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21.月の裏側
10.狂気の洞窟
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アストロは凡人である。その為、人の顔色を窺うことに長けている。学舎では先生の顔を見て好かれるように動き、イケてる天才グループに潜入しては、その技を盗んで自分のものにした。
エンドローゼは天才である。人を苛つかせる天才である。その為、怒られないように人の顔色を窺うことをするようになった。手入れのされていないボサボサの髪、不衛生な空間で過ごしていたからこそのニキビ、怖がり隠れるように曲げられた背中、大切なことが聞き取りづらい吃音。暴力をもらわないために身に着けた、天才的な能力だ。
この2人の間には1人の男がいた。百合に挟まる男となっているが、状況は芳しくない。両少女の目が厳しい。アレンは汗を滝のように流していた。
「あの……」
「アンタさ~、まさか脱退考えている~?」
「し、し、シキさんに想いを伝えなくて、い、い、いいんですか?」
アストロに上から、エンドローゼに下から睨みつけられ、アレンは完全に委縮してしまっている。アレンは逃れられない。いつかに言われた毒を食らわば皿までということだろう。
現在のアレン達勇者一行は洞窟内にいる。一部の者はディーノイの動きに注意しながら、ブラックドラゴンと戦っている。洞窟内では活躍できないアストロと、怪我人が出るまで出番のないエンドローゼと、役に立たないアレンはお留守番だ。
「だ、だ、大丈夫ですよ? だ、脱退なんかしないですよ?」
「……ホントネ?」
「し、シキさんに想いを伝えなければ、だ、だ、駄目ですよ?」
「は、はい」
一人縮こまるアレンを背で感じながら、レイドは自分の気持ちを確かめていた。
「っ」
短い裂帛とともにシキが最後のブラックドラゴンを切り殺す。
「何で最近出会うドラゴンは集団行動してるんだ?」
「生態系が変わったのかもしれないな」
「集団行動が強要されているのか?」
「恐怖の対象でもいるのかもな」
「そっちの方がしっくりくるわ」
「じゃあ、答え合わせに行くか」
そこでコストイラとアシドは道の奥を見た。ドゴンドゴンと大きな音と振動を発生させながら魔物が現れた。
下半身が紫色の馬となっており、上半身は筋骨隆々の人間だ。左手には鉄製の盾が装備されており、右手には巨大な斧が握られている。こんな狭い空間でそんな巨大なものを振り回すな、と怒りたいところだが、話が通じるとは思えない。
斧が地面スレスレを通り、放置されていたブラックドラゴンの体に当たり、洞窟内を跳ね回る。
コストイラとアシドは本能で理解した。真正面から受けるのは不可能だ。コストイラが刀を振るい、斧を往なそうとする。刀が斧に触れた瞬間、爆発的な威力が生じた。往なすことができず、吹き飛ばされる。コストイラの背中が壁に当たり、少し罅が入る。
『ブフォォオオオオオオオ!!』
人馬は前足を振り上げ、回転させた。前足が着地した途端、ドゴンと音を鳴り響かせ、人馬が走り出した。
レイドは後衛を庇うように腕を取り、道の端に寄せた。
シキが跳び上がり、回転蹴りを側頭部に叩き込む。人馬の魔物の体が揺れ、壁に叩きつけられた。
『何であの体でケンタロスを薙ぎ倒せるんだよ。勇者って怖いな。というか、ケンタロスを回収したいが駄目だな。アイツは勇者の糧になってもらうとしよう』
ディーノイは剣を少し握り、黒い矢を作り出すと、剣を収めて、右手に取る。
いつでも始末ができるようにセットしておく。
『済まないな。えっと、あのケンタロスの名前は……シングだったか』
エンドローゼは天才である。人を苛つかせる天才である。その為、怒られないように人の顔色を窺うことをするようになった。手入れのされていないボサボサの髪、不衛生な空間で過ごしていたからこそのニキビ、怖がり隠れるように曲げられた背中、大切なことが聞き取りづらい吃音。暴力をもらわないために身に着けた、天才的な能力だ。
この2人の間には1人の男がいた。百合に挟まる男となっているが、状況は芳しくない。両少女の目が厳しい。アレンは汗を滝のように流していた。
「あの……」
「アンタさ~、まさか脱退考えている~?」
「し、し、シキさんに想いを伝えなくて、い、い、いいんですか?」
アストロに上から、エンドローゼに下から睨みつけられ、アレンは完全に委縮してしまっている。アレンは逃れられない。いつかに言われた毒を食らわば皿までということだろう。
現在のアレン達勇者一行は洞窟内にいる。一部の者はディーノイの動きに注意しながら、ブラックドラゴンと戦っている。洞窟内では活躍できないアストロと、怪我人が出るまで出番のないエンドローゼと、役に立たないアレンはお留守番だ。
「だ、だ、大丈夫ですよ? だ、脱退なんかしないですよ?」
「……ホントネ?」
「し、シキさんに想いを伝えなければ、だ、だ、駄目ですよ?」
「は、はい」
一人縮こまるアレンを背で感じながら、レイドは自分の気持ちを確かめていた。
「っ」
短い裂帛とともにシキが最後のブラックドラゴンを切り殺す。
「何で最近出会うドラゴンは集団行動してるんだ?」
「生態系が変わったのかもしれないな」
「集団行動が強要されているのか?」
「恐怖の対象でもいるのかもな」
「そっちの方がしっくりくるわ」
「じゃあ、答え合わせに行くか」
そこでコストイラとアシドは道の奥を見た。ドゴンドゴンと大きな音と振動を発生させながら魔物が現れた。
下半身が紫色の馬となっており、上半身は筋骨隆々の人間だ。左手には鉄製の盾が装備されており、右手には巨大な斧が握られている。こんな狭い空間でそんな巨大なものを振り回すな、と怒りたいところだが、話が通じるとは思えない。
斧が地面スレスレを通り、放置されていたブラックドラゴンの体に当たり、洞窟内を跳ね回る。
コストイラとアシドは本能で理解した。真正面から受けるのは不可能だ。コストイラが刀を振るい、斧を往なそうとする。刀が斧に触れた瞬間、爆発的な威力が生じた。往なすことができず、吹き飛ばされる。コストイラの背中が壁に当たり、少し罅が入る。
『ブフォォオオオオオオオ!!』
人馬は前足を振り上げ、回転させた。前足が着地した途端、ドゴンと音を鳴り響かせ、人馬が走り出した。
レイドは後衛を庇うように腕を取り、道の端に寄せた。
シキが跳び上がり、回転蹴りを側頭部に叩き込む。人馬の魔物の体が揺れ、壁に叩きつけられた。
『何であの体でケンタロスを薙ぎ倒せるんだよ。勇者って怖いな。というか、ケンタロスを回収したいが駄目だな。アイツは勇者の糧になってもらうとしよう』
ディーノイは剣を少し握り、黒い矢を作り出すと、剣を収めて、右手に取る。
いつでも始末ができるようにセットしておく。
『済まないな。えっと、あのケンタロスの名前は……シングだったか』
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