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C級の絶望(1-2)
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「おめでとう。これで晴れて冒険者よ。」
カウンターの女性が両手でギルドカードを差し出した。
「はい。ありがとうございます。」
受け取ろうと手を伸ばす、笑顔の少女。
だが、カウンターの女性はカードを持つ手に力を込めて離してくれない。
「だけど、決して無理をしないこと。
それと、ギルドカードは身分証明書やお金の代わりにもなるので、決して他人に貸したり、無くしたりしないで下さいね。
穴が開いていますので、紐とか通して、肌身離さず持ち歩いて下さいね。それから…」
「またか…」
少女は独りごちる。
この幼く見える外見のせいで
お節介を焼かれることが多く、
延々と注意された日にはたまったもんじゃない。
カウンターの女性がカードから片手を離し
後ろに向いた隙に、カウンターを足蹴にしてカードを一気に引き抜くと
「ありがとうございます!!
急いでいるのでまた今度ー!!」
脱兎のごとく逃げ出した。
「あっ!ちょっと!!女性への注意喚起があったのに…」
カウンターから身を乗り出したが
もう出口から服の裾が見えなくなるところだった…。
…あーあ。冒険者ギルドから飛び出しちゃった。どうするのよ、仲間探し…
今日F級冒険者として登録を済ませたばかりだった。
冒険者はコネや推薦がない限りは
F級からのスタートとなるため
彼女は全くの素人だった。
たいていのF級冒険者はパーティを組み、討伐や採集のクエストを行う。
1人で依頼を受けるのはたいてい
街の中で行う力仕事や、魔法を使った簡単な仕事が多い。
実力を評価され、上のランクに上がれば、1人で討伐クエストをする者もいるが、たいていの冒険者はD級止まりで、C級になれるのはひと握り程度だった。
その上ともなると、伝説と言われるレベルの実力の持ち主か、金で地位を買うことが出来る貴族となる。
最高位のS級はそのほとんどが貴族で実力が伴わない者ばかりだった。
そんな中、過去にたった1人、
庶民の出でS級になった男性がいた。
彼の伝説は"リンの冒険"という本になり、子供から老人まで幅広い世代に愛され、
彼の絵本と共に育った子供達は冒険者という職業に憧れを抱く者も少なくなかった。
彼女、シェリルもそんな憧れを捨てきれず、今日冒険者にデビューしたのだった。
ベージュの肩までのストレートヘアに茶色のどんぐりのようにクリッとした大きな目。ライトベージュのローブを身に纏った姿は可憐な少女に見えたが、今年で16歳成人だ。
「みんな子供扱いして嫌になっちゃう。」
シェリルは頬を膨らませて、街の中をあてもなく歩いていた。
辺りはオレンジ色に染まり、もうすぐ日も暮れようとしている。
…今日はもう仲間探しは諦めて、宿をとらなきゃ…
シェリルは道なりにそのまま歩きつづけ、最初に目に入った宿屋に入った。
受け付けを済ませ、部屋に荷物を置くと1階の食堂へと向かった。
空いてるテーブルを探して見回すシェリル。どこにも1人で座れそうな空席はなく、どこかに相席させてもらうしかなさそうだ。
今度は声をかけやすそうな客の席を探していると、奥の女剣士の二人組がシェリルに手招きをする。
「またか…」
…どうせ、お節介だろうな…と
シェリルはまた独りごちるが
…食事の間だけ我慢するしかないか。と
店員にビールと軽い食事を注文し、手招きされた女剣士のテーブルに向った。
「うふふー。あんた新人冒険者でしょ。」
女剣士はすっかり出来上がっていて、上機嫌だ。
「そうです。今日登録したばっかりで…」
正面の席に腰掛けた。
「私はキャシー。そんで、こっちは姉のグレイシー。」
陽気な妹のキャシーが自己紹介する。
紹介された姉のグレイシーは
「どうも。」
とだけ素っ気なく答えた。
「シェリルです。」
ちょうど来たビールを軽く掲げて挨拶し、
一気に飲み干し、おかわりを注文する。
「あんた、子供かと思ったけど、やるね~。私達、姉妹で冒険者やってるんだけど、姉さんがお酒飲むとあんまりしゃべんなくなるから、つまらなくってさぁ。ちょっと付き合ってよ~。」
とキャシー。
「冒険の話し色々聞かせて下さい。」
2杯目が来たところで、改めて乾杯をした。
シェリルは先輩冒険者の話が、"リンの冒険"のように とても楽しく、こころ惹かれて、興味津々で身を乗り出し、聞き入ってしまい、夜更けまであっと言う間に時間が経ってしまった。
「もう無理。寝る~。」
グレイシーが眠気を訴え
「じゃあ、もうお開きね。シェリルに最後に忠告。パーティを男と組むなら、絶対に好みの男にしときなさい。ちょっとでも嫌と感じる男はやめとくのよ。」
キャシーがグレイシーの腕を自分の肩にかけて立ち上がりながら言った。
「??? どうゆうことですか?」
意味が分からないシェリルに
「これお守りにあげる。」
とポケットから何かを取り出し、シェリルに手渡すグレイシー。
「ええっ!これって!?」
シェリルは何かを確認すると、顔を真っ赤にして慌てて両手で渡された物を隠した。周りに見られてないかと動揺している。
「そうゆうこと。女性の冒険者には必要なものよ。」
キャシーがウィンクした。
「じゃあ、またどこかで会えたらいいね」
とキャシー。
「無事でね」
とグレイシー。
「はい。また。」
シェリルは顔を真っ赤にしたまま、
ぎこちなく手を振った。
カウンターの女性が両手でギルドカードを差し出した。
「はい。ありがとうございます。」
受け取ろうと手を伸ばす、笑顔の少女。
だが、カウンターの女性はカードを持つ手に力を込めて離してくれない。
「だけど、決して無理をしないこと。
それと、ギルドカードは身分証明書やお金の代わりにもなるので、決して他人に貸したり、無くしたりしないで下さいね。
穴が開いていますので、紐とか通して、肌身離さず持ち歩いて下さいね。それから…」
「またか…」
少女は独りごちる。
この幼く見える外見のせいで
お節介を焼かれることが多く、
延々と注意された日にはたまったもんじゃない。
カウンターの女性がカードから片手を離し
後ろに向いた隙に、カウンターを足蹴にしてカードを一気に引き抜くと
「ありがとうございます!!
