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転生者

第10話

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「シフォンちゃん、日替わり2人前」

 俺は一人・・でギルド近くの食堂に来ていた。



「はーい、いっぱい食べて大きくならなきゃね」



 そういってウインクしてくる姿は可愛かった。でもドキッとまではしなくなったのはきっと俺が幸せだからかな?

 先週のダンジョン探索で俺は遂に転生して初めて彼女が出来たのだ!今までどれだけ女の子に一目ぼれして口説いて失恋してきただろう。でも、もうどうでもいいさ!サラに敵う女はいない!



「はい、お待たせ!野菜も残さず食べるんだよっ!」

 料理を受け取り料金を支払う。


 目の前に置かれた料理はとても美味しそうなので飛びつきます。頂きます。



 モグモグと咀嚼していると横に男が座った。

 でも視線は食べ物とシフォンちゃんを見るので忙しいので匂いだけで判断すると、嗅いだことのある匂いだ。だが、男だ。


 無視だな。



「鼻の下が伸びきって気ん持ち悪りぃ顔だな」



 やっぱり男の声だ。無視。



「シフォンちゃん、俺も日替わり1人前よろしくー」



「はーい、リグレさん日替わりね!ちょっと待ってねー」



 お昼時は過ぎて遅めの昼食だったから席は結構空いているのにわざわざ俺の隣に来るなんてって、リグレか。またパーティーの勧誘か?だったら即答で断ろう。



 しかしシフォンちゃんかわいいなぁ~。



「で、その気持ち悪い顔のままでもいいけどよ。お前にとっても喜ばしい情報だぜ。今度領地境に発見されたダンジョンの内部調査を俺達のパーティーが受けたんだ。お前も来るよな?鉱物系の魔獣が多いらしいぜ」



 うーん、美味しかった。ごちそうさま。シフォンちゃんかわいい。



「あっ、ちょっと手が滑った」

シフォンちゃんが横を通る時にお尻を触っちゃった!てへっ。

 パーンっという乾いた音が店内に響いた瞬間俺の頬が爆発した。いや、してないけど、したような気がした。

 ハッとシフォンちゃんを見上げると、

「手が滑っちゃった、てへっ」

 うわー、可愛い。手の感触が霧散したのは残念だけど手が滑ったのなら仕方ないね。許しちゃう!



「お前その歳でセクハラオヤジみたいな事すんなよ……」



「さて、シフォンちゃんの可愛い顔も見れたしお腹も膨れたし、帰ろう」



「いや待て。聞いてただろ?単発でもいいから探索行こうぜ?」



 あ、そうか。ダンジョン探索?内部調査?


 ああ。お?そういう事か!



「ダンジョンの内部調査のクエスト?」


 やっと俺が話を聞き始めたのがそんなに嬉しいのか。リグレがすごい食いついてきた。

「そうだ。鉱石関係クエストだぞ?お前が好きな」



「詳しい話を聞こうか」



「よしきた!最近発見されたダンジョンの一つで場所は北西、フィアール領とアインレーベ領の境でな。そこのダンジョン内部調査のクエストだ。クエストが貼りだされてすぐに俺達のパーティーが受けたからあんまり出回ってない情報だけどな、どうやらゴーレム系の敵がいるらしい」



「うん、で、報酬は?」



「いきなり報酬の話かよ。まぁ報酬自体はそんなにでもないんだが、内部に生息する魔獣やダンジョンの構造調査が基本で、隠し通路とか隠し部屋とかまで調査できたら色が付くっていつもの奴だ」



 そういいながらリグレが見せて来たのはクエストを受注した時に渡される書類の一つ、報酬について記載されているものだった。



「よし、そのクエストいくらで買う?」

「やっぱりか」

「ん?なんだって?」



「いや、こっちの話。もしパーティーに加わってこのクエストを熟したとしたらいつも通り頭分け、つまり1/5がお前の取り分だ。途中の素材回収も同じだ」



 そうじゃない。それは一緒にクエストを行った場合の報酬だろう。そうではない。なぜならば、



「ふふふ、その内部調査すでに俺は完了している」


「ナ・ナンダッテー?」

 棒読み感あるのは、気のせいか。



「情報は鮮度が大事だよリグレ君。俺はもうそのダンジョン情報を1週間には前に手に入れ、そして調査は完了し帰ってきたのだよ。フッフッフー」

 つい足を組んで肩幅を開き持ってもいないタバコを吸う真似をして見せる。演出って大事だよね。



「よし、その情報買った!クエスト報酬の2/5でどうだ?」



「よく考えてみたまえ、この情報を買えば君たちパーティーはこの街から一歩も出ることなく報酬を手にすることが出来るのだよ?80%で手を打とう」



「ゲンスイ、いくらなんでもそりゃボリ過ぎだろ。俺達冒険者のルールは知っているだろ?仮にお前が情報を持っていても俺達は一度ダンジョンへ調査へ行く。でないと情報の裏を取れないからな。だから50%だ」

 冒険者のルールとしてこういう場合情報だけで完了報告をすると、ギルド追放になる。

 人からもらった情報だけでクエストが熟せるならば人を雇って調査させ、その報酬と成果を別人が受け取ることが可能になるからだ。討伐クエストなんかも同じだ。

 それにもし情報が実際と違った場合のペナルティを受けるのも報告者の責任とみなされる。



「リグレ君はもうちょっと賢いと思っていたのだけどもねぇ。そりゃルール上君たちは調査に行かないといけないのは分かるが、俺の情報があるのと無いのとでは生死リスクが雲泥の差なんだよ?それが報酬のたった85%で帰るなら安いもんだよ」



「なんであがるんだよ? お前が来なくても4人で何日かかると思ってるんだ。当然経費が発生するんだぞ?60%だ。これ以上ならば無い」



ふむ、20%から60%まで上がったのなら十分か。
「よし売った」



「そのかわり情報がウソだったら払わねーからな」



「問題ないよ。毎度あり~」

 リグレもそろそろ俺に頭脳で対抗しようとするのは諦めればいいのに。


 こうして俺はダンジョンでマッピングした情報や出て来た魔獣の情報、それに隠し通路の話も合わせてリグルに売った。最後の部屋で宝箱にトラップがある可能性も込みでね。いやー、ウィンウィンの取引が出来てよかったよかった。



「シフォンちゃんごちそうさまー」

「まいど~!ゲンスイ君また来てね」

 と言いながらウインクしてくる姿は相変わらず可愛かったのでありがとうございますごちそうさま。





 さて、買い物の続きに行きますか。


 今日はこの後日用品の買い出しとリフォーム材料の買い出しだな。必要な内容を思い出しながら街を歩いた。



 サラちゃんと一緒に住もうにも俺の家は結構適当なのだ。研究メインでその他の事は後回しにしていたのだが、女性と一緒に住むとなるとそういう訳にもいかない。


 そういえば、ダンジョンで回収した研究素材以外のものを売っておくか。ちょうどこのさきに鍛冶屋ジムの店があったな。





「たのもー!たのもー!!」

 あれ?留守か?ったく、あいつ未だに賭場行ってるんじゃねーだろうな?

 と思ったらダラダラと出てきやがった。


 いるんじゃねーか。



「道場破りみたいな声がすると思ったらなんだゲンスイか。どうした?ダンジョン素材の買い取りか?」



「よく分かったな。その通りだよ、いくつか買い取り頼む」

 収納庫インベントリから売却予定素材を渡す。



「んで、俺の情報は役立ったか?」



「んー、役立ったよーなそーでもなかったよーな」

 情報忘れて帰りにやっと気づいたなんて格好悪いから言えない。でも帰り道に役立ったのは確かだ。



「んだよ。まぁいいや。今日はリグレにいい情報を売れたしな。ちょっとだけ色つけてやるよ」

 と言って渡された金額は相場よりちょっっっとだけ多い物だった。



「うっすい色だな。まぁいいや。リグレにどんな情報を売ったんだ?」



「ん?そりゃお前がダンジョン攻略に行った話だよ。おかげで今日も飯代が浮いたぜ。お前さんのおかげだな」



 なんだと?じゃあさっきの交渉の時すでにあいつは俺が攻略していたのを知っていたってことか??くっそ、通りで棒読み感のある驚き方だった訳だ。納得いったが気にくわん。腹の探り合いで読み切れなかったとは元帥(志望)としては敗戦も同義だ。



「んだよ?急に怖い顔して。買い取りに色つけてやったろ?恨みっこなしだぜ兄弟ブラザー!ほらこれやるから機嫌なおせよ」





 誰が兄弟ブラザーじゃ。俺はお前みたいなのと兄弟になった覚えはない!

 それに俺はルッカの実ごときで機嫌が直るほど安くはない。



「頂いておこう。んじゃな」

 もらうけど。

 ルッカの実は赤くて結構旨いんだよね。俺は早速ルッカの実を口に放り込み店を出た。出た後に「毎度あり~」て声が聞こえたような気がしたがどうでもいいか。



 さってと、買い出しに行きますか。

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