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第一章
31−2 食事
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「今日、ミルクが手に入ったんで、新しい料理をしようかなって。結構お待たせしちゃいますけど」
「嬉しいよ。フェルナンは誘ったのに、僕は誘われないと思っていたからね」
「オレードさんにもとってもお世話になってますから、少しでもお口に合えばいいんですけど」
玲那は包丁で薄く切った野菜を茹でて、マッシュにする。小麦を混ぜて、じゃがいももどきのお団子、ニョッキを作った。にんじんもどきも同様に、ニョッキにする。玉ねぎもどき、そして、ラッカの肉を炒めた。そのラッカの肉は、どこで手に入れたとか聞かれるだろうか。聞かれたら、たまたま倒したと誤魔化せるだろうか。念の為、小麦粉で叩いて焼いている。こんなので誤魔化せないか。
炒めた肉とニョッキたちを鍋に入れ、沸騰させたお湯を入れ、ぐつぐつ煮込む。その間に、サラダを作る。
サラダは、その辺の生えた草。でも大丈夫。チーズが手に入ったのだから。色々な葉っぱやにんじんもどき、薄切りした玉ねぎもどき、薄切りした大根もどきのカラックを、塩で軽くしんなりさせる。ついでに茹でたラッカの肉を薄く切って、チーズを小さく千切り散りばめる。そこに、生姜、ラッカの脂身を油替わりに使い、塩、胡椒のドレッシングを掛けて混ぜて、簡単サラダのできあがりだ。
パンはないので、小麦粉を水で溶き、薄焼きを作り、完全に焼ける前に、茹でたラッカの薄切りの肉とチーズ、胡椒を軽くかけて、包み焼きにする。
材料はほとんど同じ。だが、微妙に味は違うはず。
最後に小麦粉を溶いて、油を混ぜ、ブールマニエもどきを作る。それをお湯で溶き、とろみを出したら、ニョッキとラッカの肉の鍋に入れ、ミルクを入れて温め混ぜて、塩、胡椒で味を整え。シチューの完成だ。
味見をしてみれば、うん、悪くない。
「完成ですー!」
「手際、すごくいいね。なにやってるか、よくわからなかったんだけど」
「ありがとうございます。向こうの部屋に移動しましょ。あ、しまった。すぐ片付けます!」
リビングの机の上は、コルセット製作の作業で、樹皮のゴミや糸屑などが散乱している。針などは葉っぱに差し込んであるため、すぐに片付けられる。作り途中のコルセットは棚の上に移動した。そこには手織り木も並び、置く場所も混んでいる。
作業棚が必要だな。それは後で考えるとして、机の上をきれいにし、料理を運んだ。
「お座りくださいなー」
椅子は二脚。だがそんなこと心配ご無用。この家には木箱がやたらある。野菜入れの木箱はキッチンで物置として使っているので、それを運んで椅子にした。オレードが椅子からどこうとしたが、招いたお客様を木箱などに座らせられない。
「どうぞー。お口に合えばいいんですけど。いただきまーす」
先に食べた方が良いと思い、玲那はサラダから口にした。お皿がみんなバラバラだが、数があって良かった。今度はお皿を新調しよう。きっと自分で削れる。やすりをゲットすれば問題ない。もしくは、木を削る道具を作ってもらおうか。
取っ手を回せば、木が掘れる道具を作るのはどうだろう。ウスなども作れそうだ。これもまたそのうち。
軽くサラダを食べて、薄焼きに手を出そうとした時、オレードが先にシチューを口にした。フェルナンは前と同じで、玲那がすべてを口に入れるのを待っていたのに。
「ん!」
「ん!? 大丈夫ですか!?」
「これ、うまいね! 初めて食べた料理だよ!」
いきなり、ん! なんて言われると、一瞬心配になってしまう。オレードは、シチューを食べたことはないようで、すぐに二口目を口に入れた。にんじんもどきニョッキがスプーンの上にあったが、それを食べたであろう。不思議な食感がすると言いつつ、飲み込んで、さらに次の三口目を食べる。
どうやら気に入ってもらえたようだ。フェルナンは玲那がすでに口に入れた薄焼きを、丁寧に切って口元に運んでいる。無表情なので、味がどうかはわからない。前回はすべて食べてくれたので、今回も食べてくれればいいのだが。
