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第2章 スプーン・ダンス
2-5 本音
しおりを挟む半日もすると同調コメントは次第に減り、わたしに対する批判に飲み込まれていった。
「どんな活動しようと人の自由ですよね」
「障害者は活動するなと?」
「友達ムーブで草 ブーメラン乙」
自分でやったこととはいえ、気が滅入った。
授業に集中できるはずもなかった。
放課後、駐輪場に向かって気だるく歩く。
「とーか!」
声を掛けられる。今、一番聞きたくない声。
振り向くと、ひなのがわたしの背中を追い掛けてきた。
「ねーねー、カラオケ行こう」
「は? いやだ」
冗談じゃない。状況を分かってない、こいつ。
「何? 自慢する気? 自分が『推し』の歌い手になったからって」
「ちがう。相談があるの」
「は? 相談?」
もっと意味が分からない。
困惑していたところに、美咲と拓海、やぎすけが合流する。
「久しぶりに5人そろったし、いいんじゃない」
「そういう問題じゃない。気まずすぎる」
「あー」
やぎすけが八重歯を覗かせて笑った。
「そっかあ。ひなのと桃花と拓海! ここ、三角関係だもんな」
「堂々と地雷を踏むな」
拓海が口角を引きつらせた。
ひなのは聞いてるのか聞いてないのか、会話をにこにこして聞いていた。
ちょっと、ぽめPっぽかった。会ったことはないけれど。
苦い感情がじわと湧く。
わたしはずいと前に出て、自分とひなのを交互に指差した。
「分かってる? あんたは拓海の元カノ、わたしは今カノ。障害者ぶって甘えるあんたのことが嫌い。SNSに愚痴も書いた。あんたもわたしが嫌いでしょ? 今さら、何の相談なの」
ひなのはぽつりと言った。
「嫌われてるの、知ってる」
「え?」
「迷惑かけてきたのも、知ってる。でも桃花は我慢してくれてたじゃん。拓海も。嫌いになんか、なれないよ」
わたしたちの顔を見ながらゆっくりと、言葉を選ぶ。
「朝は嘘ついてごめん。やっぱりほんとのこと、話したいの」
どんな言葉を返したらいいのか、迷ってしまった。
たぶん、拓海も一緒。
何度も唇に隙間をつくっては、言葉が空気になって消えていった。
ほんとは、分かっていたんだ。
1133件のいいねと2543件のリポストをもらうよりも、5人でいるのが一番大事ってこと。
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