メグルユメ

パラサイト豚ねぎそば

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21.月の裏側

7.タジャンクの抵抗

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 エンドローゼの脳の中に、フォンの声がした。その声は全く分からないことを羅列しているが、要約すると、目の前の骸骨は悪人であるという説明のようだ。
 トッテム教信者であるエンドローゼはフォンに従う。しかし、攻撃手段がないと思っている。フォンは仕事しながら、自分を頼れダンスを踊っている。

 もう少しで逃げ切れそうなので、タジャンクは心の中でほくそ笑んでいる。淡紫色の少女は、かつて謁見の間で目撃したフォンと似たようなものを感じてる。一刻も早くここから離れたい。

 エンドローゼがアストロの服を握る。アストロはそれだけでほとんどを察した。おそらくフォンに何か仕込まれたのだろう。
 アストロが魔力をタジャンクに向け放った。タジャンクが横に跳んだ。

「シキ」

 アストロが呼ぶと、シキが起動する。跳んだタジャンクが着地する前に、一気に肉薄した。咄嗟に防御の態勢をとろうとするが、左腕がない。
 左側から迫る足技を止めるのに間に合わない。右手を合わせるが、骸骨の左頬骨が砕けた。
 シキは足を振り抜き、自身の胸まで引き付ける。タジャンクでも分かる。この足はすぐに放たれる。

 溜められた足が解放される。右手を合わせることに成功するが、砕かれていく。そのまま吹っ飛ばされて柱にぶつかる。

 タジャンクのレベルは120だ。正しく、ピッタリ120だ。その体を砕くなど、相当な威力だと分かる。ディーノイの一撃が強いのは分かる。あれはレベル120だが、実際860くらいの強さがある。
 この銀髪の少女は異常だ。ディーノイほどではないが、足技の威力が高すぎる。まさかレベル120、実際は500くらいあるのか? もし万全の状態だったとしても勝てる気がしない。

 シキが追い打ちをかけてくる。タジャンクはもう両腕を失っている。対処などできない。

 その美しい必殺の脚技を最期まで見つめる。もし目があればきらきらと輝いていただろう。声が出せていたならば素晴らしいと呟いていただろう。

 脚がタジャンクの顔に触れた。威力が伝わって後ろの柱が砕けた。そのまま顔面の骨も砕ける。

「容赦ねェな」
「あぁ」

 コストイラとアシドがわざとらしく身震いした。シキは振り返りながら小首を傾げた。アストロは気にしなくていいとハンドサインを送る。






『勇者の蹴りの威力が高いな。グレイソレア様からは、まだレベル120に至っていないって聞いたんだけどな』

 ディーノイは機密書類を懐にしまい、窓から脱出する。

『済まないな。私はまだ姿を見せるつもりはないんだ』

 ディーノイは堂々と街の中消えていった。
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