クラス転移したけどリセマラされる前にバックレる

シューニャ

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第16話学校一の秀才

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時間は少し遡る・・・真井歩が奴隷兵として戦場を目指していた頃・・・

――聖アリュレイン王国――
――城内――練兵区画――
――嶺山紗弓――

私は嶺山紗弓――地元で一番の進学校でクラスの副委員長をしていたが異世界にクラス共々ともども勝手に召喚されて丁度ちょうど一ヶ月とちょっとなる。今はユニオン王国の人達と一緒に来て魔王軍と戦う為の訓練を日々おこなう毎日を送っている。

「はぁああああ!!!」

渾身の一撃で放った銀色の光の斬撃を受けた練習用の人形が攻撃を受けバラバラになるのを確認すると「ふぅー」と息を整え私は標的のあった場所に向き直った

「いつ見ても凄い威力ですね。嶺山殿。あなた様は武の心得があるので安心して見ていられます。」

振り返ると私に指南役として割り当てられた聖アリュレイン王国の騎士が関心した様子でコチラを伺っていた。私は「ありがとう」と笑顔で言うと光属性を持つハルバードを手を差し出した騎士に預け、そばに控えていたメイドから額の汗をぬぐう為のタオルと受け取った

汗を拭いながらクラスメイトの練習風景を眺める・・・

剣を振る練習する生徒、魔法を練習する人 回復術を極める為特訓する人 みんな、それぞれの指南役の元で励んでいた。

アリュレインに来たばかりの事を思い出す・・・



・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・



「よくお越しなさいました――異界の勇者の方々…まずは勝手にこの世界に招いた事をお詫びいたします。私はこの地に魔王が現れたときからあなた方を待って下りました」

あたたかな光を放ちながら宙に浮いている金色の目をした淡い水色の髪の女性・・・・・・異世界に突然召喚された私たちですら、この女性はきっと特別な存在なのだろうとひと目で気づいた

「わたしは女神ヴィネス… わたしはあなた方が来るよりも、ずっと昔から天界から来た神族として、この聖アリュレインの地を守護してきました 」

同性の私でも見惚れるくらい美しい女神…ヴィネス。

彼女は、この地の歴史について私たちに語り始めた

「この聖アリュレイン王国は古来より魔に属する者達から人々を守ってきました。古来より魔に属する者達は闇を好み人を食らう邪悪な化け物で強靭な闇の力を持っていましたが、我ら神族とこの地の人々との幾度にも及ぶ凄惨な戦いの末・・・次第にその力を失っていきました。しかし、それは我らも同様・・・悩みに悩み苦しんだ末、我ら神族と古来の勇者は闇に属する者達が力を取り戻す前にある英断を下しました。」

「それは世界の人々の為に自らを人柱とすると言う尊い犠牲を伴う手段でした・・・ですが、その献身によってついに彼らのおさ・・・魔王と呼ばれる存在を封じる事に成功し人々は先人たちの偉大な犠牲と献身のもと長い安寧と平和を手にし謳歌する事ができました ですが今その平穏は破られようとしています...」

「長い時を経て魔王と彼の臣下たちは人柱になった神族や古来の勇者が死に絶えるのを待っていたのです...彼らは力を蓄え今この地に蘇りました。そしてつい先日その悪しき力を持って隣国ユニオン王国を滅ぼしました。このままでは彼らは再びこの世界に闇の力をもたらし暴力と混沌が支配する闇の時代が訪れるでしょう...」

「どうか異界の勇者の皆様・・・この世界の人々を救っていただけないでしょうか 」

女神ヴィネスにこの国の悲しい歴史を聞かされた私は義憤に駆られた!この地の人々の幸せを願い自らを犠牲にした神族と勇者たちの思いを踏みにじり再び人々を殺そうとしている魔王は絶対に許せない!

でも正直、他のクラスメイトが巻き込まれたのは心苦しい・・・この世界に召喚されて喜んでいる人達ばかりではないのだ...

真井歩さないあゆむ・・・・・・あまり話した事はないが彼はその典型だろう。私には元の世界の彼の人生は順風満帆そのものに見えた。

私があまり話した事のない彼を思い出すのには理由がある・・・

初めて彼を見たのは私が中学生を卒業する少し前・・・厳格な父の読んでいる地元の新聞に掲載された白黒写真だった。

“地元最多!16才少年!特許20以上?!”

自分と変わらないくらいの年の子が地元の知事と表彰状を手に並んでいる写真・・・普通なら見過ごしていただろう。だが、たまたま目に入り見入っていたら滅多に他人を褒めない父が私の視線に気づきこう言ったのだ「どうした?うん・・・ああ。この子か・・・まだ紗弓くらいの歳なのに大したものだ」と・・・その出来事が凄く印象に残ったとゆうのもあるが何故か暗い顔をした彼の顔が頭から離れなかった

中学を優秀な成績で卒業した地元でも有名な進学校に進んだ私はそこで写真ではない実物の彼にあった。彼の第一印象と言えば教室の隅で誰にも関わらないようにする孤独を好む人物という印象を持ったが彼はどこまでも異質だった・・・進学校は県内外の秀才が集まつ所だったが彼は特待生として入学し

常に成績優秀者である私や桐谷拓哉・・・坂下まりかを抑え常に一年間主席の座を欲しいままにした。

何より異質なのは彼の気配りの良さだった。彼はまるで人の心を読んでいるかのように立ち回るのだ。

コーヒーを飲みたいと思っていれば、いつの間にか彼はコーヒー缶を差し出し体育祭でレンチが欲しいバールが欲しいと思っていると彼はいつの間にかそれらを持って横に立っていた。そんな彼を気味悪がる者も少なくなかった...

地元でも有名な進学校で特待生として入学した彼はクラスどころか学校一の秀才だったが、勉学だけではなく実業家でもあった。17歳になった彼は30以上特許の数を持っていた彼は中堅のベンチャー企業に特許の何個かを売り払い高校生ながら総資産30億円ものお金を手にして新聞に載るまでになっていた。彼は紛れもなく人生の成功者だった・・・

だが、そんな彼の人生はこの世界に来て転落してしまった。召喚された彼はいきなり“歴代最弱の勇者”に成り下がってしまったのだ。普通の人なら錯乱するのも無理はないと思う。しかし、まさか錯乱した彼が城を飛び出すとは思わなかった・・・

錯乱した彼を取り抑える為にユニオン王国の兵士たちが頑張ってくれたようなのだが追い詰められた彼は、なんと私たちの召喚された城の近くを流れる大きな川に飛び込んで流されていってしまったらしい

わたしは彼の救出を申し出たがクラスメイトたちの多くは“彼が自分勝手に行動したのだから放っておけ”と言われてしまった。ユニオン王国側も彼は既に亡くなっている可能性が高い為、彼の救出に召喚した勇者を危険に晒すなどできないと難色を示され、どうにもならなかった・・・

(彼は恐らく、もう・・・)

私は汗を拭いたタオルを抱きしめながら彼の冥福を祈った・・・
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