急いでいるのでまた今度ー!!」
脱兎のごとく逃げ出した。
「あっ!ちょっと!!女性への注意喚起があったのに…」
カウンターから身を乗り出したが
もう出口から服の裾が見えなくなるところだった…。
…あーあ。冒険者ギルドから飛び出しちゃった。どうするのよ、仲間探し…
今日F級冒険者として登録を済ませたばかりだった。
冒険者はコネや推薦がない限りは
F級からのスタートとなるため
彼女は全くの素人だった。
たいていのF級冒険者はパーティを組み、討伐や採集のクエストを行う。
1人で依頼を受けるのはたいてい
街の中で行う力仕事や、魔法を使った簡単な仕事が多い。
実力を評価され、上のランクに上がれば、1人で討伐クエストをする者もいるが、たいていの冒険者はD級止まりで、C級になれるのはひと握り程度だった。
その上ともなると、伝説と言われるレベルの実力の持ち主か、金で地位を買うことが出来る貴族となる。
最高位のS級はそのほとんどが貴族で実力が伴わない者ばかりだった。
そんな中、過去にたった1人、
庶民の出でS級になった男性がいた。
彼の伝説は"リンの冒険"という本になり、子供から老人まで幅広い世代に愛され、
彼の絵本と共に育った子供達は冒険者という職業に憧れを抱く者も少なくなかった。
彼女、シェリルもそんな憧れを捨てきれず、今日冒険者にデビューしたのだった。
ベージュの肩までのストレートヘアに茶色のどんぐりのようにクリッとした大きな目。ライトベージュのローブを身に纏った姿は可憐な少女に見えたが、今年で16歳成人だ。
「みんな子供扱いして嫌になっちゃう。」
シェリルは頬を膨らませて、街の中をあてもなく歩いていた。
辺りはオレンジ色に染まり、もうすぐ日も暮れようとしている。
…今日はもう仲間探しは諦めて、宿をとらなきゃ…
シェリルは道なりにそのまま歩きつづけ、最初に目に入った宿屋に入った。
受け付けを済ませ、部屋に荷物を置くと1階の食堂へと向かった。
空いてるテーブルを探して見回すシェリル。どこにも1人で座れそうな空席はなく、どこかに相席させてもらうしかなさそうだ。
今度は声をかけやすそうな客の席を探していると、奥の女剣士の二人組がシェリルに手招きをする。
「またか…」
…どうせ、お節介だろうな…と
シェリルはまた独りごちるが
…食事の間だけ我慢するしかないか。と
店員にビールと軽い食事を注文し、手招きされた女剣士のテーブルに向った。
「うふふー。あんた新人冒険者でしょ。」
女剣士はすっかり出来上がっていて、上機嫌だ。
「そうです。今日登録したばっかりで…」
正面の席に腰掛けた。
「私はキャシー。そんで、こっちは姉のグレイシー。」
陽気な妹のキャシーが自己紹介する。
紹介された姉のグレイシーは
「どうも。」
とだけ素っ気なく答えた。
「シェリルです。」
ちょうど来たビールを軽く掲げて挨拶し、
一気に飲み干し、おかわりを注文する。
「あんた、子供かと思ったけど、やるね~。私達、姉妹で冒険者やってるんだけど、姉さんがお酒飲むとあんまりしゃべんなくなるから、つまらなくってさぁ。ちょっと付き合ってよ~。」
とキャシー。
「冒険の話し色々聞かせて下さい。」
2杯目が来たところで、改めて乾杯をした。
シェリルは先輩冒険者の話が、"リンの冒険"のように とても楽しく、こころ惹かれて、興味津々で身を乗り出し、聞き入ってしまい、夜更けまであっと言う間に時間が経ってしまった。
「もう無理。寝る~。」
グレイシーが眠気を訴え
「じゃあ、もうお開きね。シェリルに最後に忠告。パーティを男と組むなら、絶対に好みの男にしときなさい。ちょっとでも嫌と感じる男はやめとくのよ。」
キャシーがグレイシーの腕を自分の肩にかけて立ち上がりながら言った。
「??? どうゆうことですか?」
意味が分からないシェリルに
「これお守りにあげる。」
とポケットから何かを取り出し、シェリルに手渡すグレイシー。
「ええっ!これって!?」
シェリルは何かを確認すると、顔を真っ赤にして慌てて両手で渡された物を隠した。周りに見られてないかと動揺している。
「そうゆうこと。女性の冒険者には必要なものよ。」
キャシーがウィンクした。
「じゃあ、またどこかで会えたらいいね」
とキャシー。
「無事でね」
とグレイシー。
「はい。また。」
シェリルは顔を真っ赤にしたまま、
ぎこちなく手を振った。
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