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68 ー血筋ー
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「何だかお辛いわよね、ユムユナ様も」
キノリが吐息をついて、食事に箸をつける。
「もうイライラしちゃってて、こっちも嫌になってたけど、ここまで旦那様に無視され続けるってのもさー。ユムユナ様だって、家にお伝えできることが何にもないわけだし」
実際、夫婦になって何も起きていないのは、大問題だろう。
側室であるからとかはともかく、嫁いできたばかりの嫁に、会いにも来ないと言うのだから。
「ご挨拶以来、会ってないってことですか?」
「そうよ、あれからずっと」
それは、何とも、コメントしづらいことである。
「シュンエイ様の結婚って、結局、誰が決めたんですか?」
大尉が望んで結婚したのならば、シュンエイを拒否する理由がないわけなのだが。
「決めたのは、シュンエイ様のお父様よ」
「え、そうなんですか?商人が決められるもんなんですか?旦那様の大尉って、位はいいんじゃ?」
素朴な疑問だ。
大抵、身分の高い方が相手を欲しがると思っていたのだが。
「ばかねえ。シュンエイ様って、血筋は確かなのよ?ひいお祖母様が、その昔降嫁された方で、元は皇族なんだから」
「へ?は?え、じゃあ、今の皇帝と血が繋がってんですか?」
「そうじゃない?今の皇帝陛下の、ずっと前の皇帝陛下の妹が、ひいお祖母様なんだから」
また、よくわからない遠い話が出てきた。
ここまでくると、人類皆兄弟だな。と関係のないことを考える。
「今ではしがない町の商家だけど、昔はもっとすっごく大きいお店だったのよ。ただそのひいお祖母様の息子、シュンエイ様のお爺様が問題ある方で、大店だった家を没落させたのよ。それで、今の大きさになっちゃって、シュンエイ様のお父様は、もうありとあらゆる手を使ってでも店を復興させるんだって。それでシュンエイ様のお相手として、結構いい位である大尉に白羽の矢を立てたんだもの」
「それで、側室でいいんですか?」
「いいんじゃないの?とりあえず、お役人の嫁になったんだし。旦那様だって、皇族の血筋が入るんなら嬉しいでしょ?」
「そんなもんですか」
けれど、大尉はシュンエイには手を出さないわけだ。何だかよくわからない。
そして、その血筋が気になった。
ひいお祖母様が昔の皇帝の妹であるとしたら、フォーエンからすればどこの位置にあたるのだろう。
ハク大輔からすれば、シュンエイは同じ世代になるのだろうか。その計算だと、シュンエイの父親とフォーエンが同じ世代?になる。
「うん?」
「何よ」
「いえ、もうちょっと、わからなくなってきた」
こちらの人間の結婚の早さや兄弟の数が詳しくわからないので一概には言えないが、ひいお祖母様ならば、ハク大輔のひいお爺様、つまりフォーエンのお爺様がお兄さんで、シュンエイのひいお祖母様が妹になる。はずである。多分。
「近いような、遠いような血筋ですね。それで、大尉に結婚迫れるんですか?」
「どうやったかはわからないけど、血筋に関しては相当出したでしょ?うまくいけば、子供が皇帝陛下になれるかもしれないんだし」
「うん?」
理音の頭に、ぽんと花が咲いた。
「そりゃあね、皇帝陛下はお若いし、すぐに子供なんてできちゃうかもしれないけれど、今はいらっしゃらないわけじゃない?しかも、最近の皇帝陛下ってみんな殺されてるわけだし。だとしたら、巡りに巡って子供が次代になるってこともあるでしょ?よくわからないけど」
キノリは適当である。
だが、話の筋は何となくわかった。
フォーエンが死んでしまった場合、フォーエンのお父さんのお兄さんの孫が、次の皇帝陛下に一番近いとか、意味のわからない話があるわけなので、ならば、フォーエンのお爺さんの妹のひ孫が生んだ子供が、次の皇帝になってもおかしくない。と言うわけなのだ。
しかし、遠い話だな。
けれど、それだけ遠い話でも、安定していない国にはあり得ることなのだろう。
セキュリティがばがば国である。あり得る話だ。
「相手が大尉でもねじ込めるくらいには、シュンエイ様んちは結構いいお家ってわけなんですか?」
「大尉に対しては、うちは少し小さすぎる店よね。だから側室で我慢したんじゃない?それに、正室が子供産んでも、大尉のこの屋敷を継ぐでしょ?皇帝陛下の座が溢れてきたら、大尉の家なんて継いでらんないじゃない」
「現金だなー」
清々しいほどの棚ぼたドリームだ。宝くじレベルではなかろうか。
だが、それが現実となれば大尉にも良いお話である。
しかし、シュンエイには手を出さない。そこが謎だ。
とっとと子供を作った方がお得に感じるのだが。
「まあね、さすがにそれは突飛すぎるって言うか、究極って言うか。飛躍しすぎて、無理あるわよね。でもほら、大尉のような方に嫁げたおかげで、お家の方も潤うでしょ?大尉の家を足がかりに、商売を大きくできるわけだし」
保証的な話だろうか。大尉がバックにいるほどの家なのだと。
ネーミングバリューが強くなる。そんなレベルの話。
「あとはほら、ここを拠点にして、他の家の方々に売り込みされるんでしょ?懇意にされているいい家とかあるわけだし」
「商売するのに、このお屋敷使うんですか?」
「違うわよ。シュンエイ様の従者の中に、シュンエイ様のお父様の従者が紛れ込んでるの。売り込みをするのには行き来が大変でしょ?だから、ここでこっそり、ってことよ」
店舗ならぬ、事務所を立ち上げているのだ。
ここを経由して、王都でスポンサーや顧客探しをする。抜け目のないことである。
それがもっともな目的なのかもしれない。
そしてふと思う。
「結局、シュンエイ様のお家って、何やってるんですか?」
「何よそれ、今更ねー。刀や剣の売買でしょ」
そんな物騒な商家だったのか。
そうだとしたら、刀鍛冶など必要ないだろうに。大尉が文を渡して数多く作ることはない。シュンエイの父親に頼めば、武器など簡単に手に入るのだから。
「うん?」
「何よ」
納得いかない。と頭を傾げていると、キノリに不審がられてしまった。けれど、どうにもしっくりこない話である。
武器を集めたいならば、簡単に集められる立場を持っているわけなのだ、大尉のいるこの屋敷は。
では、あの刀鍛冶は何なのだろう。
文を渡したのならば、新しい武器がほしいとかではないのだろうか。
大尉が直々に、そんな文を出すわけではないだろうが、礼の文とも考えられる。
あの刀鍛冶は、ただの大尉のための物を作っているところなのかもしれない。由緒正しい刀鍛冶であるとか。想像であるが。
そう考えると一つの結果が出てしまうのだ。
ハク大輔の元、大尉を中心にハク大輔の部下たちを集め、ナミヤの屋敷でその用意を行なっている。
そして、武器はシュンエイの父親が手配をし、その連絡を、事情の知らない理音がしているのだ。
ナラカの考えが本当であれば、この事実はわかりやすく謀反の疑いがある。
本来ならば皇帝になるはずだったハク大輔が謀反を起こすのは道理であり、大尉の動きはそのためのものになってしまう。
そうだとしたら、フォーエンに味方はいるのだろうか。
ナラカの話では、後ろ盾もないような感じではあるのだが。
キノリが吐息をついて、食事に箸をつける。
「もうイライラしちゃってて、こっちも嫌になってたけど、ここまで旦那様に無視され続けるってのもさー。ユムユナ様だって、家にお伝えできることが何にもないわけだし」
実際、夫婦になって何も起きていないのは、大問題だろう。
側室であるからとかはともかく、嫁いできたばかりの嫁に、会いにも来ないと言うのだから。
「ご挨拶以来、会ってないってことですか?」
「そうよ、あれからずっと」
それは、何とも、コメントしづらいことである。
「シュンエイ様の結婚って、結局、誰が決めたんですか?」
大尉が望んで結婚したのならば、シュンエイを拒否する理由がないわけなのだが。
「決めたのは、シュンエイ様のお父様よ」
「え、そうなんですか?商人が決められるもんなんですか?旦那様の大尉って、位はいいんじゃ?」
素朴な疑問だ。
大抵、身分の高い方が相手を欲しがると思っていたのだが。
「ばかねえ。シュンエイ様って、血筋は確かなのよ?ひいお祖母様が、その昔降嫁された方で、元は皇族なんだから」
「へ?は?え、じゃあ、今の皇帝と血が繋がってんですか?」
「そうじゃない?今の皇帝陛下の、ずっと前の皇帝陛下の妹が、ひいお祖母様なんだから」
また、よくわからない遠い話が出てきた。
ここまでくると、人類皆兄弟だな。と関係のないことを考える。
「今ではしがない町の商家だけど、昔はもっとすっごく大きいお店だったのよ。ただそのひいお祖母様の息子、シュンエイ様のお爺様が問題ある方で、大店だった家を没落させたのよ。それで、今の大きさになっちゃって、シュンエイ様のお父様は、もうありとあらゆる手を使ってでも店を復興させるんだって。それでシュンエイ様のお相手として、結構いい位である大尉に白羽の矢を立てたんだもの」
「それで、側室でいいんですか?」
「いいんじゃないの?とりあえず、お役人の嫁になったんだし。旦那様だって、皇族の血筋が入るんなら嬉しいでしょ?」
「そんなもんですか」
けれど、大尉はシュンエイには手を出さないわけだ。何だかよくわからない。
そして、その血筋が気になった。
ひいお祖母様が昔の皇帝の妹であるとしたら、フォーエンからすればどこの位置にあたるのだろう。
