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第4章 ゲートキープ
4-6 音源
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祈る気持ちばかりで何もできなかった。
昏睡状態に陥ったカオリさんは、搬送された総合病院のHCU(高度治療室)に搬送された。
そのまま入院して、1週間が経っていた。
授業には出席していたものの、集中できるはずがなかった。
週2のシフトで入っていたアルバイトは休んだ。
女性客に話しかけられたら、きっと泣いてしまうと思った。
心の拠り所になったのは、wowakaがリリースしたばかりの「アンノウン・マザーグース」だった。
切ない歌詞と哀愁を帯びたメロディの背景で、ロックが力強く鳴っている。
初音ミクが「あなた」に歌う言葉が自分と重なった。
【世界があたしを拒んでも 今】
ODは他人を巻き込みながら、人生をゆっくり壊していく。
倫理的に、社会的に、許されない。
薬剤師の卵として、絶対止めないといけなかった。
この気持ちは、どうしたら許される――?
ベッドからだらりと垂れた左手が、こつんと床に触れた。
スマホがピロンと鳴って、赤い通知マークが点灯した。
見知らぬアカウントからLINEメッセージが届いていた。
内容を見た途端に、跳ね起きた。
「弟です。姉が目覚めました。これを送るよう頼まれました」
1件のボイスメモ。
指が震えた。添付ファイルを開いて、再生ボタンを押す。
流れたのはピアノの音色だった。
録音された日付は、搬送された日の2日前。
あの優しい音が、譜面のない自由な世界で輝いていた。
「これ、もしかして――」
昏睡状態に陥ったカオリさんは、搬送された総合病院のHCU(高度治療室)に搬送された。
そのまま入院して、1週間が経っていた。
授業には出席していたものの、集中できるはずがなかった。
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女性客に話しかけられたら、きっと泣いてしまうと思った。
心の拠り所になったのは、wowakaがリリースしたばかりの「アンノウン・マザーグース」だった。
切ない歌詞と哀愁を帯びたメロディの背景で、ロックが力強く鳴っている。
初音ミクが「あなた」に歌う言葉が自分と重なった。
【世界があたしを拒んでも 今】
ODは他人を巻き込みながら、人生をゆっくり壊していく。
倫理的に、社会的に、許されない。
薬剤師の卵として、絶対止めないといけなかった。
この気持ちは、どうしたら許される――?
ベッドからだらりと垂れた左手が、こつんと床に触れた。
スマホがピロンと鳴って、赤い通知マークが点灯した。
見知らぬアカウントからLINEメッセージが届いていた。
内容を見た途端に、跳ね起きた。
「弟です。姉が目覚めました。これを送るよう頼まれました」
1件のボイスメモ。
指が震えた。添付ファイルを開いて、再生ボタンを押す。
流れたのはピアノの音色だった。
録音された日付は、搬送された日の2日前。
あの優しい音が、譜面のない自由な世界で輝いていた。
「これ、もしかして――」
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