29 / 72
転生者
第25話
しおりを挟む
俺は御者台に座って一路、ベルモ岬へ馬車を走らせていた。エリモ岬の先端が見える辺りまでやってきた。
ちなみに、サラとシェリーさんの水着姿は控えめに言って最高でした。
二人の水着試着会というかファッションショーではお触りしようと飛び掛かったり逆に吹っ飛ばされたり、なんだかんだで大騒ぎになり結局みんなで海に飛び込んだ。
あの光景を思い出すだけで俺は幸せだ。
「あ!あそこー!」
せっかく想いを馳せていたら、荷台に積んである浴槽(水槽)から人魚くんが声を掛けて来た。
「ここがどうした?」
「見覚えがあるよ。このまままっすぐ行ってー」
そう言って指さした先はエリモ岬の先端だ。どうやら情報は正しかったようだと安心した。一方で不安も募ってくる。
何故ならば、岬に近づくにつれて魔物エンカウント率上昇の一途を辿っているからだ。この分ではおそらく岬にはどれだけの魔物や魔獣がいるか分からない。そしてそんな場所に人魚が今も暮らしているとは思えないからだ。
期待のこもった目をしている人魚くんとは違って、俺だけではなくサラもシェリーさんも同様の不安を持っているのが窺える。
もしもの場合、皆で慰めるしかないとアイコンタクトで伝えた。
こうして俺達はエリモ岬まで到着したのだ。岬の先端は切り立った断崖になっていた。
そーっと崖下を覗くと海面が、そして透明度の高く海底まで見える。そこまで深くはないようだ。
「落ちたら痛そうね」
「今は干潮だけど、潮が満ちたら落ちても死なないかもしれないわね~」
かもしれないで落ちたくない。というか逆に考えれば干潮の今は落ちたら死ぬってことでは?
「大丈夫だよ、みんな行こう~」
それなりの高さに俺達がそーっと様子を見ているというのに、このお子様人魚くんは見覚えのある場所らしく何とも緊張感がない。
そしてそのままトコトコと先端まで歩いて行くと
ドッパーーーン!
「ウソ!? 落ちたーー!!」
派手に上がった水しぶきが立ち、唖然となった俺達とは打って変わって、下半身だけ魚形態になった人魚くんがスイ~と泳いでいた。
「こっちだよー、ここが洞窟になってるのー」
満面の笑みで手を振っている。そして俺達にも早く来いと言わんばかりの表情だが、ちょっと飛び降りる勇気はない。いや、それは勇気ではなく無謀というものだ。
「よかった、無事みたいだな」
「こらー!いきなり飛び降りたら心配するじゃない!」
無事だからよかったものの、俺達を驚かせた罰だ。後でたっぷりサラの説教をくらうがいい。
「でも、どうしようかしらね~」
そうなのだ。ここから飛び降りて人魚くんが無事だったのはきっと人魚補正でもあるのだろう。
「どこか降りられるところはないか探すか」
「そうね~」
俺達の方針は決まった。
「どこか他の道探すからちょっと待ってなさいよー!」
サラがまるでお母さんのように言って聞かせると、人魚くんも了承したようで手を挙げた。
その時だった。
「助けてー!」
洞窟があると思われるところからナメクジ色の細長い物体が数本伸びて来たかと思うと、人魚くんを捕まえ洞窟に引っ張り込もうとしていた。
バシャバシャと水音と水しぶきを立てながらもがく人魚くん。
「なんだありゃ!?」
「分からないわ、でも助けなきゃ!」
俺は手のひらに魔力を込め炎の塊を作ると長く伸びるその触手っぽい何かに思いっきり投げつける。
その横ではサラが如意棒を音速の勢いで伸ばし触手の一本を撃ち抜いた。
さらにその横ではシェリーさんが2連ボウガンを発射。その2本ともが別々の触手に命中しブチ切った。なんという命中率だ。
そして最後に俺の投げた炎の玉が長く伸びた触手を掠めることなく海水に触れ消えていった。
俺以外で3本の触手が切れたが、まだ3本程残っている触手に人魚くんが引きずられ俺達の視界から真下に消え崖下の洞窟へと入っていったのだ。
「だめ、ここからじゃ狙えない」
「角度的に無理がある。どこか降りる道を探さそう」
「そんな時間は無いわ!」
その場から飛び降りようとするサラを強引に止める。
「サラちゃん~、冷静になって~」
「そうだ、落ち着けサラ。サラが飛び降りても死んでは意味がない」
「そんなっ!?」
「それよりも降りれる道を探そう」
とてもじゃないがお昼のサスペンスドラマに出てくるような崖を飛び降りるのは無理。辺りを見回すが都合よく降りる道なんてものは見当たらない。
「でもっ、早くしないと! ゲンスイさんお願いっ! 何でもするから、助けて!」
俺の耳に入って来たサラの言葉は脳が理解するより早く身体が反応していた。
「まかせろっ!」
つい勢いをつけて崖を飛び出した。
あんな事を女の子に言わせて動かないわけがない。
だがこのまま落ちてはヤバイ。水深浅いし。
空中で崖に向けて左腕からライトウェポンを射出する。
パシュッという小気味いい音と共に射出されたそれは岸壁に噛みつき、落下の勢いを殺す。そこでシザーアンカーに再度操作し噛みついた部分を外して再度落下する。
バシャンと水しぶきを上げながら着水、周りを確認しながら海面を目指し泳ぎ出したが両腕のライトウェポンは重たいし防具は魔獣の革製だから金属程じゃないにしてもまともに泳げない。
ライトウェポンに魔力を込め、通常の3倍のパワーと速度で腕をかき回しなんとか海面に到着、息継ぎをする。
これが俺流の犬かきじゃい!!
