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第4章 ゲートキープ

4-11 手紙

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「さぼじろー?  えっ?」
  回想を聞いていた記者が目を白黒させた。
「では『ゲートキープ』は、さぼじろーさんのお姉さんに贈る歌?」

  窓の外で西日が傾いていた。
  応接間に赤い光が差し込み、記者の瞳を照らした。

「そういうことです。7年経った今でも、彼女のピアノ音源を切り貼りして使っています」

  コーヒーを一口飲んだ。
  氷で薄まった黒い液体が、悲しい思い出を語った喉を潤した。

「リリースカットピアノは癒しと中毒性の象徴で……『サウンド・ドラッグ』にこだわるようになった原点です」

「なるほど。『中毒的な』ボカロ曲は多数ありますが、ぽめPさんは実体験に基づいて癒しと中毒の音楽を作っているんですね」
  記者が納得したように、うんうんと頷きながらメモを取った。

「最後に、ぽめPさんにとってボカロってなんですかね?」

  いったん壁に目をやった。
  応接間の壁紙が、本棚に沿って日焼けしていた。

「……手紙、ですかね」

  届かないと分かっていても、出し続けてしまう。
  返事はないと分かっていても、待ち続けてしまう。

「だけど生身のぼくと違うのは、ボーカロイドは待ち続けてくれるということです。永遠に」
「永遠に?」
「人間じゃないので」
「……ピノキオピーの『匿名M』を再現したボカロPは初めてですよ」

  元ネタを察した記者が、忠実に再現して締めくくった。

「えー、本日は貴重なインタビューありがとうございました。それでは、さようなら」
「さようなら。ぽめ……あっ匿名Pでした」

  (第4章「ゲートキープ」  了)
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