転生したらなぜか双子になってたけどそれはそれで便利だし気にせずこの素晴らしき世界を楽しみます

気まぐれ八咫烏

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幼少期編

バリの町へ

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村に入るとすぐにダクティっぽい一人の男が近づいてきた。



「アスラさん!大変です!!」



「ペレス、どうしたんだ?」



「村の子供たちが行方不明で、、、それで今村人総出で探し回ってるんですが、どうやら今日見慣れない冒険者風のやつらが村に来ていたことが分かりまして、、、もしかしたら人攫いかもって!」



「誰がいないんだ?」



「グリンとピッケル、モズクとパセリ、それにライカの5人です」

なんだって!?ライカも!?



「その村に来た奴らの特徴と人数は?」



「全部で3人。全員が黒いバンダナに小剣と小盾を持っていたらしいです」



「俺たちはこのままバリの町まで捜索に行く。ベンは村に残って捜索隊を編成、行方不明の子供を探してくれ」



「よしわかった、アスラ、ライカを頼む!」

ベンはじっとアスラを見つめると精一杯頭を下げた。



「まかせろ。それと、ララによろしく伝えておいてくれ」



ベンは竜車を降りるとペレスと一緒に走り出した



「ケン、ユイ、お前たちはどうする?村に残ってもいいぞ」



「いえ、ライカを探したいです」



「分かった。ではいくぞ。レムザ、バリまで頼む!」



「よっしゃ、飛ばすからしっかりつかまってろよ」



地竜をUターンさせると村を出た。速度は村へ帰る時よりもずっと早い。

馬車なんかよりずっと早い地竜。さすがです。



ただ、その分振動も強いです。いくら【身体機能強化ブースト】でケツ力をアップさせていても、

痛いものは痛いんです。

状況が状況だから文句も言わずに我慢だけど。





 移動中聞いた話では、この世界では冒険者って職業も一般的だがどうやら人攫いってのも前世よりずっと多いらしい。身元不明なものでも一部の奴隷商人は買い取るからだ。

 狙われるのはまぁ見目麗しい女が多いが、抵抗力の弱い子供もターゲットになること十分にある。需要に応じて教育を施し、高く売るということもやっているからだ。



 3時間ほどだろうか、竜車は走り続けたところで速度を落とした。 あたりはすっかり陽が落ちて暗くなっていたがバリの町が見えてきた。



「くそ、追いつけなかったか。バリの町を捜索するが先に宿をとっておこう。ケンとユイはそこでお留守番だ。レムザ、宿に向ってくれ」



 バリの町は砦のように防壁がありその中に町がある。そしてその向こうには海だ。港町ならではの作りで、防壁は海まで伸びている。入り口で門番っぽい人たちにアスラが少し話をすると町に入れた。サイージョの村と比べ物にならないほど活気があった。

 ゆっくり見て回りたいが、まずはライカが心配だ。



 宿に着いたのは19時頃だろうか。レムザは獣舎へ地竜を連れて行き、アスラはチェックインと支払いをしている。



 案内された部屋は大部屋だった。学校の教室くらいあるだろうか。

 両サイドにベットが4つずつ並び、突き当りは窓、中央にはテーブルとイスがあった。



「俺たちは捜索に行く。ケンとユイは夕食を食べて留守番していなさい」



「いえ、僕たちも行きます!」



「だめだ、今回は子供が狙われたんだ。お前たちだけで動くな」



「ではせめて宿の周辺だけでも!」



「ならばワシが一緒に行ってやろう。アスラもそれならいいじゃろ?

この子達も友達が心配なんじゃろうて」



 なんとしても捜索に行きたかったがアスラにここまで言われたらどうしたものかと思っていたらレムザが助け舟を出してくれた。



「わかった。ただし、必ずレムザと一緒にだ」



「「わかりました!」」



「10時頃一度戻る。宿周辺でも気を付けるようにな」



「はい、父さまもダクティさんも気を付けて」



 アスラとダクティはすぐに出て行った。



「僕たちも周辺を捜索しましょう、レムザさん」

 動きの遅いレムザを後ろから押してせかす。



「おお、わかったから押すな押すな。まったくせっかちじゃのぉ!ガハハハ」

 なんだろう、おもちゃ屋に連れて行こうとする孫とおじいちゃんみたいな会話。

 いや、もっと緊張感いるでしょ。



 2時間ほど宿周辺を3人で捜索したが、子供はおろか黒いターバン冒険者も見つけることはできなかった。

 レムザに言われて一度宿に戻る。



 部屋に入ると夕食の準備が出来ていた。

 テーブルの端に大きめの鍋・・・中は何かの肉と野菜が入っている。その他にサラダやパンも置かれていた。この世界の寄せ鍋みたいなものだろうか。レムザが取り分けてくれ、夕食にした。

 さて、どうしたものか。

 人攫い共をやっつける作戦は実は道中考えてきた。

 が、レムザに言うと反対されそうなのが問題だ。



 うーん、巻き込んじゃうか。



「レムザさん、どうして人攫いは子供を攫ったんでしょうか」



「子供だと抵抗されてもたかがしれとるしな。扱い安いからじゃろう」



「ということは、僕たちだけでウロウロしていたら危ないですか?」



「さっきまではワシと一緒だったが、お前たちだけになると恰好の的じゃろうな」



 そうでしょうとも。ということは、だよ。囮作戦いけるんじゃね?

 と考えながらニヤニヤしてレムザを見る。



 レムザも俺達が言いたいことが分かったらしい



「ダメじゃ!危なすぎる。アスラにもお前たちのことを頼まれておるんじゃ。そんな真似させられん」



「父さまはこう言いました。宿周辺をレムザさんと一緒なら探してもいいと。その時にたまたま僕たちとレムザさんの距離が少し離れてて、たまたま運悪く人攫いに会ってしまい、攫われたとしてもそれは不可抗力ですよ」



「しかしじゃな……」



「もちろん、そのあとレムザさんがちゃんと追跡してくれて僕たちを助けてくれれば事件解決ですよ」



「うーーむ……」

まだ迷ってるな。じゃあトドメの一撃だ。



「もし敵に捕まっても僕たちなら自力で脱出できます。魔法も使えますし剣術も習っています。先日も父さまから一本取れるほどになりました」



「アスラから一本取ったのか、そりゃすごいな」



「では、僕たちと腕相撲で勝負して二人とも勝てたら協力してもらえませんか?」

 腕相撲がこの世界にもあることは調査済みだ。相撲はなさそうだけども。



「腕相撲じゃと?そのナリで力で勝負するというのか?」



「僕たち、意外と力あるんですよ」



「うーん……まぁ、それで諦めるならその勝負受けて立とう」



「約束は守ってくださいね」



「お前たちもな」



 テーブルに右肘を着き、レムザと組む。

 もちろん【身体機能強化ブースト】をちょっと強めにかける



「じゃあユイ、頼む」



「レディー、ゴー!」



バタンッ!



勝負は一瞬で決まった。



「ばかな……」



「じゃあ次はユイの番だな」



問答無用でさっさと次の勝負だ。

続いてユイがテーブルに左ひじを着き、レムザと組む。



「レディー、ゴー!」



バタンッ!



またも勝負は一瞬。



「人族の、それも子供の力じゃないぞ!お前たちはいったい……」



「さ、約束は守ってくださいねっ!」

超スマイルのサービスも忘れない。



「まさかドワーフであるワシを力でここまで圧倒するとは」



ショックで固まってますよ、レムザさん。



「僕たち、結構強いでしょ?」

超スマイルのサービス継続中。



「脱帽じゃわい。ガハハハ」

もう吹っ切れたのかな?



「じゃあ早速いきましょう。武器はレムザさん預かってもらえますか?」



俺達の腰に下げていた剣をレムザに渡す。



「念のため、敵のアジトが分かった時は目立つところに【照光シャイン】を張り付けておきます。あとピンチのときもそれで合図します」



「わかった。だが、くれぐれも無茶をするなよ」



「「はい!」」





 俺達はさっそく二人で宿を出た。



 まずはさっき探索した中でも極力人気の多いあたりを動き回る。その後ユイとは別行動。それぞれが人気のない場所へ移動する。



 人気のない路地を進んでいた時に、後ろから声をかけられた。



「ボクちゃん、迷子かな?おうちはどこだい?」



 20代くらいの冒険者風の恰好をした男二人が声をかけてきた。

 黒いバンダナをしている。 ビンゴだ!