「ゲンスイさんーー!!」
「ゲンスイ君~~~」
二人の声が聞こえるが、正直あまり余裕が無い。ただ、俺が頑張って泳いでいるのは見えただろうからこのまま泳いで洞窟の中へと向かった。
ちなみに、サラとシェリーさんの水着姿は控えめに言って最高でした。
二人の水着試着会というかファッションショーではお触りしようと飛び掛かったり逆に吹っ飛ばされたり、なんだかんだで大騒ぎになり結局みんなで海に飛び込んだ。
あの光景を思い出すだけで俺は幸せだ。
「あ!あそこー!」
せっかく想いを馳せていたら、荷台に積んである浴槽(水槽)から人魚くんが声を掛けて来た。
「ここがどうした?」
「見覚えがあるよ。このまままっすぐ行ってー」
そう言って指さした先はエリモ岬の先端だ。どうやら情報は正しかったようだと安心した。一方で不安も募ってくる。
何故ならば、岬に近づくにつれて魔物エンカウント率上昇の一途を辿っているからだ。この分ではおそらく岬にはどれだけの魔物や魔獣がいるか分からない。そしてそんな場所に人魚が今も暮らしているとは思えないからだ。
期待のこもった目をしている人魚くんとは違って、俺だけではなくサラもシェリーさんも同様の不安を持っているのが窺える。
もしもの場合、皆で慰めるしかないとアイコンタクトで伝えた。
こうして俺達はエリモ岬まで到着したのだ。岬の先端は切り立った断崖になっていた。
そーっと崖下を覗くと海面が、そして透明度の高く海底まで見える。そこまで深くはないようだ。
「落ちたら痛そうね」
「今は干潮だけど、潮が満ちたら落ちても死なないかもしれないわね~」
かもしれないで落ちたくない。というか逆に考えれば干潮の今は落ちたら死ぬってことでは?
「大丈夫だよ、みんな行こう~」
それなりの高さに俺達がそーっと様子を見ているというのに、このお子様人魚くんは見覚えのある場所らしく何とも緊張感がない。
そしてそのままトコトコと先端まで歩いて行くと
ドッパーーーン!
