居ない

貝人

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4時

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  朝四時になると決まって、ドゴッドゴッと何かを打ち付けるような音が隣りの部屋から聞こえてくる。

「何だよ、五月蝿いなあ」

  毎日、毎日決まって同じ時間にドゴッドゴッと音が響く。

「こう、毎日だと気になるよねえ・・・」

「注意するのも近隣トラブルになると嫌だしなあ」

「そうだよねえ、越して来てから隣の人見てないんだよなあ」



  「早く来なさい! 」

  階下から女性の声が聞こえて来る。何事かと様子を見て見るとぼろぼろの服を着て、妙齢の女性に引き摺られる女の子。

  俺の存在に気付くと、頭を下げ足早に去って行く親子。

「あれ虐待かなあ、違うといいんだがなあ」

  それから三日が過ぎ、又同じ服で女性に引き摺られる女の子、すれ違いざまに女の子を見ると腕には痣が出来ている。

「やっぱり虐待だよなあ・・・」

 痣を見た日から隣の部屋は嘘のように静かになる。

「そう言えば最近静かだよなあ」

「そうだねえ、子供は大丈夫なのかなあ」

そんな事を話していた日の夜中。

 ドゴッドゴッドゴッドゴッ

  いつもより早く、激しく大きな音が鳴り響く。

「ぎゃー!! 」

  大きな子供の悲鳴が響く。ギョッとして、飛び起きる。悲鳴の後、隣は又静かになる。

「不動産に連絡して流石に注意しに行くよ」

「そうして、何だか変だよ・・・・」

  朝10時不動産に連絡し、不動産の人と一緒に隣の部屋へ。何度呼び鈴を鳴らしても応答が無く、俺は不動産の人に後を任せ一度部屋に戻る。

「あの悲鳴が響いた時に行くべきだったかなあ」


  
  その日の夜、仕事から帰宅し家で寛いでいると、ドタバタと隣から物を動かす様な音が聞こえる。

  俺は今朝の悲鳴の事もあったので直ぐに隣に行く。丁度度ドアを開け女性が荷物を運び出して居るタイミングだった。

「あの、今朝の悲鳴は一体何だったんですか? 」

「・・・・・」

  女性さ無言でこちらを睨む。

「毎朝朝4時に何をしてたんですか? 」

「・・・・・・」

  女性はそのまま荷物を積む、ドアが開いていたので何げなく中を見てしまった。

  中は荒れ放題、ドアは外れ襖は破れていた。

  息を呑みその場に固まってしまう。

  女性は俺を押し退け鍵を閉めて車に乗って去って行った。

  子供の姿は見えなかった、あの床の染みは何だったんだろう。それは今でもわからない。

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