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プロローグ〜決意の夕日〜(0-2)
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自慢じゃないが私の愛娘
キャリーはめちゃくちゃ可愛い。
ふわふわの金髪
キュルンとした大きな金の瞳
まあるいふっくらほっぺ
ふわふわのくちびる
ぷりんぷりんのおしり
ムチムチの手足
どれをとっても天使としか
形容できない。
可愛いすぎる。
色褪せた辛い日々に
擦り切れたこころも
キャリーのほっぺに
スリスリしたり、
ぷりんぷりんのおしりや
ムチムチの手足に触れることで
癒やされ、なんとか乗り越えられてきた。
キャリーはこんなに可愛いのに
周りから
「お母さんに似てきたね」と
言われるようになるにつれ、
ケインは
「ブサイクで可哀想」
「あなたに似てるって、
よく言われるんだから、
人並み以下。良くて中の下か、
下の上でしょう?
可哀想に俺に似れば
モテてたのにね」
などと、キャリーのことまで
貶し、蔑むようになってきていた。
『こんな生活が
本当にキャリーのためなの?』
私はどんどんこころが沈み
体調まで崩しがちになっていった…。
それでも毎日働いて、
ひとりで家事、育児もこなす。
キャリーをおもちゃで、
ひとりで遊ばせている間に
食事を作り、出来た物から
テーブルへ運ぶ。
メインの大皿料理をテーブルへ置いた時
「フォークが出てないぞ」
ケインにそう指摘され、
テーブルにカトラリーを置いて
キッチンにまた戻る。
スープとパンを持ってテーブルに戻ると
先に置いておいたはずの
3人分の大皿料理がケイン1人に
平らげられており、
絶句する。
キャリーとテーブルにつき
私達が食事をはじめる頃には
ケインはスープとパンも食べ終わり
何も話すことなく寝室に向かう。
もちろん皿を片付けることもない。
キャリーと私は
ため息とともにスープを飲んで、
小さくちぎったパンで
大皿に残ったソースを拭って食べた。
こんなことがほぼ毎日繰り返される。
『こんな生活が
本当にキャリーのためなの…?』
ケインに
「全部食べるほど
そんなに美味しかった?」
私がそう嫌味を言ったことがあった。
「何も言わずに全部食べてるなら、
美味しかったんでしょうよ。
不味かったら、ちゃんと不味いって言うわ!何なの?俺は家ですらゆっくりさせて
貰えない訳?いちいちお前に美味しいって気を使って言わないといけない訳?」
堰を切ったように文句を言われ、
「だから、お前は空気が読めない」だとか
「センスがない」だとか、
延々と罵詈雑言を浴びせられた。
私は自分のこころを守るために
ケインには何も言わず
何も期待しなくなった…。
キャリーも私も
スープとパンしか食べられない日々が
続いてこころが疲弊していって…
イライラしている日が増えていった…
ある日。
ケインはいない。
どこか友人宅にでも
遊びに行ったのだろう。
私は仕事帰りに
キャリーを迎えにいく。
『急いでご飯を作らなきゃ…
洗い物も…
お風呂も…
洗濯も…
何もかも早く終わらせて
キャリーを早く寝かしつけなくちゃ…』
息をつく間もなく動きまわる…
そんな私に
キャリーはワガママを爆発させた。
部屋中を散らかし
ご飯を拒否してひっくり返して…
一瞬、目の前が真っ暗になってしまった。
ガシャン!!!
