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C級の絶望(1-26)
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ランス「ああ。匿名で頼む。」
受付嬢「かしこまりました。他に何かご要件はございますますか。」
ランス「ああ。大丈夫だ。ありがとう。」
ランスは冒険者ギルドを後にした。
その後、洋服店や宝飾品店、魔道具店へと足を運び、大荷物を抱えて、とびきり高級な宿に3日間の宿泊を決めた。
__翌朝
ランス「これでよしっと。」
鏡を前に髪型を整える。
街で買った上等な生地の服に身を包み、ベルトや腕にさり気なく宝飾品をあしらって、いつものように帯剣をする。
ランス「おっと。コレコレ。」
魔道具店で購入した指輪を左手の中指にはめると、ランスの黒髪と黒い瞳がキラキラと輝き、根元から徐々に金髪へと変わっていった。
ランス「おおっ!すごいな!金髪も悪くないんじゃないか?」
鏡の前で何度もポーズを取るランス。
ランス「おっと!そろそろ行かなきゃな!」
ひとしきり楽しんだ後、部屋を後にした。
門番「礼拝ですか?」
ランスは三度教会を訪れ、門番に声をかけられる。
ランス「いや。神官長をお願い出来るかな?昨日した匿名の寄付の件でと伝えてもらえるかな?」
ランスは爽やかに微笑む。
門番「かしこまりました。」
2人いた門番のうち1人が神官長のもとへと向かい、しばらくして、連れて戻ったのは昨日の小太りの神官だった。
ランス「!!」
ランスは一瞬焦ったが、一昨日は髪も瞳も黒く、フードも目深に被っていたので、バレないだろうと思いなおす。
ランス「あなたが神官長様ですね。お呼び立てして申し訳ありません。」
神官長「こちらこそ。昨日は多額のご寄付を賜りまして、大変ありがたく存じます…。こんなところではなんですので、よろしければ神官長室にお越し下さい。お茶でも淹れさせますので。」
ランス「恐れいります。」
ランスは神官長に案内されて、神官長室へと移動した。
部屋に入るとすぐに応接用の革張りのソファに促され、腰を下ろすランス。
神官長「すぐにお茶を淹れさせますので。」
とすぐに人を呼びに退出した。
その間に立ち上がり辺りに視線をやるが、教会の執務室といった簡素な造りで調度品などもなかった。
…どこに金を溜め込んでるんだろうな?
と気にはなるものの
…余計な詮索は身を滅ぼしかねないからな…
と、頭を振り、大人しくまたソファに腰を下ろした。
神官長「お待たせして申し訳ありません。」
程なくして、神官長がティーセットを持った女性神官と戻ってきた。
ランス「いえ。こちらこそ、突然訪問してしまって、すみません。」
女性神官に微笑みかけた。
女性神官「いえ。どうぞ。」
女性神官は頬を赤らめ、俯きがちに紅茶を差し出した。
ランス「ありがとう。」
女性神官の目を見て再度微笑む。
女性神官「ひゃっ。しっ失礼します。」
女性神官は顔をりんごのように真っ赤にして飛んで出て行ってしまった。
…ははっ。真っ赤だ。可愛いなぁ。治療が済んだら、記念すべき777人目にいいかもなぁ。聖職者かぁ。背徳的でいいねぇ。
ランス思わずニヤける口元を手で隠した。
神官長「それで、多額のご寄付を頂いた後にわざわざお越し頂いたのには訳がおありなんですね?」
ランス「ええ。私はさるお方の遣いでございまして…。」
神官長「ええ。それで?」
ランス「その方のお嬢様がつい最近結婚が決まったのですが…子供の頃はそれはそれは手がつけられないお転婆娘でして…
。子供の頃にちょっと…お体に傷が…。閣…。おっと。さるお方が初夜の後に離縁されるのではないかと心配しておりまして。それで私がこちらに遣いで参った次第なのです。」
神官長「左様でございましたか…。」
ランス「匿名で寄付させて頂いた理由はお分かりでしょう?」
神官長「ええ。国王様は聖女信仰を良く思ってはいらっしゃいませんからな。国民からの支持を受け、いつ取って代わられるかと、気が気でないでしょうから。そんな中我らに貴族がついたとなると…」
ランス「おっと。」
口元に人差し指を当てたジェスチャーをする。
