364 / 422
20.シン・ジゴク
6.血も凍る森
しおりを挟む
コストイラ達がレイド達と合流する頃には、外の天気は回復していた。
「行こうぜ」
その声がどこか冷酷で冷血で。何があったのかを聞きたかったが、雰囲気的にも憚られた。レイドもアレンもシキも何も言わずに従った。
サクサクと小気味良い音を立てながら進んでいく。先頭はいつも通りコストイラだが、いつもと違う空気だ。重々しすぎてアシドが頭を掻いた。
雪は止んだのだが、寒さはどうにもなっていない。アシドやアレンは寒さに身を震わせて体を擦っているが、コストイラとアストロ、エンドローゼの3名はそれすらしない。
シキは元から一切身動ぎしない怖い奴だったが、いつも震えている印象のあるエンドローゼもとなると話は別だ。
あの城の中で何かがあったのだ。アシドは、オレもついていれば、と後悔しているが、同時に行かなくて良かったのかもしれないという安堵もある。
コストイラがピタリと足を止めた。
「どうした?」
「森がある。突っ切るか?」
前には2つの選択肢が存在していた。片や何があるか分からない森の道。片や何もないのが目視できてしまう、平坦で退屈で景色の変わらない雪の道。
どちらを選ぶか? そんなの最初から決まっている。アシドは寸分の迷いなく答えた。
「森だろ」
森の中は一段と冷えた。日射がない分、気温が下がるのだろう。理屈が分かったところで、どうにかできるものではない。
血が沸騰するような暑さ、という表現が存在するならば、その逆である血が凍結するような寒さもあるのではないだろうか。あるとするならばそれは、今のアレン達を襲う寒さのことをいうのだろう。今まで震えていなかったエンドローゼが震え始めた。
「寒っ。寒すぎて魔物も凍ってんじゃん」
アシドが無理矢理雰囲気を明るくしようと冗談を言う。寒いという部分には賛同するが、まさか魔物が凍るわけ。
アレンがチラと横に視線を送ると、本当に魔物が凍っていた。
「えっ!?」
アレンがびっくりして後ろにあった木に後頭部をぶつける。その衝撃により、皆が同じ方向に視線を動かした。アレンの方ではなく、アシドの視線の先を見つめる。
「マジで魔物が凍ってんだけど」
「何の魔物? オルトロス?」
「そうみたいだな」
コストイラ達がオルトロスの死体に近づく。死体が凍っており、周りの色が少し薄くなっている。囲っている氷が少しオレンジ色となっている。この氷が割れたらオレンジと黒の混じった煙が噴き出してくるだろう。
「石?」
コストイラが氷に少し触れて、中をじっくりと見る。オルトロスは青い毛をしているはずだが、灰色をしているように見える。コストイラは灰色の毛の個体かと思ったが、どうやら違うらしい。石化している。何があったのか分からないが、石化している。
この先に石化させてくる魔物がいるのだろう。コストイラが刀に手を伸ばす。7人の間に緊張感が走る。どこに魔物がいる?
何かに気付いたレイドがバッと体の向きを変えた。黒い蛇の下半身に、女の上半身。女の上半身は緑色をしており、髪は紫色の蛇になっている。
レイドが何か行動しようとした時、女の眼と蛇の眼が総てレイドに向く。それだけか、その眼の総てが光を放った。その瞬間、レイドが石に変わった。
コストイラとシキも光と目を目撃したが、石に変わらなかった。きっと条件は目で見られていることだろう。
コストイラとシキが爆発的な速度でゴルゴ―ンに肉薄した。
「行こうぜ」
その声がどこか冷酷で冷血で。何があったのかを聞きたかったが、雰囲気的にも憚られた。レイドもアレンもシキも何も言わずに従った。
サクサクと小気味良い音を立てながら進んでいく。先頭はいつも通りコストイラだが、いつもと違う空気だ。重々しすぎてアシドが頭を掻いた。
雪は止んだのだが、寒さはどうにもなっていない。アシドやアレンは寒さに身を震わせて体を擦っているが、コストイラとアストロ、エンドローゼの3名はそれすらしない。
シキは元から一切身動ぎしない怖い奴だったが、いつも震えている印象のあるエンドローゼもとなると話は別だ。
あの城の中で何かがあったのだ。アシドは、オレもついていれば、と後悔しているが、同時に行かなくて良かったのかもしれないという安堵もある。
コストイラがピタリと足を止めた。
「どうした?」
「森がある。突っ切るか?」
前には2つの選択肢が存在していた。片や何があるか分からない森の道。片や何もないのが目視できてしまう、平坦で退屈で景色の変わらない雪の道。
どちらを選ぶか? そんなの最初から決まっている。アシドは寸分の迷いなく答えた。
「森だろ」
森の中は一段と冷えた。日射がない分、気温が下がるのだろう。理屈が分かったところで、どうにかできるものではない。
血が沸騰するような暑さ、という表現が存在するならば、その逆である血が凍結するような寒さもあるのではないだろうか。あるとするならばそれは、今のアレン達を襲う寒さのことをいうのだろう。今まで震えていなかったエンドローゼが震え始めた。
「寒っ。寒すぎて魔物も凍ってんじゃん」
アシドが無理矢理雰囲気を明るくしようと冗談を言う。寒いという部分には賛同するが、まさか魔物が凍るわけ。
アレンがチラと横に視線を送ると、本当に魔物が凍っていた。
「えっ!?」
アレンがびっくりして後ろにあった木に後頭部をぶつける。その衝撃により、皆が同じ方向に視線を動かした。アレンの方ではなく、アシドの視線の先を見つめる。
「マジで魔物が凍ってんだけど」
「何の魔物? オルトロス?」
「そうみたいだな」
コストイラ達がオルトロスの死体に近づく。死体が凍っており、周りの色が少し薄くなっている。囲っている氷が少しオレンジ色となっている。この氷が割れたらオレンジと黒の混じった煙が噴き出してくるだろう。
「石?」
コストイラが氷に少し触れて、中をじっくりと見る。オルトロスは青い毛をしているはずだが、灰色をしているように見える。コストイラは灰色の毛の個体かと思ったが、どうやら違うらしい。石化している。何があったのか分からないが、石化している。
この先に石化させてくる魔物がいるのだろう。コストイラが刀に手を伸ばす。7人の間に緊張感が走る。どこに魔物がいる?
何かに気付いたレイドがバッと体の向きを変えた。黒い蛇の下半身に、女の上半身。女の上半身は緑色をしており、髪は紫色の蛇になっている。
レイドが何か行動しようとした時、女の眼と蛇の眼が総てレイドに向く。それだけか、その眼の総てが光を放った。その瞬間、レイドが石に変わった。
コストイラとシキも光と目を目撃したが、石に変わらなかった。きっと条件は目で見られていることだろう。
コストイラとシキが爆発的な速度でゴルゴ―ンに肉薄した。
0
お気に入りに追加
9
あなたにおすすめの小説
【完結】おじいちゃんは元勇者
三園 七詩
ファンタジー
元勇者のおじいさんに拾われた子供の話…
親に捨てられ、周りからも見放され生きる事をあきらめた子供の前に国から追放された元勇者のおじいさんが現れる。
エイトを息子のように可愛がり…いつしか子供は強くなり過ぎてしまっていた…
貧民街の元娼婦に育てられた孤児は前世の記憶が蘇り底辺から成り上がり世界の救世主になる。
黒ハット
ファンタジー
【完結しました】捨て子だった主人公は、元貴族の側室で騙せれて娼婦だった女性に拾われて最下層階級の貧民街で育てられるが、13歳の時に崖から川に突き落とされて意識が無くなり。気が付くと前世の日本で物理学の研究生だった記憶が蘇り、周りの人たちの善意で底辺から抜け出し成り上がって世界の救世主と呼ばれる様になる。
この作品は小説書き始めた初期の作品で内容と書き方をリメイクして再投稿を始めました。感想、応援よろしくお願いいたします。
[鑑定]スキルしかない俺を追放したのはいいが、貴様らにはもう関わるのはイヤだから、さがさないでくれ!
どら焼き
ファンタジー
ついに!第5章突入!
舐めた奴らに、真実が牙を剥く!
何も説明無く、いきなり異世界転移!らしいのだが、この王冠つけたオッサン何を言っているのだ?
しかも、ステータスが文字化けしていて、スキルも「鑑定??」だけって酷くない?
訳のわからない言葉?を発声している王女?と、勇者らしい同級生達がオレを城から捨てやがったので、
なんとか、苦労して宿代とパン代を稼ぐ主人公カザト!
そして…わかってくる、この異世界の異常性。
出会いを重ねて、なんとか元の世界に戻る方法を切り開いて行く物語。
主人公の直接復讐する要素は、あまりありません。
相手方の、あまりにも酷い自堕落さから出てくる、ざまぁ要素は、少しづつ出てくる予定です。
ハーレム要素は、不明とします。
復讐での強制ハーレム要素は、無しの予定です。
追記
2023/07/21 表紙絵を戦闘モードになったあるヤツの参考絵にしました。
8月近くでなにが、変形するのかわかる予定です。
2024/02/23
アルファポリスオンリーを解除しました。
大工スキルを授かった貧乏貴族の養子の四男だけど、どうやら大工スキルは伝説の全能スキルだったようです
飼猫タマ
ファンタジー
田舎貴族の四男のヨナン・グラスホッパーは、貧乏貴族の養子。義理の兄弟達は、全員戦闘系のレアスキル持ちなのに、ヨナンだけ貴族では有り得ない生産スキルの大工スキル。まあ、養子だから仕方が無いんだけど。
だがしかし、タダの生産スキルだと思ってた大工スキルは、じつは超絶物凄いスキルだったのだ。その物凄スキルで、生産しまくって超絶金持ちに。そして、婚約者も出来て幸せ絶頂の時に嵌められて、人生ドン底に。だが、ヨナンは、有り得ない逆転の一手を持っていたのだ。しかも、その有り得ない一手を、本人が全く覚えてなかったのはお約束。
勿論、ヨナンを嵌めた奴らは、全員、ザマー百裂拳で100倍返し!
そんなお話です。
凡人がおまけ召喚されてしまった件
根鳥 泰造
ファンタジー
勇者召喚に巻き込まれて、異世界にきてしまった祐介。最初は勇者の様に大切に扱われていたが、ごく普通の才能しかないので、冷遇されるようになり、ついには王宮から追い出される。
仕方なく冒険者登録することにしたが、この世界では希少なヒーラー適正を持っていた。一年掛けて治癒魔法を習得し、治癒剣士となると、引く手あまたに。しかも、彼は『強欲』という大罪スキルを持っていて、倒した敵のスキルを自分のものにできるのだ。
それらのお蔭で、才能は凡人でも、数多のスキルで能力を補い、熟練度は飛びぬけ、高難度クエストも熟せる有名冒険者となる。そして、裏では気配消去や不可視化スキルを活かして、暗殺という裏の仕事も始めた。
異世界に来て八年後、その暗殺依頼で、召喚勇者の暗殺を受けたのだが、それは祐介を捕まえるための罠だった。祐介が暗殺者になっていると知った勇者が、改心させよう企てたもので、その後は勇者一行に加わり、魔王討伐の旅に同行することに。
最初は脅され渋々同行していた祐介も、勇者や仲間の思いをしり、どんどん勇者が好きになり、勇者から告白までされる。
だが、魔王を討伐を成し遂げるも、魔王戦で勇者は祐介を庇い、障害者になる。
祐介は、勇者の嘘で、病院を作り、医師の道を歩みだすのだった。
平凡冒険者のスローライフ
上田なごむ
ファンタジー
26歳独身動物好きの主人公大和希は、神様によって魔物・魔法・獣人等ファンタジーな世界観の異世界に転移させられる。
平凡な能力値、野望など抱いていない彼は、冒険者としてスローライフを目標に日々を過ごしていく。
果たして、彼を待ち受ける出会いや試練は如何なるものか……
ファンタジー世界に向き合う、平凡な冒険者の物語。
30年待たされた異世界転移
明之 想
ファンタジー
気づけば異世界にいた10歳のぼく。
「こちらの手違いかぁ。申し訳ないけど、さっさと帰ってもらわないといけないね」
こうして、ぼくの最初の異世界転移はあっけなく終わってしまった。
右も左も分からず、何かを成し遂げるわけでもなく……。
でも、2度目があると確信していたぼくは、日本でひたすら努力を続けた。
あの日見た夢の続きを信じて。
ただ、ただ、異世界での冒険を夢見て!!
くじけそうになっても努力を続け。
そうして、30年が経過。
ついに2度目の異世界冒険の機会がやってきた。
しかも、20歳も若返った姿で。
異世界と日本の2つの世界で、
20年前に戻った俺の新たな冒険が始まる。
ユーヤのお気楽異世界転移
暇野無学
ファンタジー
死因は神様の当て逃げです! 地震による事故で死亡したのだが、原因は神社の扁額が当たっての即死。問題の神様は気まずさから俺を輪廻の輪から外し、異世界の神に俺をゆだねた。異世界への移住を渋る俺に、神様特典付きで異世界へ招待されたが・・・ この神様が超適当な健忘症タイプときた。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる