頭脳派脳筋の異世界転生

気まぐれ八咫烏

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転生者

第38話

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「これはどういう事かしら」



「4時間かけて降り出しに戻されたのか、それとも一度上の階に進む正解ルートだったのか」



「入ったところにゲンスイちゃんの血がついていたわ~」

 知りたかったような知りたくなかったような確定情報じゃねーか。



「戻って来たってことね」



 通常の疲労だけでなく全く進めていなかった事が明らかになり肩を落とした。



「少し休憩しよう」

「そうね~」

「そうしましょう!!」



 アーチ状の門の前で俺達は休憩を始めたのだが、しばらくするとここを突破するための作戦会議へと移行する。



「右手の法則が通用しないということは出口が無いということよ。つまり、行き止まりでしょ」



「その可能性も否定できないわ~、でもギルドで入手した情報だとまだ先はあるのよね~」



 探索で行き詰まる事も冒険者をやっていれば稀によくある話だ。そしてこういう時にどう対応するかというのはやはり経験がものを言う。そして必要な事はそれだけではない。

 解決へ導くための答えを閃くことのできる柔軟な頭脳だ。


 つまり。


 俺達のパーティーロンドンベルの頭脳、俺の出番だ。





「可能性は2つだ」

 指を2本立ててさっそく説明に入る。



「一つは、ギルドの情報が偽りだった場合」



「それは無いと思うわよ~」

「地図には確かに降りる階段があるし、さらに下層についての情報もあるわね」



「ああ、だからその可能性は低いと俺も思う。そこでもう一つの可能性だ」

 立てていた指を折りながら、この複雑怪奇な難問を説明していく。



 サラとシェリーさんの視線が十分にこちらに釘付けになっているのを確認し、ゆっくりと正解を伝える。



「某クラピカさんが嘘を言っていた場合だ」



「「え?」」



「まぁ簡単な話なんだがな。右手の法則で迷宮全てがクリアできるなら苦労はしないって事だよ。マンガの知識が100%現実に役に立つと思うか?」



 二人揃って俺の事を信用していない視線が発進され、俺受信。



 落ち着け俺。

 こういう時に焦ってはリーダーとしての資質に関わる。理路整然と説明してやろうじゃないか。



「いいか、マンガの知識なんて所詮ファンタジーなんだよ。例えば、水の上を走る原理なんぞマンガでどう説明されているか知っているか? 片足が沈む前に片足を前に出せばいいという。実現可能かどうかなんて分かるだろ」



 二人は俺の説明にぐうの音も出ない様子だ。



「ゲンスイさんは右手の法則は眉唾物だって言いたいのね?」



「そういうことだ」



「じゃあそれを踏まえて~、今回の攻略法はあるのかしら~?」



「当たり前だ。ギルドで手に入れた地図だと階段から階段は一直線なわけだ。障害物を全部破壊して進めばいいだけで、俺達にはそれだけの力がある。そうだろ?」



 ヤバイ、オレ、カッコイイ。



 自分のセリフに酔ってカタコトになってしまったが、二人からの称賛の目が心地いいものだ。

 いつも以上に称賛しているだけで、決して呆れ顔ではないはずだ。



「獣人転生の弊害かしら~? それとも素なのかしら~?」

「両方じゃないかしら」



 なんて不思議な言葉が聞こえてのはきっと気のせいだ。



「ゲンスイ君の意見は分かったわ~。じゃあ次はそれで試してみるとして~」



「え? いいの?」



 なぜサラから疑問が出てくるのかが疑問だったが、シェリーさんの話の続きを聞こう。



「鏡の迷宮の攻略を考える上で~ヒントになるのは入り口で付けた汚れがそのまま残っていた事だと思うの~」



「というと?」



 サラは興味深そうに聞き始めたが、攻略を考える?いやいやいやいや、つい今俺が完璧な攻略方法を提示して賛成したよね?



「汚せるということは、どっちに進んだのか痕跡を残せるということだと思うの~」

「あっ、そうね!」



「なぁ、痕跡とかいいからさっそく攻略しないか? 直線でさっさと終わらせようぜ」



 多少休憩もできたし、攻略方法が見つかってさっきまでのストレスを発散したくて体がウズウズしてるんだよね。



「もう~分かったわ~、じゃあ行きましょうか~」



 俺とシェリーさんのやり取りを見てサラも首を横に振りながらでも同意したように立ち上がった。





 再び俺達はアーチ状の門を前にした。

俺達のパーティーロンドンベル流、ダンジョン攻略開始じゃー!」
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