ハク大輔からすれば、シュンエイは同じ世代になるのだろうか。その計算だと、シュンエイの父親とフォーエンが同じ世代?になる。
「うん?」
「何よ」
「いえ、もうちょっと、わからなくなってきた」
こちらの人間の結婚の早さや兄弟の数が詳しくわからないので一概には言えないが、ひいお祖母様ならば、ハク大輔のひいお爺様、つまりフォーエンのお爺様がお兄さんで、シュンエイのひいお祖母様が妹になる。はずである。多分。
「近いような、遠いような血筋ですね。それで、大尉に結婚迫れるんですか?」
「どうやったかはわからないけど、血筋に関しては相当出したでしょ?うまくいけば、子供が皇帝陛下になれるかもしれないんだし」
「うん?」
理音の頭に、ぽんと花が咲いた。
「そりゃあね、皇帝陛下はお若いし、すぐに子供なんてできちゃうかもしれないけれど、今はいらっしゃらないわけじゃない?しかも、最近の皇帝陛下ってみんな殺されてるわけだし。だとしたら、巡りに巡って子供が次代になるってこともあるでしょ?よくわからないけど」
キノリは適当である。
だが、話の筋は何となくわかった。
フォーエンが死んでしまった場合、フォーエンのお父さんのお兄さんの孫が、次の皇帝陛下に一番近いとか、意味のわからない話があるわけなので、ならば、フォーエンのお爺さんの妹のひ孫が生んだ子供が、次の皇帝になってもおかしくない。と言うわけなのだ。
しかし、遠い話だな。
けれど、それだけ遠い話でも、安定していない国にはあり得ることなのだろう。
セキュリティがばがば国である。あり得る話だ。
「相手が大尉でもねじ込めるくらいには、シュンエイ様んちは結構いいお家ってわけなんですか?」
「大尉に対しては、うちは少し小さすぎる店よね。だから側室で我慢したんじゃない?それに、正室が子供産んでも、大尉のこの屋敷を継ぐでしょ?皇帝陛下の座が溢れてきたら、大尉の家なんて継いでらんないじゃない」
「現金だなー」
清々しいほどの棚ぼたドリームだ。宝くじレベルではなかろうか。
だが、それが現実となれば大尉にも良いお話である。
しかし、シュンエイには手を出さない。そこが謎だ。
とっとと子供を作った方がお得に感じるのだが。
「まあね、さすがにそれは突飛すぎるって言うか、究極って言うか。飛躍しすぎて、無理あるわよね。でもほら、大尉のような方に嫁げたおかげで、お家の方も潤うでしょ?大尉の家を足がかりに、商売を大きくできるわけだし」
保証的な話だろうか。大尉がバックにいるほどの家なのだと。
ネーミングバリューが強くなる。そんなレベルの話。
「あとはほら、ここを拠点にして、他の家の方々に売り込みされるんでしょ?懇意にされているいい家とかあるわけだし」
「商売するのに、このお屋敷使うんですか?」
「違うわよ。シュンエイ様の従者の中に、シュンエイ様のお父様の従者が紛れ込んでるの。売り込みをするのには行き来が大変でしょ?だから、ここでこっそり、ってことよ」
店舗ならぬ、事務所を立ち上げているのだ。
ここを経由して、王都でスポンサーや顧客探しをする。抜け目のないことである。
それがもっともな目的なのかもしれない。
そしてふと思う。
「結局、シュンエイ様のお家って、何やってるんですか?」
「何よそれ、今更ねー。刀や剣の売買でしょ」
そんな物騒な商家だったのか。
そうだとしたら、刀鍛冶など必要ないだろうに。大尉が文を渡して数多く作ることはない。シュンエイの父親に頼めば、武器など簡単に手に入るのだから。
「うん?」
「何よ」
納得いかない。と頭を傾げていると、キノリに不審がられてしまった。けれど、どうにもしっくりこない話である。
武器を集めたいならば、簡単に集められる立場を持っているわけなのだ、大尉のいるこの屋敷は。
では、あの刀鍛冶は何なのだろう。
文を渡したのならば、新しい武器がほしいとかではないのだろうか。
大尉が直々に、そんな文を出すわけではないだろうが、礼の文とも考えられる。
あの刀鍛冶は、ただの大尉のための物を作っているところなのかもしれない。由緒正しい刀鍛冶であるとか。想像であるが。
そう考えると一つの結果が出てしまうのだ。
ハク大輔の元、大尉を中心にハク大輔の部下たちを集め、ナミヤの屋敷でその用意を行なっている。
そして、武器はシュンエイの父親が手配をし、その連絡を、事情の知らない理音がしているのだ。
ナラカの考えが本当であれば、この事実はわかりやすく謀反の疑いがある。
本来ならば皇帝になるはずだったハク大輔が謀反を起こすのは道理であり、大尉の動きはそのためのものになってしまう。
そうだとしたら、フォーエンに味方はいるのだろうか。
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