「おうちは……家出したのでありません」

 ほら、身元不明になっても大丈夫そうな餌ですよ~



「そうか、じゃあお兄さんのウチで温かいものでも食べさせてあげよう。ついておいで」



「ほんとに?お兄さんありがとう!お腹がすいてどうしようかと思ってたの!」

 少し涙目になりながら見上げ、そして超笑顔で落とす! 子供ならではの戦法だ。



 今週の演技派男優賞は蝶ネクタイの少年探偵を差し置いて俺がもらった!



「じゃあこっちだよ。また迷子にならないように手を繋いでいこうね」

 俺の左右に回ると手を繋いできた。

 捕らえられた宇宙人みたいだ。サイズ的にも。



 人気のない道をひたすらすすむ。

 流石に誘拐現場を目撃されないように道を選んでいるようだ。



 ちなみにこちらの状況を把握したユイが追跡してくれているのを感じている。

 こういう時、双子って便利。なんとなくだけど、なんとくなく分かるのだ。



 しばらく進むと、港までやってきた。

「お兄さんたちのおうちはこの船なんだよ、さあ、おいで」



 アジトは船だったのか。ということは海賊か!?

 村での目撃談では人攫いは3人だったが、海賊となると人数が多いかもしれない。



 念のため隙を見て帆先に【照光シャイン】を飛ばして張り付けた。

時間が経てば経つほど光が強くなるようにイメージした。

今はほぼ光っていないが20分ほどでかなり明るくなるはずだ。

時間経過で強くなるように調整したので魔力はかなり多めにつぎ込んでおいた。


船に入ると甲板から階段を降り、通路を進むとさらに階段を降りた。そしてひとつの部屋の前で止まった。

「じゃあきちんと身ぐるみ剥いであげるからね、ボウヤ」



「え?」

まあ、捕まえるんだろう。念のためブーストを解除して子供らしい抵抗をしておこう。



「お前まだそのキャラ続けるのかよ」

子供の力で頑張って抵抗してみたが、あっさり身ぐるみ剥がれた。というかすっぽんぽんにされた。

手を後ろに回されて縄で結ばれた。 足首にも縄で結ばれた。



そのうえで、部屋に入ると隅に子供が7人いた。

全員おれと同じ格好にされているようだ。つまり素っ裸で手足を縛られている。

てか、攫われたのって、5人じゃなかったっけ?



「しばらくおとなしくしてな!」

まぁ、三下のセリフですよそれ。



片隅に固まってる子供たちの方へ俺を降ろす、というか放り投げると出ていった。

部屋の外から鍵を掛けどこかに行ったようだ。





「ライカ、無事か?」

なにはともあれ、ライカを見つけれてよかった。



「ケン、どうしてここに??」



「もちろん助けに来たにきまってるじゃないか」

そう言うと、驚きの表情から少し笑顔が見えた。

そうだ、キャッチフレーズ:守りたい、この笑顔。だった。



「お前、何かっこつけてんの? お前も捕まってるじゃん」



近くにいた別の男の子が俺とライカの感動の再開を邪魔するように話しかけてきた。



「誰だお前?あんまり生意気だと助けてやらねーぞ」

まぁ、説得力の無い恰好なのは認めよう。



「お前だってこのあと奴隷にされて死ぬまで働かされるんだ」

言いながら半泣きじゃなねーか。



「僕はケン、警備隊隊長のアスラの息子だ。みんな、名前は?」



「僕はピッケル」

俺より少し背が高いから7~8歳くらいだろうか。



「私はモズク、こっちがパセリ。ピッケルと同い年よ」



「オ↑レ↓はグリンだ。9歳だ。一番年上だからな!」

最後に生意気言ってたガキが名乗る。最近俺って言いだした発音だ。



年上だからこいつらのガキ大将なのかな。でも背丈は俺と同じくらいじゃないか。

まぁ、いいか。



「私はジーナよ、仲間が出来て嬉しいわ」

犬耳ロリっ子じゃないか。こんな子もサイージョ村にいたのか?

豆柴が擬人化したみたい。垂れ耳にふさふさしっぽ。

モフモフしてぇ!!



「私はリンダにゃ。助けに来てくれた英雄には見えないから期待はしてないにゃ」

猫耳ロリっ子じゃないか。しかも語尾にニャって……萌え道突っ走ってますやん!



「おいリンダ、ちょっと俺に続いて言ってみろ」



こういうこともあろうかと、某アニメを見て覚えておいてよかった!



