メグルユメ

パラサイト豚ねぎそば

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19.異想への海溝

3.三つ巴

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 左手には高く聳える岸壁。右手には深く切り立つ岸壁。両方とも高さがかなりあり、上るには1日以上かかり、下るには命を懸けることになるだろう。上に行っても戻って来れる自信がない。
 落ちたら終わりというプレッシャーが胃にダメージを与えてくる。

 道の幅が3人通るのが最適、4人だとギリギリ耐えられるくらいになってきた。ロックドラゴンのような小型の相手はしやすいが、グレートドラゴンのような巨体はかなりきついだろう。
 上からパラパラと小石が落ちてきた。この場所ではこの小さなものでさえ凶器になるのではないかと思うので止めてほしい。上を見ると、何か人型がいくつも降ってきた。アレンとエンドローゼが咄嗟に亀の子戦法を取る。

『グゥア!』

 野太い声とともに何かが崖路を跳ねた。崖路に罅痕を残しながら、サイクロプスがさらに下へ落ちていく。ゴロゴロと転がって落ちてきたサイクロプスがへりに指をかけるが、勢いは止まらず下へと落ちた。

「何で上からサイクロプスが」

 ドンとサイクロプスが激突し、その場に留まった。体中から血液を垂れ流しながら、プルプルと立ち上がった。ゾンビのような見た目をしている一つ目の鬼に対し、コストイラが刀を抜いた。サイクロプスが一つ目を細かく左右に揺らしながらなんとかコストイラを見ようとする。口をパクパクさせながら、手をプルプルと伸ばす。
 コストイラ達が何か対処をする前に事件が起きた。上からとてつもなく大質量なものが降ってきて、サイクロプスを押し潰したのだ。

 サイクロプスの大きな目玉がペチリとコストイラの頬に当たった。今のコストイラには付着した血液どころか、目玉を弾くことさえできない。行動を見せることはリスクであると本能が理解したからだ。
 崖路に罅を作りながら、巨体を持ち上げ、それが吠えた。

「グレートドラゴン」

 この細い道で最も遭いたくなかった魔物が道を塞いだ。

「ここまで一本道、歩いて15分、逃げ切れるか?」
「無理ね。その前に狙ってブレスで終了よ」

 どう逃げるか算段を立てていると、右側からも咆哮が聞こえた。

「ディープ、ドラゴン」
「ある意味挟み撃ちね」
「陸は任せろ。海は任せた」
「了解」

 アレンがもう一体の魔物を見て戦慄し、もう8割がた戦うのを止めた。アストロも3割がた諦めて茶化すような笑みを浮かべた。
 コストイラは諦めておらず遠距離で最も頼りになるアストロの肩を叩き、グレートドラゴンを見つめる。頼られたアストロは一度溜息を漏らし、気を引き締めるために頬を張った。そしてディープドラゴンを睨みつける。






 コストイラが1歩踏み出した途端、それまで動きを見せなかったグレートドラゴンが素早く動いた。高密度かつ高威力の泥の弾が口内から爆発的に生じた。コストイラは咄嗟に刀で弾く。威力が高すぎてコストイラが弾かれて後退する。交代するようにアシドが前に飛び出した。泥の弾はブレスではないので、リロード時間が短い。すぐさま泥の弾が飛んでくる。アシドはベリーロールのように跳び、ギリギリで躱す。
 次に足を着けた時、すでに槍の攻撃が始まっていた。

「ヂィヤ!」

 アシドの鋭い突きに対して、グレートドラゴンは目を瞑り、額を出した。硬い頭蓋骨に阻まれ、突きの勢いが止まる。穂先が少しだけ入るが、致命ではない。



 しかし、手応え的には頭蓋に罅が入っているのが分かった。もっと力強く押し込めば割ることができ、致命傷を与えることができるだろう。とはいえ、もう勢いが死んでいるので力が入らない。

 重力によってアシドの位置が下がり、槍が抜けかける。グレートドラゴンがぐっと前に出る。アシドは体全体に頭突きを受けた。骨が簡単に折れ、口から血が出る。最近、簡単に骨が折れている気がする。
 ディープドラゴンが100m以上下から水弾を放つ。レイドは楯を斜めにして受け、往なした水弾をグレートドラゴンに当てた。
 直情径行なグレートドラゴンは速攻でキレた。グレートドラゴンはディープドラゴンに向かって泥弾を飛ばす。ディープドラゴンもグレートドラゴンに対して攻撃を始める。
 とはいえ、これで逃げられるかといえばそうもいかない。サイクロプスが落ちてきたときに、後ろの道が崩れてしまったのだ。コストイラやアシドなら問題ないが、エンドローゼが微妙に渡れないだろう。

 ここで何とか対処するしかない。

 ドラゴンとドラゴンと人間による三つ巴の戦いが始まる。
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