メグルユメ

パラサイト豚ねぎそば

文字の大きさ
上 下
340 / 391
18.最果ての孤島

14.古代遺跡の謎を追え⁉

しおりを挟む
 落ちた穴の先には、柔らかい砂が坂を作っていた。そこに顔を突っ込んだかと思うと、坂に沿ってゴロゴロと転げていった。顔全体に砂が塗されて気持ち悪い。
 顔を何度も手で拭いながら、顔を振って立ち上がる。以前、ピラミッドに侵入した時を思い出す。あの時は魔物も落ちてきたが、今回は大丈夫なようだ。それなりに考える頭があるらしい。

「ぺっぺっ」

 必死に口の中の砂を吐き出すが、じゃりじゃりした感触が消えない。

「皆さん、大丈夫ですか?」
「大丈夫だ」
「こっちは平気よ」
「今回ははぐれねェし、埋まってもねェたァ優秀だな」
「あの時埋まったのはお前だろ」

 アレンの確認に、まずレイドが反応し、アストロは女子3人を纏めて返事する。コストイラが軽快に笑うと、アシドがツッコミを入れた。

「さて、あの時同様、この空間に出入り口は一つ。そして何かが来るのも一緒」

 コストイラが自信の腰に佩かれた刀に手をやる。シキももうすでにナイフを抜いていた。気付いていなかったアレンは咄嗟に魔眼を発動させる。
 出入り口の壁に手が置かれる。恋人の肩に置く手のような、ふわりと優しい手の置き方だ。

 しかし、手で掴んだ瞬間、ゴシャリと壁を握り潰した。マズイ。魔眼で見たせいで興奮状態に陥ったか?

「ミノタウロスか」

 鼻息を荒くしている相手に、コストイラが唇を舐める。

 まず動いたのはミノタウロス。

『ブモォオオオオオ!!』

 開戦を宣言するように大きく啼いた。エンドローゼは大声にビビってシキに抱き着いた。戦いに参加しようとしていたシキはグイーと頭を押すが、離れない。これ以上力を入れてはポキッと逝ってしまいそうなので、自然と離れるのを待つことにした。

 次に動いたのはアシドだった。最近できるようになった初速で最高速で、その上鉄さえ貫く突き。しかし、完成したばかりの組み合わせ技は、アシドの制御の範囲外にいる。

 腹に風穴を開けようとした槍の先端は僅かに逸れており、その差はどんどんと開いていく。最終的にアシドが辿り着いたのは、ミノタウロスの脇腹だった。ミノタウロスの脇腹が爆発した。胴回りの5分の1が消し飛び、中に納められていた贓物は空中へと弾け飛んだ。
 ミノタウロスは止まらない。持っていた血の固まった大剣を大きく振るった。普段であれば躱せたであろう一撃だが、今のアシドは技を放った後だ、すぐには躱せない。
 必死に槍を引き戻し、長い柄の先端で何とか防ぐ。しかし、そのまま止まることなく、圧倒的な膂力で持ち上げられ、天井に吹き飛ばされる。

 コストイラはレイドに合図を送り、ミノタウロスと相対する。コストイラから漏れ出る精錬された殺気に、ミノタウロスは一瞬にして敵と認識した。

 アシドにはだいぶ劣るが、ミノタウロスからしたら十分に速いスピードに肉薄し、刀を振るった。ミノタウロスの硬い腹筋が斬れる。内部が覗ける方の腹筋から斬ったからだろう。
 アシドの二の舞にならないよう、刀をすぐに胸元まで戻し、ミノタウロスの行動を観察する。ミノタウロスは大剣を振ろうと腕に力を込めていた。コストイラは余裕をもって回避しようとする。

『ブン!』

 しかし、力を込めていたのは腕だけではなかった。足に込められてた力は地面へと伝播し、コストイラの足元を爆ぜさせた。一切の傷がつくような攻撃ではない。しかし、僅かに足元が浮き、回避行動に移ることができなくなった。

