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C級の絶望(1-18)
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「ん?おい!救難信号があがったぞ!」
馬車の中、赤髪赤眼の筋骨隆々の獣人ガルムが救難信号の上がった方角を指差した。
「2時間程度の距離だな?カナート近郊の川溜まり辺りか。たしかスナッピングタートルの討伐依頼があったな。我らはイケるが、どうする?」
今度は青髪青眼の剣士シャルが返す。
「そうですね。この方の容態も安定しているようですし、いきましょう。」
銀髪銀眼の少女ミカは、馬車に横たわる冒険者を介抱しながら答えた。
「了解!!」
茶髪茶眼マイクが御者席から応答弾を打ち上げ、馬車を救難信号の上がった方角へと向けた。
「こちら、マウビル第7救護隊ミカです。要救助者の救助に、カナート近郊の川溜まりへ向かいます。クエスト申請のあった冒険者はいますか?」
ミカは耳飾りに仕込まれた魔導通信機で近隣の冒険者ギルドに連絡する。
「こちらマウビルです。クエスト申請があったのはC級冒険者、"爆炎の騎士"ランスロットの1名です。」
「こちらカナート。こちらの申請者はA級冒険者、"絶望のフェリス"の1名です。」
応答したカナートの受付嬢の声は心なしか震えていた。
「えっ!?A級!?」
ミカは思わず大きな声を出してしまった。
『A級!?』
やる気満々だったメンバーが慌てて大声を出した。
それも当然だった。ガルムはB級、他2人はC級。ミカに至っては回復専門の非戦闘員だ。
「やべぇ。もう応答弾打っちまったぞ…。」
マイクがバツの悪そうな顔をした。
ガルム「A級って誰なんだ?ここいらにはA級なんていなかっただろう?」
ミカ「"絶望のフェリス"って言ってたわ。知ってる?」
マイク「たしか、5年程前に引退したんじゃなかったか?」
シャル「数年振りで感が鈍ったか?」
ミカ「でも゙。A級なら救難信号を出すでしょうか?助けに来るのは皆自分より弱い人間なのに?」
ガルム「違いねぇが、はっきり言う嬢ちゃんだな!!がっはっは!!」
ガルムが豪快に笑った。
ガルム「そうだな。俺でも救難信号なんて打ち上げねぇな。それだけの覚悟と自分が強え自覚がなきゃ、上へは上がれねぇ。恐らく、救難信号はC級の方だろう。」
マイク「C級の名前は?」
ミカ「"爆炎の騎士"ランスロットだそうです。」
シャル「有名な色男だな。」
マイク「千人斬りとか言われてたっけ?くぅ~。男のロマンだよな。羨ましい~。」
マイクは御者席で足をバタつかせた。
ガルム「色男でも、C級はC級。お前ら、油断するんじゃねぇぞ!!上手くいけばA級の援軍が来るかもなんて、期待はするなよ。」
シャル「ああ。」
マイク「了解。隊長。」
『・・・』
到着した4人は気を失っているランスの姿を見て、絶句していた。
ミカ「何が色男なのよ!!どっからどう見ても変態じゃない!!」
ミカがランスを指差し、ヒステリー気味に怒鳴った。
シャル「"爆炎の騎士"ランスロットはそのはずなんだが…。」
シャルは首を傾げた。
ガルムとマイクは腹を抱えて笑っている。
マイク「多分"爆炎の騎士"ランスロット様で間違いないんじゃねぇ。確か黒髪黒眼だったはず。細マッチョっての?いい身体はしてるし、亀もむしゃぶりつきたくなるほどのチン◯だったのかもよ?あー。腹痛ぇ。」
マイクは捩れる腹部を押さえながらも、ランスのまぶたを開き瞳の色を確認した。
折れて血が出ている鼻から下を隠せば、イケメンと言えなくもない。
ガルム「まぁ。真相は本人が目を覚まさないことにはわからねぇな。お嬢、とりあえず回復魔法かけてやれ。」
ガルムは笑い過ぎて流した涙を拭き取りながらミカに指示をした。
ミカ「嫌よ。そんな変態触りたくないもの。それに、毒消し草の匂いがするから感染症の心配もないはずよ。」
マイク「おいおい。仕事放棄かよ…。」
ミカ「違うわ。死ぬ心配がないんだから。魔力の節約よ。マウビルに帰る途中、また救難信号が上がるかも知れないもの。変態を助けるのに、魔力を使って、善良な冒険者を救えなかったら困るもの。」
マイク「へいへい。じゃあ、こいつはどうするよ?亀は?」
ミカ「亀はそのままでいいわ。外してヘタに出血したり、血栓が血液に流れればやっかいだもの。ブランケットでくるんで、馬車に乗せて。」
マイク「了解。色男の末路としちゃ、哀れだねぇ。」
マイクはランスをブランケットでくるんでぞんざいに肩に担ぎ、馬車の中へ寝かせた。
シャル「ガルム。いつまで笑っているんだ。討伐はどうする。C級があんな状態なのだ。かなりヤバいヤツがいるのではないのか?」
ガルム「そうだな。だが、当のスナッピングタートルの姿が見当たらねぇ。それに、俺達は討伐が仕事じゃねえ。救助が仕事だ。馬車にいるあの2人を医者の元まで届けるのが俺達の任務だ。それにA級の"絶望のフェリス"がクエスト申請してるんだ。横取りは野暮ってもんだぜ。」
ガルムがウィンクする。
シャル「それもそうだな。では帰ろう。」
ガルム「ああ。」
ミカ「隊長、恰好つけ中すみません。今カナートから通信が入りました。『"絶望のフェリス"がスナッピングタートルの掃討を完了。モンスターの脅威はなし。その際女性1名を救助し、男性は応急処置をして置いて来た為、救助要請をしたとの報告あり。』だそうです。そりゃあ、こんな変態捨て置かれますよ。」
カナートの受付の女性の声は、先程の通信とは打って変わって、とても明るい声になっていた。"絶望のフェリス"が無事に帰ったことをよろこんでいるのだろうか。
ガルム「恰好つけって…。本当に嬢ちゃんは口が悪ぃな。」
ボリボリと頭を掻きながらボヤくガルム。
マイク「ってことは、クエストと女の子を"絶望のフェリス"に横取りされて、亀とお楽しみだったのか?こいつ?」
シャル「これだけボロボロなら、戦闘不能と判断されても仕方あるまい。鼻や歯、両腕と肋骨も折れてそうだ。それに、火傷も負っていた。かなりの死闘だったのだろう。それを掃討するとは…。"絶望のフェリス"…1度はお目に掛りたいものだ。」
シャルは馬車の中の自分の席へと座り、ランスに視線を落としながら呟いた。
ガルム「違いねぇ。」
馬車がズシンと揺れる勢いでガルムが着席した。
ミカ「では、いきましょう。」
ミカはランスを視界に入れるのも嫌。といった態度で着席した。
マイク「ほんじゃあ、出発しま~すっ。」
マイクが御者席に座り、手綱を握って馬に合図を送った。
馬車はマウビルへ向け出発した。
馬車の中、赤髪赤眼の筋骨隆々の獣人ガルムが救難信号の上がった方角を指差した。
「2時間程度の距離だな?カナート近郊の川溜まり辺りか。たしかスナッピングタートルの討伐依頼があったな。我らはイケるが、どうする?」
今度は青髪青眼の剣士シャルが返す。
「そうですね。この方の容態も安定しているようですし、いきましょう。」
銀髪銀眼の少女ミカは、馬車に横たわる冒険者を介抱しながら答えた。
「了解!!」
茶髪茶眼マイクが御者席から応答弾を打ち上げ、馬車を救難信号の上がった方角へと向けた。
「こちら、マウビル第7救護隊ミカです。要救助者の救助に、カナート近郊の川溜まりへ向かいます。クエスト申請のあった冒険者はいますか?」
ミカは耳飾りに仕込まれた魔導通信機で近隣の冒険者ギルドに連絡する。
「こちらマウビルです。クエスト申請があったのはC級冒険者、"爆炎の騎士"ランスロットの1名です。」
「こちらカナート。こちらの申請者はA級冒険者、"絶望のフェリス"の1名です。」
応答したカナートの受付嬢の声は心なしか震えていた。
「えっ!?A級!?」
ミカは思わず大きな声を出してしまった。
『A級!?』
やる気満々だったメンバーが慌てて大声を出した。
それも当然だった。ガルムはB級、他2人はC級。ミカに至っては回復専門の非戦闘員だ。
「やべぇ。もう応答弾打っちまったぞ…。」
マイクがバツの悪そうな顔をした。
ガルム「A級って誰なんだ?ここいらにはA級なんていなかっただろう?」
ミカ「"絶望のフェリス"って言ってたわ。知ってる?」
マイク「たしか、5年程前に引退したんじゃなかったか?」
シャル「数年振りで感が鈍ったか?」
ミカ「でも゙。A級なら救難信号を出すでしょうか?助けに来るのは皆自分より弱い人間なのに?」
ガルム「違いねぇが、はっきり言う嬢ちゃんだな!!がっはっは!!」
ガルムが豪快に笑った。
ガルム「そうだな。俺でも救難信号なんて打ち上げねぇな。それだけの覚悟と自分が強え自覚がなきゃ、上へは上がれねぇ。恐らく、救難信号はC級の方だろう。」
マイク「C級の名前は?」
ミカ「"爆炎の騎士"ランスロットだそうです。」
シャル「有名な色男だな。」
マイク「千人斬りとか言われてたっけ?くぅ~。男のロマンだよな。羨ましい~。」
マイクは御者席で足をバタつかせた。
ガルム「色男でも、C級はC級。お前ら、油断するんじゃねぇぞ!!上手くいけばA級の援軍が来るかもなんて、期待はするなよ。」
シャル「ああ。」
マイク「了解。隊長。」
『・・・』
到着した4人は気を失っているランスの姿を見て、絶句していた。
ミカ「何が色男なのよ!!どっからどう見ても変態じゃない!!」
ミカがランスを指差し、ヒステリー気味に怒鳴った。
シャル「"爆炎の騎士"ランスロットはそのはずなんだが…。」
シャルは首を傾げた。
ガルムとマイクは腹を抱えて笑っている。
マイク「多分"爆炎の騎士"ランスロット様で間違いないんじゃねぇ。確か黒髪黒眼だったはず。細マッチョっての?いい身体はしてるし、亀もむしゃぶりつきたくなるほどのチン◯だったのかもよ?あー。腹痛ぇ。」
マイクは捩れる腹部を押さえながらも、ランスのまぶたを開き瞳の色を確認した。
折れて血が出ている鼻から下を隠せば、イケメンと言えなくもない。
ガルム「まぁ。真相は本人が目を覚まさないことにはわからねぇな。お嬢、とりあえず回復魔法かけてやれ。」
ガルムは笑い過ぎて流した涙を拭き取りながらミカに指示をした。
ミカ「嫌よ。そんな変態触りたくないもの。それに、毒消し草の匂いがするから感染症の心配もないはずよ。」
マイク「おいおい。仕事放棄かよ…。」
ミカ「違うわ。死ぬ心配がないんだから。魔力の節約よ。マウビルに帰る途中、また救難信号が上がるかも知れないもの。変態を助けるのに、魔力を使って、善良な冒険者を救えなかったら困るもの。」
マイク「へいへい。じゃあ、こいつはどうするよ?亀は?」
ミカ「亀はそのままでいいわ。外してヘタに出血したり、血栓が血液に流れればやっかいだもの。ブランケットでくるんで、馬車に乗せて。」
マイク「了解。色男の末路としちゃ、哀れだねぇ。」
マイクはランスをブランケットでくるんでぞんざいに肩に担ぎ、馬車の中へ寝かせた。
シャル「ガルム。いつまで笑っているんだ。討伐はどうする。C級があんな状態なのだ。かなりヤバいヤツがいるのではないのか?」
ガルム「そうだな。だが、当のスナッピングタートルの姿が見当たらねぇ。それに、俺達は討伐が仕事じゃねえ。救助が仕事だ。馬車にいるあの2人を医者の元まで届けるのが俺達の任務だ。それにA級の"絶望のフェリス"がクエスト申請してるんだ。横取りは野暮ってもんだぜ。」
ガルムがウィンクする。
シャル「それもそうだな。では帰ろう。」
ガルム「ああ。」
ミカ「隊長、恰好つけ中すみません。今カナートから通信が入りました。『"絶望のフェリス"がスナッピングタートルの掃討を完了。モンスターの脅威はなし。その際女性1名を救助し、男性は応急処置をして置いて来た為、救助要請をしたとの報告あり。』だそうです。そりゃあ、こんな変態捨て置かれますよ。」
カナートの受付の女性の声は、先程の通信とは打って変わって、とても明るい声になっていた。"絶望のフェリス"が無事に帰ったことをよろこんでいるのだろうか。
ガルム「恰好つけって…。本当に嬢ちゃんは口が悪ぃな。」
ボリボリと頭を掻きながらボヤくガルム。
マイク「ってことは、クエストと女の子を"絶望のフェリス"に横取りされて、亀とお楽しみだったのか?こいつ?」
シャル「これだけボロボロなら、戦闘不能と判断されても仕方あるまい。鼻や歯、両腕と肋骨も折れてそうだ。それに、火傷も負っていた。かなりの死闘だったのだろう。それを掃討するとは…。"絶望のフェリス"…1度はお目に掛りたいものだ。」
シャルは馬車の中の自分の席へと座り、ランスに視線を落としながら呟いた。
ガルム「違いねぇ。」
馬車がズシンと揺れる勢いでガルムが着席した。
ミカ「では、いきましょう。」
ミカはランスを視界に入れるのも嫌。といった態度で着席した。
マイク「ほんじゃあ、出発しま~すっ。」
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