大きな音が聞こえて、
気がついた私の目に映ったのは
恐怖に目を見開いて
「ごめんね。ごめんねえぇぇぇ」と
涙を流すキャリーの姿だった。
私は自分のしたことが
しばらく理解できなかった。
キャリーがひっくり返した
木製のコップを
キャリーの近くを目掛けて投げつけて
しまっていたのだ。
愛してやまない娘なのに
いつも私を癒やしてくれていたのに。
『本当にこんな生活が
キャリーのためなの?キャリーにまで
こんなに辛い思いをさせているのに?』
「ごめんね。本当にごめんね。
キャリーのこと大好きだよ。
本当にごめんねぇぇぇ。」
キャリーを抱き締めて
2人で大声をあげて泣いた。
翌朝、気が付くと床で、
散乱した食事と食器に囲まれていた。
どうやら泣き疲れて
そのまま眠ってしまったらしい。
たくさん泣いて
目は腫れぼったくなったが
不思議とこころはスッキリしていた。
キャリーをベッドに運んで
そのまま寝かせ
散乱した食器を下げて
床を掃除する。
食器を洗い
遅めの朝食を用意する。
今日はいつもより手をかけて
パンケーキにしてみた。
テーブルの準備が出来たところで
キャリーを起こして席につかせる。
2人で甘いパンケーキを頬張り
その美味しさに見つめあうと
不思議と笑みがこぼれた。
「美味しねぇ。」
「おいしいねぇ。」
終始笑顔で食べ続けた。
皿にのこったシロップまで
指で掬って舐めるキャリーに
「お行儀悪いから、
お家でしかしちゃダメよ?」
と頭を撫でる。
キャリーは足をバタつかせながら、
満面の笑みで私を見上げた。
その後は、まだ昼間だけど
キャリーと一緒にお風呂に入った。
「肩まで浸かってしっかり暖まるよー。
20数えたらあがろうね?」
キャリーを後ろから抱き締めて
肩まで湯に浸ける。
「1.2.3.4….15.16.11.12.13.14.15.16.11…」
キャリーが一生懸命数を数える。
キャリーはまだ20まで上手く数えられず
「17」が「11」になってしまい
永遠に数え終わらない。
その姿がたまらなく可愛いくて
ダメだと思いつつも、笑いをこらえて
何分も数えさせてしまう。
『ああ。私はこんな幸せが
欲しかったんだ。キャリーとただ笑顔で 過ごす。それだけでこんなにも
こころが暖かいなんて…』
もうこころは決まっていた。
何が何でもキャリーと2人で
笑って暮らしてやる!!
2人で幸せになって
両親も安心させる!!
お風呂を出た後は少しお昼寝をして
夕方になって
キャリーの手を引いて散歩に出かけた
紅い大きな夕日
地面に映る手を引く母娘の影…
「ママ、見ててぇ!」
突然手を離して前に出て
へったくそなスキップを
はじめるキャリー。
「はははっ」
私はこころから笑っていた。
鮮やかに色を取り戻した世界の
この日の紅い紅い夕日は、
きっと死ぬまで忘れない。
それだけ鮮明で美しい夕日だった。
キャリーはめちゃくちゃ可愛い。
ふわふわの金髪
キュルンとした大きな金の瞳
まあるいふっくらほっぺ
ふわふわのくちびる
ぷりんぷりんのおしり
ムチムチの手足
どれをとっても天使としか
形容できない。
可愛いすぎる。
色褪せた辛い日々に
擦り切れたこころも
キャリーのほっぺに
スリスリしたり、
ぷりんぷりんのおしりや
ムチムチの手足に触れることで
癒やされ、なんとか乗り越えられてきた。
キャリーはこんなに可愛いのに
周りから
「お母さんに似てきたね」と
言われるようになるにつれ、
ケインは
「ブサイクで可哀想」
「あなたに似てるって、
よく言われるんだから、
人並み以下。良くて中の下か、
下の上でしょう?
可哀想に俺に似れば
モテてたのにね」
などと、キャリーのことまで
貶し、蔑むようになってきていた。
『こんな生活が
本当にキャリーのためなの?』
私はどんどんこころが沈み
体調まで崩しがちになっていった…。
それでも毎日働いて、
ひとりで家事、育児もこなす。
キャリーをおもちゃで、
ひとりで遊ばせている間に
食事を作り、出来た物から
テーブルへ運ぶ。
メインの大皿料理をテーブルへ置いた時
「フォークが出てないぞ」
ケインにそう指摘され、
テーブルにカトラリーを置いて
キッチンにまた戻る。
スープとパンを持ってテーブルに戻ると
先に置いておいたはずの
3人分の大皿料理がケイン1人に
平らげられており、
絶句する。
キャリーとテーブルにつき
私達が食事をはじめる頃には
ケインはスープとパンも食べ終わり
何も話すことなく寝室に向かう。
もちろん皿を片付けることもない。
キャリーと私は
ため息とともにスープを飲んで、
小さくちぎったパンで
大皿に残ったソースを拭って食べた。
こんなことがほぼ毎日繰り返される。
『こんな生活が
本当にキャリーのためなの…?』
ケインに
「全部食べるほど
そんなに美味しかった?」
私がそう嫌味を言ったことがあった。
「何も言わずに全部食べてるなら、
美味しかったんでしょうよ。
不味かったら、ちゃんと不味いって言うわ!何なの?俺は家ですらゆっくりさせて
貰えない訳?いちいちお前に美味しいって気を使って言わないといけない訳?」
堰を切ったように文句を言われ、
「だから、お前は空気が読めない」だとか
「センスがない」だとか、
延々と罵詈雑言を浴びせられた。
私は自分のこころを守るために
ケインには何も言わず
何も期待しなくなった…。
キャリーも私も
スープとパンしか食べられない日々が
続いてこころが疲弊していって…
イライラしている日が増えていった…
ある日。
ケインはいない。
どこか友人宅にでも
遊びに行ったのだろう。
私は仕事帰りに
キャリーを迎えにいく。
『急いでご飯を作らなきゃ…
洗い物も…
お風呂も…
洗濯も…
何もかも早く終わらせて
キャリーを早く寝かしつけなくちゃ…』
息をつく間もなく動きまわる…
そんな私に
キャリーはワガママを爆発させた。
部屋中を散らかし
ご飯を拒否してひっくり返して…
一瞬、目の前が真っ暗になってしまった。
ガシャン!!!
大きな音が聞こえて、
気がついた私の目に映ったのは
恐怖に目を見開いて
「ごめんね。ごめんねえぇぇぇ」と
涙を流すキャリーの姿だった。
私は自分のしたことが
しばらく理解できなかった。
キャリーがひっくり返した
木製のコップを
キャリーの近くを目掛けて投げつけて
しまっていたのだ。
愛してやまない娘なのに
いつも私を癒やしてくれていたのに。
『本当にこんな生活が
キャリーのためなの?キャリーにまで
こんなに辛い思いをさせているのに?』
「ごめんね。本当にごめんね。
キャリーのこと大好きだよ。
本当にごめんねぇぇぇ。」
キャリーを抱き締めて
2人で大声をあげて泣いた。
翌朝、気が付くと床で、
散乱した食事と食器に囲まれていた。
どうやら泣き疲れて
そのまま眠ってしまったらしい。
たくさん泣いて
目は腫れぼったくなったが
不思議とこころはスッキリしていた。
キャリーをベッドに運んで
そのまま寝かせ
散乱した食器を下げて
床を掃除する。
食器を洗い
遅めの朝食を用意する。
今日はいつもより手をかけて
パンケーキにしてみた。
テーブルの準備が出来たところで
キャリーを起こして席につかせる。
2人で甘いパンケーキを頬張り
その美味しさに見つめあうと
不思議と笑みがこぼれた。
「美味しねぇ。」
「おいしいねぇ。」
終始笑顔で食べ続けた。
皿にのこったシロップまで
指で掬って舐めるキャリーに
「お行儀悪いから、
お家でしかしちゃダメよ?」
と頭を撫でる。
キャリーは足をバタつかせながら、
満面の笑みで私を見上げた。
その後は、まだ昼間だけど
キャリーと一緒にお風呂に入った。
「肩まで浸かってしっかり暖まるよー。
20数えたらあがろうね?」
キャリーを後ろから抱き締めて
肩まで湯に浸ける。
「1.2.3.4….15.16.11.12.13.14.15.16.11…」
キャリーが一生懸命数を数える。
キャリーはまだ20まで上手く数えられず
「17」が「11」になってしまい
永遠に数え終わらない。
その姿がたまらなく可愛いくて
ダメだと思いつつも、笑いをこらえて
何分も数えさせてしまう。
『ああ。私はこんな幸せが
欲しかったんだ。キャリーとただ笑顔で 過ごす。それだけでこんなにも
こころが暖かいなんて…』
もうこころは決まっていた。
何が何でもキャリーと2人で
笑って暮らしてやる!!
2人で幸せになって
両親も安心させる!!
お風呂を出た後は少しお昼寝をして
夕方になって
キャリーの手を引いて散歩に出かけた
紅い大きな夕日
地面に映る手を引く母娘の影…
「ママ、見ててぇ!」
突然手を離して前に出て
へったくそなスキップを
はじめるキャリー。
「はははっ」
私はこころから笑っていた。
鮮やかに色を取り戻した世界の
この日の紅い紅い夕日は、
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