 刀で何とかガードするが、アシドの二の舞となる。コストイラは人工的な壁を突き破り、その向こうに消えていった。
 レイドとエンドローゼはコストイラが対峙した時点でアシドの元に向かっている。アレンとアストロはコストイラの元へと向かおうとしている。アストロがシキの肩に手を置いた。

「頼んだわよ」

 それだけでシキには頑張る理由になった。






「イテテ」

 瓦礫から体を起こし、後頭部を擦る。まさか、あのタイミングで地面を隆起させるとは。あのミノタウロス闘い慣れていやがる。

 コストイラは楽しそうに唇を舐める。

 強くなりたければ、自分に嘘を吐き、体を動かせ。

 母に言われた言葉だ。こんなところで立ち止まっているわけにはいかない。体を動かせ。心を燃やせ。命を焼べろ。

「ぜってー美味しく頂いてやる」

 今晩の飯を筋肉質な牛肉にしてやろうと立ち上がり、ふと後ろを見た。
 そもそも触れてこなかったが、なぜここに人工的な史跡があるのだろうか。帝国歴何年の遺跡だろうか。歴前だとすれば歴史的大発見だ。

「これ、石像だよな」

 今、コストイラの目の前にはこの遺跡に取り残された石像があった。石というか、鉄というか。何というか、ボルトとかいう歴史的遺物が使われている。昔博物館で見た事がある。
 コストイラは嫌な予感がした。石像だろうが鉄像だろうが安心できないのを知っていた。動く像を知っているからだ。
 耐えきれず、口にしてしまう。

「ゴーレム?」

 その瞬間、ビカーと鉄像の眼の部分が光った。間違いない、これは動きだしている。

「コストイラ、アンタ」

 コストイラが作った穴から呆れた声が聞こえてきた。

「いや、これオレか?」
しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

ドアマットヒロインはごめん被るので、元凶を蹴落とすことにした

月白ヤトヒコ
ファンタジー
お母様が亡くなった。 それから程なくして―――― お父様が屋敷に見知らぬ母子を連れて来た。 「はじめまして! あなたが、あたしのおねえちゃんになるの?」 にっこりとわたくしを見やるその瞳と髪は、お父様とそっくりな色をしている。 「わ~、おねえちゃんキレイなブローチしてるのね! いいなぁ」 そう、新しい妹? が、言った瞬間・・・ 頭の中を、凄まじい情報が巡った。 これ、なんでも奪って行く異母妹と家族に虐げられるドアマット主人公の話じゃね? ドアマットヒロイン……物語の主人公としての、奪われる人生の、最初の一手。 だから、わたしは・・・よし、とりあえず馬鹿なことを言い出したこのアホをぶん殴っておこう。 ドアマットヒロインはごめん被るので、これからビシバシ躾けてやるか。 ついでに、「政略に使うための駒として娘を必要とし、そのついでに母親を、娘の世話係としてただで扱き使える女として連れて来たものかと」 そう言って、ヒロインのクズ親父と異母妹の母親との間に亀裂を入れることにする。 フハハハハハハハ! これで、異母妹の母親とこの男が仲良くわたしを虐げることはないだろう。ドアマットフラグを一つ折ってやったわっ! うん? ドアマットヒロインを拾って溺愛するヒーローはどうなったかって? そんなの知らん。 設定はふわっと。

生贄にされた先は、エロエロ神世界

雑煮
恋愛
村の習慣で50年に一度の生贄にされた少女。だが、少女を待っていたのはしではなくどエロい使命だった。

愚かな父にサヨナラと《完結》

アーエル
ファンタジー
「フラン。お前の方が年上なのだから、妹のために我慢しなさい」 父の言葉は最後の一線を越えてしまった。 その言葉が、続く悲劇を招く結果となったけど・・・ 悲劇の本当の始まりはもっと昔から。 言えることはただひとつ 私の幸せに貴方はいりません ✈他社にも同時公開

僕の家族は母様と母様の子供の弟妹達と使い魔達だけだよ?

闇夜の現し人(ヤミヨノウツシビト)
ファンタジー
ー 母さんは、「絶世の美女」と呼ばれるほど美しく、国の中で最も権力の強い貴族と呼ばれる公爵様の寵姫だった。 しかし、それをよく思わない正妻やその親戚たちに毒を盛られてしまった。 幸い発熱だけですんだがお腹に子が出来てしまった以上ここにいては危険だと判断し、仲の良かった侍女数名に「ここを離れる」と言い残し公爵家を後にした。 お母さん大好きっ子な主人公は、毒を盛られるという失態をおかした父親や毒を盛った親戚たちを嫌悪するがお母さんが日々、「家族で暮らしたい」と話していたため、ある出来事をきっかけに一緒に暮らし始めた。 しかし、自分が家族だと認めた者がいれば初めて見た者は跪くと言われる程の華の顔(カンバセ)を綻ばせ笑うが、家族がいなければ心底どうでもいいというような表情をしていて、人形の方がまだ表情があると言われていた。 『無能で無価値の稚拙な愚父共が僕の家族を名乗る資格なんて無いんだよ?』 さぁ、ここに超絶チートを持つ自分が認めた家族以外の生き物全てを嫌う主人公の物語が始まる。 〈念の為〉 稚拙→ちせつ 愚父→ぐふ ⚠︎注意⚠︎ 不定期更新です。作者の妄想をつぎ込んだ作品です。

貴族に生まれたのに誘拐され1歳で死にかけた

佐藤醤油
ファンタジー
 貴族に生まれ、のんびりと赤ちゃん生活を満喫していたのに、気がついたら世界が変わっていた。  僕は、盗賊に誘拐され魔力を吸われながら生きる日々を過ごす。  魔力枯渇に陥ると死ぬ確率が高いにも関わらず年に1回は魔力枯渇になり死にかけている。  言葉が通じる様になって気がついたが、僕は他の人が持っていないステータスを見る力を持ち、さらに異世界と思われる世界の知識を覗ける力を持っている。  この力を使って、いつか脱出し母親の元へと戻ることを夢見て過ごす。  小さい体でチートな力は使えない中、どうにか生きる知恵を出し生活する。 ------------------------------------------------------------------  お知らせ   「転生者はめぐりあう」 始めました。 ------------------------------------------------------------------ 注意  作者の暇つぶし、気分転換中の自己満足で公開する作品です。  感想は受け付けていません。  誤字脱字、文面等気になる方はお気に入りを削除で対応してください。

父が死んだのでようやく邪魔な女とその息子を処分できる

兎屋亀吉
恋愛
伯爵家の当主だった父が亡くなりました。これでようやく、父の愛妾として我が物顔で屋敷内をうろつくばい菌のような女とその息子を処分することができます。父が死ねば息子が当主になれるとでも思ったのかもしれませんが、父がいなくなった今となっては思う通りになることなど何一つありませんよ。今まで父の威を借りてさんざんいびってくれた仕返しといきましょうか。根に持つタイプの陰険女主人公。

校長室のソファの染みを知っていますか?

フルーツパフェ
大衆娯楽
校長室ならば必ず置かれている黒いソファ。 しかしそれが何のために置かれているのか、考えたことはあるだろうか。 座面にこびりついた幾つもの染みが、その真実を物語る

あの、神様、普通の家庭に転生させてって言いましたよね?なんか、森にいるんですけど.......。

▽空
ファンタジー
テンプレのトラックバーンで転生したよ...... どうしようΣ( ̄□ ̄;) とりあえず、今世を楽しんでやる~!!!!!!!!! R指定は念のためです。 マイペースに更新していきます。

処理中です...