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43① ー今後ー
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「————フィオナ!!」
聞こえた声に、ハッと気付くと、フィオナは一気に肺の中へ息を吸い込んだ。途端、吸い込みすぎたかのように、ひどくむせて、胸を抑える。
「フィオナ! 大丈夫ですか!? フィオナ!!」
「……クラウディオ?」
息苦しさがましになり、フィオナは息を整えながら視線をさまよわせた。クラウディオや知らない騎士たちがいる。
「良かった。目が、覚めないかと……っ」
クラウディオが涙を流している。手は握られたままで、前に気を失った時のように、目の周りを赤くしながら、フィオナを抱きしめた。
「どうして、名前……」
クラウディオはフィオナの名を呼んだ。惚けた頭の中で、フィオナは抱きしめられたまま自分の手を動かす。どう見てもセレスティーヌの長く美しい指で、フィオナの手ではない。
なのに、クラウディオがフィオナと呼ぶ。
「聞いていたんです。あなたの話を」
それを聞いただけで理解した。リディとの話を聞かれていたことを。
フィオナは涙が込み上げてきた。フィオナがクラウディオを騙していたことは、ずっと前から気付かれていたのだ。
「ごめんなさい。セレスティーヌは……、連れ戻せなくて。ごめんなさい……」
「あなたのせいじゃない」
クラウディオがぎゅっと抱きしめる腕に力を入れる。
その暖かさにボロボロと涙が溢れてきた。覚悟を決めてセレスティーヌの元へ行ったのに、セレスティーヌを連れ戻せなかった。
「う、げほ。ごほっ!」
エルネストが苦しそうにむせた。意識を取り戻したという騎士たちの声に、クラウディオが鋭く睨みつける。
「連れていけ!」
まだどこにいるのか分かっていないのか、エルネストは手足を縛られたまま無理やり立たせられて、ふらついたまま引きずられるように歩いた。
エルネストの体を、ヴァルラムにと思っていた。
体があれば、ヴァルラムはなんでもできるだろう。人の体など欲しくないだろうが、ずっとそこにいるのならば、実体があった方が良いのではと。
けれど、彼は前に言っていた。
『男の体だけれど、君が殺人犯になる必要はないし、その男はセレスティーヌを殺した罰を受ける必要があるよ』
フィオナもひどい提案をしたと思った。けれど、ずっと魂のまま、この暗闇に漂うのならば、自由になるために体が必要ではないかと思ったのだ。
ヴァルラムは、それでもいいけれどねえ。と小さく笑っていたけれど。
「フィオナ様!」
「リディさん……」
木の影で立ち尽くしていたリディと目が合って、リディが走り寄ってくる。
「リディさん。ごめんなさい。セレスティーヌは……、」
それから言葉が続かない。もうずっと前から、彼女は魂ですらなかったことを、なんと説明すれば良いのか。
「フィオナ様。フィオナ様が無事で、それで……」
リディの涙に、フィオナもただ涙を流すしかなかった。
「おはようございます。フィオナ様」
「リディさん。おはようございます」
屋敷に戻り、疲れていたフィオナは気を失うように眠った。
魔力を使いすぎたうえに、ヴァルラムのところに長くいたせいか疲労が濃く、目覚めるのが少し遅くなってしまったようだ。リディが心配そうな顔をしている。
食事が運ばれてきて、フィオナはそれを口にした。暖かなパンや香りの良いスープを口に含んでいるだけで、生きているのだと思い出させてくれる。
ただ、目が覚めた場所はセレスティーヌの部屋ではなく、ターコイズブルーの色が使われていない部屋で、客間のようだった。
それに気付いていたが、問う必要もない。
食事を終えて、窓に映るセレスティーヌの顔を見て、フィオナはまた涙が出そうになった。それから少しして、クラウディオとアロイスが部屋にやってきた。
「おばたま?」
「おいで、アロイス」
深夜、フィオナが外出した後にアロイスが泣き喚き、クラウディオも屋敷におらず、屋敷は大変だったようだ。ずっと泣いていてちゃんと眠れていなかったのか、アロイスも顔がむくんでいて、目元が腫れぼったい。
「フィオナ。食事は済みましたか?」
「はい、先ほどいただいて」
クラウディオはリディとモーリス、アロイス以外部屋から出るようにと追い払い、フィオナの隣に座る。アロイスを抱っこしたまま、フィオナはクラウディオを見つめた。
これからどうすべきか。フィオナはクラウディオと話をしなければならない。
「なにから、話せば良いのか……」
クラウディオは口ごもる。けれど、どこか優しげな顔をして、フィオナを見つめた。
「実は、ノエルから話を聞いていました。セレスティーヌが別人であること。それが、魔法陣のせいであること」
ノエルはフィオナが王弟封印の地を知っていることから、遠いオリシス国の情報を得に動いていた。絵本や大国の歴史を知っているナーリア国に、封印の地がどうなっているのか調査を願ったそうだ。
「ブルイエ家のことも聞きました。封印の地ですが、セレスティーヌが魔法陣を発動したため、封印が解かれ、現在は魔獣がはびこっているそうです」
聞こえた声に、ハッと気付くと、フィオナは一気に肺の中へ息を吸い込んだ。途端、吸い込みすぎたかのように、ひどくむせて、胸を抑える。
「フィオナ! 大丈夫ですか!? フィオナ!!」
「……クラウディオ?」
息苦しさがましになり、フィオナは息を整えながら視線をさまよわせた。クラウディオや知らない騎士たちがいる。
「良かった。目が、覚めないかと……っ」
クラウディオが涙を流している。手は握られたままで、前に気を失った時のように、目の周りを赤くしながら、フィオナを抱きしめた。
「どうして、名前……」
クラウディオはフィオナの名を呼んだ。惚けた頭の中で、フィオナは抱きしめられたまま自分の手を動かす。どう見てもセレスティーヌの長く美しい指で、フィオナの手ではない。
なのに、クラウディオがフィオナと呼ぶ。
「聞いていたんです。あなたの話を」
それを聞いただけで理解した。リディとの話を聞かれていたことを。
フィオナは涙が込み上げてきた。フィオナがクラウディオを騙していたことは、ずっと前から気付かれていたのだ。
「ごめんなさい。セレスティーヌは……、連れ戻せなくて。ごめんなさい……」
「あなたのせいじゃない」
クラウディオがぎゅっと抱きしめる腕に力を入れる。
その暖かさにボロボロと涙が溢れてきた。覚悟を決めてセレスティーヌの元へ行ったのに、セレスティーヌを連れ戻せなかった。
「う、げほ。ごほっ!」
エルネストが苦しそうにむせた。意識を取り戻したという騎士たちの声に、クラウディオが鋭く睨みつける。
「連れていけ!」
まだどこにいるのか分かっていないのか、エルネストは手足を縛られたまま無理やり立たせられて、ふらついたまま引きずられるように歩いた。
エルネストの体を、ヴァルラムにと思っていた。
体があれば、ヴァルラムはなんでもできるだろう。人の体など欲しくないだろうが、ずっとそこにいるのならば、実体があった方が良いのではと。
けれど、彼は前に言っていた。
『男の体だけれど、君が殺人犯になる必要はないし、その男はセレスティーヌを殺した罰を受ける必要があるよ』
フィオナもひどい提案をしたと思った。けれど、ずっと魂のまま、この暗闇に漂うのならば、自由になるために体が必要ではないかと思ったのだ。
ヴァルラムは、それでもいいけれどねえ。と小さく笑っていたけれど。
「フィオナ様!」
「リディさん……」
木の影で立ち尽くしていたリディと目が合って、リディが走り寄ってくる。
「リディさん。ごめんなさい。セレスティーヌは……、」
それから言葉が続かない。もうずっと前から、彼女は魂ですらなかったことを、なんと説明すれば良いのか。
「フィオナ様。フィオナ様が無事で、それで……」
リディの涙に、フィオナもただ涙を流すしかなかった。
「おはようございます。フィオナ様」
「リディさん。おはようございます」
屋敷に戻り、疲れていたフィオナは気を失うように眠った。
魔力を使いすぎたうえに、ヴァルラムのところに長くいたせいか疲労が濃く、目覚めるのが少し遅くなってしまったようだ。リディが心配そうな顔をしている。
食事が運ばれてきて、フィオナはそれを口にした。暖かなパンや香りの良いスープを口に含んでいるだけで、生きているのだと思い出させてくれる。
ただ、目が覚めた場所はセレスティーヌの部屋ではなく、ターコイズブルーの色が使われていない部屋で、客間のようだった。
それに気付いていたが、問う必要もない。
食事を終えて、窓に映るセレスティーヌの顔を見て、フィオナはまた涙が出そうになった。それから少しして、クラウディオとアロイスが部屋にやってきた。
「おばたま?」
「おいで、アロイス」
深夜、フィオナが外出した後にアロイスが泣き喚き、クラウディオも屋敷におらず、屋敷は大変だったようだ。ずっと泣いていてちゃんと眠れていなかったのか、アロイスも顔がむくんでいて、目元が腫れぼったい。
「フィオナ。食事は済みましたか?」
「はい、先ほどいただいて」
クラウディオはリディとモーリス、アロイス以外部屋から出るようにと追い払い、フィオナの隣に座る。アロイスを抱っこしたまま、フィオナはクラウディオを見つめた。
これからどうすべきか。フィオナはクラウディオと話をしなければならない。
「なにから、話せば良いのか……」
クラウディオは口ごもる。けれど、どこか優しげな顔をして、フィオナを見つめた。
「実は、ノエルから話を聞いていました。セレスティーヌが別人であること。それが、魔法陣のせいであること」
ノエルはフィオナが王弟封印の地を知っていることから、遠いオリシス国の情報を得に動いていた。絵本や大国の歴史を知っているナーリア国に、封印の地がどうなっているのか調査を願ったそうだ。
「ブルイエ家のことも聞きました。封印の地ですが、セレスティーヌが魔法陣を発動したため、封印が解かれ、現在は魔獣がはびこっているそうです」
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