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シモンがエヴリーヌを庇うようにして前に立ちはだかる。怒鳴り声が聞こえ、シモンが殺さず捕えろと叫んだ。森の中で魔法が発せられ、悲鳴が聞こえる。
ビセンテは聖女たちを守るよう指示し、一行はその動向を待った。本当に不審者が現れた。何者かがこちらの様子をうかがっていたようだ。
「二人です。一人は逃げました!」
「引き続き周囲を警戒しろ。お前たちはそいつを追え」
シモンの指示に王の兵が走り出す。何が起きているかわからない聖騎士や聖女たちがビセンテを仰いだ。シモンを確認して、ビセンテは今回邪魔が入るかもしれなかったことを、彼らに告げる。
この中に裏切り者がいるとは思いたくないだろう。いるとは限らないので、皆が無関係だと思いたい。
皆がざわめく中、縛られた男が二人連れてこられた。聖騎士でもない、王の兵でもない二人だ。
「誰の命令だ。ここで何をしていた」
シモンが尋問したが、話すわけがなく。ビセンテが男二人の荷物をあさらせた。
「エヴリー、これがなんだかわかるか?」
「それは魔物避けの道具だと思うけど、でもそっちのは」
荷物の中に魔物が嫌がる波長を出す道具があった。その他に楔のような物がある。普通の楔と違うのは、頭の部分にガラス玉のような物が埋まっていることだ。他にも、小さな丸いガラス玉のようなものがいくつか袋に入っている。弓矢も持っており、矢にくくり付けられるようになっていた。
「こっちのガラス玉は、掘削用に使われる爆弾よ。魔力を込めてから少しの時間を経ると、爆発するの。こっちの楔についている物も同じだわ」
「なにに使う気だったんだ」
ビセンテの問いに、男二人は黙ったまま。俯く一人の男に、シモンが顎を蹴り上げた。
「エングブロウ卿!?」
「エヴリーヌ聖女様の邪魔をするつもりだったんだろうが、僕がいたから実行できなかったんだろう」
転がった男の喉を踏みつけて、シモンは男がもがくのを見下すように冷ややかに見やる。そのままもう一人の男を横目で冷眼を向けた。
王の政策を邪魔する者たちと聞いていたが、シモンの言っている意味がわからない。シモンに踏みつけられている男は、息ができないとシモンのブーツを引っ掻くようにもがいた。
「おい、そのままじゃ死ぬぞ!」
「片方生きていればいいだろう。エヴリーヌ聖女様の邪魔をしようとしたのだから、死んで当然」
「エングブロウ卿! 足をどけなさい! 犯行について証言が必要でしょう!?」
「エヴリーヌ聖女様。こいつらは魔物の住む地下を破壊して、魔物を溢れ出させるつもりだったんでしょう。封印の魔石を補強する間に行うはずだったけれど、人が多すぎて断念したに違いありません。次の場所に進むのに、僕たちを追い越そうとしていたんだ」
「地下を、破壊……」
その時だった。ドオン。というくぐもった爆発音が耳に入り、皆がそちらに振り向いた。谷の隙間から煙が上るのが見える。
「爆発!? まさかっ」
エヴリーヌは男たちが持っていた楔を奪うように手にした。楔の頭に付いている、魔力で爆発する道具。
「地下を爆発させた後、山の頂でこの楔を爆発させたの?」
「あの時と、同じ!?」
ビセンテも気づいたと、黙っている男を鋭く睨みつけた。巣穴を爆発させて、地面が陥没させる。そして、山頂を爆発させ地面が流れて地滑りが起きた。
「前回起きた地滑りは、まさか、実験したのか?」
「人為的な地滑りを起こした?」
「地面ごと崩れたら、封印の魔石だって流されるぞ」
そんなことをしたら、封印の一部が壊れてしまう。封印されていた魔物が出てきてもおかしくない。そう思っている間に、先ほどよりも不気味な地鳴りのような音が耳に入った。
「崩れるぞ!!」
ビセンテの声に、皆も声を上げた。
遠目にある山の頂から、木々が流れるように倒れていく。土が雪崩のように流れて、土が木々を流していった。
「あっちは、公爵領……」
呟いて、一瞬で寒気がした。溢れる魔力。崩れた山の方から、強い魔力を感じた。
なにかが巨大な物がうごめくのが見える。
黒檀色の大きな羽を一振りして、山の裾野に崩れるように隠れた。
「なんだ、あれ、」
ビセンテの言葉を横にして、エヴリーヌは走り始めていた。
「エヴリー!?」
「エヴリーヌ聖女様!?」
後ろから急いで追いかけてくる声が聞こえる。しかしそれよりも先に、別の群れが後ろから近づいてきた。
一頭の鹿がエヴリーヌをすくうように背中に乗せた。足場の悪い地面を蹴り上げて、勢いよく斜面を下っていく。その後ろを鹿の群れが飛び跳ねてついてきた。
「鹿!? エヴリー、待てっ! 一人で行くな!!」
ビセンテの呼ぶ声が聞こえたが、鹿の走りは速く、すぐに聞こえなくなった。
地滑りが起きたのは公爵領だ。沢に繋がる山が崩れた。地面が爆発して地滑りが起き、大聖女の結界を一つ巻き添えにした。地面が崩れれば保護魔法がかけられている台座でもどうにもならない。一緒に流れて、結界の一つが壊れてしまう。
そして、山の合間に見えた巨大な羽。
「ドラゴンだわ」
それが公爵領に繋がる谷間に降りたった。こちらから見えないのだから、先に進んでいったに違いない。
そのまま進めば、人のいる場所へと近づくだろう。そこにはきっと、カリスがいる。
ビセンテは聖女たちを守るよう指示し、一行はその動向を待った。本当に不審者が現れた。何者かがこちらの様子をうかがっていたようだ。
「二人です。一人は逃げました!」
「引き続き周囲を警戒しろ。お前たちはそいつを追え」
シモンの指示に王の兵が走り出す。何が起きているかわからない聖騎士や聖女たちがビセンテを仰いだ。シモンを確認して、ビセンテは今回邪魔が入るかもしれなかったことを、彼らに告げる。
この中に裏切り者がいるとは思いたくないだろう。いるとは限らないので、皆が無関係だと思いたい。
皆がざわめく中、縛られた男が二人連れてこられた。聖騎士でもない、王の兵でもない二人だ。
「誰の命令だ。ここで何をしていた」
シモンが尋問したが、話すわけがなく。ビセンテが男二人の荷物をあさらせた。
「エヴリー、これがなんだかわかるか?」
「それは魔物避けの道具だと思うけど、でもそっちのは」
荷物の中に魔物が嫌がる波長を出す道具があった。その他に楔のような物がある。普通の楔と違うのは、頭の部分にガラス玉のような物が埋まっていることだ。他にも、小さな丸いガラス玉のようなものがいくつか袋に入っている。弓矢も持っており、矢にくくり付けられるようになっていた。
「こっちのガラス玉は、掘削用に使われる爆弾よ。魔力を込めてから少しの時間を経ると、爆発するの。こっちの楔についている物も同じだわ」
「なにに使う気だったんだ」
ビセンテの問いに、男二人は黙ったまま。俯く一人の男に、シモンが顎を蹴り上げた。
「エングブロウ卿!?」
「エヴリーヌ聖女様の邪魔をするつもりだったんだろうが、僕がいたから実行できなかったんだろう」
転がった男の喉を踏みつけて、シモンは男がもがくのを見下すように冷ややかに見やる。そのままもう一人の男を横目で冷眼を向けた。
王の政策を邪魔する者たちと聞いていたが、シモンの言っている意味がわからない。シモンに踏みつけられている男は、息ができないとシモンのブーツを引っ掻くようにもがいた。
「おい、そのままじゃ死ぬぞ!」
「片方生きていればいいだろう。エヴリーヌ聖女様の邪魔をしようとしたのだから、死んで当然」
「エングブロウ卿! 足をどけなさい! 犯行について証言が必要でしょう!?」
「エヴリーヌ聖女様。こいつらは魔物の住む地下を破壊して、魔物を溢れ出させるつもりだったんでしょう。封印の魔石を補強する間に行うはずだったけれど、人が多すぎて断念したに違いありません。次の場所に進むのに、僕たちを追い越そうとしていたんだ」
「地下を、破壊……」
その時だった。ドオン。というくぐもった爆発音が耳に入り、皆がそちらに振り向いた。谷の隙間から煙が上るのが見える。
「爆発!? まさかっ」
エヴリーヌは男たちが持っていた楔を奪うように手にした。楔の頭に付いている、魔力で爆発する道具。
「地下を爆発させた後、山の頂でこの楔を爆発させたの?」
「あの時と、同じ!?」
ビセンテも気づいたと、黙っている男を鋭く睨みつけた。巣穴を爆発させて、地面が陥没させる。そして、山頂を爆発させ地面が流れて地滑りが起きた。
「前回起きた地滑りは、まさか、実験したのか?」
「人為的な地滑りを起こした?」
「地面ごと崩れたら、封印の魔石だって流されるぞ」
そんなことをしたら、封印の一部が壊れてしまう。封印されていた魔物が出てきてもおかしくない。そう思っている間に、先ほどよりも不気味な地鳴りのような音が耳に入った。
「崩れるぞ!!」
ビセンテの声に、皆も声を上げた。
遠目にある山の頂から、木々が流れるように倒れていく。土が雪崩のように流れて、土が木々を流していった。
「あっちは、公爵領……」
呟いて、一瞬で寒気がした。溢れる魔力。崩れた山の方から、強い魔力を感じた。
なにかが巨大な物がうごめくのが見える。
黒檀色の大きな羽を一振りして、山の裾野に崩れるように隠れた。
「なんだ、あれ、」
ビセンテの言葉を横にして、エヴリーヌは走り始めていた。
「エヴリー!?」
「エヴリーヌ聖女様!?」
後ろから急いで追いかけてくる声が聞こえる。しかしそれよりも先に、別の群れが後ろから近づいてきた。
一頭の鹿がエヴリーヌをすくうように背中に乗せた。足場の悪い地面を蹴り上げて、勢いよく斜面を下っていく。その後ろを鹿の群れが飛び跳ねてついてきた。
「鹿!? エヴリー、待てっ! 一人で行くな!!」
ビセンテの呼ぶ声が聞こえたが、鹿の走りは速く、すぐに聞こえなくなった。
地滑りが起きたのは公爵領だ。沢に繋がる山が崩れた。地面が爆発して地滑りが起き、大聖女の結界を一つ巻き添えにした。地面が崩れれば保護魔法がかけられている台座でもどうにもならない。一緒に流れて、結界の一つが壊れてしまう。
そして、山の合間に見えた巨大な羽。
「ドラゴンだわ」
それが公爵領に繋がる谷間に降りたった。こちらから見えないのだから、先に進んでいったに違いない。
そのまま進めば、人のいる場所へと近づくだろう。そこにはきっと、カリスがいる。
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