頭脳派脳筋の異世界転生

気まぐれ八咫烏

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転生者

第60話

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 里に戻った俺達を待ち受けていたのはちょっと予想外だった。

 おさの家に行くと何やら慌ただしい。


 何があったのか知りたかったが、さっそくおさが面会するという事なので、さっそく合う事になった。




「賊!?」

 なんとも物騒な話だ。


「それでアジカナがな。まぁ命に別状はないのじゃが……」

 アジカナってあの武器屋のおっちゃんか!
 俺達のアダマンタイトを精製してくれていたはずだ。


 どこか言いずらそうにするおさだが


「お主たちのアダマンタイトが盗まれた。すまぬ」

 同族がケガをしたのが気がかりだろうに、深々と頭を下げられた。


「おっちゃんは大丈夫なの?」

「回復に向かっておる。安静にしておれば明日明後日には動き回れるじゃろう」

 そっか、よかった。

「よし、捕まえに行こう!」

「盗賊退治ってわけね!」
 サラも同意してくれたし、急がなきゃ。

「盗賊に心当たりは?」

「待て待て。確かにあのロックイーターを倒したお主らじゃ。強いのじゃろうが、闇雲に向かっては危険じゃ」

 多分、おっちゃんは俺達がアダマンタイトを持ち込んだから狙われたんだ。
 となればほとんど俺達のせいじゃないか。

「このままじゃおっちゃんも浮かばれねぇ。俺が仇を討ってくる!」

「いや、死んではおらんぞ? それに最近はこの辺りに盗賊が出るという話も聞かん。手がかりは無いぞ」


「ということは流れの盗賊がたまたま襲ってきたのでしょうか」

「それはどうかしら~。その盗賊を見た人の話が聞きたいわね~」

「シェリーさん、そんな悠長にしてられない。時間が経てば経つほど逃げられる可能性が高くなる。すぐ行こう!」

 頭脳派の俺らしく論理的思考により導き出された結論は即出発だ。

 俺は立ち上がると部屋を出た。
 すぐ後ろにサラも付いて来てくれたが、シェリーさんとヤマトは来る気配がなかったのは残念だが、駆け出し盗賊なんか俺達二人で余裕だろう。

「ゲンスイさん、どこに向かってるの?」

「簡単だ。俺達は鉱山方向から里に戻って来たけどその間それっぽい賊なんか見かけなかった。となれば鉱山とは反対側に逃げて行ったんだろう」

 完璧な推理。
 のはずだけど、サラの表情は晴れない。

「賊なんて言うくらいだから人目は避けると思うのよね。だったら、あっちの森が怪しくない?」

 うん、確かに。

「よしじゃあそっちに行ってみよう」


 森を走り抜ける俺にぴったりついてくるサラ。
 獲物を追いかけるのは無条件で楽しくなってくるのはきっと狼系の獣人だからなんだろう。
 もう日が暮れかけた森で高速で走り抜ける俺達にとって視界の確保が難しくなる時間帯。もっとも、視力以外の感覚で余裕なんだけどな。

 おや?


「ちょっと待て」

 立ち止まり、気になった匂いの元を探る。

 人の匂い?


 サラに注意を促して気配を殺し、匂いの元を確認しに行く。




 いた!
 黒装束のやつが二人。

 くっくっく……逃げられると思うなよ!



 でもこいつらこいつらこんな所で何やってるんだ?逃げるわけでもなく休憩している訳でもなさそうだな。
 まぁいっか。ハンドサインで俺が狙う方をサラに伝えると無言で頷く。飛び出すタイミングもハンドサインで。

 3……2……1……


 ゴー!



 一気に接敵して背後からの一撃!

 その場に崩れ落ちる黒装束。
 よしよし、上手くいった。

 サラのほうも、同様に処理できたようだ。



「さーてと、泥棒さん。盗んだものを返してもらおうか」

 悶絶している黒装束を後手にして拘束。
 取り敢えずボディーチェックしておくか。胸元が膨らんでるからここに仕舞い込んでるんだな?
 ほら、返せよ。

 あれ?

 柔らかい!?


 アダマンタイトは硬いはず……

 おかしいな。めんどくさい、ちょっと強引に脱がすか。


 ぽろん!?

 え? 
 ちょっと待って。

 こいつ女だったのかーー!


 「ゲンスイさん何してるのかしら?」



 ビクッ!

 突然後ろから声かけないでくださいよサラさん。ビックリするじゃないですか……


「いや……物騒な物持ってたら厄介だから武装解除しておこうと……」


「私にはそうは見えないのはなんでかしらね」


「こっちのヤツは持って無さそうだったんだが、そっちはどうだ?」


 俺のエアーリーディングスキルが発動してこのままではよろしくないと判断。強引に話題を変える!
 秒で露出してしまった胸部に黒装束の一部を押し付けて隠しておくのを忘れない気遣いはさすが俺としか言いようがない。


「持ってないわ」
 会話とは別にすごぉ~く睨んでませんか?
 ええー、押し切る!

「こっちもなさそうだ。ハズレだったか?」

収納庫インベントリ持ちかもしれないわよ」

「そっか。だったら面倒だけど自白してもらうしかないな。拘束したし、たたき起こそうか」


「そうね……っ! 危ないっ!」

 
「え? グゲッ」

 突然サラに突き倒されて顔から地面に突っ込んでしまった。

 痛む顔を上げて周囲を見ると、さっき拘束したはずの黒装束の胸にナイフが突き刺さっていた。
 射線から見て、サラが突き飛ばしてくれなかったら俺に刺さっていた……
 ナイフが刺さった部分から血が垂れている。心臓を一突き、これは即死だな。

「ありがとう、助かった」


「それより警戒を」


「ああ」

 油断、していた訳じゃないんだけどな。射線方向をうかがっても匂いがしない。くそっ、匂い対策してやがるのか。


「ゲンスイさん、もう一人の賊を守って!」

 それだけ言うとサラはどこにいるか分からないナイフを投げたヤツを探しに飛び出していった。

 口封じに賊が賊を始末しようとしている……?

 だとしたらサラの言う通りもう一人の捕らえた賊は生かしておかないと盗まれたアダマンタイトも情報も永遠に消え去ってしまう。


 さくっともう一人の賊の前に移動すると、正面に土壁アースウォールで防御壁を生成。すでに手足はサラが拘束してくれていたが逃げられても困るのですぐ近くの木に縛り付けておく。

 さて、曲者はどこだ?


 くそっ!
 匂いの無い相手がこんなに厄介だと思わなかった。

 この世界に転生してからというもの、嗅覚が異常に効くのでそれを当てにして動くのが当たり前になっていた。

 それが突然通用しなくなると一気に緊張感が増す。

 見える範囲にはいない……と思うが。





 両手に魔力を集め水球を作り出しいつでも投げれる体制を確保する。
 

 ん?
 今不自然に木の葉が揺れたか。

 ちょうどあっちは風下、匂いは頼りにならないが五感を使って気配を探る。

 二人……いや三人か?

 飛び出してきた瞬間を狙ってやるさっ!!
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