ヌンアルカディア

貝人

文字の大きさ
上 下
1 / 3

第1話 引きニートは動かない

しおりを挟む
   人類の科学の進歩は目覚ましく、宇宙や海底遺跡にも観光気分で行ける時代になった。そんな時代に産まれた少年、南原海斗は引きこもりゲーム漬けの毎日を送っていた。

「これもソロでクリアっと・・・最近面白いゲームないなあ、新作もパッとしないし」

   海斗が引きこもりになった理由は至極簡単で、ゲームがやりたいからだった。海斗の家は、良く言えば自主性を重んじる、悪く言えば放任主義、だから海斗が引きこもりになってゲームばかりしていても海斗の両親は何も言わなかった。

「ネットに何か転がってないかなあ・・・」

  海斗はスマホでネットを見るが、中々良いゲームが見つからなかった。

  だから海斗はゲーム版にある書き込みをした。

『魂が震えるような熱いゲーム募集』

「どうせクソスレ認定で、レス何か来ないだろうけどなあ」

  早々にスマホをベッドに投げ捨て、海斗は積んであるゲームを始めた。

「あの動画より速くクリアできるか挑戦しよっと。タイムトライアルだ! 」

  海斗が一人でタイムトライアルを楽しんでいる最中に掲示板は荒れていた

『魂より働け』

『ニート乙、あっ俺もニートだ』

『糞スレ乙』









  etcと荒れ放題になっていた。そんな中に一つの書き込みがされる。

 『君を歓迎しよう、ヌンアルカディアへhttp://@jamwtpgmjadm』

『アクセスエラーだって、釣り乙』

『歓迎されてない件ww』

『ヌンって力抜けるよなw』

『1、早くアクセスしろよ、404の世界が待ってるぞ』

『404の世界俺も行きてえ』

『絶対にアクセスしてはダメだ、戻れなくなる』

『何か知ってる風な奴きたー! 』

『1、以外はアクセスして404エラーくらってる件』

『押すなよ!  1押すなよ! 』

  海斗が書いた掲示板はヌンアルカディアと書いた書き込みへのレスで埋まっていた。

  タイムトライアルに飽きた海斗は掲示板に書き込みをしていたのを思い出す

「何じゃこりゃ、荒れに荒れてんじゃん。やっぱ碌な情報ないかなあ」

  スクロールして行くと一つの書き込みを起点に掲示板が盛り上がっているのに気付く。

「ヌンアルカディア?  何だこりゃヌンって何だかんだ気が抜けるなあ」

  海斗は貼られているURLをクリックしてみる。

  スマホの画面が一瞬暗くなり、文字が浮かび上がる

【Welcome to the new world】

「凝った演出だなあ、でもこれで終わりか? 」

  スマホから有り得ない程の光量が走り海斗は思わず目を閉じてしまう。

  海斗はこの日地球の何処にも居なくなってしまった。



「いたたた、此処は何処だ。俺家にてスマホいじってそれで・・・」

  あたりを見回すが見たことが無い、石造りの壁。ドアは無い。

「拉致か?  閉じ込められたにしてもドアも無いし・・・裸足だし」

  拉致にしては手際が良過ぎるし、こんなドアも無い場所に閉じ込める何て普通に考えたら不可能だ。

『はーいー!  魂が震えるようなゲームがしたいとの南原様の希望に応えてー私が招待しましたー! 』

  何処からかハイテンションな女の声が響く。

  煩いな人が考え事してるのに。

「魂云々ってあの掲示板の事か、確かヌンアルカディアだったか?   それをクリックしたからだって言うのか? 」

  余りにも非現実的だ。

『そうでーす!  ゲームをクリアしないと南原様は帰れません! 』

  ゲームクリアね、暇つぶしにはなるかな。

「ところであんたは何で俺の名前知ってるんだ? 」

『私はナビゲーターですから、ナビする相手の主義思考や趣味や家族関係まで把握してますよー! 』

  俺の個人情報はダダ漏れって訳か、訴えたら勝てるだろ。

『訴えても無駄ですからねー!  ゲームの説明したいんですけどー良いですかあ? 』

  思考まで読んできやがる、プライバシーは無いのかよ。

『ヌンアルカディアでは何が起きるかわかりません、死んじゃうかもしれません、クリアの為には五つの宝玉を集めなければならないんです! 』

  五つの宝玉ねえ、ありがちだな。

「ダンジョンクリアって言っても俺引きこもりだし、体力も無いぞ」

『知ってますよ!  引きニートのゲーヲタですもんね!  』

「おっおう・・・その通り何だけど他人から言われるときついな」

『だからこその私ですよ!  ナビゲートしますよ! 任せてください』

「いや裸足何だけど、裸足で歩きたくないんだけど」

『大丈夫ですよ!  きっと血が出るだけですよ! 』

「血が出るから嫌なんだけど、疲れるし。俺喧嘩とかした事無いし」

『文句ばかりじゃないですか! 』

「いや裸足で冒険ってあり得ないだろ。どんな糞ゲーでも靴は履いてるぞ。ってか装備は?  まさか装備も無いの? 」

『装備、装備うるさーい!  他所は他所、うちはうち! 』

「オカンみたいな事言われてもなあ」

『全くあんたはいつも文句ばかり言って、そんなんだから引きニートになるんだよ! 』

「ひっ引きニートは関係ないだろ!  」

『お母さんとお父さんはいつも、あんたのせいで泣いてるのよ! 』

「うっうるせえ!  お前は俺の親じゃないだろ!  姿も見せないし! 」

『姿?  私の姿見たいの?  どうしよっかなあ』

  うっうぜえ・・・・めちゃくちゃうぜえ。

『どうしても見たい?  ねえねえ』

  オカンの次はウザい彼女ノリかよ

「もう良い、俺はここから動かない。もう外に行かない」

『ちょっちょっちょっちょっと!!  何でそうなるのよ! 』

「靴も無い、装備も無い、チートも無い、無い無い尽くしで居るのは煩いだけで使えないポンコツナビ。どうしろってんだよ! 」

『ひっ酷い!  あんたが外に居たら靴くらい履いてたでしょ!  体力無いのも私のせいじゃない! 』

「うっうるせえ!  引きニート舐めんな!  絶対に動かないからな! 」

  不貞寝してやる。実際問題寝るしかやる事ないしな。

『寝ないでよー、動いてよー』

  ポンコツナビがめちゃくちゃ煩い。

『お願いだから~ちゅーしてあげるからー! 』

  ビッチナビだったか、ビッチは死ね

『ファーストキスだよ?  いらないの?  ねえねえー』

「何でそんなに動かしたいんだよ。別に動かないで勝手に餓死する分には構わないだろ? 」

『餓死とか嫌だよ!  私は貴方が動かないとここ以外の景色が見れないの!  貴方が死んだら死体とずっと一緒に居なきゃいけないんだよ⁉︎  そんなの嫌だよ! 』

「嫌ならチート寄越せ、そしたら無双してやるから。お前も動くのみたいんだろ? 」

『無理! 』

「じゃあ交渉決裂だな、そもそも軍人とか警察とか武道家呼べよ。引きニートじゃなくてさ」

『そんな事言われても・・・ふえええん! 』

  ポンコツナビが大声で泣き出しやがった、めっめんどくせええ。
しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

異世界転生はどん底人生の始まり~一時停止とステータス強奪で快適な人生を掴み取る!

夢・風魔
ファンタジー
若くして死んだ男は、異世界に転生した。恵まれた環境とは程遠い、ダンジョンの上層部に作られた居住区画で孤児として暮らしていた。 ある日、ダンジョンモンスターが暴走するスタンピードが発生し、彼──リヴァは死の縁に立たされていた。 そこで前世の記憶を思い出し、同時に転生特典のスキルに目覚める。 視界に映る者全ての動きを停止させる『一時停止』。任意のステータスを一日に1だけ奪い取れる『ステータス強奪』。 二つのスキルを駆使し、リヴァは地上での暮らしを夢見て今日もダンジョンへと潜る。 *カクヨムでも先行更新しております。

引退した元生産職のトッププレイヤーが、また生産を始めるようです

こばやん2号
ファンタジー
とあるVRMMOで生産職最高峰の称号であるグランドマスター【神匠】を手に入れた七五三俊介(なごみしゅんすけ)は、やることはすべてやりつくしたと満足しそのまま引退する。 大学を卒業後、内定をもらっている会社から呼び出しがあり行ってみると「我が社で配信予定のVRMMOを、プレイヤー兼チェック係としてプレイしてくれないか?」と言われた。 生産職のトップまで上り詰めた男が、再び生産職でトップを目指す! 更新頻度は不定期です。 思いついた内容を書き殴っているだけの垂れ流しですのでその点をご理解ご了承いただければ幸いです。 ※この小説は【アルファポリス】及び【小説家になろう】の同時配信で投稿しています。