神官長「…失礼致しました。我らにはそのような意志はないのですが…緊張を高める訳にはまいりませんからなぁ。」
ランス「ええ。さるお方は必要であればもう倍の額を礼金として準備するとおっしゃっております。それは現金や宝石で用意しても構いません。魔力ポーションも準備致しましょう。」
神官長「魔力ポーションは大丈夫です。聖女の限界は実は日に5人なのです。不測の事態に備えているのですよ…。」
ランス「さすが神官長様。では闇に紛れてお嬢様の元へとお連れしたいのですが…。今夜、聖女様をお迎えに上がっても?」
神官長「さすがに聖女を1人で行かせる訳にはまいりません。護衛はつけさせて頂きます。」
ランス「構いません。ただ治療中はお嬢様の肌を他の男に晒す訳にはまいりませんので、前室で控えて頂くことになりますが…?」
神官長「ええ。それで構いません。では、今夜消灯後の8時に門の裏に2人を待機させておきます。門にお声がけ下さい。」
ランス「ありがとうございます。目立たぬよう聖女様と護衛の方には後で洋服を届けさせます。」
神官長「ああっ。目立たぬようにとご希望であれば、あなた様のその宝飾品は大変目立っておいでです。外していらした方が無難でしょう。」
ランス「これは失礼。これでも質素にしたつもりでしたが、目立っておりましたか。」
ランスはベルトや腕輪、宝飾品を取り外し、テーブルに置いた。
ランス「ご迷惑でなければこちらも寄付させて頂いてもよろしいですか。」
神官長「もちろんです。ありがたく頂戴致します。」
神官長はすぐに宝飾品を手にして下卑た笑みを浮かべた。
ランス「では礼金は後日どのようにお持ち致しましょう?」
神官長「教会では菓子類は嗜好品ですので、差し入れて頂かなければ、口にすることがございません。糖蜜パイなど皆喜びましょう。」
…菓子の下に隠してこいってことね。
ランス「ええ。では、お嬢様の傷跡が治りましたら、お礼に伺います。」
神官長「それではまた後ほど。」
ランス「よろしくお願い致します。」
予定通りランスは教会に洋服を届けて夜を待った。
受付嬢「かしこまりました。他に何かご要件はございますますか。」
ランス「ああ。大丈夫だ。ありがとう。」
ランスは冒険者ギルドを後にした。
その後、洋服店や宝飾品店、魔道具店へと足を運び、大荷物を抱えて、とびきり高級な宿に3日間の宿泊を決めた。
__翌朝
ランス「これでよしっと。」
鏡を前に髪型を整える。
街で買った上等な生地の服に身を包み、ベルトや腕にさり気なく宝飾品をあしらって、いつものように帯剣をする。
ランス「おっと。コレコレ。」
魔道具店で購入した指輪を左手の中指にはめると、ランスの黒髪と黒い瞳がキラキラと輝き、根元から徐々に金髪へと変わっていった。
ランス「おおっ!すごいな!金髪も悪くないんじゃないか?」
鏡の前で何度もポーズを取るランス。
ランス「おっと!そろそろ行かなきゃな!」
ひとしきり楽しんだ後、部屋を後にした。
門番「礼拝ですか?」
ランスは三度教会を訪れ、門番に声をかけられる。
ランス「いや。神官長をお願い出来るかな?昨日した匿名の寄付の件でと伝えてもらえるかな?」
ランスは爽やかに微笑む。
門番「かしこまりました。」
2人いた門番のうち1人が神官長のもとへと向かい、しばらくして、連れて戻ったのは昨日の小太りの神官だった。
ランス「!!」
ランスは一瞬焦ったが、一昨日は髪も瞳も黒く、フードも目深に被っていたので、バレないだろうと思いなおす。
ランス「あなたが神官長様ですね。お呼び立てして申し訳ありません。」
神官長「こちらこそ。昨日は多額のご寄付を賜りまして、大変ありがたく存じます…。こんなところではなんですので、よろしければ神官長室にお越し下さい。お茶でも淹れさせますので。」
ランス「恐れいります。」
ランスは神官長に案内されて、神官長室へと移動した。
部屋に入るとすぐに応接用の革張りのソファに促され、腰を下ろすランス。
神官長「すぐにお茶を淹れさせますので。」
とすぐに人を呼びに退出した。
その間に立ち上がり辺りに視線をやるが、教会の執務室といった簡素な造りで調度品などもなかった。
…どこに金を溜め込んでるんだろうな?
