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転生者
第56話
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MPを使い果たして疲れたサラを座らせて事の成り行きを見守る。
下にいたロックイーターが普通のヤツならオーバーキルも甚だしいはずだ。
しばらくすると酸素不足か炎は形を潜めてきたので水壁越しではあるが視界が開けて来た。
「予想通り、これはオーバーキルだ」
「間違いなさそうね~」
地下空間下を凝視するが、黒焦げの塊が見えたが全く動く様子もない。
「それにしても、水壁越しでもすごい熱気だな」
俺達がいる横穴でも気温がどんどん上がってる気がする
「これってもしかして~」
「どうした?」
「あまりよろしくないというか~」
何かに気付いたのかシェリーさんがそわそわしている。
一体何が……
と、考えようとした時
後方から魔物独特の叫び声が聞こえて来た。
「地下空間の熱気が他の横穴を伝って後方から来た……?」
「そして~あのデカいロックイーターもきちゃったわね~」
これだけの熱気だ。ロックイーターに火魔法が有効ならば多少なりともダメージが入っているはずだ。そんな状態なら熱の無い方に逃げればいいものをこっちにやってくる。
それはつまり俺達を獲物ではなく敵と認識してるって事じゃないだろうか。
とはいえ、こちらの状態は……
サラはMP切れでダウン。ヤマトは地下空間の熱気を防ぐため水壁で動けないと。
俺とシェリーさんで食い止めるしかないってか。
――上等!
俺は両手に魔力を集めつつ歩き出す。
もちろん魔力は火魔法の為だ。
横穴の奥が動いているのが見て取れた。もうあいつは土の中じゃなくこの横穴を通路として移動してきているのだろう。
距離が縮まるにつれ、やつの巨体が見え始める。
まだだ。
もう少し。
よし、射程に入った。
「これでもくらいやがれーーっ!」
手に集まった炎の塊をヤツの大口の中に投げ込んでやった。
すぐ後ろから魔法火矢が飛んでいく。それを意識しつつも再度手に魔力を集める。
タタン、タタン、タタンと飛んでいくシェリーさんのツインアルテミスボウの攻撃。
あれって2連ボウガンのはずだけど?
速射性やばくいないですか?
多少なりともダメージが入ったようで、デカいロックイーターの進行速度が落ちたぞ。
だったらこのままもう一発だ。
「俺の投球は250キロ以上だぜ! くらえーー!」
口内へのダメージを嫌がってかデカイーターの口が閉じ進行速度も落ちた。
が、止まらない。
くそっ、もう一発撃つだけの距離が無い。
だったら!
俺は腰を落として踏ん張りを利かせ右拳に魔力を集める。今度は魔法発動じゃない。得意の強化腕のほうだ。
相手の進行速度を利用してのカウンターならば威力倍増っ!
ってマンガで読んだことある。
理に適った方法だろう?
タタン、タタン、タタンとシェリーさんのツインアルテミスボウからの攻撃は続いているが意識と気合を右拳に集める。
「はぁぁああああああああ」
口を閉じたまま突進してくるデカイーターとの距離がゼロになる瞬間目がけて全開拳を打ち放つ!!
「おりゃああああああああああああああぁあぁあ……ぐぇっ!」
意識が一瞬飛びかけた。バフ魔法がなかったらやばかったかもしれない。
「「きゃぁああああ」」
くそ!
渾身の一撃をカウンターで食らわせてもデカイーターの突進を止めることは出来ず、そのまま後方に吹っ飛ばされてしまった。
マンガの知識に頼ったのが間違いだったか!?
上手い事水壁が衝撃を吸収してくれたので助かったが、突進の勢いで横穴から地下空間へ放り出されてしまった。
なんとか体制を整えてすり鉢状になっている地下空間で足場を確保しつつ着地する。
シェリーさんもうまく着地できたようだ。サラはヤマトが身を挺してかばったようで、例のエアバックみたいな防具のおかげでこちらも無事のようだ。
「あっちぃ!!!」
慌てて両手に魔力を集め水を作り出すと頭からかぶった。
ふぅ、ちょっとましになった。
俺は暑いのが苦手なんだよ。
落ち着いて周りを見ると、ヤマトはサラと一緒に水壁を球状に貼り凌いでいた。
シェリーさんは……何もしてないけど平気そうだな。
「シェリーさん大丈夫か?」
「大丈夫よ~、私暑いのは耐性あるから~」
強がり、ではなさそうだ。
全身から痛みが声を上げて来たが優先度は低い。まずは俺達をここに突き落とした犯人、デカイーターは・・・と。
いた。
すり鉢状になっているこの地下空間の地表を、グネグネと走り回ってやがる。残った熱だけでダメージが入っていそうな感じだが……
そうそう都合よくはいかないらしい。
デカイーターが俺達を補足したのか、またしても大口を開けてこちらにまっすぐ突っ込んでくる。
よく見ると最初程口が開き切ってない。カウンター攻撃が効いたってことでいいよな。
口を開けてるならこいつを食らいやがれ
「火弾」
口の中に再び火の塊を投げ入れてやる。するとやはり口内にダメージが入るようで口を閉じて突っ込んできやがる。
タタン、タタン、タタン、タタンとシェリーさんの援護射撃も入っているが突進は止まらない。
今度は足場が安定しないがそうも言ってられず、腰を落として踏ん張りを利かせまたしても魔力を拳に集める。いけるさ、今の俺はバフ魔法によって強化もされてるんだぜ。
「ゲンスイ君~無茶よ~!」
シェリーさんの声が響いた。
下にいたロックイーターが普通のヤツならオーバーキルも甚だしいはずだ。
しばらくすると酸素不足か炎は形を潜めてきたので水壁越しではあるが視界が開けて来た。
「予想通り、これはオーバーキルだ」
「間違いなさそうね~」
地下空間下を凝視するが、黒焦げの塊が見えたが全く動く様子もない。
「それにしても、水壁越しでもすごい熱気だな」
俺達がいる横穴でも気温がどんどん上がってる気がする
「これってもしかして~」
「どうした?」
「あまりよろしくないというか~」
何かに気付いたのかシェリーさんがそわそわしている。
一体何が……
と、考えようとした時
後方から魔物独特の叫び声が聞こえて来た。
「地下空間の熱気が他の横穴を伝って後方から来た……?」
「そして~あのデカいロックイーターもきちゃったわね~」
これだけの熱気だ。ロックイーターに火魔法が有効ならば多少なりともダメージが入っているはずだ。そんな状態なら熱の無い方に逃げればいいものをこっちにやってくる。
それはつまり俺達を獲物ではなく敵と認識してるって事じゃないだろうか。
とはいえ、こちらの状態は……
サラはMP切れでダウン。ヤマトは地下空間の熱気を防ぐため水壁で動けないと。
俺とシェリーさんで食い止めるしかないってか。
――上等!
俺は両手に魔力を集めつつ歩き出す。
もちろん魔力は火魔法の為だ。
横穴の奥が動いているのが見て取れた。もうあいつは土の中じゃなくこの横穴を通路として移動してきているのだろう。
距離が縮まるにつれ、やつの巨体が見え始める。
まだだ。
もう少し。
よし、射程に入った。
「これでもくらいやがれーーっ!」
手に集まった炎の塊をヤツの大口の中に投げ込んでやった。
すぐ後ろから魔法火矢が飛んでいく。それを意識しつつも再度手に魔力を集める。
タタン、タタン、タタンと飛んでいくシェリーさんのツインアルテミスボウの攻撃。
あれって2連ボウガンのはずだけど?
速射性やばくいないですか?
多少なりともダメージが入ったようで、デカいロックイーターの進行速度が落ちたぞ。
だったらこのままもう一発だ。
「俺の投球は250キロ以上だぜ! くらえーー!」
口内へのダメージを嫌がってかデカイーターの口が閉じ進行速度も落ちた。
が、止まらない。
くそっ、もう一発撃つだけの距離が無い。
だったら!
俺は腰を落として踏ん張りを利かせ右拳に魔力を集める。今度は魔法発動じゃない。得意の強化腕のほうだ。
相手の進行速度を利用してのカウンターならば威力倍増っ!
ってマンガで読んだことある。
理に適った方法だろう?
タタン、タタン、タタンとシェリーさんのツインアルテミスボウからの攻撃は続いているが意識と気合を右拳に集める。
「はぁぁああああああああ」
口を閉じたまま突進してくるデカイーターとの距離がゼロになる瞬間目がけて全開拳を打ち放つ!!
「おりゃああああああああああああああぁあぁあ……ぐぇっ!」
意識が一瞬飛びかけた。バフ魔法がなかったらやばかったかもしれない。
「「きゃぁああああ」」
くそ!
渾身の一撃をカウンターで食らわせてもデカイーターの突進を止めることは出来ず、そのまま後方に吹っ飛ばされてしまった。
マンガの知識に頼ったのが間違いだったか!?
上手い事水壁が衝撃を吸収してくれたので助かったが、突進の勢いで横穴から地下空間へ放り出されてしまった。
なんとか体制を整えてすり鉢状になっている地下空間で足場を確保しつつ着地する。
シェリーさんもうまく着地できたようだ。サラはヤマトが身を挺してかばったようで、例のエアバックみたいな防具のおかげでこちらも無事のようだ。
「あっちぃ!!!」
慌てて両手に魔力を集め水を作り出すと頭からかぶった。
ふぅ、ちょっとましになった。
俺は暑いのが苦手なんだよ。
落ち着いて周りを見ると、ヤマトはサラと一緒に水壁を球状に貼り凌いでいた。
シェリーさんは……何もしてないけど平気そうだな。
「シェリーさん大丈夫か?」
「大丈夫よ~、私暑いのは耐性あるから~」
強がり、ではなさそうだ。
全身から痛みが声を上げて来たが優先度は低い。まずは俺達をここに突き落とした犯人、デカイーターは・・・と。
いた。
すり鉢状になっているこの地下空間の地表を、グネグネと走り回ってやがる。残った熱だけでダメージが入っていそうな感じだが……
そうそう都合よくはいかないらしい。
デカイーターが俺達を補足したのか、またしても大口を開けてこちらにまっすぐ突っ込んでくる。
よく見ると最初程口が開き切ってない。カウンター攻撃が効いたってことでいいよな。
口を開けてるならこいつを食らいやがれ
「火弾」
口の中に再び火の塊を投げ入れてやる。するとやはり口内にダメージが入るようで口を閉じて突っ込んできやがる。
タタン、タタン、タタン、タタンとシェリーさんの援護射撃も入っているが突進は止まらない。
今度は足場が安定しないがそうも言ってられず、腰を落として踏ん張りを利かせまたしても魔力を拳に集める。いけるさ、今の俺はバフ魔法によって強化もされてるんだぜ。
「ゲンスイ君~無茶よ~!」
シェリーさんの声が響いた。
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