372 / 391
20.シン・ジゴク
14.悪鬼羅刹の如く
しおりを挟む
アレンが変な目を向けてきていることに気づきながらも、コストイラは何も指摘することなく前を歩く。実は気づかれないように魔王領に近づいている。
それに気づかない勇者一行が何かを見つける。遠くの岩の上にハイオーガが見える。こちらを見つめている。どう考えても気づいている。
アレンの思考が100%、どう逃げるかに注がれている。どうすれば許してもらえるのだ。
ドゴンと岩を破壊して飛び上がった。どう見てもこちらに向かってきている。
ハイオーガは両手を組んで、ハンマーのように溜めている。そして、着地と同時に振り下ろされた。地面が砕け、波打った。
一目散に退散していた勇者一行が転んでしまう。コストイラがすぐに立ち上がり、刀を構えた。それよりも先に復活していたシキが、振り下ろされた両拳の上に乗り、左腕を駆け上りながら斬っていった。
『むぐぉ!?』
ハイオーガが両拳を解き、シキを捕まえようとするが、止めることができない。伸ばされた右手に乗り移り、頭を目指す。
足元では、コストイラが刀を振るった。浅い傷でも束ねれば、雨滴が岩を貫通するように、深い傷に変わる。
コストイラは無数の斬撃を一つに束ねて、巨人の足にぶつけた。ハイオーガの脛の骨が半ばまで斬れた。
ハイオーガの足が、ゴリゴリと音を立てながらズレ始めた。それに合わせて、繋がっている肉の繊維がブチブチと千切れていく。足の繊維が完全に断絶された。もうまともに動いてくれないだろう。
しかし、ハイオーガの真価は足にない。その強靭な上半身から繰り出される攻撃にこそ、目を張るものがあるのだ。
ハイオーガが、傷だらけの腕を振り回す。その剛腕が切り裂く空気の音が、威力の硬さを物語っていた。当たったら死ぬ。それは本能に訴えてくる恐怖だ。
コストイラはそんなもの無視して体を密着させる。鬱陶しいので追い払いたいが、コストイラは意地でも離れまいとする。そこまで必死になって生と死の境にいるコストイラを見て、アシドは苛立ちに駆られる。これではまるで自分がすぐに逃げる臆病者のようではないか。
しかし、時はすでに遅く、アシドの参戦を待たずして、コストイラとシキの2名での狩りが終了した。
鬼と見間違うほど立派な角を携えた悪魔が、その前で膝をついている部下を睨みつけている。握る力が強すぎて、巨体に合わせて作られた特注のグラスに罅が入った。
『ナンビスドイーダがやられた?』
怒気どころか殺気すらパンパンに詰まった声に、部下は震え上がってしまう。この膨れ上がるオーラだけで失神してしまいそうだ。
それに気づいた悪魔がオーラを霧散させた。
『別にゲーズに怒っているわけではない。ナンビスドイーダは誰にやられたのだ』
もしここで誰かを答えたならば、その者に最大限の怒りの矛先が向くことだろう。次にどこで、と聞き、答えれば、すぐさまそこに向かうだろう。
しかし、それは駄目だ。近衛騎士団”炎の番人”の団長のセンテンロールに城から出すなと申し付けられているのだ。
『誰にやられたのだ』
『……勇者です』
『勇者、舞い戻ってきたか。今、どこにいる』
ンッナンシリスは一瞬で殺気を解放させ、ゲーズはあっという間もなく失神した。
それに気づかない勇者一行が何かを見つける。遠くの岩の上にハイオーガが見える。こちらを見つめている。どう考えても気づいている。
アレンの思考が100%、どう逃げるかに注がれている。どうすれば許してもらえるのだ。
ドゴンと岩を破壊して飛び上がった。どう見てもこちらに向かってきている。
ハイオーガは両手を組んで、ハンマーのように溜めている。そして、着地と同時に振り下ろされた。地面が砕け、波打った。
一目散に退散していた勇者一行が転んでしまう。コストイラがすぐに立ち上がり、刀を構えた。それよりも先に復活していたシキが、振り下ろされた両拳の上に乗り、左腕を駆け上りながら斬っていった。
『むぐぉ!?』
ハイオーガが両拳を解き、シキを捕まえようとするが、止めることができない。伸ばされた右手に乗り移り、頭を目指す。
足元では、コストイラが刀を振るった。浅い傷でも束ねれば、雨滴が岩を貫通するように、深い傷に変わる。
コストイラは無数の斬撃を一つに束ねて、巨人の足にぶつけた。ハイオーガの脛の骨が半ばまで斬れた。
ハイオーガの足が、ゴリゴリと音を立てながらズレ始めた。それに合わせて、繋がっている肉の繊維がブチブチと千切れていく。足の繊維が完全に断絶された。もうまともに動いてくれないだろう。
しかし、ハイオーガの真価は足にない。その強靭な上半身から繰り出される攻撃にこそ、目を張るものがあるのだ。
ハイオーガが、傷だらけの腕を振り回す。その剛腕が切り裂く空気の音が、威力の硬さを物語っていた。当たったら死ぬ。それは本能に訴えてくる恐怖だ。
コストイラはそんなもの無視して体を密着させる。鬱陶しいので追い払いたいが、コストイラは意地でも離れまいとする。そこまで必死になって生と死の境にいるコストイラを見て、アシドは苛立ちに駆られる。これではまるで自分がすぐに逃げる臆病者のようではないか。
しかし、時はすでに遅く、アシドの参戦を待たずして、コストイラとシキの2名での狩りが終了した。
鬼と見間違うほど立派な角を携えた悪魔が、その前で膝をついている部下を睨みつけている。握る力が強すぎて、巨体に合わせて作られた特注のグラスに罅が入った。
『ナンビスドイーダがやられた?』
怒気どころか殺気すらパンパンに詰まった声に、部下は震え上がってしまう。この膨れ上がるオーラだけで失神してしまいそうだ。
それに気づいた悪魔がオーラを霧散させた。
『別にゲーズに怒っているわけではない。ナンビスドイーダは誰にやられたのだ』
もしここで誰かを答えたならば、その者に最大限の怒りの矛先が向くことだろう。次にどこで、と聞き、答えれば、すぐさまそこに向かうだろう。
しかし、それは駄目だ。近衛騎士団”炎の番人”の団長のセンテンロールに城から出すなと申し付けられているのだ。
『誰にやられたのだ』
『……勇者です』
『勇者、舞い戻ってきたか。今、どこにいる』
ンッナンシリスは一瞬で殺気を解放させ、ゲーズはあっという間もなく失神した。
0
お気に入りに追加
6
あなたにおすすめの小説
僕の家族は母様と母様の子供の弟妹達と使い魔達だけだよ?
闇夜の現し人(ヤミヨノウツシビト)
ファンタジー
ー 母さんは、「絶世の美女」と呼ばれるほど美しく、国の中で最も権力の強い貴族と呼ばれる公爵様の寵姫だった。
しかし、それをよく思わない正妻やその親戚たちに毒を盛られてしまった。
幸い発熱だけですんだがお腹に子が出来てしまった以上ここにいては危険だと判断し、仲の良かった侍女数名に「ここを離れる」と言い残し公爵家を後にした。
お母さん大好きっ子な主人公は、毒を盛られるという失態をおかした父親や毒を盛った親戚たちを嫌悪するがお母さんが日々、「家族で暮らしたい」と話していたため、ある出来事をきっかけに一緒に暮らし始めた。
しかし、自分が家族だと認めた者がいれば初めて見た者は跪くと言われる程の華の顔(カンバセ)を綻ばせ笑うが、家族がいなければ心底どうでもいいというような表情をしていて、人形の方がまだ表情があると言われていた。
『無能で無価値の稚拙な愚父共が僕の家族を名乗る資格なんて無いんだよ?』
さぁ、ここに超絶チートを持つ自分が認めた家族以外の生き物全てを嫌う主人公の物語が始まる。
〈念の為〉
稚拙→ちせつ
愚父→ぐふ
⚠︎注意⚠︎
不定期更新です。作者の妄想をつぎ込んだ作品です。
愚かな父にサヨナラと《完結》
アーエル
ファンタジー
「フラン。お前の方が年上なのだから、妹のために我慢しなさい」
父の言葉は最後の一線を越えてしまった。
その言葉が、続く悲劇を招く結果となったけど・・・
悲劇の本当の始まりはもっと昔から。
言えることはただひとつ
私の幸せに貴方はいりません
✈他社にも同時公開
貴族に生まれたのに誘拐され1歳で死にかけた
佐藤醤油
ファンタジー
貴族に生まれ、のんびりと赤ちゃん生活を満喫していたのに、気がついたら世界が変わっていた。
僕は、盗賊に誘拐され魔力を吸われながら生きる日々を過ごす。
魔力枯渇に陥ると死ぬ確率が高いにも関わらず年に1回は魔力枯渇になり死にかけている。
言葉が通じる様になって気がついたが、僕は他の人が持っていないステータスを見る力を持ち、さらに異世界と思われる世界の知識を覗ける力を持っている。
この力を使って、いつか脱出し母親の元へと戻ることを夢見て過ごす。
小さい体でチートな力は使えない中、どうにか生きる知恵を出し生活する。
------------------------------------------------------------------
お知らせ
「転生者はめぐりあう」 始めました。
------------------------------------------------------------------
注意
作者の暇つぶし、気分転換中の自己満足で公開する作品です。
感想は受け付けていません。
誤字脱字、文面等気になる方はお気に入りを削除で対応してください。
校長室のソファの染みを知っていますか?
フルーツパフェ
大衆娯楽
校長室ならば必ず置かれている黒いソファ。
しかしそれが何のために置かれているのか、考えたことはあるだろうか。
座面にこびりついた幾つもの染みが、その真実を物語る
性奴隷を飼ったのに
お小遣い月3万
ファンタジー
10年前に俺は日本から異世界に転移して来た。
異世界に転移して来たばかりの頃、辿り着いた冒険者ギルドで勇者認定されて、魔王を討伐したら家族の元に帰れるのかな、っと思って必死になって魔王を討伐したけど、日本には帰れなかった。
異世界に来てから10年の月日が流れてしまった。俺は魔王討伐の報酬として特別公爵になっていた。ちなみに領地も貰っている。
自分の領地では奴隷は禁止していた。
奴隷を売買している商人がいるというタレコミがあって、俺は出向いた。
そして1人の奴隷少女と出会った。
彼女は、お風呂にも入れられていなくて、道路に落ちている軍手のように汚かった。
彼女は幼いエルフだった。
それに魔力が使えないように処理されていた。
そんな彼女を故郷に帰すためにエルフの村へ連れて行った。
でもエルフの村は魔力が使えない少女を引き取ってくれなかった。それどころか魔力が無いエルフは処分する掟になっているらしい。
俺の所有物であるなら彼女は処分しない、と村長が言うから俺はエルフの女の子を飼うことになった。
孤児になった魔力も無いエルフの女の子。年齢は14歳。
エルフの女の子を見捨てるなんて出来なかった。だから、この世界で彼女が生きていけるように育成することに決めた。
※エルフの少女以外にもヒロインは登場する予定でございます。
※帰る場所を無くした女の子が、美しくて強い女性に成長する物語です。
父が死んだのでようやく邪魔な女とその息子を処分できる
兎屋亀吉
恋愛
伯爵家の当主だった父が亡くなりました。これでようやく、父の愛妾として我が物顔で屋敷内をうろつくばい菌のような女とその息子を処分することができます。父が死ねば息子が当主になれるとでも思ったのかもしれませんが、父がいなくなった今となっては思う通りになることなど何一つありませんよ。今まで父の威を借りてさんざんいびってくれた仕返しといきましょうか。根に持つタイプの陰険女主人公。
ポーション必要ですか?作るので10時間待てますか?
chocopoppo
ファンタジー
松本(35)は会社でうたた寝をした瞬間に異世界転移してしまった。
特別な才能を持っているわけでも、与えられたわけでもない彼は当然戦うことなど出来ないが、彼には持ち前の『単調作業適性』と『社会人適性』のスキル(?)があった。
第二の『社会人』人生を送るため、超資格重視社会で手に職付けようと奮闘する、自称『どこにでもいる』社会人のお話。(Image generation AI : DALL-E3 / Operator & Finisher : chocopoppo)
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる