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会合
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笑顔で脅してくるって、どうかと思うのよ。
ルヴィアーレはその後適当な話をしながら庭園を歩み、適度な時間を過ごして部屋に戻っていった。去り際笑顔で、精霊に願い婚姻を早く認めていただきたいものです。とか言うから、イアーナとムイロエが同時に声を上げそうなひどい顔したの、分かってるのかな。
『あれは傑作だったわね』
ムイロエは、はあ? って言っちゃったよね。イアーナはぎりぎり口パクだったけれど。
祈りの件は了解したと言いたいのだろうが、聴衆の反応が痛々しい。あの反応を見てイアーナを再び説教する気だろうか。ルヴィアーレのにこにこ笑顔は気に食わないことがあった時の顔である。
話を流している時は微笑みが柔らかいのだ。きっと笑顔で感情抑えているんだろうな。
今まさに、適度な会話に対して隣で穏やかに笑んでいる。半分寝ているんじゃなかろうか。
「本当に美男美女で、羨ましい限りですな。王も鼻が高いでしょう」
「ルヴィアーレ様の噂はかねがね。ラータニアでは素晴らしく優秀で王の補佐をされていたとか」
「フィルリーネ様にお似合いの聡明な方だ。婚姻が待ち遠しいですな」
そんな会話、ルヴィアーレがグングナルドにやって来た時にも同じこと聞いた気がする。
相変わらずひねりのない褒め言葉で会話が続く。貴族たちに会うと疲労するのは、この一つ一つの話に喜んで踏ん反り返らなければならない自分である。
「精霊の祝いならばすぐにいただけますわ。許しが出次第、婚姻に参りますのよ」
おほほ。と高笑いしておいて、皆が一緒に笑ってくれるのを待つ。みなさん、もう顔が凝り固まっていらっしゃるみたいなので、ごますり顔が戻らない。目尻を下げて口端を大きく上げている顔は、皆同じだった。
「フィルリーネ様はマリオンネの女王様よりお呼びがかかったと伺っております。マリオンネの女王様は婚約式が遅れたことをお詫びされたとか」
「ええ、そうですのよ。婚約式が遅れたことを謝罪されたいと仰られて。わたくし、お詫びとは言えマリオンネに婚姻前に訪れるとは思いもしませんでしたわ」
「そこはグングナルドだからと言うことでしょうな。フィルリーネ様にお詫びせねば、女王様も身体が休まらぬのでしょう」
「まあ、恐れ多いわ」
「無論ルヴィアーレ様がフィルリーネ様に相応しい相手だと、女王様はお考えなのでしょう」
マリオンネの女王からお呼びが掛かったのはカサダリアの者たちにも耳に入っている。それについてさもグングナルドの人間だからと持て囃すのだから、頭が痛い。貴族たちはグラスを持ちながらニヤニヤと笑ってばかりだ。
今夜夕食に呼ばれたのは王派の者たちばかりだった。ガルネーゼは貴族たちに頼まれてこのような会を催したのだろう。王が何故ルヴィアーレを婿にしたのか理由は知らないのか、ルヴィアーレを持ち上げようとする会話が多かった。今この機会にルヴィアーレの懐へ入らんとしているのが見え見えである。
そんな会話に慣れたルヴィアーレは微笑んで曖昧に答えるだけにしていた。肯定も否定もしないため貴族たちには肩透かしになるだろうが、別段印象が悪いわけではない。
大人しめな男だと勘違いする者も多いだろう。御し易いと思わせればルヴィアーレの勝ちだ。下手に出てくる者たちが今後どんな手で近寄ってくるのか、見定めるのが楽になる。
まあそんなことしなくてもみんな役に立たないよ。どいつもこいつも強きにおもねる者ばかりだからね。
広間には多くの貴族たちが集まっていた。各々食事をし終えてグラスを持ったまま歩いている。こちらを値踏みする者もいれば、早く挨拶をして顔を覚えてもらおうと言う者もいた。
その中で数少ない反王派がいたが、挨拶程度で近寄ってはこない。ガルネーゼが止めているのだろう。ルヴィアーレについてはガルネーゼに伝えてあるので、変に絡ませて王に睨まれるのを防いでいるのだ。何せここにはベルロッヒが警備の名目で目を光らせている。
「フィルリーネ様、マリオンネの女王様からはどのようなお言葉があったのですか?」
「婚姻のお詫びについてでしたわ。お身体が万全ではないのに、謝罪をいただいて、わたくし恐れ多くて震えそうでしたの」
「まあ。そのようなお話、歴史の中であるのかしら。フィルリーネ様の婚約が遅れたのは残念ですが、女王様の謝罪をいただけたのならば、これ以上の栄誉はないでしょう」
「まったくですわ。何と言う栄誉なのかしら」
普段話さない奥様方に囲まれると、ルヴィアーレは男性陣に囲まれ始めた。これは長くなるよ。女性陣は勿論女王の話がしたいのでなくて、ルヴィアーレの話がしたいのである。ルヴィアーレが少し離れたと思ったら、始まった、ルヴィアーレ質問時間。
「ルヴィアーレ様とは仲睦まじいとか。普段はどのような話をされていらっしゃるのですか?」
「ルヴィアーレ様は真面目な方なのよ。魔導院で読まれているご本の話や、ご興味のある音楽の話をされるの」
いや、してないな。してないよね。いつも何話してるっけ。遅いとか、どこ行ってたとかしか話してない気がする。
「優秀で芸事に秀でていらっしゃると言う話は有名ですわ。ルヴィアーレ様はどのような曲がお好みなのでしょうか」
えー、曲―? 知らないなあ。しっとりじゃないのかな。しっとりねっとりした感じ。
「緩やかで心に響く曲がお好きなようよ。フリューノートの音色はうっとりしてしまいますわ」
いやー、寒気するよね。魔導乗せるから背中凍りそうになるんだよ。上手いけど洗脳されそうであんまり聞きたくないなあ。
「剣の腕もあられると伺いましたわ。狩猟大会では活躍されたとか。ぜひ拝見したかったですわ」
「ルヴィアーレ様は武道にも長けていてよ。剣の腕もあり魔導も高いのですもの。ラータニアでは王騎士団と行動を共にされるほどなのだから」
「まあ、何でもできる殿方なのですね」
「我が夫となるのですもの。当然ですわ」
「そうですわ。フィルリーネ様の婿となられるのですから」
「おほほほ」
「おほほ」
「おほーっ。疲れたー!!」
べったりと机になだれるように貼り付いて、フィルリーネは大きなため息を吐き出した。
「楽しそうに話していたように見えたが?」
「何が。どこが!?」
貼り付いた机から顔を上げて、フィルリーネは声の主に視線を向けた。目つきの悪い四角い顔の足が無駄に長いガルネーゼは、グラスを片手に酒瓶を棚から出すと赤い酒をグラスに注ぐ。さっきまで飲んでいたのにまだ飲む気だ。
ガルネーゼは手酌の酒を口に含んだ。個人の部屋とは言え、棚の中が酒だらけなのは如何と思う。
ルヴィアーレはその後適当な話をしながら庭園を歩み、適度な時間を過ごして部屋に戻っていった。去り際笑顔で、精霊に願い婚姻を早く認めていただきたいものです。とか言うから、イアーナとムイロエが同時に声を上げそうなひどい顔したの、分かってるのかな。
『あれは傑作だったわね』
ムイロエは、はあ? って言っちゃったよね。イアーナはぎりぎり口パクだったけれど。
祈りの件は了解したと言いたいのだろうが、聴衆の反応が痛々しい。あの反応を見てイアーナを再び説教する気だろうか。ルヴィアーレのにこにこ笑顔は気に食わないことがあった時の顔である。
話を流している時は微笑みが柔らかいのだ。きっと笑顔で感情抑えているんだろうな。
今まさに、適度な会話に対して隣で穏やかに笑んでいる。半分寝ているんじゃなかろうか。
「本当に美男美女で、羨ましい限りですな。王も鼻が高いでしょう」
「ルヴィアーレ様の噂はかねがね。ラータニアでは素晴らしく優秀で王の補佐をされていたとか」
「フィルリーネ様にお似合いの聡明な方だ。婚姻が待ち遠しいですな」
そんな会話、ルヴィアーレがグングナルドにやって来た時にも同じこと聞いた気がする。
相変わらずひねりのない褒め言葉で会話が続く。貴族たちに会うと疲労するのは、この一つ一つの話に喜んで踏ん反り返らなければならない自分である。
「精霊の祝いならばすぐにいただけますわ。許しが出次第、婚姻に参りますのよ」
おほほ。と高笑いしておいて、皆が一緒に笑ってくれるのを待つ。みなさん、もう顔が凝り固まっていらっしゃるみたいなので、ごますり顔が戻らない。目尻を下げて口端を大きく上げている顔は、皆同じだった。
「フィルリーネ様はマリオンネの女王様よりお呼びがかかったと伺っております。マリオンネの女王様は婚約式が遅れたことをお詫びされたとか」
「ええ、そうですのよ。婚約式が遅れたことを謝罪されたいと仰られて。わたくし、お詫びとは言えマリオンネに婚姻前に訪れるとは思いもしませんでしたわ」
「そこはグングナルドだからと言うことでしょうな。フィルリーネ様にお詫びせねば、女王様も身体が休まらぬのでしょう」
「まあ、恐れ多いわ」
「無論ルヴィアーレ様がフィルリーネ様に相応しい相手だと、女王様はお考えなのでしょう」
マリオンネの女王からお呼びが掛かったのはカサダリアの者たちにも耳に入っている。それについてさもグングナルドの人間だからと持て囃すのだから、頭が痛い。貴族たちはグラスを持ちながらニヤニヤと笑ってばかりだ。
今夜夕食に呼ばれたのは王派の者たちばかりだった。ガルネーゼは貴族たちに頼まれてこのような会を催したのだろう。王が何故ルヴィアーレを婿にしたのか理由は知らないのか、ルヴィアーレを持ち上げようとする会話が多かった。今この機会にルヴィアーレの懐へ入らんとしているのが見え見えである。
そんな会話に慣れたルヴィアーレは微笑んで曖昧に答えるだけにしていた。肯定も否定もしないため貴族たちには肩透かしになるだろうが、別段印象が悪いわけではない。
大人しめな男だと勘違いする者も多いだろう。御し易いと思わせればルヴィアーレの勝ちだ。下手に出てくる者たちが今後どんな手で近寄ってくるのか、見定めるのが楽になる。
まあそんなことしなくてもみんな役に立たないよ。どいつもこいつも強きにおもねる者ばかりだからね。
広間には多くの貴族たちが集まっていた。各々食事をし終えてグラスを持ったまま歩いている。こちらを値踏みする者もいれば、早く挨拶をして顔を覚えてもらおうと言う者もいた。
その中で数少ない反王派がいたが、挨拶程度で近寄ってはこない。ガルネーゼが止めているのだろう。ルヴィアーレについてはガルネーゼに伝えてあるので、変に絡ませて王に睨まれるのを防いでいるのだ。何せここにはベルロッヒが警備の名目で目を光らせている。
「フィルリーネ様、マリオンネの女王様からはどのようなお言葉があったのですか?」
「婚姻のお詫びについてでしたわ。お身体が万全ではないのに、謝罪をいただいて、わたくし恐れ多くて震えそうでしたの」
「まあ。そのようなお話、歴史の中であるのかしら。フィルリーネ様の婚約が遅れたのは残念ですが、女王様の謝罪をいただけたのならば、これ以上の栄誉はないでしょう」
「まったくですわ。何と言う栄誉なのかしら」
普段話さない奥様方に囲まれると、ルヴィアーレは男性陣に囲まれ始めた。これは長くなるよ。女性陣は勿論女王の話がしたいのでなくて、ルヴィアーレの話がしたいのである。ルヴィアーレが少し離れたと思ったら、始まった、ルヴィアーレ質問時間。
「ルヴィアーレ様とは仲睦まじいとか。普段はどのような話をされていらっしゃるのですか?」
「ルヴィアーレ様は真面目な方なのよ。魔導院で読まれているご本の話や、ご興味のある音楽の話をされるの」
いや、してないな。してないよね。いつも何話してるっけ。遅いとか、どこ行ってたとかしか話してない気がする。
「優秀で芸事に秀でていらっしゃると言う話は有名ですわ。ルヴィアーレ様はどのような曲がお好みなのでしょうか」
えー、曲―? 知らないなあ。しっとりじゃないのかな。しっとりねっとりした感じ。
「緩やかで心に響く曲がお好きなようよ。フリューノートの音色はうっとりしてしまいますわ」
いやー、寒気するよね。魔導乗せるから背中凍りそうになるんだよ。上手いけど洗脳されそうであんまり聞きたくないなあ。
「剣の腕もあられると伺いましたわ。狩猟大会では活躍されたとか。ぜひ拝見したかったですわ」
「ルヴィアーレ様は武道にも長けていてよ。剣の腕もあり魔導も高いのですもの。ラータニアでは王騎士団と行動を共にされるほどなのだから」
「まあ、何でもできる殿方なのですね」
「我が夫となるのですもの。当然ですわ」
「そうですわ。フィルリーネ様の婿となられるのですから」
「おほほほ」
「おほほ」
「おほーっ。疲れたー!!」
べったりと机になだれるように貼り付いて、フィルリーネは大きなため息を吐き出した。
「楽しそうに話していたように見えたが?」
「何が。どこが!?」
貼り付いた机から顔を上げて、フィルリーネは声の主に視線を向けた。目つきの悪い四角い顔の足が無駄に長いガルネーゼは、グラスを片手に酒瓶を棚から出すと赤い酒をグラスに注ぐ。さっきまで飲んでいたのにまだ飲む気だ。
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