「 ななめななじゅうななどのならびでなくなくいななくななはんななだいなんなくならべてながながめ」



「にゃにゃにゃにゃ・・・・長いにゃ!」

ありゃ、ダメだったか。ウイング猫作戦失敗。





「よし、それはおいといてサイージョ村のみんないるか?」



「オ↑レ↓の家来はみんないるぞ。そこの犬と猫はしらないけどな!」

家来ってお前。



「じゃあジーナとリンダはサイージョ村の子供じゃないのか?」



「私とリンダは精霊都市シーマで攫われたの。助けて!」



「よしよし、もう大丈夫だからな」



「何が大丈夫なんだよ!」

 ほぼ泣いてるような声でグリンが反発してくる。





 後ろ手に縛られた縄に向けて最小の【風球ウインドボール】を手首の動きだけで発動、縄を切る。両手が自由になったので足首に向けて同様に魔法を使う。



 さて、自由になった。



「じゃあ皆も縄を解いてあげるからね」



 手近にいた子がピッケルという子だったので後ろを向かせ手の縄を解く。続いて反対を向かせそのまま座らせると足首の縄を解く。



「ピッケルもみんなの縄を解くの、手伝ってくれ」



「わかった!」



 続いて俺の近くにいたのはライカだ。



「ライカ、無事でよかった!」

 俺は思わず不自由なライカを両手でハグした。

「ケンが来てくれたよかった」

 抱きしめた体は少し震えていた。



「後ろを向いて、縄を解くから」



「うん」

 後ろを向くと手を解いてあげる



「じゃあ前向いて座って」

 ライカが前を向く。。。あれ?なんか違和感。



 あ! 無いのか! ボークビッツが!縦筋しかないのだ。 



 何だか似たようなことが前にもあったな。

 そう、ユイの時も。なんだろうこのデジャブ感。





 動揺しているのを悟られないように、足首の縄を解く。

 ライカは自分のことをボクっていうからてっきり男の子だと思っていたが、

 見た目でいうとやたらと可愛いからやはり女の子でよかったのだ。



「じゃあ次はグリンか。ほら後ろ向けって」

 ライカと比べるとちょっと雑な扱いになるのは仕方ない。

 手首の縄を解くと前を向かせ座らせて足首の縄を解く。



 ちなみにグリンにはギリギリだがポークビッツがついていた。

 体に合わせるようにこぶりなものだった。

 生意気なのが続くようならこのネタで弄ってやろうか。



そ してピッケルがモズクとパセリを解いている。



 俺がジーナを、ピッケルがリンダの縄を解いて全員解放できた。



 解放できたら次は反撃の準備だ。



「ライカ、今日はブーストまだ使ってないのか?」



「もう使ったよ。でもここでずっと休んでいたから少しなら使えるかも」



「よし、これからあいつらを退治しにいく。ライカはどうしてもやばくなったらブーストを使って逃げろ。船の甲板まで出たら、近くにユイがいるはずだから大声で助けを求めるんだ。いいな」



「ケン一人でいくの? ケンが強いのは知ってるけど、大丈夫なの? 相手は大人だよ?」



「俺に任せておけって!」

 今度は安心させるためにライカの頭を撫でながら言い切る。



「よし、みんな来い!脱出するぞ!」

 威勢のいい内容の割に見つからないよう小声なのは俺の器が小さいからだ!(笑)



 この倉庫のような監禁部屋を出るために外から鍵のかかった扉をどうにかしなきゃ。

 ドアノブの付近一帯をまとめて吹き飛ばすサイズで

「【土球アースボール】」



ドゴッ!って音がしたのでそっと出てみるが、とりあえず近くに敵はいないようだ。



 こんなことならベンに索敵魔法習っておけばよかったな。



 まずは目の前の部屋に入ってみる。ここは鍵がかかっていないようだ。そこには酒樽のようなものを積み上げられていた。



 酒には用事ない。次だ。



 隣の部屋に入ってみても同じように酒樽が積みあがっていた。



 酒には用事ない。次だ。



 目の前の部屋に入ってみると酒樽と木箱が積みあがっていた。



「お酒と食べ物のにおいにゃ」



 こういう場合、すぐ近くに装備が置いてあるのがお約束じゃないのか!



「何を探しているの?」

 すぐ後ろにいたライカが聞いてくる。



「みんなの服と適当な武器とかあればと思ってね」



「そうだね、ちょっと寒いもんね。」

 うん、暑い寒いの前に裸ってよくないんじゃないかな。



「仕方ないな、即席の武器だ」

 俺は土魔法で棒を作り出す。念のためにライカにも一本、自分用に一本。



「それあたしらも欲しいにゃ」

 ジーナとリンダにも一本ずつ作る。



「オ↑レ↓のはないのか?」



「わかったよ、全員分作るからまってろ」

 グリンとピッケル、モズクとパセリの分も作る。



 全員が素っ裸に土魔法の棒を装備した。

 最近ではユイとチャンバラする時多少【身体機能強化ブースト】を使っていても折れないように密度を高めることで強度を持たせているため少々では折れない。

 また、ライトセーバーにしたら目立つのでもちろん光らせてなんていない。



「この階の部屋はこれだけみたいだから次に行くけど、静かにいくぞ」



 上る階段は船にありがちな急な階段だ。そーと上の階の様子を伺う。上の階も4部屋あって廊下の突き当りが階段のようだ。

 そのうち、突き当りの階段に近いほうの部屋二つから灯りが漏れている。

 あそこには人がいそうだ。



「あの先の部屋に人がいそうだ。魔法で扉が開かないようにしてくるから待ってて」

 小声で後ろにいたライカに伝える。



 俺が一人でそーと、そーと扉の前まできた。

土壁アースウォール】で扉の上からがっちり固めてやった。

続いて向いの部屋の扉も固める。



 こちらの様子を伺っていたライカにOKのサインを出す。

 人差し指を唇に当ててそーとみんながこちらまで来た。



 しかし子供だらけ7人パーティー。なんとも動きずらい編成だ。

 特にモズクとパセリはずっと半泣きだもの。いつ泣き出してもおかしくないためハラハラする。

 ジーナとリンダは棒の扱いに慣れているのが分かる。ジーナは大人しくしているが、リンダは棒を持ってからウキウキしているようにすら見える。好戦的なのかもしれない。



 今更言っても仕方ないのでそっと階段を上り上の階の様子を伺う。

 階段を上ると甲板に出た。甲板には人影が見える。一人だけのようだから死角から近づいて魔法一発かな。



中央にある操舵室の影まで移動すると見張りに向けて

風球ウインドボール】を飛ばした。



「うわっ!」



 命中した。

 魔法の威力というよりはその勢いでそのまま甲板から海に落ちた。
 


 ザバーン!



 なんだろう、命中する瞬間防具が薄く青白い光が出た。

 魔法威力を半減させるような防具だろうか、威力が殺された感触があった。



 それはさておき、音がしたから下が気になる。

 階段で様子を伺っていたライカにOKのサインを出す。



 そして俺は降り口を探して外に目をやると……



 あれ?



 陸地が遠い。



 港から沖に停泊場所を変えたのか。なぜだ?人攫いだからか?

 いや違う。帆先がやたら光輝いてるからだ。

 俺が使った【照光シャイン】のおかげでやたら明るいこの船は、やましいことをしているのもあって港から移動したのだろう。



 まぁ泳げなくもない……いやどうだろう。

身体機能強化ブースト】を使えば行けるだろうけど、自分以外に7人の子供を引き連れて泳ぐなんて不可能だ。



 甲板を見回すと上陸用の小舟があった。まぁこのサイズの船ならそういうのもあるだろう。クレーン的なもので海に降ろすらしい。しかし俺はクレーンなんて動かしたことないぞ。



「なあ、この小舟ってどうやって海に降ろすんだろう」

 近くに来たライカに聞いてみる。



「たぶんあっちの操作盤で吊り装置を動かすんじゃないかな」



 見るとクレーンの根元部分に操作盤っぽいものがあった。



「あの小舟を海に降ろすから、みんなは乗っててくれ」

 説明するとピッケル、モズク、パセリはその指示に従って小舟に乗った。



「オ↑レ↓に命令するな!でもまぁ、今回は聞いてやる」

 なんだろう、生意気というよりかわいく見えてきた。



「ああ、そうしてくれ。ジーナとリンダも小舟に隠れてて」



「あいつらが来たら戦うにゃ」

 うーん、やっぱり好戦的っぽいな。



「見つかった時にみんなを守って戦って欲しいから、小舟で一緒に隠れててよ」



「まぁ……そういうことなら仕方にゃいにゃ」



 ちょろかった。

 よかった。



 俺はライカと一緒に操作盤へ行く。

 操作盤をみるとレバー的なものが二つ。



「ライカ、わかる?」



「構造からみるとこっちが吊り装置の回転、こっちが吊る長さの操作だと思うけど……」

 自信無さ気だが俺もそう思う。ただ、このクレーンって動力なんなんだろう。

 何もしなくてもこの操作盤を動かせば不思議動力で動くのかな。



「思うけど、何かな?」



「アレが」

 ライカの指さす方向を見る。



 理解した。不思議動力なんて魅力的なものは搭載されていない。

 それどころか、クレーンの根元には取っ手が4つある。4人がかりで回しましょうってこと……つまり動力は人力だ。

 操作盤で方向を合わせて、あとは人力ってなんて異世界ファンタジーなんでしょう。



「ライカ、俺があれを動かすから操作を頼むな」



「分かった」



 取っ手が4つということは大人4人で動かせるはずだ。

 いつもより強めに【身体機能強化ブースト】を掛けたので行けると思う。



 取っ手を持ちゆっくり力を込めるとググググググと音を立てながら小舟が少し浮いた。ライカを見るといったんストップの合図。操作すると今度はGOサインで再度力を込める。

 ググググググと音を立てながら今度はクレーンが回転、小舟が船上から出た。

 そこで一度止めるとライカが操作する。

 もう一度押せば今度は水面まで降ろせるはずだ。



 ドドーーン!



 というタイミングで階下から激しい音がした。

 土魔法の壁を突破されたか。



「なんじゃこりゃーーー! おい! 下を見てこい! 俺達は上だ!」



 階下から俺を招き入れたヤツラ二人が出てきた。

 急がねば!
 力を込めるとグググググと音を立てながら小舟が下降しはじめる。

 その音ですぐにこちらを発見された。



「このガキ!逃げれると思うなよ!」



 剣を抜くとこちらに向かってくる

 くそ、クレーンを操作するのはここまでか。



 慌てて土棒で剣を受け止める。

「ライカ下がれ」



 ライカは俺の後ろの物陰に隠れる



「グリン!」

 俺は大声で小舟まで聞こえるように叫ぶ



「港に行け!そうすれば分かるようになっている!家来たちを守れよ!」



 受けた剣を押し返すと少し距離を取って対峙しつつ叫ぶ



「【風球ウインドボール】」

 小舟を吊るクレーンの紐を風球で切る



 バシャーーン!



 音を立てて水面に落ちた。



「てめぇっ!」



 俺の動きに反応して今度は2人一緒に切りかかってくる



「【火壁ファイアーウォール】」



 間合いに入られる前に壁を張る



 さぁ、どうする?

 さっさと消火作業に移らないと船が燃えちゃうぜ?



「てめぇっ!」



 二人とも動かない。というか動けないのか。消火作業に移れば俺に切りかかられるもんな。じゃあこちらは遠慮なく攻撃させてもらいます。



「【火球ファイアーボール】」

 2人のうち俺の正面にいた1人に狙いを絞って攻撃する。



「ぐわっ!」



 俺の赤い球は常人の3倍速いから回避なんてさせないぜ?ふふふ。

 気分は彗星になったつもりだ。

 しかし命中の瞬間、皮の鎧の内側に来ている服みたいなのが薄く青白く光った。

 火の威力を半減させられた感触もある。

 やはり魔法防御耐性持ちの防具か。しかし完全に無効化は出来ないみたいだから気にせずに撃つか。



「【火球ファイアーボール】」

もう一人にも撃ち込んでやる



「うわっ!」



 なんとか回避しようとして回避しきれなかったようだ。足首に直撃した。しかも足には魔法防御耐性の防具は無いらしい。

 火がついて慌ててバタバタしている。



 俺はもう一発正面のヤツに火球を撃つ。

「【火球ファイアーボール】」



 同時に火壁を消し土棒で殴りかかる。



「ぎゃああああ」



 今度は火球も俺の斬撃も両方命中し、倒れた。

 倒れたのを確認すると剣を拝借し土棒を消した。



 さって、あと一人か。

 何とかバタバタして足首の火は消したらしいが立ち上がることができないらしい。



「ガキィ!こんなことをしてただで済むと思うなよ!」

 あら、まだ威勢のよろしいことで。



「ケン!後ろ!」



 なに!?



「グッハ!」



 背中に激痛が走った。あかん……意識が……



「ライカ……にげ……ろ」

ちゃんと言葉に出来たか怪しい



「アニキ!」

くそ、敵が増えてきてたのか。油断した。




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