26 / 103
15① ー練習ー
しおりを挟む
パーティにはエルネストも来るかもしれない。そこで話せるチャンスを逃さない方がいいだろう。両親よりもそちらの方が重要度が高い。
そんな下心もあって思い直し、別行動がいいと提案したのだが、どうにもクラウディオの表情は晴れやかに見えなかった。
「去年の王族のパーティって、なにかあったんでしょうか?」
「去年は、旦那様と踊ることができなかったようです。セレスティーヌ様は帰ってきてからひどく気落ちされて、目も当てられませんでした」
「王の前でダンスって言いながら、踊らなかったんですか??」
「まだ婚約ということもあったからでしょうか。今回は結婚していますし、前回のこともあるから、……かもしれません」
リディは首を傾げる。婚約中だった前回はダンスを踊らなかったため、そこそこの罪悪感を抱えているということだろうか。
「それで、今年はドレスを購入すればいいようなことを言ってきたわけですね」
「それだけのようには思えませんが……。どちらかというと、最近旦那様はセレスティーヌ様の性格が変わったため、少し気になっているように思えます」
「人が違うと疑っているんでしょうか!?」
人が入れ替わるような魔法があるとしたら、クラウディオが疑ってもおかしくない。フィオナは血の気が引くのを感じたが、リディは、そういう意味ではないのですが、と言葉を濁す。
「でもおかしいと思っているのは間違いないですよね。はあ、やっぱり、パーティは断った方が良かったでしょうか。会う人が増えるたびに不思議に思う人が増えるでしょうし。それに、ご両親もいらっしゃるのなら……。セレスティーヌさんのご両親はどんな方なんでしょう?」
「それは……。フィオナ様はあまり良い印象は持たないと思われます。セレスティーヌ様には甘いように見えますが、セレスティーヌ様を使って公爵家との繋がりを作った策略家の面の方が強いでしょう」
リディは元々セレスティーヌの家で働いており、そのまま公爵家に来たため、セレスティーヌの両親に詳しい。
借金を作らせて娘を嫁がせたのも、自分たちの地位を上げるためなのだ。
聞いたことのある話に、フィオナはため息をつきそうになった。
(どこの親も同じなのね……)
セレスティーヌにとっては幸運だったかもしれないが、クラウディオにとってはどうだろう。それについてセレスティーヌはなにも考えなかったのだろうか。
「どちらにしても、両親に会うのならば対策を練らないとですね。受け答えに気を付けなければですし、あとはダンスか……」
練習ってどうすれば良いのか。フィオナはリディを見上げた。執事のモーリスに先生を紹介してもらうしかありません。との言葉に、がくりと肩を下ろした。
執事のモーリスに先生を頼んだのだが、なぜこうなったのか。
フィオナはクラウディオの手に触れながら眉根を寄せそうになる。
「いつっ!」
「すみません!」
寄せる前にクラウディオの足を踏み付けて、フィオナはすぐに足を引いた。
これでクラウディオの足を踏んだのは何回目だろうか。あまり数えたくないので、無心で踊るしかない。
モーリスに先生を頼んだところ、練習の日になって部屋に現れたのはなぜかクラウディオだった。その時のフィオナの顔をクラウディオは見ただろうに。
どうして彼がこんなダンスの練習などを引き受けたのか、謎だ。
「体が離れて、腰が引けてしまっています。体勢が悪いと見目が悪くなりますから、背筋をしっかり伸ばしてください」
「分かりました」
そう言って踊って何度目だろうか。再びクラウディオ足を踏みそうになって、つい足元を見る。
(ダンスなんて踊るの、久し振りだもの。やっぱり断れば良かったわ)
「いたっ!」
「すみません!!」
今度は思い切り足を踏み付けたので、クラウディオが痛みに顔を歪めた。さすがに痛いだろうに。モーリスが休憩を提案してくれたので、少し休むことにした。
「おばたまー」
リディがお茶を持ってくると、後ろからアロイスがやってくる。一瞬クラウディオを見てびくりとしたが、見えないようにフィオナに抱きついてきた。
「アロイス。どうしたの。ご本は読んでもらった?」
「申し訳ありません。本を読んでもセレスティーヌ様のところへ行くとおっしゃって」
どうやらもう泣き喚いたようだ。目尻が赤く擦った跡がある。
「ご本を読んでほしいの? じゃあ、お部屋で読みましょうか」
「だ、ダンスは、どうされるのですか!?」
そんな下心もあって思い直し、別行動がいいと提案したのだが、どうにもクラウディオの表情は晴れやかに見えなかった。
「去年の王族のパーティって、なにかあったんでしょうか?」
「去年は、旦那様と踊ることができなかったようです。セレスティーヌ様は帰ってきてからひどく気落ちされて、目も当てられませんでした」
「王の前でダンスって言いながら、踊らなかったんですか??」
「まだ婚約ということもあったからでしょうか。今回は結婚していますし、前回のこともあるから、……かもしれません」
リディは首を傾げる。婚約中だった前回はダンスを踊らなかったため、そこそこの罪悪感を抱えているということだろうか。
「それで、今年はドレスを購入すればいいようなことを言ってきたわけですね」
「それだけのようには思えませんが……。どちらかというと、最近旦那様はセレスティーヌ様の性格が変わったため、少し気になっているように思えます」
「人が違うと疑っているんでしょうか!?」
人が入れ替わるような魔法があるとしたら、クラウディオが疑ってもおかしくない。フィオナは血の気が引くのを感じたが、リディは、そういう意味ではないのですが、と言葉を濁す。
「でもおかしいと思っているのは間違いないですよね。はあ、やっぱり、パーティは断った方が良かったでしょうか。会う人が増えるたびに不思議に思う人が増えるでしょうし。それに、ご両親もいらっしゃるのなら……。セレスティーヌさんのご両親はどんな方なんでしょう?」
「それは……。フィオナ様はあまり良い印象は持たないと思われます。セレスティーヌ様には甘いように見えますが、セレスティーヌ様を使って公爵家との繋がりを作った策略家の面の方が強いでしょう」
リディは元々セレスティーヌの家で働いており、そのまま公爵家に来たため、セレスティーヌの両親に詳しい。
借金を作らせて娘を嫁がせたのも、自分たちの地位を上げるためなのだ。
聞いたことのある話に、フィオナはため息をつきそうになった。
(どこの親も同じなのね……)
セレスティーヌにとっては幸運だったかもしれないが、クラウディオにとってはどうだろう。それについてセレスティーヌはなにも考えなかったのだろうか。
「どちらにしても、両親に会うのならば対策を練らないとですね。受け答えに気を付けなければですし、あとはダンスか……」
練習ってどうすれば良いのか。フィオナはリディを見上げた。執事のモーリスに先生を紹介してもらうしかありません。との言葉に、がくりと肩を下ろした。
執事のモーリスに先生を頼んだのだが、なぜこうなったのか。
フィオナはクラウディオの手に触れながら眉根を寄せそうになる。
「いつっ!」
「すみません!」
寄せる前にクラウディオの足を踏み付けて、フィオナはすぐに足を引いた。
これでクラウディオの足を踏んだのは何回目だろうか。あまり数えたくないので、無心で踊るしかない。
モーリスに先生を頼んだところ、練習の日になって部屋に現れたのはなぜかクラウディオだった。その時のフィオナの顔をクラウディオは見ただろうに。
どうして彼がこんなダンスの練習などを引き受けたのか、謎だ。
「体が離れて、腰が引けてしまっています。体勢が悪いと見目が悪くなりますから、背筋をしっかり伸ばしてください」
「分かりました」
そう言って踊って何度目だろうか。再びクラウディオ足を踏みそうになって、つい足元を見る。
(ダンスなんて踊るの、久し振りだもの。やっぱり断れば良かったわ)
「いたっ!」
「すみません!!」
今度は思い切り足を踏み付けたので、クラウディオが痛みに顔を歪めた。さすがに痛いだろうに。モーリスが休憩を提案してくれたので、少し休むことにした。
「おばたまー」
リディがお茶を持ってくると、後ろからアロイスがやってくる。一瞬クラウディオを見てびくりとしたが、見えないようにフィオナに抱きついてきた。
「アロイス。どうしたの。ご本は読んでもらった?」
「申し訳ありません。本を読んでもセレスティーヌ様のところへ行くとおっしゃって」
どうやらもう泣き喚いたようだ。目尻が赤く擦った跡がある。
「ご本を読んでほしいの? じゃあ、お部屋で読みましょうか」
「だ、ダンスは、どうされるのですか!?」
145
お気に入りに追加
3,288
あなたにおすすめの小説
【完結】惨めな最期は二度と御免です!不遇な転生令嬢は、今度こそ幸せな結末を迎えます。
糸掛 理真
恋愛
倉田香奈、享年19歳。
死因、交通事故。
異世界に転生した彼女は、異世界でエマ・ヘスティア・ユリシーズ伯爵令嬢として暮らしていたが、前世と同じ平凡さと運の悪さによって不遇をかこっていた。
「今世こそは誰かにとって特別な存在となって幸せに暮らす」
という目標を達成するために、エマは空回りしまくりながらも自分なりに試行錯誤し続ける。
果たして不遇な転生令嬢の未来に幸せはあるのか。
[完結]いらない子と思われていた令嬢は・・・・・・
青空一夏
恋愛
私は両親の目には映らない。それは妹が生まれてから、ずっとだ。弟が生まれてからは、もう私は存在しない。