「ウソ!? 落ちたーー!!」
派手に上がった水しぶきが立ち、唖然となった俺達とは打って変わって、下半身だけ魚形態になった人魚くんがスイ~と泳いでいた。
「こっちだよー、ここが洞窟になってるのー」
満面の笑みで手を振っている。そして俺達にも早く来いと言わんばかりの表情だが、ちょっと飛び降りる勇気はない。いや、それは勇気ではなく無謀というものだ。
「よかった、無事みたいだな」
「こらー!いきなり飛び降りたら心配するじゃない!」
無事だからよかったものの、俺達を驚かせた罰だ。後でたっぷりサラの説教をくらうがいい。
「でも、どうしようかしらね~」
そうなのだ。ここから飛び降りて人魚くんが無事だったのはきっと人魚補正でもあるのだろう。
「どこか降りられるところはないか探すか」
「そうね~」
俺達の方針は決まった。
「どこか他の道探すからちょっと待ってなさいよー!」
サラがまるでお母さんのように言って聞かせると、人魚くんも了承したようで手を挙げた。
その時だった。
「助けてー!」
洞窟があると思われるところからナメクジ色の細長い物体が数本伸びて来たかと思うと、人魚くんを捕まえ洞窟に引っ張り込もうとしていた。
バシャバシャと水音と水しぶきを立てながらもがく人魚くん。
「なんだありゃ!?」
「分からないわ、でも助けなきゃ!」
俺は手のひらに魔力を込め炎の塊を作ると長く伸びるその触手っぽい何かに思いっきり投げつける。
その横ではサラが如意棒を音速の勢いで伸ばし触手の一本を撃ち抜いた。
さらにその横ではシェリーさんが2連ボウガンを発射。その2本ともが別々の触手に命中しブチ切った。なんという命中率だ。
そして最後に俺の投げた炎の玉が長く伸びた触手を掠めることなく海水に触れ消えていった。
俺以外で3本の触手が切れたが、まだ3本程残っている触手に人魚くんが引きずられ俺達の視界から真下に消え崖下の洞窟へと入っていったのだ。
「だめ、ここからじゃ狙えない」
「角度的に無理がある。どこか降りる道を探さそう」
「そんな時間は無いわ!」
その場から飛び降りようとするサラを強引に止める。
「サラちゃん~、冷静になって~」
「そうだ、落ち着けサラ。サラが飛び降りても死んでは意味がない」
「そんなっ!?」
「それよりも降りれる道を探そう」
とてもじゃないがお昼のサスペンスドラマに出てくるような崖を飛び降りるのは無理。辺りを見回すが都合よく降りる道なんてものは見当たらない。
「でもっ、早くしないと! ゲンスイさんお願いっ! 何でもするから、助けて!」
俺の耳に入って来たサラの言葉は脳が理解するより早く身体が反応していた。
「まかせろっ!」
つい勢いをつけて崖を飛び出した。
あんな事を女の子に言わせて動かないわけがない。
だがこのまま落ちてはヤバイ。水深浅いし。
空中で崖に向けて左腕からライトウェポンを射出する。
パシュッという小気味いい音と共に射出されたそれは岸壁に噛みつき、落下の勢いを殺す。そこでシザーアンカーに再度操作し噛みついた部分を外して再度落下する。
バシャンと水しぶきを上げながら着水、周りを確認しながら海面を目指し泳ぎ出したが両腕のライトウェポンは重たいし防具は魔獣の革製だから金属程じゃないにしてもまともに泳げない。
ライトウェポンに魔力を込め、通常の3倍のパワーと速度で腕をかき回しなんとか海面に到着、息継ぎをする。
これが俺流の犬かきじゃい!!
「ゲンスイさんーー!!」
「ゲンスイ君~~~」
二人の声が聞こえるが、正直あまり余裕が無い。ただ、俺が頑張って泳いでいるのは見えただろうからこのまま泳いで洞窟の中へと向かった。
0
お気に入りに追加
113
あなたにおすすめの小説
初夜に「君を愛するつもりはない」と夫から言われた妻のその後
澤谷弥(さわたに わたる)
ファンタジー
結婚式の日の夜。夫のイアンは妻のケイトに向かって「お前を愛するつもりはない」と言い放つ。
ケイトは知っていた。イアンには他に好きな女性がいるのだ。この結婚は家のため。そうわかっていたはずなのに――。
※短いお話です。
※恋愛要素が薄いのでファンタジーです。おまけ程度です。
彼女が望むなら
mios
恋愛
公爵令嬢と王太子殿下の婚約は円満に解消された。揉めるかと思っていた男爵令嬢リリスは、拍子抜けした。男爵令嬢という身分でも、王妃になれるなんて、予定とは違うが高位貴族は皆好意的だし、王太子殿下の元婚約者も応援してくれている。
リリスは王太子妃教育を受ける為、王妃と会い、そこで常に身につけるようにと、ある首飾りを渡される。
【完】あの、……どなたでしょうか?
桐生桜月姫
恋愛
「キャサリン・ルーラー
爵位を傘に取る卑しい女め、今この時を以て貴様との婚約を破棄する。」
見た目だけは、麗しの王太子殿下から出た言葉に、婚約破棄を突きつけられた美しい女性は………
「あの、……どなたのことでしょうか?」
まさかの意味不明発言!!
今ここに幕開ける、波瀾万丈の間違い婚約破棄ラブコメ!!
結末やいかに!!
*******************
執筆終了済みです。
婚約者は、今月もお茶会に来ないらしい。
白雪なこ
恋愛
婚約時に両家で決めた、毎月1回の婚約者同士の交流を深める為のお茶会。だけど、私の婚約者は「彼が認めるお茶会日和」にしかやってこない。そして、数ヶ月に一度、参加したかと思えば、無言。短時間で帰り、手紙を置いていく。そんな彼を……許せる?
