360 / 400
20.シン・ジゴク
2.皆勤賞
しおりを挟む
いくら考えても意味のないことがある。それを理解した瞬間、コストイラがガリガリと頭を掻き、ミノタウロスの腰蓑を放った。
「考えたってしゃーねーや。この目印のない雪山のどこに向かって歩くのか決めねェとな」
コストイラの言う通り、起伏はあるものの一面雪景色だ。目印になるような特別な樹木はない。コストイラ達は少しその場を離れて行き先を探す。何もないのでかなり遠出しないと見つけられそうにない。
コストイラは後ろに嫌な気配を感じた。絶対今後ろを見たら巨大な魔物がいる。絶対戦闘になる。いや、すでに戦闘が始まっている。
ズドンと後ろの何かが一歩踏み出した。勇者一行全員が気付いた。コストイラはこうなる前に終わらせたかった。
コストイラは振り向き様に刀を振るう。それなりに距離があったため、切っ先を掠める程度で終わってしまう。コストイラは慌てて相手の顔を見る。コストイラの眼の高さでは白いものしかない。雪と白い毛だ。コストイラが切ったのはジャイアントイエティらしい。雪山に来るといつも奴がいる。一つの雪山に1体以上配置しなければならない決まりでもあるのだろうか。
コストイラが素早く斬撃を浴びせる。ジャイアントイエティの左足がズタズタになり、バランスが崩れる。バランスを取ろうと左足が前に出る。ズダボロの左足がミノタウロスの肉塊を踏み潰す。衝撃で地面が少し緩くなる。
もう一度斬撃を繰り出すが、雪に足を滑らせた。斬撃が少しズレ、足の側面を傷付けた。
照る太陽の熱により、足元の雪が解け始めている。アシドが踏み出した足も滑ってしまった。
『ゴォオオオ!!』
ズタボロな足が出され、コストイラを踏み潰そうとする。逃げようとしてコストイラが足を滑らせる。え? こんな連続して何人も滑る? コストイラは仰向けに倒れながら目を丸くした。上から巨大な足が落ちてくる。これに踏み潰されたらひとたまりもないだろう。
しかし、コストイラは焦らない。焦ったらどうせ手元が狂ってしまう。尻を冷たくしながら刀を溜める。
来たら斬る。来たら斬る。来たら斬る。
瞳が絞られていき、一点に集中する。振り下ろされるズタボロの足がゆっくりに見える。
もう少し。もう少しだけ引き付けてから。
シキが乱入してきた。ミノタウロスの持っていた大斧を振るう。身長1.52mしかないシキが3m以上もある大斧を振り回す。ジャイアントイエティの左足を斧で切り飛ばす。そのままの勢いでジャイアントイエティの胸を穿つ。刀や槍では届かない位置まで斧が届く。斧が血管を軽々と切り裂いた。
ドウとジャイアントイエティが倒れた。雪が赤く染まっていく。
「よくそんな大きなもの振れますね」
アレンが口の端をヒクつかせながらシキに尋ねた。シキはなんてことなさそうに斧を片手で扱い、もう一度ジャイアントイエティに下ろした。なぜ簡単に扱えるのかの答えになっていない。しかし、これ以上聞ける雰囲気ではない。
「あ?」
アシドが跳ね上げられるように上を見る。
「雪だ」
「そりゃあこの周りに…………あぁ、降ってきたわね」
アストロが胸の前で掌を天に向けて雪を受け止める。
雪が降ってきた。
寒い世界が始まる。
「考えたってしゃーねーや。この目印のない雪山のどこに向かって歩くのか決めねェとな」
コストイラの言う通り、起伏はあるものの一面雪景色だ。目印になるような特別な樹木はない。コストイラ達は少しその場を離れて行き先を探す。何もないのでかなり遠出しないと見つけられそうにない。
コストイラは後ろに嫌な気配を感じた。絶対今後ろを見たら巨大な魔物がいる。絶対戦闘になる。いや、すでに戦闘が始まっている。
ズドンと後ろの何かが一歩踏み出した。勇者一行全員が気付いた。コストイラはこうなる前に終わらせたかった。
コストイラは振り向き様に刀を振るう。それなりに距離があったため、切っ先を掠める程度で終わってしまう。コストイラは慌てて相手の顔を見る。コストイラの眼の高さでは白いものしかない。雪と白い毛だ。コストイラが切ったのはジャイアントイエティらしい。雪山に来るといつも奴がいる。一つの雪山に1体以上配置しなければならない決まりでもあるのだろうか。
コストイラが素早く斬撃を浴びせる。ジャイアントイエティの左足がズタズタになり、バランスが崩れる。バランスを取ろうと左足が前に出る。ズダボロの左足がミノタウロスの肉塊を踏み潰す。衝撃で地面が少し緩くなる。
もう一度斬撃を繰り出すが、雪に足を滑らせた。斬撃が少しズレ、足の側面を傷付けた。
照る太陽の熱により、足元の雪が解け始めている。アシドが踏み出した足も滑ってしまった。
『ゴォオオオ!!』
ズタボロな足が出され、コストイラを踏み潰そうとする。逃げようとしてコストイラが足を滑らせる。え? こんな連続して何人も滑る? コストイラは仰向けに倒れながら目を丸くした。上から巨大な足が落ちてくる。これに踏み潰されたらひとたまりもないだろう。
