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18.最果ての孤島
17.美しき水の精霊
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祠とは、神やそれに準ずるものを祀る小規模な殿舎であり、東方由来の建物だ。神社を簡略化した形で、人が立ち入るのが難しい場所や、東方出身者が少数しかいない土地に設置され、神職は常駐しない。
この地に設置されている祠はおそらく前者だろう。
祠は神やそれに準ずるものを祀るものなので、本来綺麗な状態を保たなければならない。しかし、この祠は継ぎ接ぎだらけだ。樹の種類がバラバラだったり、木ではなく鉄板が使われていたり、混沌とした祠だ。修繕した者は建築学を学んだわけでもなければ、日曜大工に勤しんだりしたことがないのだろう。これなら不器用なエンドローゼの方が上手くできるのではなかろうか。
よく見ると、祠には穴が開いていた。アレンが直そうか考えていると、川の中から手が出てきた。手の大きさから体長は5mくらいか。手に力が入り、頭が出てくる。後ろしか見えていないので、長い金髪しか確認できない。もう片方の手が出てくる。その手には何やら鉄板と鉄の棒が握られている。
何しているのか、と壁に身を隠しながら覗き込む。金髪の手が祠を掴むと、鉄板を押し付けた。そして、鉄の棒は力一杯に突き刺した。何とも雑なやり方であろうか。呆れが止まらないし、開いた口が塞がらない。
アレンの上でそれを見ていたコストイラがポツリと呟いた。
「ありゃ、精霊だ」
「本当ですか?」
「あぁ、その証拠に。ほら、気付かれてる」
何がほらなのか分からないが、アレンには気付かれている証拠が見つからない。精霊(?)はペタペタと祠に触れると、右手を水に沈めた。そのまま潜るかと思ったが、ぐりんとこちらを向いた。ドキリとしている隙さえ貰えず、精霊の行動が続く。振り向き様の腰のねじれが戻されていく。水から上がった右手は水の槍が握られていた。
「マズッ」
「ぐぇ!」
コストイラがアレンの襟を掴んで後ろに引いた。アレンは首が締まり、思わず声が出た。
水の槍が角に当たり、破壊した。覗いていなかったアストロ達が焦る。しかし、何かという前にコストイラが飛び出してしまった。
「私達も行くわよ」
すぐに立ち直ったアストロが角から顔を出す。
コストイラが精霊相手に刀を振るっている。纏うオーラからして殺す気満々だ。コストイラをここまで駆り立てるものは何だろう。
金髪の精霊は5mほどの身長で、8mほどの長さの槍を振るっていた。槍はシンプルな銀の棒で装飾が一切ない。精霊が尾鰭を思い切り動かし飛び上がる。上から槍を連続で打ち下ろす。地面に次々と穴が開いていく。
重力によって落ちてくる水の精霊に刀を振るう。槍が8mもあるので、すぐに戻すことができない。水の精霊は左手を犠牲にして刀の軌道をずらす。そして、槍をコストイラに落とす。
コストイラは顔を傾けた。左頬が抉れた。そして、その延線上にあった左肩も抉れた。
血が出ているが、表情を変えない。しかし、上から精霊が落ちてきているのは変わらない。
精霊の顔がボンと爆発して暗い煙に包まれる。アストロが炎の魔力をぶつけたのだ。精霊の体が僅かに動く。
コストイラが寝転がったまま背を丸め、精霊の顔が来たタイミングで一気に足を伸ばす。
精霊の顔が90度以上跳ね上がる。ゴキンと音が鳴り、首の骨が喉に浮き出た。首の骨が折れた。しかし、まだ死んでいない。
コストイラは蹴った勢いで立ち上がり、水の精霊の顔を蹴飛ばす。折れた骨が横に動き、太い血管を傷つけた。
精霊が動かなくなった。
この地に設置されている祠はおそらく前者だろう。
祠は神やそれに準ずるものを祀るものなので、本来綺麗な状態を保たなければならない。しかし、この祠は継ぎ接ぎだらけだ。樹の種類がバラバラだったり、木ではなく鉄板が使われていたり、混沌とした祠だ。修繕した者は建築学を学んだわけでもなければ、日曜大工に勤しんだりしたことがないのだろう。これなら不器用なエンドローゼの方が上手くできるのではなかろうか。
よく見ると、祠には穴が開いていた。アレンが直そうか考えていると、川の中から手が出てきた。手の大きさから体長は5mくらいか。手に力が入り、頭が出てくる。後ろしか見えていないので、長い金髪しか確認できない。もう片方の手が出てくる。その手には何やら鉄板と鉄の棒が握られている。
何しているのか、と壁に身を隠しながら覗き込む。金髪の手が祠を掴むと、鉄板を押し付けた。そして、鉄の棒は力一杯に突き刺した。何とも雑なやり方であろうか。呆れが止まらないし、開いた口が塞がらない。
アレンの上でそれを見ていたコストイラがポツリと呟いた。
「ありゃ、精霊だ」
「本当ですか?」
「あぁ、その証拠に。ほら、気付かれてる」
何がほらなのか分からないが、アレンには気付かれている証拠が見つからない。精霊(?)はペタペタと祠に触れると、右手を水に沈めた。そのまま潜るかと思ったが、ぐりんとこちらを向いた。ドキリとしている隙さえ貰えず、精霊の行動が続く。振り向き様の腰のねじれが戻されていく。水から上がった右手は水の槍が握られていた。
「マズッ」
「ぐぇ!」
コストイラがアレンの襟を掴んで後ろに引いた。アレンは首が締まり、思わず声が出た。
水の槍が角に当たり、破壊した。覗いていなかったアストロ達が焦る。しかし、何かという前にコストイラが飛び出してしまった。
「私達も行くわよ」
すぐに立ち直ったアストロが角から顔を出す。
コストイラが精霊相手に刀を振るっている。纏うオーラからして殺す気満々だ。コストイラをここまで駆り立てるものは何だろう。
金髪の精霊は5mほどの身長で、8mほどの長さの槍を振るっていた。槍はシンプルな銀の棒で装飾が一切ない。精霊が尾鰭を思い切り動かし飛び上がる。上から槍を連続で打ち下ろす。地面に次々と穴が開いていく。
重力によって落ちてくる水の精霊に刀を振るう。槍が8mもあるので、すぐに戻すことができない。水の精霊は左手を犠牲にして刀の軌道をずらす。そして、槍をコストイラに落とす。
コストイラは顔を傾けた。左頬が抉れた。そして、その延線上にあった左肩も抉れた。
血が出ているが、表情を変えない。しかし、上から精霊が落ちてきているのは変わらない。
精霊の顔がボンと爆発して暗い煙に包まれる。アストロが炎の魔力をぶつけたのだ。精霊の体が僅かに動く。
コストイラが寝転がったまま背を丸め、精霊の顔が来たタイミングで一気に足を伸ばす。
精霊の顔が90度以上跳ね上がる。ゴキンと音が鳴り、首の骨が喉に浮き出た。首の骨が折れた。しかし、まだ死んでいない。
コストイラは蹴った勢いで立ち上がり、水の精霊の顔を蹴飛ばす。折れた骨が横に動き、太い血管を傷つけた。
精霊が動かなくなった。
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