑問に感じていた。『周囲の人々は獣人は人より獣に近いのだから体が人族より頑丈なのだろう』と思っていたし、常識なのだから調べる必要性すら感じていなかった。
しかしエヴァ・ラインスは常識に囚われず自らルスリス獣人国に出向き獣人族の生活を長らく観察した。結果ラインスは獣人族から精霊と崇められるケットシーに注目した。
ルスリス獣人国 ケットシー自治領ダヌクールに住む調理好きなケットシーたちは昔から臼やすり鉢、土器などで香辛料・薬味などを調合する事は古く広く知られていたが、その調合過程で調合に失敗する事が、しばしばあった。
だが、その失敗作の中には裂傷や病気、中毒症状に効く物があり、おちょちょいな彼らは、その薬効を知らぬ間に失敗作を格安で獣人族に卸していたのだ。
それが、まさかのポーションの起源である。ケットシーの食材に使う調味料が、いつの間にか調剤技術の基礎を築いていたのは誠に驚きであるがエヴァ・ラインスは、これらの事実にいち早く着眼しケットシーの調合作業を入念に観察し記録した
こうしてユガンに帰った彼女は人類で初めて怪我や病気を治療する事を目的としたポーションの調合に成功した。その後も彼女は数多くのポーションを開発に携わり、その成功はユガンの上層部も彼女の功績を高く評価していたが・・・
彼女は息子を病気で亡くした経験から『あのような思いを他の母親にさせてはならない・・・』と言いポーションの製造に関する知識や経験をユガンで独占する事を拒否。
時の上層部はエヴァ・ラインスに激怒し『国家予算を使っておいて何事か?!』と彼女を宮廷術士の任から解任した。職を失ったが彼女だが前途の通り既に息子を流行り病で失っており夫もエレンダ王国在住の時に戦役で失っていたので、たいして落胆しなかったという
彼女の功績により、いま現在・・・現住大陸・亜人大陸問わずポーションは広く広まり人々の健康と幸福に強く貢献しているが、彼女の最後は物哀しい最後だったという
最後になったが、この書は自由ユガン同盟商会連合が彼女の功績を、より多くの人に深く知ってもらいたいがゆえに各商会が資金を出し合い共同で制作したものである。
自由ユガン同盟商会連合は市民を代表し今は亡きエヴァ・ラインス女史に感謝し深い哀悼の意を捧げる。
自由ユガン同盟商会連合会長 旧ユガン新都市リヴォニア市長 カポン・ルーデル
この著は、あの世の彼女に捧ぐ・・・
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「この世界にも凄い人が居たんだな。うん?ラインス・・・?」
いや、そんなハズはない!あの更年期すら過ぎ去ったキレやすい老人と、こんな偉大な人間を一緒にしては、このエヴァ女史に怒られる。恐らく同姓同名の人物だろう・・・
(それに俺が錬金術師ギルドを卒業したときには、まだラインス師匠は生きていたし・・・)
アユムは、それ以上考えるのを止め――本を閉じた・・・
次にアユムはポーションに関する歴史書を開いた・・・
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『自由ユガン同盟商会連合著 ポーションの起源とその変化について』
一般的に流通しているポーションには様々な種類・形態が存在する。
皆さんがよく目にするポーションは外傷の回復を速めるポーションだろう。
この書籍を手にとっている者の大多数は既に知っているだろうが、あえて記述するとそれらはユラギ草に含まれる薬効成分を煮詰めて蒸留器で濃縮したものが大半だが、『では、誰もが適当に作って完成するのか?』と問われれば、そう簡単な話しでもないのだ。
冒頭では、まずはポーションの起源について紐解いていこうと思う...
まず、この本を手にとった者はポーションに製造に関する知識と見識が確立されたのは割と近年であるという事を知っておくべきだろう
最初に少しユガンの歴史に触れるが昔から国、内部の権力闘争を出来るだけ避ける目的で近親婚を繰り返していた皇帝一族は長らく重篤な病の頻発に苦しんでおり皇帝一族を救う目的で治癒専門の宮廷術師部門が創設された事が世界的なポーション製造が始まる歴史のきっかけになった
当時、エレンダ出身の宮廷つき治癒術士のエヴァ・ラインスは獣人族が病に罹患しにくい事を長らく疑問に感じていた。『周囲の人々は獣人は人より獣に近いのだから体が人族より頑丈なのだろう』と思っていたし、常識なのだから調べる必要性すら感じていなかった。
しかしエヴァ・ラインスは常識に囚われず自らルスリス獣人国に出向き獣人族の生活を長らく観察した。結果ラインスは獣人族から精霊と崇められるケットシーに注目した。
ルスリス獣人国 ケットシー自治領ダヌクールに住む調理好きなケットシーたちは昔から臼やすり鉢、土器などで香辛料・薬味などを調合する事は古く広く知られていたが、その調合過程で調合に失敗する事が、しばしばあった。
だが、その失敗作の中には裂傷や病気、中毒症状に効く物があり、おちょちょいな彼らは、その薬効を知らぬ間に失敗作を格安で獣人族に卸していたのだ。
それが、まさかのポーションの起源である。ケットシーの食材に使う調味料が、いつの間にか調剤技術の基礎を築いていたのは誠に驚きであるがエヴァ・ラインスは、これらの事実にいち早く着眼しケットシーの調合作業を入念に観察し記録した
こうしてユガンに帰った彼女は人類で初めて怪我や病気を治療する事を目的としたポーションの調合に成功した。その後も彼女は数多くのポーションを開発に携わり、その成功はユガンの上層部も彼女の功績を高く評価していたが・・・
彼女は息子を病気で亡くした経験から『あのような思いを他の母親にさせてはならない・・・』と言いポーションの製造に関する知識や経験をユガンで独占する事を拒否。
時の上層部はエヴァ・ラインスに激怒し『国家予算を使っておいて何事か?!』と彼女を宮廷術士の任から解任した。職を失ったが彼女だが前途の通り既に息子を流行り病で失っており夫もエレンダ王国在住の時に戦役で失っていたので、たいして落胆しなかったという
彼女の功績により、いま現在・・・現住大陸・亜人大陸問わずポーションは広く広まり人々の健康と幸福に強く貢献しているが、彼女の最後は物哀しい最後だったという
最後になったが、この書は自由ユガン同盟商会連合が彼女の功績を、より多くの人に深く知ってもらいたいがゆえに各商会が資金を出し合い共同で制作したものである。
自由ユガン同盟商会連合は市民を代表し今は亡きエヴァ・ラインス女史に感謝し深い哀悼の意を捧げる。
自由ユガン同盟商会連合会長 旧ユガン新都市リヴォニア市長 カポン・ルーデル
この著は、あの世の彼女に捧ぐ・・・
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「この世界にも凄い人が居たんだな。うん?ラインス・・・?」
いや、そんなハズはない!あの更年期すら過ぎ去ったキレやすい老人と、こんな偉大な人間を一緒にしては、このエヴァ女史に怒られる。恐らく同姓同名の人物だろう・・・
(それに俺が錬金術師ギルドを卒業したときには、まだラインス師匠は生きていたし・・・)
アユムは、それ以上考えるのを止め――本を閉じた・・・
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