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20.シン・ジゴク
19.七味プリン
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なぜだ?
アレンが目を丸くしている。頭の中を疑問符が支配している。
なぜ目の前に魔王城があるのだろうか?
目の前にあるのは炎に守られた魔王城だ。周りには深い堀が作られており、その中は水でも穴でもなく溶岩。殺す気満々だ。さらに魔王城外観の角には炎が灯っており、塔の先端にも炎が燃えている。あまりにも特徴的な城であるため、どこか強いこだわりを感じる。
アレンが先頭を歩いていたコストイラを見ると、口角を上げていた。これは狙い通りのことが起きた時の顔だ。
え? じゃあ、もしかして今から魔王城に勝ちこみ?
『フー』
勇者達が辿り着いた魔王城の中で、一人の王が溜息を吐いた。
『アガタ、この報告書の内容は真か?』
『ハイ』
『フー』
この地獄で多くのメッセンジャーを生み出す組織、メゼンジャーの長アガタが恭しく腰を折る。報告書の内容が真実だと知り、ンッナンシリスは頭を抱えた。
この地獄はヂドルと違い、冥界の裁判で有罪判決を受けた者の処刑を担っている。昨年度の有罪者受け入れ数の報告書に目を向ける。
多い。あまりにも多い。特に最終月の増加率が500%など、どう信じろというのだ。
『何があったというのだ』
『はい。私共も不審に思い、冥界側に問い合わせてみたところ、どうやら事件があったようです』
『事件?』
『はい。八岐大蛇とキングクラーケンが猛威を振るったようです』
『珍しいな』
『はい。どうやら”熱き者”が唆したようです』
『ジャスレが? 馬鹿か、奴は』
くりくりと自身の大きくて白い角を触りながら眉根を寄せた。魔王の間では冥界に手を出すなというのは有名な話だ。
冥界は魔王フォンの領域だ。冥界に手を出すというのは、彼女と敵対するということだ。魔王間にはあまり争わず仲良くしようとする契約があったはずだ。しかし、あのわがままお嬢は易々と破るだろうが。
……今は媚びを売っておこう。
現在、現役で君臨している魔王は5人だ。インサーニアが死んだことで、今一番弱いのはジャスレだ。どれだけ贔屓目に見ても、ンッナンシリスはその次に弱い。その上にゴイアレがいて、フォン、グレイソレアと続く。後者の2人の戦闘力は異常だ。約10年間戦い続けて、結局は引き分けとなった戦いはあまりにも有名だ。ゴイアレでさえ、自身が20人いようと、フォンに勝てる未来が見えないと発言していた。
長い物には巻かれよ。
『冥界の被害は、この数値を見ても分かるくらいに甚大だ。復興のための人材を送ろう』
『おぉ、それは良いですな』
『しなくていいですよ』
ンッナンシリスもアガタも目を丸くする。
気付かなかった。いつの間にか部屋にもう一人。顔を向けると、何やらお土産が入っていそうな袋を持ったディーノイがいた。
『”月の死者”』
『冥界には我々が人員を送っているので、地獄からの増援は要りません』
『そ、そうか』
両者の関係は微妙に分かりづらい。立場上、騎士と魔王でンッナンシリスの方が偉い。しかし、強さ的には圧倒的にディーノイだ。
帰れ、と言いたいが、言えない。引き留めるのは恐怖だろう。
『こちら、フォン様からの品物です。どうぞよろしく・・・・・・・』
念を押すような言い方をして渡してきた。ンッナンシリスが受け取った瞬間、消えた。瞬間移動だろう。
袋の中を覗くと、直径1m程度の品が2つ入っていた。梱包には七味プリンと書いてある。一緒に入っていた手紙を読んでみる。
どうやら七味プリンが月で大流行しているらしい。本当にこれが流行っているのか? 美味しいのか、これ?
そして、本題の部分を読む。ノータイムで頭を抱えた。
『どうされましたか?』
『エンドローゼを泣かせるな、だと? ふざけるな! 誰だ、エンドローゼ!』
ンッナンシリスが怒りながら七味プリンを口に含んだ。そして、容器を見つめる。
『……これ本当に流行ってんのか?』
七味プリンを食べたことを後悔しながら、悩みの種を思い返す。
ドガン、と城が揺れた。
アレンが目を丸くしている。頭の中を疑問符が支配している。
なぜ目の前に魔王城があるのだろうか?
目の前にあるのは炎に守られた魔王城だ。周りには深い堀が作られており、その中は水でも穴でもなく溶岩。殺す気満々だ。さらに魔王城外観の角には炎が灯っており、塔の先端にも炎が燃えている。あまりにも特徴的な城であるため、どこか強いこだわりを感じる。
アレンが先頭を歩いていたコストイラを見ると、口角を上げていた。これは狙い通りのことが起きた時の顔だ。
え? じゃあ、もしかして今から魔王城に勝ちこみ?
『フー』
勇者達が辿り着いた魔王城の中で、一人の王が溜息を吐いた。
『アガタ、この報告書の内容は真か?』
『ハイ』
『フー』
この地獄で多くのメッセンジャーを生み出す組織、メゼンジャーの長アガタが恭しく腰を折る。報告書の内容が真実だと知り、ンッナンシリスは頭を抱えた。
この地獄はヂドルと違い、冥界の裁判で有罪判決を受けた者の処刑を担っている。昨年度の有罪者受け入れ数の報告書に目を向ける。
多い。あまりにも多い。特に最終月の増加率が500%など、どう信じろというのだ。
『何があったというのだ』
『はい。私共も不審に思い、冥界側に問い合わせてみたところ、どうやら事件があったようです』
『事件?』
『はい。八岐大蛇とキングクラーケンが猛威を振るったようです』
『珍しいな』
『はい。どうやら”熱き者”が唆したようです』
『ジャスレが? 馬鹿か、奴は』
くりくりと自身の大きくて白い角を触りながら眉根を寄せた。魔王の間では冥界に手を出すなというのは有名な話だ。
冥界は魔王フォンの領域だ。冥界に手を出すというのは、彼女と敵対するということだ。魔王間にはあまり争わず仲良くしようとする契約があったはずだ。しかし、あのわがままお嬢は易々と破るだろうが。
……今は媚びを売っておこう。
現在、現役で君臨している魔王は5人だ。インサーニアが死んだことで、今一番弱いのはジャスレだ。どれだけ贔屓目に見ても、ンッナンシリスはその次に弱い。その上にゴイアレがいて、フォン、グレイソレアと続く。後者の2人の戦闘力は異常だ。約10年間戦い続けて、結局は引き分けとなった戦いはあまりにも有名だ。ゴイアレでさえ、自身が20人いようと、フォンに勝てる未来が見えないと発言していた。
長い物には巻かれよ。
『冥界の被害は、この数値を見ても分かるくらいに甚大だ。復興のための人材を送ろう』
『おぉ、それは良いですな』
『しなくていいですよ』
ンッナンシリスもアガタも目を丸くする。
気付かなかった。いつの間にか部屋にもう一人。顔を向けると、何やらお土産が入っていそうな袋を持ったディーノイがいた。
『”月の死者”』
『冥界には我々が人員を送っているので、地獄からの増援は要りません』
『そ、そうか』
両者の関係は微妙に分かりづらい。立場上、騎士と魔王でンッナンシリスの方が偉い。しかし、強さ的には圧倒的にディーノイだ。
帰れ、と言いたいが、言えない。引き留めるのは恐怖だろう。
『こちら、フォン様からの品物です。どうぞよろしく・・・・・・・』
念を押すような言い方をして渡してきた。ンッナンシリスが受け取った瞬間、消えた。瞬間移動だろう。
袋の中を覗くと、直径1m程度の品が2つ入っていた。梱包には七味プリンと書いてある。一緒に入っていた手紙を読んでみる。
どうやら七味プリンが月で大流行しているらしい。本当にこれが流行っているのか? 美味しいのか、これ?
そして、本題の部分を読む。ノータイムで頭を抱えた。
『どうされましたか?』
『エンドローゼを泣かせるな、だと? ふざけるな! 誰だ、エンドローゼ!』
ンッナンシリスが怒りながら七味プリンを口に含んだ。そして、容器を見つめる。
『……これ本当に流行ってんのか?』
七味プリンを食べたことを後悔しながら、悩みの種を思い返す。
ドガン、と城が揺れた。
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