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転生者

第59話

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 翌朝俺達は再びおさと合う事になった。

 その時にアダマンタイトの精製をさびれた武器屋のおっちゃんと約束していたことを話した。

「アジカナとそんな約束をしておったのか。恩人の頼みじゃ、もちろん構わんよ。アジカナよ、高圧縮炉棟の使用を許可しよう」

 っていう感じであっさり許可してもらったのだ。
 さびれた武器屋のおっちゃん、アジカナっていうんだな。そういえばずっとおっちゃんとしか呼んでなかったし認識してなかった。


 そして隣にあった煙突のある建物へと案内されてアダマンタイトを全部渡して精製をお願いした。

 俺達が次々と収納庫インベントリからレア素材であるアダマンタイトを出すものだから、開いた口が塞がらなくなっているおっちゃんを見るのは面白かったぜ。


 その後やっと宿に戻った訳なんだけど。


「お嬢さっ……ヤマト殿! ご無事で何よりです!!」

 半泣きでヤマトに飛びついていたヴァングルは、本気で心配していたようだ。まぁ予定より長引いた上におさ泊めて貰ったりしたから心配するよな。

「さてと」
 と一息ついたタイミングで切り出した。

「アダマンタイトの精製に3日はかかるって言ってわよね。その間どーする?」

「ちょっと装備のメンテナンスしたいな。サラも如意棒があれだし……」
 というと、ちょっと眉をしかめた表情になった。

 やっぱり愛用している武器が折れたのはショックだったのだろう。

「そうだけど、せっかくだからアダマンタイトを使って作り直したいから後回しね」


「そっか、そうだよな。俺もパイルバンカー使いすぎたせいか強度が落ちたんだよな。アダマンタイトで作り直そうかな」

「となると~、とりあえずは通常のメンテナンス程度しかできないわね~」


 なんだかんだ言って俺達は冒険者である前に研究者で製作者だからそういうメンテナンスは当然お手の物。

 という事で今日は大人しくメンテナンスの日となった。


 ヴァングルは甲斐甲斐しくヤマトを世話する一方、食事なんかはちゃんと俺達の分まで作ってくれたりしていた。
 こいつ、思ったよりもイイヤツかもしれない。

 今後の旅に必要そうなものはすでに買い出ししてきているらしいが、思ったよりも長く滞在することになり食材やらなにやらちょくちょく買い出しに行っていた。

 作った料理をよそったりするのはヤマトの分と自分のだけで、あとは好きにしろって投げやりな感じだったり、先によそうのをいい事にヤマトの所へは具沢山だったり、人様と同じものを食べれることに感謝しろとか言ったり……

 あれ?
 やっぱりイヤなヤツかも。



「ヤマトー、魔導繊維の基本的な理論構造は分かったけど俺の強化腕パワーアームとの相性を考えてシールド状になるようなのを考えてみてるんだ。それでこの部分なんだけど……」

