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転生者

第65話

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 俺達は今、王都のラボで順調に装備強化中だ。







 え?



 王都のラボとはなんぞや?





 うん、これが話せば涙、聞くも涙の物語があったりなかったりするのだ。





 簡単に言うと、ヤマトの祖母からの好意で屋敷にある離れを俺達に貸してくれたのだ。

 正直フィアールよりもここの方が素材にしろ研究道具にしろ結構手に入りやすいというメリットはある。都会だからね。



 が、もちろんデメリットもある。

 ヴァングルがいることだ。いや、まぁ本来アイツの職場だから当たり前なんだが。

 他にも、俺達は獣人だってことで無駄に喧嘩を売られたり、法外な値段で取引しようとするヤツの多い事。



 ヤマトの手が空いてたら一緒に買い物に出かけるようにしているわけだが、ヤマトはヤマトで王都では死んだはずの人間なのでフードを被った怪しい二人組の誕生なわけだ。

 それでも辛うじてヤマトは人族なのが分かるようで、ヤマト相手には適正価格で売買できるので助かっている。

 ヤマト以外となると屋敷の人間に頼むのはちょっと気が引ける。居候させてもらっている身だしな。もちろんヴァングルなんかもってのほか。こちらからお断り願う。



 そんなデメリットを抱えつつも、俺達の研究はすすみ装備は無事にレベルアップした。





 まず、俺の強化腕パワーアームは、籠手状だったものが今では腕全体を覆うサイズになっている。範囲が増えたことにより、俺の腕力はうなぎ上りだ。単純に腕と二の腕をセットに出来たのは肘関節部にヤマトが研究していた魔力繊維を利用させてもらった。

 右に内蔵されているパイルバンカーの素材はアダマンタイトだ。各段に硬度が増しそれにより射出速度も増し増しにしたので攻撃力はかなり上がっている。左のシザーアンカーの性能はそのまま。



 サラの強化靴パワーブーツは、ニーハイブーツだったものが今ではサイハイブーツになっている。絶対領域が減って少し寂しいのは内緒だ。瞬発力、蹴りの威力、ジャンプ力、総合的に上昇している。

 ちなみにアダマンタイトを使って新しく如意棒も作っていた。やっぱり至近距離限定の蹴りだけじゃなくて中距離対応の武器が欲しかったらしい。





 シェリーさんは武器はどうやらそのままらしい。ただ、俺達の研究に刺激されたようで、普段使っているヘルメットはいわゆる半ヘルと呼ばれるタイプだったのだが、今ではフルフェイス一歩手前、頬や耳まで覆われるような形状に変わっている。

 ホース付のマスクでもしたら戦闘機のパイロットが使ってそうな形だ。ちなみにどんな効果があるのか教えてくれなかった。いったい魔力筋を原案にして何を思いついたのかさっぱりわからん。



 それだけじゃなく、肩当てのようなものを作り出し装備するようになった。なんでも肩こり解消らしい。魔力筋を使って肩こり解消グッズって……って思ったが口に出さなかった。出さなかったのに



「胸が大きいと~肩こりになりやすいのよ~」



などと言い訳していた。俺は何も言ってないし聞いてない。









 最後にヤマトはウエストアーマーを開発装備している。どうやら体幹がかなり上昇するようだ。強化具合は俺やサラほどじゃなさそうだけど。こいつの場合エアバック仕様の服のほうが凄いのは変わらない。





 とまぁ、俺達パーティーの研究成果と装備強化具合はこんな感じだ。



 これだけの強化ができたのには俺達4人の知識を共有したからってのもある。

 俺とサラはより硬度の高い素材を素に単純に武器としての性能および魔力筋として補助される強化幅を追いかけてきたわけだ。ヤマトについては魔力繊維という俺達とは違うアプローチで研究していた。

 この二つの研究があったから肘や膝など関節部分もアーマー化していけたわけだ。



 そしてシェリーさんが進めている研究アプローチは魔力筋や魔力繊維の素材が加工前と加工後で変化する魔力抵抗値を調べていたようだ。

 どうやら、この世の物質には全て魔力を通すことが出来る……というわけではないのだ。モノによっては魔力を通さないものもあれば、とてもスムーズに魔力を通すことができるものもある。

 そして俺達が加工した後の魔力筋については、任意で魔力を通したり通さなかったり出来るようになっていた。



 電気でいえば半導体。



 魔力なので魔力半導体(仮)だ。





 これは面白い!

 魔力をエネルギーにして色々なものが機械化できるのではないか!?





 俺はこの世界でビルゲイツになり得るのでは!?いや、スティーブジョブズか!?





「魔力半導体を作るには~コストがかかりすぎるから~今のままでは無理ね~」



 というシェリーさんの一言で俺のビルジョブズ化計画(仮称)は頓挫した。
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