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115 ー症状ー
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そうして落ち着いた頃、果物が届いた。
理音も前に食べたことのある果物だった。柑橘系の味で、少しだけ酸っぱい果物である。 それを剥いて汁を出すために潰し、金属の器に入れ、塩を混ぜた氷の上でかき混ぜ始めた。
コウユウがまた訝しげに見てくる。
「シャーベット作ってるんですよ。胃の中に何もないから冷たい物は良くないんだけど、熱がありすぎるから体の中から冷やそうと思って。あと病人食って何あります?できれば液体に近いものを作ってもらってください。無理にでも食べさせないと、薬が飲めないから」
氷の上で何度もかき混ぜて、かき混ぜる力で腕が痛くなった頃、液体からシャーベット状の物に変わったので、理音は再びフォーエンを起こしてそれを口に運んだ。
「シャーベットだよ。冷たくておいしいよ。さっきよりずっとね」
ひんやりとした食べ物が、フォーエンの顔を愛らしく歪ませた。
「何だ、これ…」
「氷みたいなものだよ。これもゆっくり食べようね。急いで食べると頭痛がしちゃうから。こういうのだったら食べやすいでしょ。あとでジュースにするから、それも飲もうか」
「じゅーす?」
「果物の飲み物。果物の絞り汁か。酸っぱい果物はビタミン入ってるはずなんだ。体にいいからね」
小さく一口、シャーベットは口にしやすいか、フォーエンは文句も言わずそれを平らげた。お腹もすいていたのだろう。固形物は食べにくくても、これくらいなら問題なさそうだ。
「お前にも、うつる…」
「うつんないよ。マスクしてるし。あとでご飯食べよう。ちゃんと食べないと治らないから」
「いらん」
「うん。食え。文句は言わせない。さ、ご飯ができるまで、しばらく眠るといいよ」
額の布を取り替えてやると、フォーエンは理音の袖を軽く掴んだ。
「ここにいろ」
どこにも行く気はないが、何だその子犬みたいな顔。捨てられた子犬か。この子犬を放っておいて、どこに行くと言うのだ。
「いるよ。ここにいる。ほら、眠りな。大丈夫、すぐ治るよ」
頰を撫でてやれば、まるで子供のように擦り寄せてきた。何だほんとに、この子犬。
手が冷たくて、気持ちがいいのかもしれない。
溶けてきた氷の桶に手を浸してから、理音は首元にその手を添えた。首元はひどく熱い。
ほんの少しの冷たさでもフォーエンは気持ちがいいのか、安堵したように静かに眠りについた。
しばらくは眠らせた方がいいだろう。食事ができてから起こせばいい。
夕方になって少し冷えてきたか、理音は最後の窓を閉めた。これから段々温度が下がってくる。この温度差が、風邪を治りにくくさせるのかもしれない。
フォーエンは微かに体を震わせた。先ほどひっぺがえして足元にやった掛け布団を肩までかけてやる。
寝室の扉の前では、コウユウが無言で立っていた。
「食事が来たら食べさせます。それまで休ませますから、コウユウさんも休んでください。それと、この部屋を出たらよく手を洗って、うがいをしてください」
「…わかりました」
納得いかない。けれど話は聞いている。今はとにかくそれで十分だった。
理音はマスクを取るとそれを裏面にして自分の荷物の中にあるビニールに入れた。あとで捨てる用だ。
喉が弱い理音は、常にマスクを鞄に入れている。冬の間は大量に持っていて、それは夏近くになっても入れっぱなしなのだ。夏はクーラーの風でくしゃみが出やすいので、いつでも持っているのだ。喉飴と同じく常備している。
ツワが酒を持ってきたと手渡してくれた。高そうな陶器に入っている。これを掃除用に使うのは何だが、背に腹は変えられない。蓋を開けその中身を指につけると、冷えた物に触れたようにスースーした。
度数の高さはこれで大丈夫かわからないが、用意されていた布にそれをかけて、それで手を拭った。ついでに扉のノブも拭き取っておく。
「何をされているのか」
コウユウは理音が何をしているのか、想像もつかないのだろう。完全に眉間にシワが集まっている。これでもかと怪訝な顔を向けてきた。
「二次感染が起きないように、念のための消毒です。扉のノブは菌がつきやすいから。皇帝陛下のお世話をされた方々にも、触れた場所は高濃度のお酒で消毒するように伝えた方がいいかもしれません。あと手洗いうがいの徹底を。民部でも倒れた方がいるとか。空気の入れ替えもするようにした方がいいです」
「あなたは、医者か何かなのか」
必ずそれは聞いてくる。知らない知識を持っている人間が特別何かに長けているのか想像するのは道理だった。けれどこの知識は自分には当然の知識である。医者と答えれば安心するのはわかっているが、自分が知り得るのはこの程度の知識だけだった。嘘はつけない。
「医者ではないですが、風邪の処置くらいならわかります。これで熱が下がらなければ別の病気で、そうであれば私はもう何もできません」
四日も熱が出ていてそれで済めばいいが、肺炎などを併発していればどうにもできない。
もしインフルエンザのようなウイルス性の病気であっても、熱を下げることくらいしか処置の仕方がわからない。
「そういえば、高熱っていきなり熱が上がりました?」
急な質問に、コウユウは微かに顔をしかめた。フォーエンに関わるとどうもわかりやすく顔に表情を出すようだ。前に会った時の微笑みは嘘物である。
「レイセン宮からお戻りになられた日は、頭痛がすると言われただけです。次の日になって熱があるとわかりました。その夜にひどく体調を悪くされた」
「体の節々が痛いとかは言っていませんでしたか?」
「その様な事は、伺っておりません」
インフルエンザならば節々が痛むことがある。ない場合もあるので何とも言えないが、こんな閉め切った部屋でインフルエンザに罹った者がいれば、他の者たちにもうつっているだろう。インフルエンザは感染力が高い。
「じゃあ、初めは微熱だったのかな。夜から微熱で、なら、やっぱり風邪かも。インフルだったら、多分いきなり高熱のはずだし。咳は少ししてますよね。声も変だし。熱が下がってから咳が出ればインフルかもだけど、そうじゃなさそうだしな。インフルだったらきっとパンデミック。民部ぐらいじゃおさまんないはずだから、多分、きっと、平気。民部以外にうつってる人っているんですか?」
「倒れたのは民部内で六人。うち一人が死んでいる」
「それは、聞きました。お年を召した方だったって」
フォーエンの身分ですら数日寝込んでいるのだから、そうでもない身分でしかも高齢であれば、命に関わってもおかしくない。
「他の省ではまだ聞いていません。けれど、体調が悪いと言っている者は何人かいると聞いています」
「体調悪いくらいで仕事できるんなら、あとで熱が上がるんだな。じゃあ、同じ病気ですね。咳をしている人がいたらうつるんで気をつけてください。飛沫感染しますから。ところで、今日私ここにいていいですか」
寝ている間に布を変えないと、高熱が続くならばこれからが心配になる。肺炎になる前に熱を下げなければならないだろう。
それが彼らには通じない。だが、看病するのならば自分が適任なはずだ。その許可をもらえなければいられないのだが。
コウユウは無言で口をつぐんだままだ。考えているのではなくて、許可を出したくない。の顔である。けれど理音がここにいたいと言ったせいか、それを断れないのかもしれない。
「皇帝陛下がお許しになられましたので、こちらにいてくださって結構です」
絞り出すような声である。そこまで嫌なのか。
さっきフォーエンがここにいろ。と言ったのだから、元々いてよかったのかもしれない。それをわざわざ聞いてきたので、苛ついた可能性もなきにしもあらずだ。
コウユウはツワに目線でそれを伝えた。その合図で頭を下げると、レイセン宮へと戻っていく。
「お食事はあとで運ばせます。お休みには別の部屋を用意いたしますので」
「部屋はいいです。起きてるから。夜になれば熱が上がるし、診てた方がいいから」
「…承知しました」
内心ふつふつと怒りがこみ上げているのかもしれない。抑えた声が何とも迫力である。
忠臣なのだろうな。
いい加減、威嚇されそうである。フォーエンが治らなければ刺されそうだ。
「コウユウさんも、今日は早めに眠られた方がいいですよ。睡眠不足は体に良くない。抵抗力がなくなれば、風邪も引きやすいですからね。顔色悪いですよ」
ハク大輔もヘキ卿も、コウユウの体調の悪さに驚いていた。そこまでフォーエンが悪いのかと。
きっと、寝ずにフォーエンの側にいたのだろう。
今日は自分がいる。看病くらいしかできないのだから、やらせてほしい。
「あ、付け毛とっていいですか。あと化粧」
この格好で完徹とかしたくない。とまでは言わなかった。コウユウの血管が切れそうだったので。
理音も前に食べたことのある果物だった。柑橘系の味で、少しだけ酸っぱい果物である。 それを剥いて汁を出すために潰し、金属の器に入れ、塩を混ぜた氷の上でかき混ぜ始めた。
コウユウがまた訝しげに見てくる。
「シャーベット作ってるんですよ。胃の中に何もないから冷たい物は良くないんだけど、熱がありすぎるから体の中から冷やそうと思って。あと病人食って何あります?できれば液体に近いものを作ってもらってください。無理にでも食べさせないと、薬が飲めないから」
氷の上で何度もかき混ぜて、かき混ぜる力で腕が痛くなった頃、液体からシャーベット状の物に変わったので、理音は再びフォーエンを起こしてそれを口に運んだ。
「シャーベットだよ。冷たくておいしいよ。さっきよりずっとね」
ひんやりとした食べ物が、フォーエンの顔を愛らしく歪ませた。
「何だ、これ…」
「氷みたいなものだよ。これもゆっくり食べようね。急いで食べると頭痛がしちゃうから。こういうのだったら食べやすいでしょ。あとでジュースにするから、それも飲もうか」
「じゅーす?」
「果物の飲み物。果物の絞り汁か。酸っぱい果物はビタミン入ってるはずなんだ。体にいいからね」
小さく一口、シャーベットは口にしやすいか、フォーエンは文句も言わずそれを平らげた。お腹もすいていたのだろう。固形物は食べにくくても、これくらいなら問題なさそうだ。
「お前にも、うつる…」
「うつんないよ。マスクしてるし。あとでご飯食べよう。ちゃんと食べないと治らないから」
「いらん」
「うん。食え。文句は言わせない。さ、ご飯ができるまで、しばらく眠るといいよ」
額の布を取り替えてやると、フォーエンは理音の袖を軽く掴んだ。
「ここにいろ」
どこにも行く気はないが、何だその子犬みたいな顔。捨てられた子犬か。この子犬を放っておいて、どこに行くと言うのだ。
「いるよ。ここにいる。ほら、眠りな。大丈夫、すぐ治るよ」
頰を撫でてやれば、まるで子供のように擦り寄せてきた。何だほんとに、この子犬。
手が冷たくて、気持ちがいいのかもしれない。
溶けてきた氷の桶に手を浸してから、理音は首元にその手を添えた。首元はひどく熱い。
ほんの少しの冷たさでもフォーエンは気持ちがいいのか、安堵したように静かに眠りについた。
しばらくは眠らせた方がいいだろう。食事ができてから起こせばいい。
夕方になって少し冷えてきたか、理音は最後の窓を閉めた。これから段々温度が下がってくる。この温度差が、風邪を治りにくくさせるのかもしれない。
フォーエンは微かに体を震わせた。先ほどひっぺがえして足元にやった掛け布団を肩までかけてやる。
寝室の扉の前では、コウユウが無言で立っていた。
「食事が来たら食べさせます。それまで休ませますから、コウユウさんも休んでください。それと、この部屋を出たらよく手を洗って、うがいをしてください」
「…わかりました」
納得いかない。けれど話は聞いている。今はとにかくそれで十分だった。
理音はマスクを取るとそれを裏面にして自分の荷物の中にあるビニールに入れた。あとで捨てる用だ。
喉が弱い理音は、常にマスクを鞄に入れている。冬の間は大量に持っていて、それは夏近くになっても入れっぱなしなのだ。夏はクーラーの風でくしゃみが出やすいので、いつでも持っているのだ。喉飴と同じく常備している。
ツワが酒を持ってきたと手渡してくれた。高そうな陶器に入っている。これを掃除用に使うのは何だが、背に腹は変えられない。蓋を開けその中身を指につけると、冷えた物に触れたようにスースーした。
度数の高さはこれで大丈夫かわからないが、用意されていた布にそれをかけて、それで手を拭った。ついでに扉のノブも拭き取っておく。
「何をされているのか」
コウユウは理音が何をしているのか、想像もつかないのだろう。完全に眉間にシワが集まっている。これでもかと怪訝な顔を向けてきた。
「二次感染が起きないように、念のための消毒です。扉のノブは菌がつきやすいから。皇帝陛下のお世話をされた方々にも、触れた場所は高濃度のお酒で消毒するように伝えた方がいいかもしれません。あと手洗いうがいの徹底を。民部でも倒れた方がいるとか。空気の入れ替えもするようにした方がいいです」