「あ、飲み物出すの忘れちゃった。お湯沸かしとこ」
ほうじ茶もどきを忘れていた。お湯を沸かしておこう。木の実は砕いてあるものがあるので、お湯を注げばすぐにできる。
「この間の、不思議な味の飲み物か?」
「そーです。ほうじ茶もどき。もっと濃い方がいいですかね。そっちの方が食後に合うかな。ミルクがあるから、食後出しますね」
砂糖はないが、ミルクがある。コーヒーもどきが苦くても、ミルクを入れてもらえばいいだろう。
「玲那ちゃん、これはなんなの?」
「サラダですよ。お野菜嫌いですか?」
「お野菜は、あんまり食べないかな」
「あらまあ。バランスよく食べませんと。栄養、栄養」
「ばらん?」
「お野菜も、体の資本ですからね! 葉っぱたちは脂っこいものを和らげてくれる、消火促進と、血液サラサラ血行促進。根菜はなんでもお体にいいですから。ビタミン、えーと、栄養素がたっぷりですよ。お肉ばっか食べてると、病気になっちゃいますからね」
バランスが通じないようで、言い換える。葉はハーブもどきで、栄養がある。植物図鑑で確認済みだ。名前は忘れたが、ちゃんと食べられる葉だ。庭に移し替えた。大根もどきとにんじんもどきは説明はいらないだろう。
しかし、オレードはフェルナンの顔を見遣った。フェルナンは無表情のまま、その視線を気にした風はなかったが、オレードは何か言いた気だ。
「無理して食べなくても平気ですよ。残してくださいな」
「そうじゃなくてね。野菜に、栄養? があるの?」
なんだと? 言いそうになり、口を閉じておく。使徒が言っていたではないか。彼らは治療士によって治療を受けられる。魔法という、奇跡の存在が当たり前の生活をしている人々からすれば、体を労るということについて考えることはしないのではないだろうか。草木に肥料が必要だということも、考え方の違いで片付けられる問題なのだし。
栄養の意味はわかっているだろうか。それはわかっていると信じたい。
「ちなみに、お肉には栄養があるって感じです?」
「肉はよく食べるよ。ワインもね。ワインが体にいいからと、よく口にする」
体にいいと、どういう意味で言っているのだろう。ワインがあることは理解したが。
「嬉しいよ。フェルナンは誘ったのに、僕は誘われないと思っていたからね」
「オレードさんにもとってもお世話になってますから、少しでもお口に合えばいいんですけど」
玲那は包丁で薄く切った野菜を茹でて、マッシュにする。小麦を混ぜて、じゃがいももどきのお団子、ニョッキを作った。にんじんもどきも同様に、ニョッキにする。玉ねぎもどき、そして、ラッカの肉を炒めた。そのラッカの肉は、どこで手に入れたとか聞かれるだろうか。聞かれたら、たまたま倒したと誤魔化せるだろうか。念の為、小麦粉で叩いて焼いている。こんなので誤魔化せないか。
炒めた肉とニョッキたちを鍋に入れ、沸騰させたお湯を入れ、ぐつぐつ煮込む。その間に、サラダを作る。
サラダは、その辺の生えた草。でも大丈夫。チーズが手に入ったのだから。色々な葉っぱやにんじんもどき、薄切りした玉ねぎもどき、薄切りした大根もどきのカラックを、塩で軽くしんなりさせる。ついでに茹でたラッカの肉を薄く切って、チーズを小さく千切り散りばめる。そこに、生姜、ラッカの脂身を油替わりに使い、塩、胡椒のドレッシングを掛けて混ぜて、簡単サラダのできあがりだ。
パンはないので、小麦粉を水で溶き、薄焼きを作り、完全に焼ける前に、茹でたラッカの薄切りの肉とチーズ、胡椒を軽くかけて、包み焼きにする。
材料はほとんど同じ。だが、微妙に味は違うはず。
最後に小麦粉を溶いて、油を混ぜ、ブールマニエもどきを作る。それをお湯で溶き、とろみを出したら、ニョッキとラッカの肉の鍋に入れ、ミルクを入れて温め混ぜて、塩、胡椒で味を整え。シチューの完成だ。
味見をしてみれば、うん、悪くない。
「完成ですー!」
「手際、すごくいいね。なにやってるか、よくわからなかったんだけど」
「ありがとうございます。向こうの部屋に移動しましょ。あ、しまった。すぐ片付けます!」