しかし、コストイラは焦らない。焦ったらどうせ手元が狂ってしまう。尻を冷たくしながら刀を溜める。
来たら斬る。来たら斬る。来たら斬る。
瞳が絞られていき、一点に集中する。振り下ろされるズタボロの足がゆっくりに見える。
もう少し。もう少しだけ引き付けてから。
シキが乱入してきた。ミノタウロスの持っていた大斧を振るう。身長1.52mしかないシキが3m以上もある大斧を振り回す。ジャイアントイエティの左足を斧で切り飛ばす。そのままの勢いでジャイアントイエティの胸を穿つ。刀や槍では届かない位置まで斧が届く。斧が血管を軽々と切り裂いた。
ドウとジャイアントイエティが倒れた。雪が赤く染まっていく。
「よくそんな大きなもの振れますね」
アレンが口の端をヒクつかせながらシキに尋ねた。シキはなんてことなさそうに斧を片手で扱い、もう一度ジャイアントイエティに下ろした。なぜ簡単に扱えるのかの答えになっていない。しかし、これ以上聞ける雰囲気ではない。
「あ?」
アシドが跳ね上げられるように上を見る。
「雪だ」
「そりゃあこの周りに…………あぁ、降ってきたわね」
アストロが胸の前で掌を天に向けて雪を受け止める。
雪が降ってきた。
寒い世界が始まる。
0
お気に入りに追加
7
あなたにおすすめの小説
王が気づいたのはあれから十年後
基本二度寝
恋愛
王太子は妃の肩を抱き、反対の手には息子の手を握る。
妃はまだ小さい娘を抱えて、夫に寄り添っていた。
仲睦まじいその王族家族の姿は、国民にも評判がよかった。
側室を取ることもなく、子に恵まれた王家。
王太子は妃を優しく見つめ、妃も王太子を愛しく見つめ返す。
王太子は今日、父から王の座を譲り受けた。
新たな国王の誕生だった。
無能なので辞めさせていただきます!
サカキ カリイ
ファンタジー
ブラック商業ギルドにて、休みなく働き詰めだった自分。
マウントとる新人が入って来て、馬鹿にされだした。
えっ上司まで新人に同調してこちらに辞めろだって?
残業は無能の証拠、職務に時間が長くかかる分、
無駄に残業代払わせてるからお前を辞めさせたいって?
はいはいわかりました。
辞めますよ。
退職後、困ったんですかね?さあ、知りませんねえ。
自分無能なんで、なんにもわかりませんから。
カクヨム、なろうにも同内容のものを時差投稿しております。
いきなり異世界って理不尽だ!
みーか
ファンタジー
三田 陽菜25歳。会社に行こうと家を出たら、足元が消えて、気付けば異世界へ。
自称神様の作った機械のシステムエラーで地球には帰れない。地球の物は何でも魔力と交換できるようにしてもらい、異世界で居心地良く暮らしていきます!
断腸の思いで王家に差し出した孫娘が婚約破棄されて帰ってきた
兎屋亀吉
恋愛
ある日王家主催のパーティに行くといって出かけた孫娘のエリカが泣きながら帰ってきた。買ったばかりのドレスは真っ赤なワインで汚され、左頬は腫れていた。話を聞くと王子に婚約を破棄され、取り巻きたちに酷いことをされたという。許せん。戦じゃ。この命燃え尽きようとも、必ずや王家を滅ぼしてみせようぞ。
(完結)醜くなった花嫁の末路「どうぞ、お笑いください。元旦那様」
音爽(ネソウ)
ファンタジー
容姿が気に入らないと白い結婚を強いられた妻。
本邸から追い出されはしなかったが、夫は離れに愛人を囲い顔さえ見せない。
しかし、3年と待たず離縁が決定する事態に。そして元夫の家は……。
*6月18日HOTランキング入りしました、ありがとうございます。
元英雄 これからは命大事にでいきます
銀塊 メウ
ファンタジー
異世界グリーンプラネットでの
魔王との激しい死闘を
終え元の世界に帰還した英雄 八雲
多くの死闘で疲弊したことで、
これからは『命大事に』を心に決め、
落ち着いた生活をしようと思う。
こちらの世界にも妖魔と言う
化物が現れなんだかんだで
戦う羽目に………寿命を削り闘う八雲、
とうとう寿命が一桁にどうするのよ〜
八雲は寿命を伸ばすために再び
異世界へ戻る。そして、そこでは
新たな闘いが始まっていた。
八雲は運命の時の流れに翻弄され
苦悩しながらも魔王を超えた
存在と対峙する。
この話は心優しき青年が、神からのギフト
『ライフ』を使ってお助けする話です。
せっかくのクラス転移だけども、俺はポテトチップスでも食べながらクラスメイトの冒険を見守りたいと思います
霖空
ファンタジー
クラス転移に巻き込まれてしまった主人公。
得た能力は悪くない……いや、むしろ、チートじみたものだった。
しかしながら、それ以上のデメリットもあり……。
傍観者にならざるをえない彼が傍観者するお話です。
基本的に、勇者や、影井くんを見守りつつ、ほのぼの?生活していきます。
が、そのうち、彼自身の物語も始まる予定です。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる