上 下
6 / 72
転生者

第5話

しおりを挟む
「ハァ…ハァ…ハァ…つっかれたーーー!!」



 俺は気合でこの難局を乗り切ったのだ。

 体中傷だらけだしスタミナも尽きたし回復薬も使い切った。もうこの先自然回復だけで乗り切るしかない。

 このダンジョンが階段フロア安地システムでよかった。



 スタミナが回復するまでしばらく動けそうにないので収納庫インベントリから水と簡易食料を取り出して補給を開始する。



「水うめぇええええ」



 しかしよく考えたらほとんどストーンゴーレムの素材回収できなかったな。スタミナ回復したらちょっと回収していこうかな。

 安地フロアから今通って来た場所を見ていると、遥か遠く、地下4階に降りて来た一つの人影があった。



 今なら俺がかなりの数倒したしまだ全部は復活していないから俺よりは多少楽に通れるかもな。なーんて観戦者モードで座ってみていたら、その人影は驚く動きをした。





 人影をよく見ると、向こうの階段フロアから走り出し、手に持っている長い棒を地面につけると棒高跳びのように一気に浮上し飛んだ!





 ……そしてフロア真ん中あたりに落ちた。







「おい、全然届いてないじゃねーか!」



 死んだか?

 思い落ちた辺りを見るとストーンゴーレムが激しく戦っているところを見えたので、とりあえず無事らしい。





頑張って戦っているようだが……。





 これは助けるべきか?いや、数が減っているとはいえこれだけの数のストーンゴーレムがいるのは見たら分かる。そこに一人で突っ込んでいくなんて自殺志願者としか思えない!こういうアホな手合いは放置に限る。





 フロアの半分ほどまで飛んできて距離が縮まったので多少姿が見えそうだ。



 きっとかなりの間抜け面なんだろうな。


 ちょっと興味本位で見ているとストーンゴーレムの隙間からチラッと見えるその姿は……。





「今助けるぞー!!!」





 大声を上げながら俺は再びストーンゴーレムの海へと自ら飛び込んで行ったのだった。





 一応さっき少し休んだので体は動く。それに俺の声が届いたのかあちらの戦場もどうやらこちらを目指して来ているようだ。少しずつその距離は縮まり間にいた最後の一体のストーンゴーレムを殴り飛ばす。





そこには――





 黒い髪、白い長い耳、細身の腕、白い肌、慎ましくも存在を主張する胸、縊れたウエスト、動くたびに揺れ動くミニスカート、ニーハイブーツとその間にある絶対領域!

 やや幼く見えるが十分に、いや十二分に可愛い顔!



……惚れた。



「こんにちは!僕ゲンスイって言います15歳です。いい天気ですね!こんな所で会うなんて奇遇ですがきっと運命ですよ!どうですか?ちょっとそこに安地があるので一緒にそこでお話しませんか?スキンシップなら得意なんです何も怖くないですよしっかりリードしますので二人の愛の結晶を作りませんか?」



 相変わらず少し早口になってしまったが挨拶から無難な天気の話題、さり気ないジョークを挟みつつ愛を囁く。我ながら完璧な口説き文句に100点をあげたい!100点満点をあげちゃいたい!!



「ちょっ!!あんたアホですかー!?」

 俺の口説き文句に堕ちた少女は照れ隠しによく分からない事を叫んでいた。



 必死で叫ぶ姿も可愛い……


「うしろ!!しむら!!うしろーーー!!!」

 直後、俺は愛の衝撃が全身に走る。

 まるで真後ろにいたストーンゴーレムの一撃を無防備な背後にくらったような衝撃だった。





 いつも以上にビビッときたー!!!!っていうか、周りがうるさいな!



「お前ら邪魔じゃーーーー!!!」





 目の前にいる嫁との逢瀬を邪魔する不届きものを殴って殴って蹴りまくって殴った。











 30分後、俺達はなんとか安地まで辿り着くことが出来た。俺はもう体力もスタミナもスッカラカンだったが倒れるわけにはいかなかった。これから大人による大人の為の、大人になる為のでもある夜の戦いがあるのだから!



「ハァ…ハァ…ハァ…助かりました」

 息を乱している姿も可愛ぇ~。



「君みたいな可愛い子が一人で危ないじゃないか。たまたま、俺がいたのは運命だったのだろうけど君の命は君だけの物じゃないんだ。気を付けないと!」



「そうですね、すみません。ありがとうございます」



「少し休もうか」



「そう……ですね」



 俺は大人の戦いを前に休憩を提案したところ受け入れてもらえた。



 俺が倒れそうなのは事実だが、この少女もまた体力の限界っぽいのだ。大人の戦いの最中で戦線離脱されるわけにもいかない。



まずは彼女の体力を回復させなくては。



「お名前聞いてもいいですか?」

 少女の顔をまっすぐ見つめ、努めて紳士に名前を聞くと少し照れたように、でも笑顔で答えてくれた。



「サラよ。よろしくね、ゲンスイさん」



 ……惚れた。



 あれ?違うな。惚れなおした、も違う。惚れ惚れした。





 俺達は休憩しつつもお互いの話をした。







――そして衝撃の事実が!!
しおりを挟む
感想 1

あなたにおすすめの小説

城で侍女をしているマリアンネと申します。お給金の良いお仕事ありませんか?

甘寧
ファンタジー
「武闘家貴族」「脳筋貴族」と呼ばれていた元子爵令嬢のマリアンネ。 友人に騙され多額の借金を作った脳筋父のせいで、屋敷、領土を差し押さえられ事実上の没落となり、その借金を返済する為、城で侍女の仕事をしつつ得意な武力を活かし副業で「便利屋」を掛け持ちしながら借金返済の為、奮闘する毎日。 マリアンネに執着するオネエ王子やマリアンネを取り巻く人達と様々な試練を越えていく。借金返済の為に…… そんなある日、便利屋の上司ゴリさんからの指令で幽霊屋敷を調査する事になり…… 武闘家令嬢と呼ばれいたマリアンネの、借金返済までを綴った物語

【完結】結婚式前~婚約者の王太子に「最愛の女が別にいるので、お前を愛することはない」と言われました~

黒塔真実
恋愛
挙式が迫るなか婚約者の王太子に「結婚しても俺の最愛の女は別にいる。お前を愛することはない」とはっきり言い切られた公爵令嬢アデル。しかしどんなに婚約者としてないがしろにされても女性としての誇りを傷つけられても彼女は平気だった。なぜなら大切な「心の拠り所」があるから……。しかし、王立学園の卒業ダンスパーティーの夜、アデルはかつてない、世にも酷い仕打ちを受けるのだった―― ※神視点。■なろうにも別タイトルで重複投稿←【ジャンル日間4位】。

骸骨と呼ばれ、生贄になった王妃のカタの付け方

ウサギテイマーTK
恋愛
骸骨娘と揶揄され、家で酷い扱いを受けていたマリーヌは、国王の正妃として嫁いだ。だが結婚後、国王に愛されることなく、ここでも幽閉に近い扱いを受ける。側妃はマリーヌの義姉で、公式行事も側妃が請け負っている。マリーヌに与えられた最後の役割は、海の神への生贄だった。 注意:地震や津波の描写があります。ご注意を。やや残酷な描写もあります。

特殊部隊の俺が転生すると、目の前で絶世の美人母娘が犯されそうで助けたら、とんでもないヤンデレ貴族だった

なるとし
ファンタジー
 鷹取晴翔(たかとりはると)は陸上自衛隊のとある特殊部隊に所属している。だが、ある日、訓練の途中、不慮の事故に遭い、異世界に転生することとなる。  特殊部隊で使っていた武器や防具などを召喚できる特殊能力を謎の存在から授かり、目を開けたら、絶世の美女とも呼ばれる母娘が男たちによって犯されそうになっていた。  武装状態の鷹取晴翔は、持ち前の優秀な身体能力と武器を使い、その母娘と敷地にいる使用人たちを救う。  だけど、その母と娘二人は、    とおおおおんでもないヤンデレだった…… 第3回次世代ファンタジーカップに出すために一部を修正して投稿したものです。

貧民街の元娼婦に育てられた孤児は前世の記憶が蘇り底辺から成り上がり世界の救世主になる。

黒ハット
ファンタジー
【完結しました】捨て子だった主人公は、元貴族の側室で騙せれて娼婦だった女性に拾われて最下層階級の貧民街で育てられるが、13歳の時に崖から川に突き落とされて意識が無くなり。気が付くと前世の日本で物理学の研究生だった記憶が蘇り、周りの人たちの善意で底辺から抜け出し成り上がって世界の救世主と呼ばれる様になる。 この作品は小説書き始めた初期の作品で内容と書き方をリメイクして再投稿を始めました。感想、応援よろしくお願いいたします。

【12/29にて公開終了】愛するつもりなぞないんでしょうから

真朱
恋愛
この国の姫は公爵令息と婚約していたが、隣国との和睦のため、一転して隣国の王子の許へ嫁ぐことになった。余計ないざこざを防ぐべく、姫の元婚約者の公爵令息は王命でさくっと婚姻させられることになり、その相手として白羽の矢が立ったのは辺境伯家の二女・ディアナだった。「可憐な姫の後が、脳筋な辺境伯んとこの娘って、公爵令息かわいそうに…。これはあれでしょ?『お前を愛するつもりはない!』ってやつでしょ?」  期待も遠慮も捨ててる新妻ディアナと、好青年の仮面をひっ剥がされていく旦那様ラキルスの、『明日はどっちだ』な夫婦のお話。    ※なんちゃって異世界です。なんでもあり、ご都合主義をご容赦ください。  ※新婚夫婦のお話ですが色っぽさゼロです。Rは物騒な方です。  ※ざまあのお話ではありません。軽い読み物とご理解いただけると幸いです。 ※コミカライズにより12/29にて公開を終了させていただきます。

婚約者は、今月もお茶会に来ないらしい。

白雪なこ
恋愛
婚約時に両家で決めた、毎月1回の婚約者同士の交流を深める為のお茶会。だけど、私の婚約者は「彼が認めるお茶会日和」にしかやってこない。そして、数ヶ月に一度、参加したかと思えば、無言。短時間で帰り、手紙を置いていく。そんな彼を……許せる?  *6/21続編公開。「幼馴染の王女殿下は私の元婚約者に激おこだったらしい。次期女王を舐めんなよ!ですって。」 *外部サイトにも掲載しています。(1日だけですが総合日間1位)

嫌われ聖女さんはとうとう怒る〜今更大切にするなんて言われても、もう知らない〜

𝓝𝓞𝓐
ファンタジー
13歳の時に聖女として認定されてから、身を粉にして人々のために頑張り続けたセレスティアさん。どんな人が相手だろうと、死にかけながらも癒し続けた。 だが、その結果は悲惨の一言に尽きた。 「もっと早く癒せよ! このグズが!」 「お前がもっと早く治療しないせいで、後遺症が残った! 死んで詫びろ!」 「お前が呪いを防いでいれば! 私はこんなに醜くならなかったのに! お前も呪われろ!」 また、日々大人も気絶するほどの魔力回復ポーションを飲み続けながら、国中に魔物を弱らせる結界を張っていたのだが……、 「もっと出力を上げんか! 貴様のせいで我が国の騎士が傷付いたではないか! とっとと癒せ! このウスノロが!」 「チッ。あの能無しのせいで……」 頑張っても頑張っても誰にも感謝されず、それどころか罵られるばかり。 もう我慢ならない! 聖女さんは、とうとう怒った。

処理中です...