頭脳派脳筋の異世界転生

気まぐれ八咫烏

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転生者

第18話

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 シェリーと名乗った竜人族は俺達の馬車を見ると

「お困りなら手をかすわよ~?」

 と俺達に手を差し伸べたのだった。



「助かります。ちょっといろいろあって馬車が暴走して車輪が取れてしまったんです」

 簡単に事情を説明したサラの話を聞いたシェリーは馬車の前の地竜アースドラゴンの前に行くと無言で目を見ている。なぜかパイオツカイデーが視線を逸らしているように見えるけど。



「そう、なら車輪を直せばいいのね~?」

 とだけ言うと、外れてしまった車輪を収納庫インベントリから取り出した魔法陣が描かれた板の上に乗せ、魔力を込めながらしばらく作業をすると壊れていた車輪が元通りの形になっていた。



 すごい、研究者である俺達でもそんなすぐに金属を分解して形状変化、再結合をさせる事はかなり手がかかる。繊細な魔力操作も必要だ。そのためこの場で直すことは諦め代わりの車輪を作る方向で一致していたというのに。


 俺とサラはその手腕に見とれていると、


「ちょっとボクちゃん、車輪をはめ込むから荷台持ち上げてくれない?地竜アースドラゴンちゃんにも手伝ってもらうから馬車と繋いでいるのも外してもらいたいのだけど~」

 何?地竜アースドラゴンに手伝ってもらう?確かに力はかなりあるがそんな器用さはない。

 それに。



「持ち上げるだけなら俺だけで大丈夫だよ」

 といって俺は荷台の下を掴むと持ち上げた。もちろんライトウェポン1号さんに魔力を込めながらだ。



「すごい力持ちなのね~」



 少し驚いたような顔をしたが、俺が持ち上げている間に作業を開始した。先ほどの魔法陣が描かれた板とは違う板を収納庫インベントリから取り出したかと思うとそれを車輪の下に敷き魔力を込めながら作業し、程なくして取り付けが完了したのだろう。



 板を引き抜き収納庫インベントリにしまいながら

「もういいわよ~」

 と完了報告をしてきたのだった。



「ありがとうございます。本当に助かりました。何かお礼をさせてもらいたいのですが」



「いいのよ~、困ったときはお互い様っていうでしょ~?」

 俺とサラはアイコンタクトで通じ合った。この凄そうな技術者の話を聞いてみたいと。



「じゃあせめてお昼ご一緒しませんか?簡単なものですがごちそうさせてもらいます」



「そうねぇ、じゃあごちそうになろうかしら」

 と俺達はミッション成功となったのだ。



 取り合えず場所を変えようということで、シャリーさんの乗っていたバイク的な物も荷台に積み俺達は出

発したのだ。ちなみに俺とサラが御者台、シェリーさんには荷台に乗ってもらった。



「なんかいろいろ聞きたい事があるんだけど」



と話を切り出したところ、



「ボクちゃん可愛いからお姉さん何でも聞いてあげちゃうわよ~?」



 子ども扱いされることなんて転生後よくあったのでその点は無視してもいい。いいのだが、どうも俺の本能の部分がこのお姉さんを気にして仕方がない。

 天気もいいし果物狩りなんていいですよね。

 いや違う。今は違うんだ。



「さっき乗っていたのは何?」



 そう、この世界で乗り物と言えば馬や地竜アースドラゴンなどの生き物を使ったものしか見たことないのだ。

 まぁ、魔法のじゅうたんとか箒とかで空を飛ぶ人もいるかもしれないが、少なくとも今まで見たことは無い。

 しかしそれらとは無関係に荷台に乗せたそれは明らかに異質だ。俺にはバイクにしか見えなかったのだから。



「これはね~、お姉さんが開発した自力で走ることのできるマシンよ。これでも地元では一番の発明家だったんだから~」



 そういいながら力こぶを作って見せる姿は、発明と腕力は関係ないだろっ!というツッコミ待ちなのかもしれないが、俺の視線はその腕の付け根あたりから外れない。たわわだ。



「奇遇ですね、私達も研究者なんです。先ほどの車輪を直した腕前もすごかったです」



「そんなたいしたことじゃないわよ~」



「でも意外です。竜人族って確かもっと伝統的な生活を好んでいて、人族が持つ技術などもあまり取り入れないと思っていました」



 確かにサラの言う通り、俺の認識でも竜人族というのは原始的な生活をすると聞いていた。

 まぁ脳筋じゃない俺のような獣人族や、魔力適応に優れているのに肉体言語が得意なエルフもいるんだ。



 何事にも例外はあるか。



「それよりも二人はどんな関係なのかしら~?」



 ど、どんな関係と言われましても……そのなんだ。嫁です。

 チラッとサラを見ると頬を染めている。

 どうしよう。求愛した相手に恋人を紹介するのってやっぱ変だよな?



「ふ~ん、人には言えないただならぬ関係なのね~」

 俺達が答えないでいるとその様子から勝手に納得していた。



「いや、そういう訳じゃ…」



「じゃあどうなのかしら~?」



 最初見た時はバイクスーツっぽい服を着て車輪を直すその手際の良さからカッコイイお姉さんなのに、喋ると間延びした甘い声。ギャップ萌え死ぬ。

 いや、俺は理性の塊だ!


 おっ、あんなところに!



「ちょうど開けているところがありました。あそこで昼食にしましょう」



 俺は馬車を開けた場所に停めるとサラがササっと枯れ枝を集めに行った。俺はその間に火を起こす場所に石を集めているとすぐに戻ってきたサラから枝を受け取り焚火を作る。

 二人で分業しながら簡単な昼食を作った。



「サラちゃんとゲンスイ君って~、なんだか夫婦みたいね~」



「お褒めに預かり光栄です。でもお姉さんもとても魅力的でよかったらこの後一緒に僕と……」



「ゲンスイさん?」

 ビキッというSEを俺の耳は捉えた。俺はいつだって冷静だ。狼的な本能になんか飲まれないよ。本当だよ。



「……僕たちの作った昼食です。お口に会えばいいのですが」

 作った料理を差し出した。



「まぁ~、ありがと~。美味しそうね~」





 人魚くんも含めて4人で昼食をとりながら俺達が人魚を海に帰す旅を話した。



「最初見た時は二人の子供かと思ったのだけれど」



 なんて爆弾を落とす性格はどうやらかなり天然なことが分かった。

 サラは終始ペースを崩されているようだったが。



「それで、お姉さんは?」



「私はねぇ~、発明家だから人族の街をいろいろ見て回って開発のヒントを集めていたのよ~。その甲斐あっていい物見つけたわ~」



「どんなものか聞いてもいいですか?」



「キミよ~、ゲンスイ君」

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