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C級の絶望(1-23)
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「よしっ!」
顔を洗い、濡れた手でそのまま髪をかきあげて、顔を拭きながら鏡を見つめる。
…なかなかいい男だな。
顔を色々な角度から確認し笑顔を見せる。
白く輝く歯が美しい。
…この2ヶ月長かった…
ランスは辛かった日々を思い出す。
"絶望のフェリス"に切りそろえられた前髪はやっとオールバックに撫でつければ違和感のない長さまで伸びていた。
輝く白い歯は入院中に医学院を抜け出し、馴染みの細工師に頼んで、山羊の角を削って差し歯を作ってもらった。
金具が歯茎に刺さったり、試行錯誤を繰り返してやっと形になった。苦労しただけあって、かなり満足のいくものとなった。
骨折した鼻も腕も肋骨ももう痛みもなく、剣も握れる。
…後はアレだけだな。
ランスは今日聖都へ向けて出発する。
医学院への支払いは50万ベリー。
歯に10万ベリー。
武器防具の新調に40万ベリー。
ギルドカードを使って支払ったが、今のところランスを捕らえようとする者は現れなかったので、まだシェリルは訴えてはいないらしい…。
ひょっとしたらスナッピングタートルに噛ませることでシェリルの気持ちは晴れたのかも知れないな…。
そう期待しつつも、聖都への交通手段はもしものことがあれば、飛び降りて逃げることが出来るように乗合馬車をいくつも乗り継ぎして行くルートを選択した。
道のりは1ヶ月近くになるだろうが、聖女様が治療出来るのが1日にせいぜい数人と聞く。どれだけ待つことになるかもわからない。滞在費用が膨らむ想定からも、出来るだけ金を節約する意味でも乗合馬車が最適だった。
「よし!いくぞ!」
フードを、目深に被りドアを開けた。
…乗合馬車のいいところはただ聞き耳を立てるだけで、流行や様々な情報を手に入れることが出来ることだな。
ランスはニヤける口元をフードで隠した。
そろそろ工程の半分程を過ぎたところだが、"爆炎の騎士"が指名手配になっているという話はきかない。
途中途中の街では劇場の次の公演がすべてキャンセルされ、詳細は公表されていないが喜劇が上演されることが決まったらしい。
キャンセルされた劇の販売済みのチケットが払い戻されないらしく、トラブルになったらしいが、そのチケットで新しく上演される喜劇を同日同時刻に観覧出来るらしく、観覧した上で満足出来なければ払い戻すと興行主が公言しているらしく、その自信が更に話題を呼んで前売り券はどこも売り切れなんだそうだ。
その他には、新しいレストランがオープン予定で話題なんだとか。
レストランなのに、魔導士を大量募集しているらしく、体力的に冒険がキツくなった魔導士達がこぞって応募しているそうだ。
応募者には守秘義務が課せられるらしく、どんな内容のレストランかは口外出来ないらしい。
ただ応募者は一様に「すごい。」とだけ零しているらしく、皆行ってみたいとオープン前から予約が殺到して半年先まで埋まっているとか。
そして最後の話題は、冒険者ギルドで女性冒険者向けに無料で配られている本があるそうで、それが大層面白くて為になると評判らしい。
無料なため並べてもすぐになくなってしまい、口々に面白いと言うものだから、一般の女性からも読みたいと言った声が多く上がり、近々一般向けに販売されるのだそうだ。
…これはいいことを聞いた。
聖女様の治療が済めば、次のミッションは貴族の女性を口説き落とすこと。話題にこと欠かないのはありがたい。
それに、なかなか手に入らないチケットや予約でいっぱいのレストランに入れるように手配出来れば、俺の株も上がる…。
ランスは口元が緩むのを止められなかった。
…冒険者ギルドで人気の本はパスだな…。極力捕まらない為にも、ギルドには近付きたくないしな。
その後も街も話題といればたいていこの3つ位だった。
間もなく、聖都に向かう海路と言う時になって、やっと聖女様の噂が耳に入るようになってきていた。
聖女様は1日に3人をお助けになるそうで、特に重症度の高い者や子供から率先して助けるそうだ。
1日に3人と言う数字は聖女様の魔力の限界値らしい。
魔力ポーションを使って全員助ければいいじゃないか。と言う声もあるが、魔力ポーションを乱用すれば、耐性がついてしまい回復量が減る上に、そもそも高価な物が買い占めにより更に価格が高騰してしまう。
魔力ポーションを購入出来なくなった者が、命を落とすようなことになれば、本末転倒だし、買い占めを行った神聖教会に恨みが集中しかねない上、魔力ポーションを利用した分、治療費も高騰しては更なる不満が生まれる。
一般家庭の平均月収の約半分の1万ベリーと言う良心的な治療費設定と、毎日限界まで民に尽くす献身的な聖女様の姿。
治療を希望していない者でも、一目聖女様の姿を見ようと神聖教会に訪れ、少額の寄付をし、手を合わせて行く。
神聖教会が多くの民に支持され、信仰される理由がそこにあるようだ。
…記念すべき777人目に聖女様を口説くのもアリかも知れないな…。