リビングの机の上は、コルセット製作の作業で、樹皮のゴミや糸屑などが散乱している。針などは葉っぱに差し込んであるため、すぐに片付けられる。作り途中のコルセットは棚の上に移動した。そこには手織り木も並び、置く場所も混んでいる。
作業棚が必要だな。それは後で考えるとして、机の上をきれいにし、料理を運んだ。
「お座りくださいなー」
椅子は二脚。だがそんなこと心配ご無用。この家には木箱がやたらある。野菜入れの木箱はキッチンで物置として使っているので、それを運んで椅子にした。オレードが椅子からどこうとしたが、招いたお客様を木箱などに座らせられない。
「どうぞー。お口に合えばいいんですけど。いただきまーす」
先に食べた方が良いと思い、玲那はサラダから口にした。お皿がみんなバラバラだが、数があって良かった。今度はお皿を新調しよう。きっと自分で削れる。やすりをゲットすれば問題ない。もしくは、木を削る道具を作ってもらおうか。
取っ手を回せば、木が掘れる道具を作るのはどうだろう。ウスなども作れそうだ。これもまたそのうち。
軽くサラダを食べて、薄焼きに手を出そうとした時、オレードが先にシチューを口にした。フェルナンは前と同じで、玲那がすべてを口に入れるのを待っていたのに。
「ん!」
「ん!? 大丈夫ですか!?」
「これ、うまいね! 初めて食べた料理だよ!」
いきなり、ん! なんて言われると、一瞬心配になってしまう。オレードは、シチューを食べたことはないようで、すぐに二口目を口に入れた。にんじんもどきニョッキがスプーンの上にあったが、それを食べたであろう。不思議な食感がすると言いつつ、飲み込んで、さらに次の三口目を食べる。
どうやら気に入ってもらえたようだ。フェルナンは玲那がすでに口に入れた薄焼きを、丁寧に切って口元に運んでいる。無表情なので、味がどうかはわからない。前回はすべて食べてくれたので、今回も食べてくれればいいのだが。
「あ、飲み物出すの忘れちゃった。お湯沸かしとこ」
ほうじ茶もどきを忘れていた。お湯を沸かしておこう。木の実は砕いてあるものがあるので、お湯を注げばすぐにできる。
「この間の、不思議な味の飲み物か?」
「そーです。ほうじ茶もどき。もっと濃い方がいいですかね。そっちの方が食後に合うかな。ミルクがあるから、食後出しますね」
砂糖はないが、ミルクがある。コーヒーもどきが苦くても、ミルクを入れてもらえばいいだろう。
「玲那ちゃん、これはなんなの?」
「サラダですよ。お野菜嫌いですか?」
「お野菜は、あんまり食べないかな」
「あらまあ。バランスよく食べませんと。栄養、栄養」
「ばらん?」
「お野菜も、体の資本ですからね! 葉っぱたちは脂っこいものを和らげてくれる、消火促進と、血液サラサラ血行促進。根菜はなんでもお体にいいですから。ビタミン、えーと、栄養素がたっぷりですよ。お肉ばっか食べてると、病気になっちゃいますからね」
バランスが通じないようで、言い換える。葉はハーブもどきで、栄養がある。植物図鑑で確認済みだ。名前は忘れたが、ちゃんと食べられる葉だ。庭に移し替えた。大根もどきとにんじんもどきは説明はいらないだろう。
しかし、オレードはフェルナンの顔を見遣った。フェルナンは無表情のまま、その視線を気にした風はなかったが、オレードは何か言いた気だ。
「無理して食べなくても平気ですよ。残してくださいな」
「そうじゃなくてね。野菜に、栄養? があるの?」
なんだと? 言いそうになり、口を閉じておく。使徒が言っていたではないか。彼らは治療士によって治療を受けられる。魔法という、奇跡の存在が当たり前の生活をしている人々からすれば、体を労るということについて考えることはしないのではないだろうか。草木に肥料が必要だということも、考え方の違いで片付けられる問題なのだし。
栄養の意味はわかっているだろうか。それはわかっていると信じたい。
「ちなみに、お肉には栄養があるって感じです?」
「肉はよく食べるよ。ワインもね。ワインが体にいいからと、よく口にする」
体にいいと、どういう意味で言っているのだろう。ワインがあることは理解したが。
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