*6/21続編公開。「幼馴染の王女殿下は私の元婚約者に激おこだったらしい。次期女王を舐めんなよ!ですって。」
*外部サイトにも掲載しています。(1日だけですが総合日間1位)
【完結】結婚式前~婚約者の王太子に「最愛の女が別にいるので、お前を愛することはない」と言われました~
黒塔真実
恋愛
挙式が迫るなか婚約者の王太子に「結婚しても俺の最愛の女は別にいる。お前を愛することはない」とはっきり言い切られた公爵令嬢アデル。しかしどんなに婚約者としてないがしろにされても女性としての誇りを傷つけられても彼女は平気だった。なぜなら大切な「心の拠り所」があるから……。しかし、王立学園の卒業ダンスパーティーの夜、アデルはかつてない、世にも酷い仕打ちを受けるのだった―― ※神視点。■なろうにも別タイトルで重複投稿←【ジャンル日間4位】。
僕の家族は母様と母様の子供の弟妹達と使い魔達だけだよ?
闇夜の現し人(ヤミヨノウツシビト)
ファンタジー
ー 母さんは、「絶世の美女」と呼ばれるほど美しく、国の中で最も権力の強い貴族と呼ばれる公爵様の寵姫だった。
しかし、それをよく思わない正妻やその親戚たちに毒を盛られてしまった。
幸い発熱だけですんだがお腹に子が出来てしまった以上ここにいては危険だと判断し、仲の良かった侍女数名に「ここを離れる」と言い残し公爵家を後にした。
お母さん大好きっ子な主人公は、毒を盛られるという失態をおかした父親や毒を盛った親戚たちを嫌悪するがお母さんが日々、「家族で暮らしたい」と話していたため、ある出来事をきっかけに一緒に暮らし始めた。
しかし、自分が家族だと認めた者がいれば初めて見た者は跪くと言われる程の華の顔(カンバセ)を綻ばせ笑うが、家族がいなければ心底どうでもいいというような表情をしていて、人形の方がまだ表情があると言われていた。
『無能で無価値の稚拙な愚父共が僕の家族を名乗る資格なんて無いんだよ?』
さぁ、ここに超絶チートを持つ自分が認めた家族以外の生き物全てを嫌う主人公の物語が始まる。
〈念の為〉
稚拙→ちせつ
愚父→ぐふ
⚠︎注意⚠︎
不定期更新です。作者の妄想をつぎ込んだ作品です。
だから聖女はいなくなった
澤谷弥(さわたに わたる)
ファンタジー
「聖女ラティアーナよ。君との婚約を破棄することをここに宣言する」
レオンクル王国の王太子であるキンバリーが婚約破棄を告げた相手は聖女ラティアーナである。
彼女はその婚約破棄を黙って受け入れた。さらに彼女は、新たにキンバリーと婚約したアイニスに聖女の証である首飾りを手渡すと姿を消した。
だが、ラティアーナがいなくなってから彼女のありがたみに気づいたキンバリーだが、すでにその姿はどこにもない。
キンバリーの弟であるサディアスが、兄のためにもラティアーナを探し始める。だが、彼女を探していくうちに、なぜ彼女がキンバリーとの婚約破棄を受け入れ、聖女という地位を退いたのかの理由を知る――。
※7万字程度の中編です。
【完結】私だけが知らない
綾雅(りょうが)祝!コミカライズ
ファンタジー
目が覚めたら何も覚えていなかった。父と兄を名乗る二人は泣きながら謝る。痩せ細った体、痣が残る肌、誰もが過保護に私を気遣う。けれど、誰もが何が起きたのかを語らなかった。
優しい家族、ぬるま湯のような生活、穏やかに過ぎていく日常……その陰で、人々は己の犯した罪を隠しつつ微笑む。私を守るため、そう言いながら真実から遠ざけた。
やがて、すべてを知った私は――ひとつの決断をする。
記憶喪失から始まる物語。冤罪で殺されかけた私は蘇り、陥れようとした者は断罪される。優しい嘘に隠された真実が徐々に明らかになっていく。
【同時掲載】 小説家になろう、アルファポリス、カクヨム、エブリスタ
2023/12/20……小説家になろう 日間、ファンタジー 27位
2023/12/19……番外編完結
2023/12/11……本編完結(番外編、12/12)
2023/08/27……エブリスタ ファンタジートレンド 1位
2023/08/26……カテゴリー変更「恋愛」⇒「ファンタジー」
2023/08/25……アルファポリス HOT女性向け 13位
2023/08/22……小説家になろう 異世界恋愛、日間 22位
2023/08/21……カクヨム 恋愛週間 17位
2023/08/16……カクヨム 恋愛日間 12位
2023/08/14……連載開始
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる