頭脳派脳筋の異世界転生

気まぐれ八咫烏

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転生者

第41話

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 階段を下りてきて一つ下層へと辿り着いた俺達だが、そこに広がる光景に閉口させられた。



 主にサラが。



 一つ上の層で幅20センチほどの一本道、それ以外は奈落というのがあり高所恐怖症っぽいサラが散々な目に遭ったわけだが、この層も同系統だったからだ。



「これ~、さっきの所よりも難易度高いわね~」



「落ちたらどうなるのか分からないのは上の階と一緒だが、足場が少ないな」



「アクションゲームにありそうね~」



 そこにはまたしても崖があり向こう側へと辿り着くためには、たまにある足場に飛び乗りながら進むらしい。

 しかしその足場が完全にゲームの世界だろうか、サイズはそれなりにあるが浮遊ブロックだ。

 ゲームっぽいという印象が一番ピッタリくる。




「これ、また同じ作戦でいくか、サラどうする?」



 せっかく回復していたサラがまたしても精神的に追い詰められていく。



「崖下が見えないのがダメなら~、一度光魔法の照光ライトを撃ってみるわね~」


 俺達の返事を聞く間もなく、サクッと魔力を纏め上げると崖下へと放った光源により様子が映し出された。



 だが、ただ深いということが分かっただけで底などは見えなかった。途中いくつか浮遊ブロックはあったが、落ちてたまたまブロックで助かるなんてことはないだろう。



「私は役立たずね。ごめんなさい、ゲンスイさんにすべて任せるわ」



 崖下が見えても見えなくても結果同じだったようだがしおらしいサラもかわいいのでもう何でもOKだ。

 すっとサラの前へ進み出て背中を向けつつしゃがむ。



 今度はおんぶでウハウハ大作戦だ!



 というのは建前で、おんぶのほうが動きやすいし最悪手が使えるからね。



 背中にギュッと抱き着いてくるサラを背負い、さっそく出発だ。


 うはっ!背中に柔らかい感触がががががが。


「魔物がいるだろうから気をつけて行きましょ~」


 シェリーさんの一言で我に返った俺は気を引き締める。


 気分はマリオ?いや、ロックマンだろうか。

 割とひょいっとジャンプしならが足場ブロックを駆け抜ける。途中、イービルアイや他にも空中に漂う様にいた魔物からの攻撃を躱しながら進む。



 何度か視界確保の為シェリーさんが光魔法の照明ライトを放っていたのだが、今いる場所よりもかなり下にあった浮遊ブロックの上に誰かがいるのが見えた。



 普通に考えたら魔物なんだろうが、どうにも違和感を感じた。



「シェリーさん、あそこにもう一度光源を放ってくれないか?」



「何か見つけたのかしら~?いいわよ~。照光ライト



 光源によって暗闇から浮かび上がったのは、浮遊ブロックの上でぐったりと倒れている一人の女の子だった。

「死体か……? あっ、動いたな」



「かすかにだけど~確かに動いたわねぇ~」



 どうしたものかとシェリーさんと視線を交わすが結論は出ず。



「さて、どうする?」



 まずは意見を聞いてみよう。



「私の感覚だと~、放置するってことはあり得ないんだけど~」



 実のところ、俺にも放置する考えはない。結局のところ最低限の道徳心みたいなものが同じなのはありがたい。

 ただ、どうやって助けに行くかという点だ。

 俺はサラをおぶっているから自由度は結構下がっている。今のところ魔物とは距離を取ったので攻撃されていないが、向こうの射程に入ったら遠慮なく攻撃されるだろう。



「もうすぐ向こう岸に着きそうよ~、一度渡り切って出直しましょ~」



「了解だ」



 思ったよりもあっさりと辿り着くと、一度そこでサラを降ろす。



「サラ、着いたぞ。大丈夫か?」



「ええ、ありがとう……」

 とは言うもののやはり怖かったのだろう、その場に腰を下ろしてしまった。



 そして俺はというと、背中の柔らかい感触が終わってしまった事を残念に感じつつも今度こそは声に出すなどという失態をしないよう細心の注意を払っていたのだった。




 今度は俺一人で先程見つけたポイントまで逆戻りしているが今度は両手がフリーなのでかなり身軽だ。



 ものの数分で到着。


 幸い魔物が近くにはいなかったので自分で照明ライトの魔法を使い目標を確認、浮遊ブロックの位置を把握して飛び移る。



 通常ルートよりもかなり低い位置へと飛び降りていき、少女の倒れているブロックへと辿り着いた。
 一応冒険者っぽい恰好とはいえるかもしれないが、肩と胸部分は魔獣の皮を使った鎧にフリルがあしらえてあったりお腹は丸出しだし、腰あてはミニスカート状になっていたり、アンクレットのようにリボンが付いていたり。ダンジョンにはとても似つかわしくない恰好だ。



「おい、大丈夫か?」



「ぅぅ……」



 生きてはいるようだが意識ははっきりしていない。

 急いで虚空庫インベントリからポーションを取り出すとゆっくりと流し込む。が、意識がないため上手く飲みこめない。

 仕方ないので自分で口に含み、口移しで飲ませてやることにする。

 女の子とはいえ、緊急処置だから大目に見てほしい。




 少しずつポーションを飲みこめたようだが思うような回復効果が見られない。少し負担をかけるかもしれないがサラ達の所まで連れて行って……



「ぅぅ、も……、と……」



 ポーションが足りなかったのか?追加で更にポーションを口に含み、口移しで飲ませてやる。



 しばらく飲ませる作業を続けていると反応があった。



「ぁり……がと……ぅ……」



 最初より少しは意識も取り戻せたようだ。だが回復したとは言えない。やはり一度戻ろうと思った時だ。



 グゥゥゥゥゥゥゥゥ~~~



 一瞬魔物でも来たのかと周囲を警戒した!





 がどうやら違うらしい。音は少女のお腹から聞こえてきた。



「おな……か、す、い……た」



 この世界に来ていなければ少し笑いそうになってしまうが、ダンジョンでは食料の確保がとても重要だ。

 ケガをしていなくても餓死する冒険者は一定数いるのが事実だ。魔物が徘徊するダンジョンで身動きがとれないまま飢えに耐え、そして救助されることなく終わる事はとても悲しいことだ。



「すぐに食わせてやる。移動するからもう少しだけ頑張るんだ」



 見つけた時より少しだけはっきりした表情でうなずいてくれた。



 少女を背負い、念のため腰部分を紐で結ぶと上へと向かい浮遊ブロックへジャンプしていく。









 来る時よりも倍ほどは時間がかかったが、問題なく元の場所へ戻ることが出来た。



「救助してきた。とりあえず安全な階段フロアへ行こう」

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