凡人がおまけ召喚されてしまった件

根鳥 泰造
ファンタジー
 勇者召喚に巻き込まれて、異世界にきてしまった祐介。最初は勇者の様に大切に扱われていたが、ごく普通の才能しかないので、冷遇されるようになり、ついには王宮から追い出される。  仕方なく冒険者登録することにしたが、この世界では希少なヒーラー適正を持っていた。一年掛けて治癒魔法を習得し、治癒剣士となると、引く手あまたに。しかも、彼は『強欲』という大罪スキルを持っていて、倒した敵のスキルを自分のものにできるのだ。  それらのお蔭で、才能は凡人でも、数多のスキルで能力を補い、熟練度は飛びぬけ、高難度クエストも熟せる有名冒険者となる。そして、裏では気配消去や不可視化スキルを活かして、暗殺という裏の仕事も始めた。  異世界に来て八年後、その暗殺依頼で、召喚勇者の暗殺を受けたのだが、それは祐介を捕まえるための罠だった。祐介が暗殺者になっていると知った勇者が、改心させよう企てたもので、その後は勇者一行に加わり、魔王討伐の旅に同行することに。  最初は脅され渋々同行していた祐介も、勇者や仲間の思いをしり、どんどん勇者が好きになり、勇者から告白までされる。  だが、魔王を討伐を成し遂げるも、魔王戦で勇者は祐介を庇い、障害者になる。  祐介は、勇者の嘘で、病院を作り、医師の道を歩みだすのだった。

オタクおばさん転生する

ゆるりこ
ファンタジー
マンガとゲームと小説を、ゆるーく愛するおばさんがいぬの散歩中に異世界召喚に巻き込まれて転生した。 天使(見習い)さんにいろいろいただいて犬と共に森の中でのんびり暮そうと思っていたけど、いただいたものが思ったより強大な力だったためいろいろ予定が狂ってしまい、勇者さん達を回収しつつ奔走するお話になりそうです。 投稿ものんびりです。(なろうでも投稿しています)

クズ聖王家から逃れて、自由に生きるぞ!

梨香
ファンタジー
 貧しい修道女見習いのサーシャは、実は聖王(クズ)の王女だったみたい。私は、何故かサーシャの中で眠っていたんだけど、クズの兄王子に犯されそうになったサーシャは半分凍った湖に転落して、天に登っちゃった。  凍える湖で覚醒した私は、そこでこの世界の|女神様《クレマンティア》に頼み事をされる。  つまり、サーシャ《聖女》の子孫を残して欲しいそうだ。冗談じゃないよ! 腹が立つけど、このままでは隣国の色欲王に嫁がされてしまう。こうなったら、何かチートな能力を貰って、クズ聖王家から逃れて、自由に生きよう! 子どもは……後々考えたら良いよね?

転生者は力を隠して荷役をしていたが、勇者パーティーに裏切られて生贄にされる。

克全
ファンタジー
第6回カクヨムWeb小説コンテスト中間選考通過作 「カクヨム」と「小説家になろう」にも投稿しています。 2020年11月4日「カクヨム」異世界ファンタジー部門日間ランキング51位 2020年11月4日「カクヨム」異世界ファンタジー部門週間ランキング52位

45歳のおっさん、異世界召喚に巻き込まれる

よっしぃ
ファンタジー
2月26日から29日現在まで4日間、アルファポリスのファンタジー部門1位達成!感謝です! 小説家になろうでも10位獲得しました! そして、カクヨムでもランクイン中です! ●●●●●●●●●●●●●●●●●●●● スキルを強奪する為に異世界召喚を実行した欲望まみれの権力者から逃げるおっさん。 いつものように電車通勤をしていたわけだが、気が付けばまさかの異世界召喚に巻き込まれる。 欲望者から逃げ切って反撃をするか、隠れて地味に暮らすか・・・・ ●●●●●●●●●●●●●●● 小説家になろうで執筆中の作品です。 アルファポリス、、カクヨムでも公開中です。 現在見直し作業中です。 変換ミス、打ちミス等が多い作品です。申し訳ありません。

チートがちと強すぎるが、異世界を満喫できればそれでいい

616號
ファンタジー
 不慮の事故に遭い異世界に転移した主人公アキトは、強さや魔法を思い通り設定できるチートを手に入れた。ダンジョンや迷宮などが数多く存在し、それに加えて異世界からの侵略も日常的にある世界でチートすぎる魔法を次々と編み出して、自由にそして気ままに生きていく冒険物語。

処理中です...