クラス転移したけどリセマラされる前にバックレる

シューニャ

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第3話:アユムの考察

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ユニオン王国国王ジャックセロン一三世の話に耳を傾けるために玉座に全員が固唾を飲んで視線と耳を傾けた。それはクラスメートだけでなく周りの傷ついた兵士や領民も彼らも同様だ、この場にいる誰もが王の言葉に聞き入らざるを得ない、ただ事ではない重苦しい雰囲気とこの異様な状況を誰もが知りたいと思っていたからだ

だからこそ王を差し置いて横から口出しをする者など誰一人として存在しない

「この国は、いま終焉に向かっておる。魔王の闇の力によって人々は故郷を失い...人を失い...」

「まもなく、すべてを支配されてしまうだろう。」

「いま、世界を救えるのは異界より召喚された、そなた達にしかいない・・・」

「突然、召喚された41名の勇者たちよ!諸君らの中には、いま戸惑い・・・苦しみ!我々を恨む者もいよう。」「自分の国すら守れぬワシの事を笑う者もおるかもしれぬ!だが!」

「恥を忍んでお願いじゃ!今こそワシらと共に世界に渦巻く闇に立ち向かって欲しい!」

もちろんアユムは、ここで勇者らしく...

(ええええええーーー!!!!いや無理無理!!無理っす!!おれ殴られる専門で喧嘩すらしたことないから!!!)

顔面に冷や汗が吹き出す、他の人間はともかくとしてアユムには絶対に無理である。なにせ正規の訓練をつんだであろう、この国の軍隊すら勝てない敵と戦うとか自殺行為以外の何者でもない。

冷静に見る限りこの国の人々は決して無能ではない。なにせ兵士達は傷を負いながらも、ちゃんと領民をこの城まで逃し怪我をした兵士に包帯まで巻かれている・・・と言うことは少なくとも圧迫による止血の概念が生まれる程度には文明があると言うことだ。そんな割と、ちゃんとした文明を持つ彼らが負ける相手である、はっきり言って自分の死の未来しか見えない。冷静に考えるなら断るべきだ。

(だが、もし断ったら?)

どうなるかは見当もつかない・・・目の前や周囲の人々が凶悪とも限らない最悪見せしめに殺される可能性もある。少なくとも彼らはかなり追い詰められたからこそ、ここに自分たちの技術の粋を集めて得体のしれない技術で俺たちを召喚したのだ。断っても帰れる保証などない。現時点では「世界に召喚できたのだから元の世界にも帰れるだろう」という考えなど理論上の空論に過ぎない。

現に文明がそれなりに進んでいるであろうアユムたちの世界にも“理論的には可能でも現実的には不可能”と言うことは星の数ほどあるハズだ。例えば現実的に無理のない範囲で理論的には世界から武器をなくす事が可能だとしよう。

だが、考えても見よう、果たしてそれは本当に現実的だろうか?

世界中で武器を一斉に撤廃及び廃棄するような芸当が出来るだろうか?まず不可能だろう

仮に今の国連より強い権限と軍事力を持った世界的な治安組織にメチャクチャ凄い有能でカリスマを持った指導者がトップに就任しても世界中から武器を撤廃するなど出来ないだろう

まず武器を捨てたがらない専制国家や軍事政権はどうする?武器を捨てないから武器で殺すの?

さらに彼らは到底話し合いなど応じないだろう抑圧していた連中が武器を隠し持って殺しにきたら誰が止めるのか・・・恐らく別に武器を捨てるのを拒むのは彼らだけではない

民主主義国家だって武器を隠し持った隣国に攻め込まれら困るだろうし自分たちは隠し持っていなくても自国内の他の連中が持っているかもしなれない。予算を決める時ですらかなり揉めるのだから納得しない連中をどう説得するのかという課題も残る。

そもそも武器の定義をどう決めるのか?農機具は?ハンマーは?包丁やハサミにだって殺傷能力はあるじゃないか。あれもこれも武器になると言われたら車やガソリンだって所持できない筈だ。

だいぶ話は逸れたが、このように現実的に可能でも実行することが出来ない事だってあるのだ。

(まあ、そんな事はどうでもいい!)

なにより、いま大事なのはこの状況である・・・・・・・希望は大事だが今は現実的になるべきだろう。なにより断れそうな状況でもない・・・いずれにせよ自分から「戦いたくないので元の世界返して...」と提案するのは止めておこう。このまま会話のキャッチボールを続ければいずれ誰かが「元の世界に返せ」と口に出す筈だ。そう遠くないうちに・・・
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