婚約者は妹を選び、両親は当然のようにそれを喜ぶ。
「取られる方が悪いんじゃないの? 魅力がないほうが負け」
妹の言葉を肯定する家族達。
そうですか・・・・・・私は邪魔者ですよね、だから私はいなくなります。
※以前投稿していたものを引き下げ、大幅に改稿したものになります。
悪役令嬢になるのも面倒なので、冒険にでかけます
綾月百花
ファンタジー
リリーには幼い頃に決められた王子の婚約者がいたが、その婚約者の誕生日パーティーで婚約者はミーネと入場し挨拶して歩きファーストダンスまで踊る始末。国王と王妃に謝られ、贈り物も準備されていると宥められるが、その贈り物のドレスまでミーネが着ていた。リリーは怒ってワインボトルを持ち、美しいドレスをワイン色に染め上げるが、ミーネもリリーのドレスの裾を踏みつけ、ワインボトルからボトボトと頭から濡らされた。相手は子爵令嬢、リリーは伯爵令嬢、位の違いに国王も黙ってはいられない。婚約者はそれでも、リリーの肩を持たず、リリーは国王に婚約破棄をして欲しいと直訴する。それ受け入れられ、リリーは清々した。婚約破棄が完全に決まった後、リリーは深夜に家を飛び出し笛を吹く。会いたかったビエントに会えた。過ごすうちもっと好きになる。必死で練習した飛行魔法とささやかな攻撃魔法を身につけ、リリーは今度は自分からビエントに会いに行こうと家出をして旅を始めた。旅の途中の魔物の森で魔物に襲われ、リリーは自分の未熟さに気付き、国営の騎士団に入り、魔物狩りを始めた。最終目的はダンジョンの攻略。悪役令嬢と魔物退治、ダンジョン攻略等を混ぜてみました。メインはリリーが王妃になるまでのシンデレラストーリーです。
王妃の仕事なんて知りません、今から逃げます!
gacchi
恋愛
側妃を迎えるって、え?聞いてないよ?
王妃の仕事が大変でも頑張ってたのは、レオルドが好きだから。
国への責任感?そんなの無いよ。もういい。私、逃げるから!
12/16加筆修正したものをカクヨムに投稿しました。
初夜に大暴言を吐かれた伯爵夫人は、微笑みと共に我が道を行く ―旦那様、今更擦り寄られても困ります―
望月 或
恋愛
「お前の噂を聞いたぞ。毎夜町に出て男を求め、毎回違う男と朝までふしだらな行為に明け暮れているそうだな? その上糸目を付けず服や装飾品を買い漁り、多大な借金を背負っているとか……。そんな醜悪な女が俺の妻だとは非常に不愉快極まりない! 今後俺に話し掛けるな! 俺に一切関与するな! 同じ空気を吸ってるだけでとんでもなく不快だ……!!」
【王命】で決められた婚姻をし、ハイド・ランジニカ伯爵とオリービア・フレイグラント子爵令嬢の初夜は、彼のその暴言で始まった。
そして、それに返したオリービアの一言は、
「あらあら、まぁ」
の六文字だった。
屋敷に住まわせている、ハイドの愛人と噂されるユーカリや、その取巻きの使用人達の嫌がらせも何のその、オリービアは微笑みを絶やさず自分の道を突き進んでいく。
ユーカリだけを信じ心酔していたハイドだったが、オリービアが屋敷に来てから徐々に変化が表れ始めて……
※作者独自の世界観満載です。違和感を感じたら、「あぁ、こういう世界なんだな」と思って頂けたら有難いです……。
【完結】長い眠りのその後で
maruko
恋愛
伯爵令嬢のアディルは王宮魔術師団の副団長サンディル・メイナードと結婚しました。
でも婚約してから婚姻まで一度も会えず、婚姻式でも、新居に向かう馬車の中でも目も合わせない旦那様。
いくら政略結婚でも幸せになりたいって思ってもいいでしょう?
このまま幸せになれるのかしらと思ってたら⋯⋯アレッ?旦那様が2人!!
どうして旦那様はずっと眠ってるの?
唖然としたけど強制的に旦那様の為に動かないと行けないみたい。
しょうがないアディル頑張りまーす!!
複雑な家庭環境で育って、醒めた目で世間を見ているアディルが幸せになるまでの物語です
全50話(2話分は登場人物と時系列の整理含む)
※他サイトでも投稿しております
ご都合主義、誤字脱字、未熟者ですが優しい目線で読んで頂けますと幸いです
旦那様、前世の記憶を取り戻したので離縁させて頂きます
結城芙由奈@12/27電子書籍配信
恋愛
【前世の記憶が戻ったので、貴方はもう用済みです】
ある日突然私は前世の記憶を取り戻し、今自分が置かれている結婚生活がとても理不尽な事に気が付いた。こんな夫ならもういらない。前世の知識を活用すれば、この世界でもきっと女1人で生きていけるはず。そして私はクズ夫に離婚届を突きつけた―。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる