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C級の絶望(1-31)
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ララ「??」
今朝の教会も喧騒に満ちていた。
だが、どうやら急患ではないようで、ララは全く呼ばれることなく、いつものように身を清め、神に祈りを捧げ、治療の儀を行っていた。
夕方になっても侯爵様の使者はララの元には現れず、残念に思っていると、旧聖堂の方から炊き出しのいい匂いが漂ってきた。
ララは手持ち無沙汰だったので、配膳を手伝おうと旧聖堂に向かう。
ウィル「やぁ!ララ嬢!」
ウィルは侯爵なのにも関わらず、自ら炊き出しを配っていた。
ジェイドも護衛だと言うのに、ウィルから離れ炊き出しの大きなお鍋から器にシチューを次々に注いでいる。
「あー!聖女様だー!こんばんはー!」
ララ「孤児院の皆!」
炊き出しの列に並んでいた子供達が、ララに駆け寄り、ララの手を引っ張って、炊き出しの列に連れてくる。
ララ「どうしてみんなここに?」
「侯爵様がお芝居を見せて下さるって。」
「今日の炊き出しはすげぇんだぜ。肉がめっちゃ入ってるんだ。」
「侯爵様がたくさん食材を寄付してくれたのー。」
ララ「あの?」
ウィル「もう少ししたら遣いの者をやろうと思っていたんだけどね。もうすぐ舞台が整うよ。」
ララ「え?舞台?」
ウィル「ああ。どうせなら、旧聖堂の舞台を借りて、治療希望者や、孤児院の子供達にも見せてやろうと思ってね。劇場の最終公演が終わってから、役者達が馬車でこちらに来るから、8時頃の開始にはなるけど、神官長には許可をとってあるし。子供達も滅多に出来ない夜更かしが出来るって大喜びしてる。ほら。」
ウィルに5つ位の男の子が飛び掛かってきたので、器が載ったトレーを左手に持ったまま、右手で男の子を抱き上げた。
「お芝居すっごい楽しみ。めちゃくちゃ面白いんでしょう?」
ウィル「因みにファルス君のご家族も招待しているよ。よろこんで来るそうだ。」
ファルス「え?」
ファルスとララはまた目が点になっていた。
ウィル「さあさあ。まだお芝居まで時間があるからね。子供達と座って食べておいで。『さぁ、聖女様と護衛さんに器を配って。』」
ウィルは抱き抱えた男の子に耳打ちすると、その小さな両手で、器を聖女と護衛に手渡した。
ウィル「ご苦労様。聖女様と食べておいで。」
ウィルは男の子を降ろすと、器を手渡し頭を撫でた。
男の子「うん!」
男の子は満面の笑みを浮かべ、「こっち」と聖女を孤児院の子供達と一緒に引っ張っていった。
ファルス「何故こんなことを?」
ウィル「そりゃあ、宣伝だよ。ここにいる者達が皆口々に面白かったとそれぞれ話してまわれば、いい宣伝になると思わないかい?愛娘のためにこんなに宣伝して回るなんて、なんていい父親なんだろうねぇ。私は。それに、孤児達も招待すれば、平民の私に対する印象も更に良くなると思わないかい?ここの領主は色々と黒い噂も絶えないようだし、皆不満に思ってることも多いようだからねぇ。私が領主になるのも時間の問題かも知れないねぇ。」
ウィルは下卑た笑みをして見せた。
ファルス「掴めない方ですね…。」
ウィル「そうかい?褒め言葉として受けとっておくよ。今日は我々もいるから、警護は休んで家族と観劇するといい。」
ファルス「あなた方が味方と決まった訳では…」
ウィル「我々が敵ならいくらでも彼女を害することは出来たよ。それこそ、昨日の応接室でね。君がいたところで、我々から守り切ることは不可能だ。分かるだろう?」
ファルス「なら目的は何です?」
ウィル「人の善意を…ひどいよねぇ。まぁ、目的は芝居の後で話すさ。今は楽しむといい。」
ファルス「…」
ウィル「さぁ。配膳の邪魔だよ。行った行った。」
ウィルは手をひらひらと振って、ファルスを追い払った。
…そこそこ優秀なんだけど、融通の効かない漢だねぇ。彼は…
ウィルはファルスの後姿を見ながら胸中でぼやいていた。
しばらくして役者達が乗った馬車が到着した。
馬車から降りた役者達は次々にウィルへと深々と頭を下げる。
ウィル「挨拶はいらないよ。早く舞台の準備を進めておくれ。」
ウィルは役者達を舞台へと促した。
ウィル「さてと。そろそろ皆を席に誘導しようか?」
ジェイド「かしこまりました。」
いつの間にかウィルの後に控えていたジェイドが応答して、2人は別々の方向へと歩き出し、人集りの外側から声をかけて旧聖堂の中へと誘導を始めた。
今朝の教会も喧騒に満ちていた。
だが、どうやら急患ではないようで、ララは全く呼ばれることなく、いつものように身を清め、神に祈りを捧げ、治療の儀を行っていた。
夕方になっても侯爵様の使者はララの元には現れず、残念に思っていると、旧聖堂の方から炊き出しのいい匂いが漂ってきた。
ララは手持ち無沙汰だったので、配膳を手伝おうと旧聖堂に向かう。
ウィル「やぁ!ララ嬢!」
ウィルは侯爵なのにも関わらず、自ら炊き出しを配っていた。
ジェイドも護衛だと言うのに、ウィルから離れ炊き出しの大きなお鍋から器にシチューを次々に注いでいる。
「あー!聖女様だー!こんばんはー!」
ララ「孤児院の皆!」
炊き出しの列に並んでいた子供達が、ララに駆け寄り、ララの手を引っ張って、炊き出しの列に連れてくる。
ララ「どうしてみんなここに?」
「侯爵様がお芝居を見せて下さるって。」
「今日の炊き出しはすげぇんだぜ。肉がめっちゃ入ってるんだ。」
「侯爵様がたくさん食材を寄付してくれたのー。」
ララ「あの?」
ウィル「もう少ししたら遣いの者をやろうと思っていたんだけどね。もうすぐ舞台が整うよ。」
ララ「え?舞台?」
ウィル「ああ。どうせなら、旧聖堂の舞台を借りて、治療希望者や、孤児院の子供達にも見せてやろうと思ってね。劇場の最終公演が終わってから、役者達が馬車でこちらに来るから、8時頃の開始にはなるけど、神官長には許可をとってあるし。子供達も滅多に出来ない夜更かしが出来るって大喜びしてる。ほら。」
ウィルに5つ位の男の子が飛び掛かってきたので、器が載ったトレーを左手に持ったまま、右手で男の子を抱き上げた。
「お芝居すっごい楽しみ。めちゃくちゃ面白いんでしょう?」
ウィル「因みにファルス君のご家族も招待しているよ。よろこんで来るそうだ。」
ファルス「え?」
ファルスとララはまた目が点になっていた。
ウィル「さあさあ。まだお芝居まで時間があるからね。子供達と座って食べておいで。『さぁ、聖女様と護衛さんに器を配って。』」
ウィルは抱き抱えた男の子に耳打ちすると、その小さな両手で、器を聖女と護衛に手渡した。
ウィル「ご苦労様。聖女様と食べておいで。」
ウィルは男の子を降ろすと、器を手渡し頭を撫でた。
男の子「うん!」
男の子は満面の笑みを浮かべ、「こっち」と聖女を孤児院の子供達と一緒に引っ張っていった。
ファルス「何故こんなことを?」
ウィル「そりゃあ、宣伝だよ。ここにいる者達が皆口々に面白かったとそれぞれ話してまわれば、いい宣伝になると思わないかい?愛娘のためにこんなに宣伝して回るなんて、なんていい父親なんだろうねぇ。私は。それに、孤児達も招待すれば、平民の私に対する印象も更に良くなると思わないかい?ここの領主は色々と黒い噂も絶えないようだし、皆不満に思ってることも多いようだからねぇ。私が領主になるのも時間の問題かも知れないねぇ。」
ウィルは下卑た笑みをして見せた。
ファルス「掴めない方ですね…。」
ウィル「そうかい?褒め言葉として受けとっておくよ。今日は我々もいるから、警護は休んで家族と観劇するといい。」
ファルス「あなた方が味方と決まった訳では…」
ウィル「我々が敵ならいくらでも彼女を害することは出来たよ。それこそ、昨日の応接室でね。君がいたところで、我々から守り切ることは不可能だ。分かるだろう?」
ファルス「なら目的は何です?」
ウィル「人の善意を…ひどいよねぇ。まぁ、目的は芝居の後で話すさ。今は楽しむといい。」
ファルス「…」
ウィル「さぁ。配膳の邪魔だよ。行った行った。」
ウィルは手をひらひらと振って、ファルスを追い払った。
…そこそこ優秀なんだけど、融通の効かない漢だねぇ。彼は…
ウィルはファルスの後姿を見ながら胸中でぼやいていた。
しばらくして役者達が乗った馬車が到着した。
馬車から降りた役者達は次々にウィルへと深々と頭を下げる。
ウィル「挨拶はいらないよ。早く舞台の準備を進めておくれ。」
ウィルは役者達を舞台へと促した。
ウィル「さてと。そろそろ皆を席に誘導しようか?」
ジェイド「かしこまりました。」
いつの間にかウィルの後に控えていたジェイドが応答して、2人は別々の方向へと歩き出し、人集りの外側から声をかけて旧聖堂の中へと誘導を始めた。
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