「おい犬コロ! ヤマト殿に近づきすぎだ。離れろ」

 もう、いちいち邪魔すんじゃねーよ。


「ゲンスイさん、魔力筋の基本的な理論構造はこれでいいんですよね?」

「どれどれ」

 と言ってヤマトが俺に近づいた時は、何も言われなかった。

 あいつはたぶん気分屋なんだ。
 めんどくさいヤツ。


 サラとシェリーさんはメンテナンスに必要なものを探してくるとか言って二人だけで出かけてしまったし。

 あー、もう。
 ヴァングルの事は気にしないようにしよう。



 そんな一日。






 翌日、俺達が朝食を終えたタイミングを見計らう様に来訪者があった。どうやらおさからの使いの者だった。

 なんでも、見せたいものがあるらしく鉱山の地下空間まで来て欲しいという物だった。俺達は断る理由もないので行くことにした。
 
 ちなみに俺達が帰還したあとドワーフ達がロックイーターを駆除できているか調査するという話だったので昨日のうちに調査は終わっていると思うんだけどな。

 そして俺達は一日ぶりに地下空間へとやってきたわけだ。


 一昨日と違い熱気はすっかり抜けたようですこしひんやりした空気が漂うが、たくさんのドワーフ達が採掘を再開していて違う意味で熱気があった。


おさからみなさん達に見せろって言われてるのはアレです」

 案内してくれた若そうなドワーフが指さした場所は地下空間の最下層、例の魔法陣があった場所だ。
 
 そこには数人のドワーフが集まっていてみているが、俺達が見ても分からないんだけどなぁと思いながらも一応そこまで行ってみる。

 するとそこには一昨日俺達が見たものとは違う物があったのだ。


「これは~、池かしら~?」

 シェリーさんが言う通り、そこには池があった。

 一昨日の段階では熱気がすごくて俺が頭から水を被ってもすぐ乾いてしまうような状態だったのに。

 熱かった空気が冷やされて水になって底で溜まったのかな?ありえなくはないような。それとも地下水脈でも流れていたのだろうか。


「はい、その池の中を見てください」

 ドワーフだかりが出来ていたところをちょいと声を掛けて割って入り、池を見てみるとそこには、照明に反射して光る砂粒がちらほらとあった。

「これは……?」

 手が届きそうな場所にあった光る砂粒をひとつ手に取ってみる。

 キラキラと輝く砂粒は照明に反射して光っているだけではなく、自らも光っているかのようだった。

「きれいね」
「宝石かしら~」
「素敵ですね~」


 女性陣(プラスだが男だ1名)は俺の手に顔を近づけ、乙女の瞳になりその輝きを見ていた。


「ちょっと見せてみろ!」

 俺の手から奪う様に、それでいて丁寧に取り上げると自分の顔に近づけ凝視する。

「なにしやがんだっ!」

 ヴァングルの野郎は相変わらず無礼なやつだ。俺の抗議の声など聞こえていないかのような態度。やっぱり感じ悪いぜ。

「これは……魔宝玉! ……の欠片か?」


「おそらくそうです。それでおさが皆さんの意見を聞きたいという事です」

 意見を聞きたいと言われてもな。俺達はここの魔物を倒したくらいしか……まてよ?

 そういえばここには魔法陣があったな。あれが魔宝玉を作る魔法陣?
 いやいや、そんな魔法陣聞いたことも無い。

 改めて池をよく見る。

 すると、昨日はあったはずの魔法陣がきれいさっぱり消えて無くなっていた。

 どういう事だ?

「なぁ、魔法陣が消えてないか?」

 俺の見間違いってことは無いだろうけど、念のため他の三人にも確認する。


「見当たらないわね」
「一昨日は確かにあったはずよね~」
「消えたようですね」

 魔法を代行するような魔力で作られた魔法陣なんかの類だと、確かに魔法が発動したら消えてしまう。だが、ここにあった魔法陣はそういう類ではなさそうだったけどな。

 それ以外に可能性があるとすれば……

「サラの上級火魔法の副産物?」


「それは無いと思うわよ?今までこんな事なかったし」
 俺の説を真っ向から否定する。でもま、今まで無かったんなら違うか。
 そうだよな。

「過去に同じような威力で使ったことあるの?」
 そうだよ、ナイスだヤマト。同一条件で使った試しがないなら

「そういう訳じゃないけど、でも上級魔法が使えるのは私に限らないじゃない? でも、過去にそんな話は聞いたことないわよ」

 確かに。

「魔法の威力が凄かったのは確かだけど~、考えられる事はいろいろあるわよ~。謎の魔法陣があった事~、ここが鉱山である事~、ちょっと普通じゃない魔物がいた事~、普通だけど異常な量の魔物がいた事~、それに一昨日は気付かなかっただけで元々あった可能性だってあるわ~」

 ずっと考え込んでいたシェリーさんが次々と可能性を提示してくる。

 そんなにいっぱい言われたら訳が分からなくなるじゃないか。


「ちょっと待って。この水……」

 そう言って手に取って観察するサラ。そして疑惑が確信になったのか口を開いた。


「やっぱり。この水、魔力をすごくたくさん含んでるわ。ちょっと純度が高すぎるから飲むのはやめたほうがいいかもしれないくらい」

「おい、魔力豊富な水だってよ!」

「だったらこいつで剣を打てばいいもんができそうじゃないか?」

「おう、やってみてぇ。さっそくおさに伝えよう」


 何やらドワーフ達が盛り上がってるが。

「では、おさにも見せましょう」

 そう言って俺達を案内してきたドワーフがポーションを入れる瓶に水を入れ、そして魔宝玉の欠片と思われるものをいくつか拾うと大切そうにしまい込んだ。



「では、一通り見て頂いたので戻るとしましょうか」


 そうして俺達は里まで戻ったのだった。




 里に戻った俺達を待ち受けていたのは――。
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