と気にはなるものの
…余計な詮索は身を滅ぼしかねないからな…
と、頭を振り、大人しくまたソファに腰を下ろした。
神官長「お待たせして申し訳ありません。」
程なくして、神官長がティーセットを持った女性神官と戻ってきた。
ランス「いえ。こちらこそ、突然訪問してしまって、すみません。」
女性神官に微笑みかけた。
女性神官「いえ。どうぞ。」
女性神官は頬を赤らめ、俯きがちに紅茶を差し出した。
ランス「ありがとう。」
女性神官の目を見て再度微笑む。
女性神官「ひゃっ。しっ失礼します。」
女性神官は顔をりんごのように真っ赤にして飛んで出て行ってしまった。
…ははっ。真っ赤だ。可愛いなぁ。治療が済んだら、記念すべき777人目にいいかもなぁ。聖職者かぁ。背徳的でいいねぇ。
ランス思わずニヤける口元を手で隠した。
神官長「それで、多額のご寄付を頂いた後にわざわざお越し頂いたのには訳がおありなんですね?」
ランス「ええ。私はさるお方の遣いでございまして…。」
神官長「ええ。それで?」
ランス「その方のお嬢様がつい最近結婚が決まったのですが…子供の頃はそれはそれは手がつけられないお転婆娘でして…
。子供の頃にちょっと…お体に傷が…。閣…。おっと。さるお方が初夜の後に離縁されるのではないかと心配しておりまして。それで私がこちらに遣いで参った次第なのです。」
神官長「左様でございましたか…。」
ランス「匿名で寄付させて頂いた理由はお分かりでしょう?」
神官長「ええ。国王様は聖女信仰を良く思ってはいらっしゃいませんからな。国民からの支持を受け、いつ取って代わられるかと、気が気でないでしょうから。そんな中我らに貴族がついたとなると…」
ランス「おっと。」
口元に人差し指を当てたジェスチャーをする。
神官長「…失礼致しました。我らにはそのような意志はないのですが…緊張を高める訳にはまいりませんからなぁ。」
ランス「ええ。さるお方は必要であればもう倍の額を礼金として準備するとおっしゃっております。それは現金や宝石で用意しても構いません。魔力ポーションも準備致しましょう。」
神官長「魔力ポーションは大丈夫です。聖女の限界は実は日に5人なのです。不測の事態に備えているのですよ…。」
ランス「さすが神官長様。では闇に紛れてお嬢様の元へとお連れしたいのですが…。今夜、聖女様をお迎えに上がっても?」
神官長「さすがに聖女を1人で行かせる訳にはまいりません。護衛はつけさせて頂きます。」
ランス「構いません。ただ治療中はお嬢様の肌を他の男に晒す訳にはまいりませんので、前室で控えて頂くことになりますが…?」
神官長「ええ。それで構いません。では、今夜消灯後の8時に門の裏に2人を待機させておきます。門にお声がけ下さい。」
ランス「ありがとうございます。目立たぬよう聖女様と護衛の方には後で洋服を届けさせます。」
神官長「ああっ。目立たぬようにとご希望であれば、あなた様のその宝飾品は大変目立っておいでです。外していらした方が無難でしょう。」
ランス「これは失礼。これでも質素にしたつもりでしたが、目立っておりましたか。」
ランスはベルトや腕輪、宝飾品を取り外し、テーブルに置いた。
ランス「ご迷惑でなければこちらも寄付させて頂いてもよろしいですか。」
神官長「もちろんです。ありがたく頂戴致します。」
神官長はすぐに宝飾品を手にして下卑た笑みを浮かべた。
ランス「では礼金は後日どのようにお持ち致しましょう?」
神官長「教会では菓子類は嗜好品ですので、差し入れて頂かなければ、口にすることがございません。糖蜜パイなど皆喜びましょう。」
…菓子の下に隠してこいってことね。
ランス「ええ。では、お嬢様の傷跡が治りましたら、お礼に伺います。」
神官長「それではまた後ほど。」
ランス「よろしくお願い致します。」
予定通りランスは教会に洋服を届けて夜を待った。
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