ランスは罰当たりなことを胸中で呟き、期待を胸に聖都の地に降り立った。
顔を洗い、濡れた手でそのまま髪をかきあげて、顔を拭きながら鏡を見つめる。
…なかなかいい男だな。
顔を色々な角度から確認し笑顔を見せる。
白く輝く歯が美しい。
…この2ヶ月長かった…
ランスは辛かった日々を思い出す。
"絶望のフェリス"に切りそろえられた前髪はやっとオールバックに撫でつければ違和感のない長さまで伸びていた。
輝く白い歯は入院中に医学院を抜け出し、馴染みの細工師に頼んで、山羊の角を削って差し歯を作ってもらった。
金具が歯茎に刺さったり、試行錯誤を繰り返してやっと形になった。苦労しただけあって、かなり満足のいくものとなった。
骨折した鼻も腕も肋骨ももう痛みもなく、剣も握れる。
…後はアレだけだな。
ランスは今日聖都へ向けて出発する。
医学院への支払いは50万ベリー。
歯に10万ベリー。
武器防具の新調に40万ベリー。
ギルドカードを使って支払ったが、今のところランスを捕らえようとする者は現れなかったので、まだシェリルは訴えてはいないらしい…。
ひょっとしたらスナッピングタートルに噛ませることでシェリルの気持ちは晴れたのかも知れないな…。
そう期待しつつも、聖都への交通手段はもしものことがあれば、飛び降りて逃げることが出来るように乗合馬車をいくつも乗り継ぎして行くルートを選択した。
道のりは1ヶ月近くになるだろうが、聖女様が治療出来るのが1日にせいぜい数人と聞く。どれだけ待つことになるかもわからない。滞在費用が膨らむ想定からも、出来るだけ金を節約する意味でも乗合馬車が最適だった。
「よし!いくぞ!」
フードを、目深に被りドアを開けた。
…乗合馬車のいいところはただ聞き耳を立てるだけで、流行や様々な情報を手に入れることが出来ることだな。
ランスはニヤける口元をフードで隠した。
そろそろ工程の半分程を過ぎたところだが、"爆炎の騎士"が指名手配になっているという話はきかない。
途中途中の街では劇場の次の公演がすべてキャンセルされ、詳細は公表されていないが喜劇が上演されることが決まったらしい。
キャンセルされた劇の販売済みのチケットが払い戻されないらしく、トラブルになったらしいが、そのチケットで新しく上演される喜劇を同日同時刻に観覧出来るらしく、観覧した上で満足出来なければ払い戻すと興行主が公言しているらしく、その自信が更に話題を呼んで前売り券はどこも売り切れなんだそうだ。
その他には、新しいレストランがオープン予定で話題なんだとか。
レストランなのに、魔導士を大量募集しているらしく、体力的に冒険がキツくなった魔導士達がこぞって応募しているそうだ。
応募者には守秘義務が課せられるらしく、どんな内容のレストランかは口外出来ないらしい。
ただ応募者は一様に「すごい。」とだけ零しているらしく、皆行ってみたいとオープン前から予約が殺到して半年先まで埋まっているとか。
そして最後の話題は、冒険者ギルドで女性冒険者向けに無料で配られている本があるそうで、それが大層面白くて為になると評判らしい。
無料なため並べてもすぐになくなってしまい、口々に面白いと言うものだから、一般の女性からも読みたいと言った声が多く上がり、近々一般向けに販売されるのだそうだ。
…これはいいことを聞いた。
聖女様の治療が済めば、次のミッションは貴族の女性を口説き落とすこと。話題にこと欠かないのはありがたい。
それに、なかなか手に入らないチケットや予約でいっぱいのレストランに入れるように手配出来れば、俺の株も上がる…。
ランスは口元が緩むのを止められなかった。
…冒険者ギルドで人気の本はパスだな…。極力捕まらない為にも、ギルドには近付きたくないしな。
その後も街も話題といればたいていこの3つ位だった。
間もなく、聖都に向かう海路と言う時になって、やっと聖女様の噂が耳に入るようになってきていた。
聖女様は1日に3人をお助けになるそうで、特に重症度の高い者や子供から率先して助けるそうだ。
1日に3人と言う数字は聖女様の魔力の限界値らしい。
魔力ポーションを使って全員助ければいいじゃないか。と言う声もあるが、魔力ポーションを乱用すれば、耐性がついてしまい回復量が減る上に、そもそも高価な物が買い占めにより更に価格が高騰してしまう。
魔力ポーションを購入出来なくなった者が、命を落とすようなことになれば、本末転倒だし、買い占めを行った神聖教会に恨みが集中しかねない上、魔力ポーションを利用した分、治療費も高騰しては更なる不満が生まれる。
一般家庭の平均月収の約半分の1万ベリーと言う良心的な治療費設定と、毎日限界まで民に尽くす献身的な聖女様の姿。
治療を希望していない者でも、一目聖女様の姿を見ようと神聖教会に訪れ、少額の寄付をし、手を合わせて行く。
神聖教会が多くの民に支持され、信仰される理由がそこにあるようだ。
…記念すべき777人目に聖女様を口説くのもアリかも知れないな…。
ランスは罰当たりなことを胸中で呟き、期待を胸に聖都の地に降り立った。
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