超不人気職【治療術師】になってしまったので、パーティから追放されないようになんとか頑張ります

玄米

文字の大きさ
上 下
9 / 17
第二章 使えない治療術師

思いがけない対面

しおりを挟む
 ファンの町には、東西に分かれて大きな道具屋が存在する。
 それぞれに扱っている商品は大きく違い、東は寝袋やテント、携帯用調理器具などの冒険必需品を、西はポーションや毒消しなどの薬剤関連を主に置いているのだ。

 そして、今回我が訪れたのは西の道具屋。
 先ほど目に留まったパーティの少女……テトが向かった先である。

 勿論、店内でも彼女を尾けるつもりだったのだが……

「こ、これは……噂に聞く”激落ちウォッシャーポーション”……それにこっちは”万能救急セット”……我が天職を隠している関係上、これも是非欲しい……うむ……」

 西の道具屋に入ったのは初めてなのだが、やたらと品揃えが豊富で困ってしまう。
 今はそれどころでは無いというのに、手が……足が……勝手にカウンターへと運ばれてしまううううううううっ!

「きゃっ……」

 ……と、危ない危ない。
 興奮しすぎて、誰かと衝突してしまったのだ。

「す、すまぬ……前が見えていなくて――――」

 態勢を立て直して前を見た瞬間、我は言葉を失ってしまった。
 何故なら……

「こ、こちらこそ……申し訳ありません、不注意でした……怪我はありませんか?」

 間違いない……
 この低姿勢な感じ、白い髪を後ろで一つに縛り、弱々しさを更に引き立てる白い肌を持った少女。
 先程のテトと呼ばれていた彼女である……

 いや、しかし……意図せぬことだったが、接点を持てたのは幸いだ。
 ここは――――

「いや、今回は全面的に我が悪い……少し、謝罪をさせてくれぬか……?」

 我は一度冷静になって、外のコーヒー店を見た。
 何と言うか……ナンパ紛いの行為で余り気分は良くないが、これも仕方のない事だ……我慢しろよ、我……

 暫しの沈黙が続くが……
 少女もようやく、我の意図に気づいたようで――――

「えっ!? あっ、あの……本当に大丈夫です、わたし…………その、急いでいるので……!」

 顔を赤く染めたと思ったら突然勢いよく立ち上がり、すぐさまその場を去ろうとする少女。
 どうやら、本当に不埒な輩だと思われているらしい。

 ……こうなったら、もう恥は捨てるしかない!
 我はがっしりと少女の手首を掴んで、此方へ引き寄せた。

 そして――――

「頼む……このままでは我の気が済まぬのだ、どうか……この願いを受け入れてはくれぬか?」

 強引な誘いだ。
 全身の肌が鳥類のそれと同じものになっている。
 これでダメなら……潔く諦めて、キッパリと全て忘れよう……

 そんな、一世一代の告白をしているような心中でいると……

「……わかり……ました、少しだけ……なら」

 もじもじとしながらも、こちらの提案を受け入れてくれる少女。
 外面は平然を装いながらも、正直……


 我の寿命が縮まったのは確実だろう。



◇◆◇



「では、落ち着いたところで自己紹介といこうか。我が名はレギ、よろしく頼むぞ!」

 コーヒー店の一際目立たない席に腰かけて、第一声を放つ。
 少女は未だにもじもじしていたが、一つ、深呼吸をしてから口を開いた。

「あの、えと……わたしは、テト……といいます……コ、コーヒー……ご馳走さま、です……」

 うむ、名前がテトであることは勿論しっていた。
 それは置いとくとして……いくらなんでも弱々しすぎないだろうか?

 いや、我の強引な誘いに委縮してしまっているという事もあるだろうが……


 ……ここは一つ、切り込んでみるか。

「そういえば、お前はあの道具屋で何を探していたんだ?」

「え……? そ、その……ポーションを少し、パーティの皆様が足りないと言うので……」

「なるほどな、確かにポーションは冒険に重要な物だ。……しかし、その荷物に加えて更にポーションも、というのは些か重すぎるのではないか?」

「そっ、それは……ルー様……パーティメンバーの一人が、荷物持ちはわたしが適任だと……そう、仰っていたので……務めは、果たさないと……」

「荷物持ち、か……しかし、そこまでの大荷物を一人に預けるなど……同じパーティの”仲間”に対する対応とは思えんがな」

「……わたしが……悪いんです、わたしが……使えない”治療術師”だから……」

 ……やっと本人からもその言葉が出たか。
 使えない治療術師……別に、この少女を救ってやりたいとか……そんな聖人じみた事を言うつもりはない。
 ただ、目の前でうじうじされるのは無性に腹が立ってくるというだけだ……

 だから――――

「テト……お前は、今の状況を変えたいと思わんのか?」

「え……? ……それは――――」

「もし、もしもだ……少しでも、変えたい――いや、変わりたいと願うのならば……僅かではあるが、この我が助力する!」

 これは、こいつのためじゃない……
 どこか、昔の自分に言い聞かせているような気がしたのだ……
しおりを挟む
感想 1

あなたにおすすめの小説

スライム10,000体討伐から始まるハーレム生活

昼寝部
ファンタジー
 この世界は12歳になったら神からスキルを授かることができ、俺も12歳になった時にスキルを授かった。  しかし、俺のスキルは【@&¥#%】と正しく表記されず、役に立たないスキルということが判明した。  そんな中、両親を亡くした俺は妹に不自由のない生活を送ってもらうため、冒険者として活動を始める。  しかし、【@&¥#%】というスキルでは強いモンスターを討伐することができず、3年間冒険者をしてもスライムしか倒せなかった。  そんなある日、俺がスライムを10,000体討伐した瞬間、スキル【@&¥#%】がチートスキルへと変化して……。  これは、ある日突然、最強の冒険者となった主人公が、今まで『スライムしか倒せないゴミ』とバカにしてきた奴らに“ざまぁ”し、美少女たちと幸せな日々を過ごす物語。

役立たずと言われダンジョンで殺されかけたが、実は最強で万能スキルでした !

本条蒼依
ファンタジー
地球とは違う異世界シンアースでの物語。  主人公マルクは神聖の儀で何にも反応しないスキルを貰い、絶望の淵へと叩き込まれる。 その役に立たないスキルで冒険者になるが、役立たずと言われダンジョンで殺されかけるが、そのスキルは唯一無二の万能スキルだった。  そのスキルで成り上がり、ダンジョンで裏切った人間は落ちぶれざまあ展開。 主人公マルクは、そのスキルで色んなことを解決し幸せになる。  ハーレム要素はしばらくありません。

アイテムボックス無双 ~何でも収納! 奥義・首狩りアイテムボックス!~

明治サブ🍆スニーカー大賞【金賞】受賞作家
ファンタジー
※大・大・大どんでん返し回まで投稿済です!! 『第1回 次世代ファンタジーカップ ~最強「進化系ざまぁ」決定戦!』投稿作品。  無限収納機能を持つ『マジックバッグ』が巷にあふれる街で、収納魔法【アイテムボックス】しか使えない主人公・クリスは冒険者たちから無能扱いされ続け、ついに100パーティー目から追放されてしまう。  破れかぶれになって単騎で魔物討伐に向かい、あわや死にかけたところに謎の美しき旅の魔女が現れ、クリスに告げる。 「【アイテムボックス】は最強の魔法なんだよ。儂が使い方を教えてやろう」 【アイテムボックス】で魔物の首を、家屋を、オークの集落を丸ごと収納!? 【アイテムボックス】で道を作り、川を作り、街を作る!? ただの収納魔法と侮るなかれ。知覚できるものなら疫病だろうが敵の軍勢だろうが何だって除去する超能力! 主人公・クリスの成り上がりと「進化系ざまぁ」展開、そして最後に待ち受ける極上のどんでん返しを、とくとご覧あれ! 随所に散りばめられた大小さまざまな伏線を、あなたは見抜けるか!?

大器晩成エンチャンター~Sランク冒険者パーティから追放されてしまったが、追放後の成長度合いが凄くて世界最強になる

遠野紫
ファンタジー
「な、なんでだよ……今まで一緒に頑張って来たろ……?」 「頑張って来たのは俺たちだよ……お前はお荷物だ。サザン、お前にはパーティから抜けてもらう」 S級冒険者パーティのエンチャンターであるサザンは或る時、パーティリーダーから追放を言い渡されてしまう。 村の仲良し四人で結成したパーティだったが、サザンだけはなぜか実力が伸びなかったのだ。他のメンバーに追いつくために日々努力を重ねたサザンだったが結局報われることは無く追放されてしまった。 しかしサザンはレアスキル『大器晩成』を持っていたため、ある時突然その強さが解放されたのだった。 とてつもない成長率を手にしたサザンの最強エンチャンターへの道が今始まる。

【完結】幼馴染にフラれて異世界ハーレム風呂で優しく癒されてますが、好感度アップに未練タラタラなのが役立ってるとは気付かず、世界を救いました。

三矢さくら
ファンタジー
【本編完結】⭐︎気分どん底スタート、あとはアガるだけの異世界純情ハーレム&バトルファンタジー⭐︎ 長年思い続けた幼馴染にフラれたショックで目の前が全部真っ白になったと思ったら、これ異世界召喚ですか!? しかも、フラれたばかりのダダ凹みなのに、まさかのハーレム展開。まったくそんな気分じゃないのに、それが『シキタリ』と言われては断りにくい。毎日混浴ですか。そうですか。赤面しますよ。 ただ、召喚されたお城は、落城寸前の風前の灯火。伝説の『マレビト』として召喚された俺、百海勇吾(18)は、城主代行を任されて、城に襲い掛かる謎のバケモノたちに立ち向かうことに。 といっても、発現するらしいチートは使えないし、お城に唯一いた呪術師の第4王女様は召喚の呪術の影響で、眠りっ放し。 とにかく、俺を取り囲んでる女子たちと、お城の皆さんの気持ちをまとめて闘うしかない! フラれたばかりで、そんな気分じゃないんだけどなぁ!

迷宮に捨てられた俺、魔導ガチャを駆使して世界最強の大賢者へと至る〜

サイダーボウイ
ファンタジー
アスター王国ハワード伯爵家の次男ルイス・ハワードは、10歳の【魔力固定の儀】において魔法適性ゼロを言い渡され、実家を追放されてしまう。 父親の命令により、生還率が恐ろしく低い迷宮へと廃棄されたルイスは、そこで魔獣に襲われて絶体絶命のピンチに陥る。 そんなルイスの危機を救ってくれたのが、400年の時を生きる魔女エメラルドであった。 彼女が操るのは、ルイスがこれまでに目にしたことのない未発見の魔法。 その煌めく魔法の数々を目撃したルイスは、深い感動を覚える。 「今の自分が悔しいなら、生まれ変わるしかないよ」 そう告げるエメラルドのもとで、ルイスは努力によって人生を劇的に変化させていくことになる。 これは、未発見魔法の列挙に挑んだ少年が、仲間たちとの出会いを通じて成長し、やがて世界の命運を動かす最強の大賢者へと至る物語である。

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

お荷物認定を受けてSSS級PTを追放されました。でも実は俺がいたからSSS級になれていたようです。

幌須 慶治
ファンタジー
S級冒険者PT『疾風の英雄』 電光石火の攻撃で凶悪なモンスターを次々討伐して瞬く間に最上級ランクまで上がった冒険者の夢を体現するPTである。 龍狩りの一閃ゲラートを筆頭に極炎のバーバラ、岩盤砕きガイル、地竜射抜くローラの4人の圧倒的な火力を以って凶悪モンスターを次々と打ち倒していく姿は冒険者どころか庶民の憧れを一身に集めていた。 そんな中で俺、ロイドはただの盾持ち兼荷物運びとして見られている。 盾持ちなのだからと他の4人が動く前に現地で相手の注意を引き、模擬戦の時は2対1での攻撃を受ける。 当然地味な役割なのだから居ても居なくても気にも留められずに居ないものとして扱われる。 今日もそうして地竜を討伐して、俺は1人後処理をしてからギルドに戻る。 ようやく帰り着いた頃には日も沈み酒場で祝杯を挙げる仲間たちに報酬を私に近づいた時にそれは起こる。 ニヤついた目をしたゲラートが言い放つ 「ロイド、お前役にたたなすぎるからクビな!」 全員の目と口が弧を描いたのが見えた。 一応毎日更新目指して、15話位で終わる予定です。 作品紹介に出てる人物、主人公以外重要じゃないのはご愛嬌() 15話で終わる気がしないので終わるまで延長します、脱線多くてごめんなさい 2020/7/26

処理中です...