絶望のフェリス

笠市 莉子

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C級の絶望(1-9)

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剣を引き抜かれた後もしばらくスナッピングタートルは動き続けた。

「まだ動くんですね。」

「先輩冒険者の話では、首を切られて20分も動き続けた魔物もいたんだって。」

「えーっ!!そんなっ!?」

想像してシェリルは身震いした。

「こいつはもう大分動きが緩慢になってきたし、もうそろそろかな…。でも、討伐証明の首どうしようかな…。切り落とすには硬すぎて剣がダメになりそうだし…。報酬諦めるしかないかな…。」

ランスは顎に手を当て思案する。

「あっ!それなら私、魔導写真機持ってますよ!最近は討伐証明に魔導写真もOKみたいで…。」

「えっ!そんな高い物持ってるの?もしかして、シェリルって貴族令嬢だったりして!?」

「えっ!?ええっ!?そっ!そんなっ!?全然違いますよ。父がA級冒険者なんです。持ち物にはこだわる方で…。だから、家に置いてたものをこっそり借りてきちゃいました。」

「へー。そうなんだぁ。まぁ。そうゆうことにしといてあげるよ。」

「もうっ。本当なんですってば。」

シェリルは、ランスの意味深な視線に少しむくれながらも、馬の近くに置いていた自分のバックから魔導写真機を取って戻った。

「もう、動かなくなりましたね…。」

「本当だね。」

「じゃあ、対比物がないと大きさがわかりにくいですから、ランスさんと一緒に撮りましょうか。その方が持ち帰れなかった説得力もありますし…」

「え~っ!?僕も写るの?魔導写真を撮るならもっと格好いい恰好したかったなぁ…。初めてなんだし…。こんな亀汁塗れじゃなくってさぁ…。そうだっ!!シェリル!!今からでもウォーターボールで水浴びさせてくれない?」

「もうっ!!水浴びは後ですよ!!亀汁塗れの方が討伐の説得力もあるじゃないですかっ!!」

「ちぇっ。それもそっかぁ。しょうがない。諦めるかぁ。」

口を尖らせるランス。

…っもう。今度はカワイイとか…。ギャップがっ…

シェリルは魔導写真機の画角にスナッピングタートルの全体が映るように離れるフリをしてランスに背中を向け、動悸で苦しい胸を押さえた。そして、少し離れて振り返り、魔導写真機を構える。

「ランスさん。いいですか~?」

「ok!」

「じゃあ、撮りまーす。3.2.1…」

バシュッ

魔導写真機から強い光が一瞬放たれる。

「今ので撮れたの?」

ランスが眩しさに目を瞬かせながらシェリルに駆け寄る。

「撮れてるはずですよ。ちょっと待って下さいね。」

シェリルが魔導写真機についている歯車をまわすと、中から白くて薄い板状の物が飛び出してきた。

「少し待てば、写真が浮かび上がって来ますから、待って下さいね」

シェリルは写真をパタパタ扇ぐ。

「あっ。本当だ。出て来た。」

浮かび上がる写真を見入るランス。

「うん。我ながら上手に撮れてます。どうしましょうか?このまま燃やしてるところももう一枚撮ります?」

「…うん。そーだね。って言いたいところなんだけど、燃やすのは夜にしない?焚き火の代わりにもなるし…。それに何か、亀汁が痒い気がしてきて、早く洗い流したいんだよね…。シェリルまだ魔力残ってる?」

「えっ!?大変っ!!かぶれちゃいました?ウォーターボール位ならまだいけます。壊れたら困るんで、魔導写真機だけ置いて来ますね。」

すぐにシェリルが戻ってきた。

「それじゃあ、よろしく」

ランスがスナッピングタートルの体液塗れのシャツを脱ぎ捨てた。
細身だが筋肉でガッシリとした無駄のない身体が露わになる。

「はっ…。はいっ!我乞い願う。水の精霊よ。彼の者に恵を与え給え。ウォーターボール。」

シェリルは赤面しつつも、ランスの頭上に大きなウォーターボールを出現させ、両手をかざして状態を維持してみせた。

「これをどうしますか?野兎ヘアーみたいに纏わせますか?」

「いやいや。窒息したくないから…ジョウロみたいに小さな穴をいくつかあけて、雨みたいに降らせることって出来ないかな?」

「うーん?試しにやってみますね?」

シェリルはかざした手に少し力を込めて、目をぎゅっと強く閉じてイメージしてみる。

「すごい!シェリル完璧だよ。」

ランスは早速、髪をワシャワシャと洗い、
オールバックに髪をかきあげ、首や胸、肩、腕…と身体を洗っていく。

…もうもうもう。今度は色気がヤバすぎですってば、ランスさん~……

シェリルはイメージを維持するために必至で、なるべくランスから目を逸して、唇を真一文字に引き結んでいた。


「もういいよ。シェリルありがとう。」

ランスはそう言うと、犬みたいに身震いして雫を飛ばした。

「ひゃっ!!冷たっ!!」

シェリルは思わず、肩をすくめる。

『あっ!!』

2人の声が思わず重なった。


バシャーン


シェリルが思わず肩をすくめてしまったせいで、コントロールを失い、頭上のウォーターボールがそのままランスに落下してしまった。

「シェーリールーッ!!!」

睨むランス。

「ごっ。ごめんなさい!!!」

思わず逃げ出そうと走り出すシェリル。



「きゃあっ!!」

ほんの数歩走り出しただけで、シェリルは腕を掴まれてしまい、簡単に引き寄せられてしまった。

「シェリルに仕返し!!」

ランスは自分の胸にシェリルを強く抱き締めた。



「ランスさん。冷たいです。」

ランスが少し力を弱めると、おずおずとシェリルはランスを見上げた。

その顔は紅く上気しており、目は潤んでいた。



2人はお互いの瞳に吸い込まれるように、瞬く見つめ合い__




どちらともなく唇を重ねた。





何度目かの深い口づけの後でランスがシェリルを再び強く抱きしめて、己を押し当て

「シェリル。…だめかな?」

「………」

「ずっと、死にそうな位、緊張してたから我慢してたんだけど…。さすがに限界なんだよね…。」

恥ずかしそうにポリポリと頬をかくランス。

「………」

俯いて固まるシェリル。

「だめ?」

シェリルの顔を上目遣いで覗き込むランスに

「……っ!!っだめじゃないで…す…。」

途切れ途切れに小声で返すのがシェリルの精一杯だった。

「シェリル、好きだよ。」

そう言うとランスはシェリルに軽く口づけて、シェリルを抱きかかえ、天幕へと向かった。

途中何度も深い口づけを交わし
天幕の敷布の上にシェリルを下ろす。

「あっ。あの。これ…」

シェリルは緊張で震えながら、ポケットの中に入れてあったグレイシーからもらったお守りを、ランスに突き出すようにして渡した。

ランスは目を丸くして

「ずっと持ってたんだ?ふふっ。じゃあずっと我慢しなくても良かったってこと?」

ランスは意地悪く笑った。





「…っ!!っいじ…わる…っ!!」



ランスはポカポカと叩こうとするシェリルの腕を掴んで、そのまま深く口づけながら、シェリルのローブや服をはだけさせ、下着に手をかけた_。

「シェリル…。綺麗だ…。」

天幕を透かす陽の光に照らされたシェリルの肌は陶器のように白く滑らかだった。

「こんなに明るい中で恥ずかしいです。」

シェリルが腕で身体を隠そうとすると

「夜までだって、もう我慢出来ないよ。」

シェリルの腕の下へと、剣だこのあるランスの手が強引に潜り込み、柔らかな丘を揉みしだく。

「んっ…」

シェリルの吐息を、また深い口づけでランスが呑み込んだ。

「止まれないよ?」

ランスの有無を言わせぬ強引な様子に

シェリルはコクンと小さく頷いて

「私だけは恥ずかしいです。ランスさんも脱いで…?」

蚊の鳴くような声で呟いた。

「了解。」

ランスは荒々しく服を脱ぎ捨てた_。

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