「あなたは、医者か何かなのか」
必ずそれは聞いてくる。知らない知識を持っている人間が特別何かに長けているのか想像するのは道理だった。けれどこの知識は自分には当然の知識である。医者と答えれば安心するのはわかっているが、自分が知り得るのはこの程度の知識だけだった。嘘はつけない。
「医者ではないですが、風邪の処置くらいならわかります。これで熱が下がらなければ別の病気で、そうであれば私はもう何もできません」
四日も熱が出ていてそれで済めばいいが、肺炎などを併発していればどうにもできない。
もしインフルエンザのようなウイルス性の病気であっても、熱を下げることくらいしか処置の仕方がわからない。
「そういえば、高熱っていきなり熱が上がりました?」
急な質問に、コウユウは微かに顔をしかめた。フォーエンに関わるとどうもわかりやすく顔に表情を出すようだ。前に会った時の微笑みは嘘物である。
「レイセン宮からお戻りになられた日は、頭痛がすると言われただけです。次の日になって熱があるとわかりました。その夜にひどく体調を悪くされた」
「体の節々が痛いとかは言っていませんでしたか?」
「その様な事は、伺っておりません」
インフルエンザならば節々が痛むことがある。ない場合もあるので何とも言えないが、こんな閉め切った部屋でインフルエンザに罹った者がいれば、他の者たちにもうつっているだろう。インフルエンザは感染力が高い。
「じゃあ、初めは微熱だったのかな。夜から微熱で、なら、やっぱり風邪かも。インフルだったら、多分いきなり高熱のはずだし。咳は少ししてますよね。声も変だし。熱が下がってから咳が出ればインフルかもだけど、そうじゃなさそうだしな。インフルだったらきっとパンデミック。民部ぐらいじゃおさまんないはずだから、多分、きっと、平気。民部以外にうつってる人っているんですか?」
「倒れたのは民部内で六人。うち一人が死んでいる」
「それは、聞きました。お年を召した方だったって」
フォーエンの身分ですら数日寝込んでいるのだから、そうでもない身分でしかも高齢であれば、命に関わってもおかしくない。
「他の省ではまだ聞いていません。けれど、体調が悪いと言っている者は何人かいると聞いています」
「体調悪いくらいで仕事できるんなら、あとで熱が上がるんだな。じゃあ、同じ病気ですね。咳をしている人がいたらうつるんで気をつけてください。飛沫感染しますから。ところで、今日私ここにいていいですか」
寝ている間に布を変えないと、高熱が続くならばこれからが心配になる。肺炎になる前に熱を下げなければならないだろう。
それが彼らには通じない。だが、看病するのならば自分が適任なはずだ。その許可をもらえなければいられないのだが。
コウユウは無言で口をつぐんだままだ。考えているのではなくて、許可を出したくない。の顔である。けれど理音がここにいたいと言ったせいか、それを断れないのかもしれない。
「皇帝陛下がお許しになられましたので、こちらにいてくださって結構です」
絞り出すような声である。そこまで嫌なのか。
さっきフォーエンがここにいろ。と言ったのだから、元々いてよかったのかもしれない。それをわざわざ聞いてきたので、苛ついた可能性もなきにしもあらずだ。
コウユウはツワに目線でそれを伝えた。その合図で頭を下げると、レイセン宮へと戻っていく。
「お食事はあとで運ばせます。お休みには別の部屋を用意いたしますので」
「部屋はいいです。起きてるから。夜になれば熱が上がるし、診てた方がいいから」
「…承知しました」
内心ふつふつと怒りがこみ上げているのかもしれない。抑えた声が何とも迫力である。
忠臣なのだろうな。
いい加減、威嚇されそうである。フォーエンが治らなければ刺されそうだ。
「コウユウさんも、今日は早めに眠られた方がいいですよ。睡眠不足は体に良くない。抵抗力がなくなれば、風邪も引きやすいですからね。顔色悪いですよ」
ハク大輔もヘキ卿も、コウユウの体調の悪さに驚いていた。そこまでフォーエンが悪いのかと。
きっと、寝ずにフォーエンの側にいたのだろう。
今日は自分がいる。看病くらいしかできないのだから、やらせてほしい。
「あ、付け毛とっていいですか。あと化粧」
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