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19.異想への海溝
9.蒼い海獣
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ズガァンと崖が揺れたかと思うと、崖路の一部が崩れ落ちた。
「クジラだ!」
コストイラが叫んだ瞬間、ヘルソーディアンの体が飛んできた。赤い帽子をしている。リーダーだ。上半身だけ。
『ブッルルルルルルルアアアアアアアア!!』
『アアアアアア!!』
魔物達の声が聞こえたかと思うと、崖路が揺れた。揺れがひどく、アレンは立っていられず、尻餅をついた。
コストイラがアレンの手を取り、立ち上がらせると、逃げるように足を踏み出した。ネイビーブルーの影響で罅入っていた崖が崩れた。コストイラが手を伸ばすと、ギリギリで手が届く。左手にアレンを下げ、右手に刀を掴んだまま崖を掴んでいる。
気付いたレイドがコストイラの右腕を掴む。コストイラは崖部に足裏をくっつけ、引き上げる負担を少しでも減らそうとする。
「フン!」
「ででででででで!?」
アレンがいる分、体重が増えているような感覚になるので、腕が引っこ抜かれそうになる。左腕を何とか持ち上げて、アレンを先に上げようとする。そして、レイドの足元が崩れた。咄嗟に片手を崖に伸ばしたが、間に合わない。
アシドが飛び込んで手を伸ばすが、間に合わず、レイド達は下に落ちた。アシドは悔しがり、拳を握って側面を叩いた。その横をシキが通り抜けた。そして何の躊躇もなく、そのまま下へと落ちる。
「シキ!?」
アストロとエンドローゼもアシドの隣に来るが、流石に飛び込まない。
「どうすれば」
「……オレ達も行くしかねェ」
「…………私達で行けるの?」
「行くしかねェんだ!」
アシドが勢いよく立ち上がる。泣きそうな顔をしている。ありもしない勇気を振り絞ったのだろう。
しかし、そんなこと関係なかった。アシドが奮い立とうが、エンドローゼが高さに怯えていようが意味がなかった。
2度あることは3度ある。
アシド達の足元の崖も崩れたのだ。
アシドが素早く手を伸ばし、アストロを脇に抱え、エンドローゼを掴んで引き寄せた。そして、アシドは側面を蹴り、少しでも海に入れるようにする。崖近くは岩場が多くて体を強打しかねないからだ。
アシドの視界の端でネイビーブルーがヘルソーディアンを噛み砕いた。その瞬間に上から瓦礫が降ってきて直撃した。ネイビーブルーが沈んでいく。
その一部始終を見た直後、アシド達も入水した。槍を脇に挟み、左手のエンドローゼを右手に、左脇にいるアストロを左手に持ちかえる。足を動かして崖に向かって泳ぎ始めた。
「プハァ」
アシドが顔を出し、女2人を岩の上に乗せる。
「生きているか?」
「ゴホッゴホッ」
「あ、あ、あ」
流石に50mダイブは堪えたのか、反応が乏しい。目が虚ろだが、咳き込んでいるので生きてはいるようだ。
「アシド達も落ちてきたのか」
自身は岩に上がらず、プカプカと浮いていると、上から声が降ってきた。上を見ると、ずぶ濡れのコストイラ達が座っていた。
「よォ、生きていたか」
「おォ、運が良かったぜ」
コストイラが崩れないか確かめながら岩場を下りる。アシドはコストイラが下りきる前に槍を大きく振るった。
「クジラだ!」
コストイラが叫んだ瞬間、ヘルソーディアンの体が飛んできた。赤い帽子をしている。リーダーだ。上半身だけ。
『ブッルルルルルルルアアアアアアアア!!』
『アアアアアア!!』
魔物達の声が聞こえたかと思うと、崖路が揺れた。揺れがひどく、アレンは立っていられず、尻餅をついた。
コストイラがアレンの手を取り、立ち上がらせると、逃げるように足を踏み出した。ネイビーブルーの影響で罅入っていた崖が崩れた。コストイラが手を伸ばすと、ギリギリで手が届く。左手にアレンを下げ、右手に刀を掴んだまま崖を掴んでいる。
気付いたレイドがコストイラの右腕を掴む。コストイラは崖部に足裏をくっつけ、引き上げる負担を少しでも減らそうとする。
「フン!」
「ででででででで!?」
アレンがいる分、体重が増えているような感覚になるので、腕が引っこ抜かれそうになる。左腕を何とか持ち上げて、アレンを先に上げようとする。そして、レイドの足元が崩れた。咄嗟に片手を崖に伸ばしたが、間に合わない。
アシドが飛び込んで手を伸ばすが、間に合わず、レイド達は下に落ちた。アシドは悔しがり、拳を握って側面を叩いた。その横をシキが通り抜けた。そして何の躊躇もなく、そのまま下へと落ちる。
「シキ!?」
アストロとエンドローゼもアシドの隣に来るが、流石に飛び込まない。
「どうすれば」
「……オレ達も行くしかねェ」
「…………私達で行けるの?」
「行くしかねェんだ!」
アシドが勢いよく立ち上がる。泣きそうな顔をしている。ありもしない勇気を振り絞ったのだろう。
しかし、そんなこと関係なかった。アシドが奮い立とうが、エンドローゼが高さに怯えていようが意味がなかった。
2度あることは3度ある。
アシド達の足元の崖も崩れたのだ。
アシドが素早く手を伸ばし、アストロを脇に抱え、エンドローゼを掴んで引き寄せた。そして、アシドは側面を蹴り、少しでも海に入れるようにする。崖近くは岩場が多くて体を強打しかねないからだ。
アシドの視界の端でネイビーブルーがヘルソーディアンを噛み砕いた。その瞬間に上から瓦礫が降ってきて直撃した。ネイビーブルーが沈んでいく。
その一部始終を見た直後、アシド達も入水した。槍を脇に挟み、左手のエンドローゼを右手に、左脇にいるアストロを左手に持ちかえる。足を動かして崖に向かって泳ぎ始めた。
「プハァ」
アシドが顔を出し、女2人を岩の上に乗せる。
「生きているか?」
「ゴホッゴホッ」
「あ、あ、あ」
流石に50mダイブは堪えたのか、反応が乏しい。目が虚ろだが、咳き込んでいるので生きてはいるようだ。
「アシド達も落ちてきたのか」
自身は岩に上がらず、プカプカと浮いていると、上から声が降ってきた。上を見ると、ずぶ濡れのコストイラ達が座っていた。
「よォ、生きていたか」
「おォ、運が良かったぜ」
コストイラが崩れないか確かめながら岩場を下りる。アシドはコストイラが下りきる前に槍を大きく振るった。
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